GORGOM NO SHIWAZAKA

ゴルゴムのしわざか!

映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』感想

映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

イギリスの児童小説『チョコレート工場の秘密』を原案とし、小説に登場するキャラクターのひとりである、ウィリー・ウォンカの若かりし日をオリジナルストーリーで映画化した作品。

それが本作、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』です。

まだ店を出す前のウォンカが、一流の職人になるために奮闘する、ファンタジーミュージカル映画となっています。

 

もくじ

 

概要

チョコレート工場の秘密』は、これまで何度も映像化されてきました。

最初の映像化は、1971年。『夢のチョコレート工場』というタイトルで映画化されました。残念ながら興収的には失敗に終わったそうですが、ビデオ化などでジワジワと評価を上げていき、今ではカルト的な人気を博しているんだとか。

2017年には、大人気キャラクターであるトムとジェリーとコラボし、1971年版のエッセンスを混ぜ合わせた『トムとジェリー 夢のチョコレート工場』というビデオ映画がリリースされました。見てないのでわかりませんが、あまり評価は良くないようです…。

そして、映像化作品の中でもとりわけ有名なのが、2005年の『チャーリーとチョコレート工場』でしょう。ティム・バートンが監督を、ジョニー・デップが主演を務め、バートン監督らしいファンタジックな世界観とブラックなユーモア満載で映像化されたこの作品は、世界中で大ヒットを記録。日本でも金ローでたびたび放送されるほどの大人気作品なので、ご存じの方も多いかと思います。

 

で、本作ですが、上記の通り前日譚であり、原作にはないオリジナルストーリーが描かれています。宣伝ではあたかも『チャーリーとチョコレート工場』と直接的な関りがあるように言っていますが、色々と辻褄が合わないところがありそうなので、おそらくこれまでの映像化作品との関連性は無いように思われます。なので、どちらかというとリブート的な作品として見た方が良いかと。

監督・脚本は、ポール・キング
そして共同脚本に、サイモン・ファーナビー
実写版『パディントン1・2』の監督・脚本コンビです。

予告とかCMとかで「ハリー・ポッターのプロデューサーが贈る!」ってやたら言っている通り、製作にはデヴィッド・ハイマンが携わっています。
ハリー・ポッター』シリーズの映画すべてでプロデューサーを務めているほか、『ファンタスティック・ビースト』シリーズ、『パディントン』シリーズ、最近では『バービー』などでも製作をやっているお方です。パディントンの製作陣が贈る!」って言った方が適切なのでは…?まさか、逆にマイナスイメージになるから避けたのか…?

 

主演を務めるのは、ティモシー・シャラメ
フランス人の父とアメリカ人の母を持ち、フランスとアメリカの二重国籍を持っているそうです。2017年の『君の名前で僕を呼んで』でアカデミー賞にノミネートされ、『DUNE/デューン 砂の惑星』で主演を務めるなど、まだ若干27歳ながら既にトップスターとなりつつある大人気の俳優さんです。DUNEはPART2の公開が来年3月に決まったようなので、大変ワクワクしております。

そのほか、詳細は割愛しますが、『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』などにも出演している名優ヒュー・グラント、『Mr.ビーン』シリーズでおなじみのローワン・アトキンソン、『シェイプ・オブ・ウォーター』などで知られるサリー・ホーキンスといった俳優陣が出演しています。

 

予告編


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あらすじ

一流のチョコレート店が立ち並んでいることで有名なとある町へ、若き日のウィリー・ウォンカ(演:ティモシー・シャラメ)はやってきました。

彼はここで自分の店を出すことを夢見ていましたが、その才能に嫉妬するチョコレート組合の3人組から執拗な妨害を受けることに。さらに、悪徳な宿屋の主、ミセス・スクラビット(演:オリヴィア・コールマン)に騙され、多額の借金を背負ってしまいます。それでも、ウォンカは自身の夢のため、そして亡き母との約束を果たすために、チョコレートを作り続けるのでした。

果たして、ウォンカは夢を叶えることが出来るのか――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

心温まる、とても素敵な娯楽作品でした。

はじめにちょっと不満、というほどのものでもないのですが、『チャーリーとチョコレート工場』のブラックな一面がすごく好きな僕としては、本作の常に前向きでキラキラしたウォンカには少し物足りなさを感じてしまいました。まだひねくれる前のウォンカを描いた作品らしいので間違ってはいないのですが、どうしても“あの感じ”を期待してしまうといいますか。まぁ、ティモシー・シャラメのあの圧倒的なプリンス感ではひねくれたキャラは合わないと思うので、これで正解だとも思いますけどね。しっかし、ティモシー・シャラメは本当に顔の造詣が良い。いや良すぎる。何食えばあんな綺麗な顔が出来上がるのか。同じ人類なのかと疑ってしまいます。

ほかにも、ウォンカはチョコ職人というよりかは魔法使いなのでは?とか、あのヘンテコな世界観を魔法で片付けると途端に面白味がなくなるとか、百歩譲って魔法が存在する世界なのであればどうして他の人は魔法使わないのか、ウォンカのは母譲りなのかもしれないけど特にそういった描写はなかったと思うのでイマイチ判然としないとか、叩けば埃は出てきますが、まぁ気にしなければ気にならない程度のものです。

 

そうしたキモイオタク的発想を抜きにすれば、非常に楽しいミュージカル作品でした。

すべてがチョコ基準で成り立っている町は、現実のドロドロした感じを忘れさせてくれます。チョコが通貨だと言わんばかりに、隠し財産的なものがチョコだったり、賄賂もチョコで払ったりするのには笑いました。糖尿病の人めっちゃいそう。肝心のミュージカルパートも、明るく楽しいものばかりだったのでテンション上がりました。あとキリンさんがかわいい。

中でも、特に僕が良いと思ったのは、「夢は、必ず叶うんやで」ではなく、「夢見ることから、全ては始まる」という本作のメッセージ。前者はなんというか、あまりにも漠然とし過ぎているというか、嘘くさいというか、「なーに思ってもないこと言うてんねんしょーもな黙っとけボケカス」と思ってしまうというか(おっと、つい暴言が…)。でも後者は、「夢が叶うか叶わないかは、まず夢見ないと始まらないでしょ」…って同じこと言ってますけど、なんとなく時代性というか、説得力を感じてすごく良いと思いました。まぁ、夢を見れるか見れないかってのはまた別の問題だとも思いますけど。金銭的、時間的、その他諸々、ある程度の心の余裕がないと夢なんか見れないですもんね。それでも、このメッセージは今を生きる人の心に刺さりやすいのではないかと思いました。

 

おわりに

短いですが、こんなもんにしときます。

映画を見るペースは変わってない、むしろ12月は今のところ毎週1本以上は見てるのですが、なかなか感想を書く時間が取れない…。書きかけのまま止まってるのもあるし、見たけど全然書けてないのもあるし、ちょっと渋滞気味です。

とにかく、本作は順調にヒットしているようで何より。非常に前向きな気持ちになれる作品なので、クリスマスに大切な人と一緒に鑑賞するのにピッタリな作品になっていると思います。当然、僕はボッチでの鑑賞でしたけどね!(号泣)

ということで、映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の感想でした。

ではまた。

映画『マーベルズ』感想(ネタバレ)

映画『マーベルズ』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

マーベルコミックを原作とした複数の実写映画を同一の世界観で描くクロスオーバー作品群、それが『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』。

本作は、アベンジャーズのメンバーであるキャプテン・マーベルを主人公とした映画であり、2019年公開の『キャプテン・マーベル』に続く、第2作目となります。

アベンジャーズの中でもトップクラスの実力を持つキャプテン・マーベルが、2人のヒーローと協力しながら宇宙の危機に立ち向かう、アクション大作となっています。

 

もくじ

 

キャプテン・マーベルとは

キャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースの初登場は、1968年刊行のコミックから。当初はまだスーパーパワーを持ってはいませんでしたが、1970年代に刊行されたコミックでクリー人と融合し、ミズ・マーベルを名乗ることになります。(ちなみにクリー人というのは、ドラゴンボールにおけるサイヤ人のような戦闘民族と思っていただければ、おおよそ間違いないかと思います。)その後は何度か名前を変えつつほかのヒーローと共闘を続け、正式にキャプテン・マーベルを名乗るようになったのは2012年と、割と最近みたいです。

その能力は、超人的な身体能力、耐久力、持久力、飛行能力、手からエネルギー波を発射する能力、などなど。要はめちゃくちゃ強い、ということです。とりあえず見ていて「つよっ!」と思うことは大体できる感じ。コミックではそれらの能力は融合したクリー人由来のものらしいですが、MCUではインフィニティ・ストーンのひとつ、スペース・ストーンのエネルギーを吸収したことで、能力を獲得しました。

 

本作に登場するヒーローのひとり、モニカ・ランボーも、コミックでは2代目キャプテン・マーベルとして活躍した人物です。

MCUでは、1作目『キャプテン・マーベル』にて初登場。キャロルの親友であるマリア・ランボーの娘であり、この頃はまだ子供でした。その後、MCUドラマシリーズ第1弾『ワンダヴィジョン』にて、成長した姿で再登場。サノスデシメーション(通称:指パッチン)で消滅していたことが明らかになり、更に消滅していた間に、母のマリアは癌で亡くなっていたことがわかります。

ドラマ終盤には、ワンダ・マキシモスカーレット・ウィッチの作り出したヘックスと呼ばれる現実改変能力を持つエネルギーフィールドを何度も行き来したことで、能力に覚醒。電磁スペクトラムがなんたらとかよくわかんないこと言ってましたが、要は様々なエネルギーを見ること、操ることが出来る、という感じみたいです。

 

カマラ・カーンミズ・マーベルに関しては、以下をお読みいただけると幸いです。

blacksun.hateblo.jp

 

本作概要

本作で監督を務めるのは、ニア・ダコスタ
NOPE/ノープ』などで知られるジョーダン・ピールが製作を務めたホラー作品、『キャンディマン』を監督したことでも知られています。まだ若干33歳だそうで、MCUの監督としては最年少、しかも初の黒人女性監督とのことです。

脚本はダコスタと、『ワンダヴィジョン』の3,4話の脚本を執筆したミーガン・マクドネル、『ロキ シーズン1』の第2話の脚本を担当したエリッサ・カラシクが共同で書いています。マクドネルは今後、MCU作品『Agatha: Darkhold Diaries(原題)』や『Vision Quest(原題)』の脚本も執筆するそうです。どっちも楽しみなヤツ…!

 

主人公、キャロル・ダンヴァースを演じるのは、ブリー・ラーソン
キングコング:髑髏島の巨神』などの作品への出演のほか、2019年の『ユニコーン・ストア』という作品では監督も務めており、更にシンガーソングライターとしての顔も持つなど、多彩なお方です。僕はブリー・ラーソンというと、2015年の『ルーム』という映画がものすごい印象に残っています。お子さんのいる全ての親御さんに見ていただきたい作品です。

モニカ・ランボーを演じるのは、テヨナ・パリス
舞台、TVドラマ、映画と幅広く活躍しているお方で、ダコスタ監督の『キャンディマン』にも出演しています。名門音楽学校を出ているとのことで、今後そっち方面の仕事も増えるかもしれないですね。

カマラ・カーンを演じるのは、イマン・ヴェラーニ
『ミズ・マーベル』にて華々しくデビューを飾った、若干21歳の俳優さん。イマン自身もかなりのマーベルオタクで、ドラマの撮影の際にもいろいろアイデアを出したりしていたそうです。その経験が活きてなのか、今後ミズ・マーベルの新たなコミックシリーズの共同脚本もやるとかやらないとか。なんだかとんでもないことになってきたぞ。

本作におけるヴィラン(敵役)を演じるのは、ゾウイ・アシュトン
TVドラマ『フレッシュ・ミート』のメインキャストとして出演していることでも知られています。ロキ役でおなじみのトム・ヒドルストンと婚約関係にあるそうで、彼からMCUに出演するにあたってのアドバイスをもらったそうです。恥ずかしながら全然知らない俳優さんでしたが、トムヒの婚約者だったとは驚き。

そのほか、おなじみサミュエル・L・ジャクソンや、カマラの家族を演じた俳優さんたちが引き続き出演。また、『梨泰院クラス』などで知られる韓国の俳優パク・ソジュンが、本作にてハリウッドデビューしています。僕にはワンマンドゥ(餃子)の人、というイメージしかない…。

 

予告編


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あらすじ

宇宙をパトロールしていたキャロル・ダンヴァースキャプテン・マーベル(演:ブリー・ラーソン)のもとへ、宇宙ステーションS.A.B.E.R.の責任者、ニック・フューリー(演:サミュエル・L・ジャクソン)より通信が入ります。とある星で謎のエネルギーが発生しており、その調査をしてくれ、とのこと。エネルギーの発生源は、不安定なジャンプポイント(ワープゲート)でした。ジャンプポイントは宇宙の均衡を乱しかねないため厳重に管理されており、本来この場所にあるべきではないもの。いったい誰がこんなことを…。

そのエネルギーはS.A.B.E.R.にも不具合をもたらしており、モニカ・ランボー(演:テヨナ・パリス)はステーションの外から調査をしていました。あらゆるエネルギーを知覚することの出来る彼女は、付近のジャンプポイントに謎のエネルギーが残留していることに気付きます。

一方その頃、ニュージャージー州に住む高校生、カマラ・カーンミズ・マーベル(演:イマン・ヴェラーニ)は、今日も大好きなキャプテン・マーベルの二次創作に夢中。いつか彼女と共闘し、チームになることを妄想していました。

キャロルとモニカが謎のエネルギーに触れた瞬間、カマラの腕のバングルが光りだし、突如3人は入れ替わってしまいます。突然の出来事に驚きを隠せない3人。いったい何が起こっているのか――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

ひそかに本作にはとても期待していたんですが、その期待に十分応えてくれるほどには面白かったです。

 

本作は猫映画です

前作『キャプテン・マーベル』にも登場した、猫のグース
実際は猫ではなく、フラーケンという凶悪な宇宙生命体。ニックの片目を奪ったのも、実はこのグース。タコのような、エイリアンのような、なんだかよくわからん触手を伸ばし、どんなものでも呑み込んでしまう恐ろしい存在。
…なのですが、どうしてもかわいいよグース!かわいすぎるよ!

序盤でいきなり人を呑み込んでカマラを驚愕させたり、カマラの家の家具を呑み込んでは吐き出したりと、やりたい放題。でもニックにはおとなしくナデナデされる。はぁーかわいい。後半ではグースの子供と思われる子猫(の姿をしたフラーケン)がいっぱい出てきて、状況としては完全に地獄絵図なのに対し、「なんだここは…天国か…?」となるほっこり映像が楽しめます。結果的にそれが絶体絶命のピンチを打破することになるので、つまりは本作は猫映画ということになりますね(暴論)。

ただまぁ、不満というほどのものでもないのですが、前作ではマジで何するかわからない、得体の知れない存在だったのが、本作ではかなり味方側に寄っていたのが気になりました。作劇上の都合みたいなのを感じてしまうといいますか。

 

カマラが最高!

やはり何といっても、イマン演じるカマラですよ。ドラマですっかりお気に入りのキャラになったので、彼女が再登場する本作には期待せざるを得ませんでした。喜怒哀楽が全部顔に出るところとか、未熟ながら一生懸命みんなのためにがんばるところとか、すごく応援したくなるような魅力に溢れているんですよね。そんな彼女の魅力が、本作でもしっかりと発揮されていたのがとても良かったです。

特に、スクラル人が居留地としていた惑星ターナックスで、崩壊しようとする星から懸命にスクラル人を救おうとしていた姿が印象的でした。ここで「全員を救おうとしていたら、救える人も救えなくなる」とキャロルに言われて嫌々ながら従っていましたが、カマラにはこれからも「迷わず全員救う」マインドでいてほしいなぁ。まぁ、キャロルももちろん、出来ることなら全員救いたいと思ってたんでしょうけどね。これまでの経験から、ひとりの力で出来る限界というのを散々思い知っての発言なのかな、と思いました。

カマラの家族も、相変わらずのドタバタっぷりで楽しかったです。キャロルとモニカに入れ替わるたびにどんどん家が破壊されていき、しまいには父ちゃん母ちゃんも食器投げて応戦したりしてヤケクソ気味になってたのには笑いました。しかし、フューリーにくっついてS.A.B.E.R.に行ったり、終始出番があるとは正直思わなかった…。

 

人間味のあるキャロル

ブリー・ラーソンのスタイルがあまりにも良すぎる。ビジュは間違いなく過去一。冒頭のヒーロースーツを腰にぶら下げてくつろぐスタイルも最高だし、終盤の比較的地味目な衣装もスター性が全く衰えない(むしろウエストの細さが更に際立ってヤバい)のがすごすぎる。
…というのは一旦置いといて。

MCUにおけるこれまでのキャロル、特にパワーを得てからの彼女は、とにかく強くてクールで、カマラをはじめ誰もが憧れるようなキャラクター像だったように思います。しかし本作では、そんな彼女の人間らしい面がたくさん出てきて、非常に魅力が増していたように思いました。まさかの歌唱シーンもあり、シンガーの顔も持つラーソンなだけあって素晴らしい歌声でした。急にディズニー感出してきて、笑いを堪えられませんでしたよ。

彼女がクリー人から呼ばれていた“殺戮者”という呼称。最初は「そりゃ悪者からしたらそうなるよな」くらいの、軽い気持ちで捉えていました。しかし中盤、キャロルが(故意ではないとはいえ)クリー人の惑星ハラの環境をまともに人が住めないほどに荒廃させてしまったがゆえにそう呼ばれていることが明かされます。まさかあの呼称がこんなにも重みを帯びてくるとは…。助けようとしたら逆に恨まれるとか、そういうのとも彼女はこれまでたったひとりで戦ってきたんだなぁというのが伝わってきて、ちょっとつらい気持ちになったり。今回チームを組んだことによって、「自分はひとりで戦っているんじゃない」「チームがひとつになれば、今まで出来なかったことも出来る」と思ってくれたらいいなぁ。

 

頼れるお姉さんモニカ

キャプテン・マーベル』ではまだ子供、『ワンダヴィジョン』ではほぼほぼ巻き込まれる立場だったモニカですが、本作ではしっかりと頼れる存在に成長していました。ちょっと真面目過ぎるキャラも良き。キャロルにとってはかわいい親戚の子、カマラにとってはステキなお姉さんと、なかなか絶妙な位置にいるキャラになっていましたね。モニカが入れ替わりのメカニズムを解明して、逆にそれを利用してうまいこと使いこなそうとみんなでトレーニングするシーンとか、めちゃくちゃ良かったです。専門用語をまくしたてて、カマラとキャロルにキョトン顔されるのとか最高でした。キャロルまでそんな顔するのやめたげて!

ただ、彼女の能力がどういうものなのかは、僕の足りない頭ではイマイチよくわかりませんでした。透明化とか、飛行能力とか、エネルギー吸収とか、とりあえず万能にいろいろ出来るんだな、くらいの理解です。

「自分はヒーローにはならない」とヒーロー名を付けられるのを拒否していたのは、今後の展開のためかな?とあのポスクレシーンを見て思いました。

 

スクラル人の扱いの悪さ

これまでもMCU作品にたびたび登場している、スクラル人。

ドラゴンボールでいうところのナメック星人のようなもの、と思っていただければと。…ハイスミマセン、完全に見た目だけで言いました。なんとなく上で書いたクリー人の例えと合わせてみたくなって…。

コミックでは銀河三大帝国のひとつとされるほどに強大な種族らしいですが、MCUでは色んな意味で酷い目に遭っているような気がします。前作『キャプテン・マーベル』ではとばっちりで悪者扱いされたり、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』ではフューリーに小間使いされたり、『シークレット・インベージョン』では完全に小者に成り下がったり…。

本作でも、ようやく手に入れた居住地をいきなり奪われ、宇宙ホームレスになってしまうという、散々な目に遭っています。どうしてこうなった…。MCUにおけるスクラル人は現実でも大きな問題となっている移民問題のメタファーだと思うのですが、この扱いではいろいろとヤバいのでは…。ここからいい方向に舵を切っていけるのか、今のところ期待よりも不安の方が大きい…。

 

魅力が足りないヴィラン

本作でキャロルたちと敵対するのは、クリー人の指導者、ダー・ベン(演:ゾウイ・アシュトン)。

カマラがつけているのと同じバングル(腕輪)を発見し、その力でもって惑星を滅ぼそうとする悪い奴。…と思われていましたが、実際は荒廃した惑星ハラの環境を蘇らせるために、バングルの力で大気や水などの資源をほかの星からハラへ転送するのが目的でした。とはいえ、奪われたものを奪い返しているだけで、資源を奪われた星のその後など知ったこっちゃないといった感じでしたし、結局はキャロルへの復讐もしようとしていたようなので、ヴィランには違いないですね。

なんだろうなぁ…このキャラにいまひとつ魅力を感じませんでした。思想的にもそれほど面白味を感じるものではなかったし、強さもそこまででもない感じでしたし。最期も両腕に装備したバングルのパワーに耐えきれず自滅するという、なんともパッとしない感じでした。直後、カマラは両腕にバングル付けて平然としていたので、余計に小者感を感じざるを得ない…。俳優さんに魅力がないわけではないですし、役作りもちゃんとされていたと思いますが、何が原因なんでしょうね…?

 

ちょっと愚痴になってしまいますが、ここ最近のMCU作品って、ヴィランに魅力がないおかげで作品自体の評価もイマイチ、というのが多い気がします。ここ最近で良かったのは、『ドクター・ストレンジ/MoM』のワンダと、『アントマン&ワスプ:クアントマニア』のモードックとかかな。後者に至ってはメインヴィランでもないという…。

サノスにあまりにも魅力があり過ぎた、というのも無いことは無いと思いますが、それにしたって顕著な気がするんですよね。次のアベンジャーズのために、いいキャラを出し惜しみしてるんじゃないか、と疑いたくなってしまいます。でもクアントマニアのメインヴィランとして登場したカーンは、サノスに代わるスーパーヴィランになる予定なはずなのに、蓋を開けてみれば完全にモードックに食われてる状況。うーん、先行き不安…。なんとか盛り返して欲しいものです。

 

ポストクレジットシーンについて

なるほど、モニカは別次元のキャプテン・マーベルになるのか。そしてそこでは“あの集団”との共闘も…?ということは今後公開予定の“あの作品”にモニカも出てきたりするのか…?そして元居た次元では母だったマリアのあの衣装は…?というか、“あの作品”はマルチバース上での話=今のMCUとのクロスオーバーは無い、のか…?

などなど、今後の展開への種蒔きがいっぱいされているポスクレでしたね。どうなっていくのか、ワクワクが止まりませんわ。

 

おわりに

以上でございます。

MCU作品は良くも悪くも書くこと多いですね。後半ちょっと不満が漏れてしまいましたが、キャラクターの魅力がよく出ている、とても良い作品だと僕は思いました。

ということで、映画『マーベルズ』の感想でした。

ではまた。

映画『ゴジラ-1.0』感想(ネタバレ)

映画『ゴジラ-1.0』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

1954年。
日本初の特撮怪獣映画、『ゴジラ』が公開されました。

終戦直後の日本で「核の恐怖」を描いたこの映画は空前の大ヒットを記録し、日本のみならず世界中の特撮作品にも大きな影響を与えました。特撮の歴史を変えた、まさにエポックメイキングな作品です。

余談ですが、ゴジラ1作目の公開後、「どうしてゴジラが殺されなければならないのか」「ゴジラがかわいそう」といった抗議が殺到したらしいです。今も冬眠前のクマに対して同じこと言う人がウジャウジャいるようですし、人間ってホント変わらないんだなぁと思ってしまう…。

 

時は流れ、2023年。
2016年公開の『シン・ゴジラ』から実に7年ぶりに、ゴジラ生誕70周年記念作品として、再び終戦直後の日本を舞台としたゴジラ映画が製作されることとなりました。

それが本作、『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』です。

正確には生誕70周年は来年ですが、来年にはハリウッドにて『ゴジラvsコング』の続編が公開予定らしく、契約の関係で同じ年にゴジラ映画を公開できないことから、本作は今年の公開となったそうです。本場は日本なんだから譲ってくれてもいいのに…。

 

もくじ

 

概要

監督・脚本・VFXを務めるのは、今や日本を代表する映画監督である、山崎貴
ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズが特に有名かと思いますが、僕は『ジュブナイル』や『リターナー』を推したい世代。ドラえもんドラクエなど、CGアニメの作品も多く手掛けています。世間の評価はまぁ…うん…。

あと、山崎監督作品と言えば株式会社白組VFXを担当することでおなじみですが、白組と聞くと『魔弾戦記リュウケンドー』や、『トミカヒーロー レスキューフォース』および『レスキューファイヤー』を思い浮かべてしまうのが特オタの宿命。タカトミ系ヒーロー番組は知名度は低めですが、名作揃いなのでぜひ見てほしいです(布教)。

 

主演は、日本の有名監督がこぞって使いたがるでお馴染みの(※個人の感覚です)神木隆之介

もうひとり、主要キャストを演じるのが、こちらも今や日本を代表する俳優である、浜辺美波

そのほか、吉岡秀隆佐々木蔵之介山田裕貴青木崇高安藤サクラなど、豪華俳優陣が出演しています。

 

予告編


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あらすじ

1945年。第二次世界大戦末期。

日本兵敷島浩一(演:神木隆之介)の操縦する零戦は、故障のため大戸島の不時着場へ降り立っていました。整備兵の橘宗作(演:青木崇高)は、どこにも故障箇所が無いことを訝しく思います。海辺には大量の深海魚の死骸が浮き上がっていました。

その夜、島に正体不明の巨大生物が出現。兵士たちは“それ”を、島で伝承として語り継がれる“呉爾羅(ゴジラ)”と呼びます。橘は敷島へ零戦の機銃で撃つよう指示するも、恐怖のあまり敷島はその場を逃亡。橘を残し、兵士たちは全滅してしまいます。

 

同年、冬。

終戦後、東京の実家へ戻った敷島ですが、家は空襲で跡形もなくなっていました。何もかも失った彼は、闇市で出会った大石典子(演:浜辺美波)と、彼女の連れ子である明子と共同生活をすることになります。

しばらくして、米軍が海中に残した機雷を撤去する仕事に就くことになった敷島。危険を伴う仕事ですが、その分給料はよく、少しずつ生活も安定していきます。そんなある日、敷島たちの乗る小舟は、戦艦を沈めるほどの“何か”を足止めするよう指令を受けます。海には、大量の深海魚の死骸が。その光景に、かつての惨劇が頭をよぎります。

そう、戦艦を沈めたのは、あの日から比べ物にならないほど巨大に成長した、あの怪物でした――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

僕は本作を見て、とても感動しました。

ひとつ前の『ザ・クリエイター/創造者』の記事で、「自己犠牲を美徳とするような終わり方」はあまり好きではない、と書きました。日本でも、余命いくばくもない人が運命の人に出会って最期は遺された方が号泣して終わるタイプの、お涙頂戴系の作品って毎年のように公開されてますよね。最近はそういうの全然好きになれなくて。セカチューとか、当時は映画館へ見に行ってめちゃくちゃ泣きましたが、今はあまり見たいとは思わないかな…。多分見たら泣くけど。

 

なので、本作の「生きることこそが美徳」みたいな描き方は、今の僕の好みにマッチしていて、すごく感動した次第です。どんなに苦しくても、みっともなくても、それでも生きる。それこそが素晴らしいんだと教えてくれる、そういう作品が見れることを期待して見に行ったので、しっかりと僕が見たいものを見ることが出来て満足です。

ちなみに、僕がそうした作品を好きになったきっかけは、多分『ブラックジャックによろしく』の漫画を読んだのがきっかけです。ドラマ版から入ったクチなのですが、漫画版はドラマよりもはるかにエグくて、だからこそ生きることの尊さが際立っているように思えて、ボロボロに泣かされました。作者が全話無料で公開しているので、ぜひ読んでみてください(布教)。

 

終戦直後という舞台設定も上手いなぁと思いました。

本作が戦争映画として出来がいいのかは僕にはわかりませんが、戦争を「人間性を崩壊させるもの」として描いていたのが、心にズッシリとくるものがありました。敷島が大戸島での惨劇を毎晩夢に見て、しまいには悪夢と現実の境がわからなくなるシーンは、つらすぎて涙が止まりませんでした。

戦時中、日本では特に「命を捨てる覚悟で戦うこと」がよしとされてきました。それがいかに愚かな考えであるかは今を生きる僕らにはわかりますが、当時の人たちにとってはそれが当たり前だったわけで。しかし、終戦を機に、今後は誰もが未来を生きていいんだと。それを当たり前にしていこうと。死ぬためにではなく、生きるために戦っていこうと。野田教授が劇中でこんな感じのことを言うシーン、すごく心に響きました。

なので、ラストで典子が生きていたのも、作品のテーマと合っていて良かったと思っています。「山崎作品だからどうせ生きてるんでしょ」なんて、そんなひねくれた考えやめましょうよ。

 

本作におけるゴジラの描き方も、とても良かったと思います。

邦画としては最高峰のVFXや、おなじみのあの劇伴の使い方も素晴らしくて、ゴジラ映画としての見応えも抜群でした。特に劇伴に関しては、確か2回ほど使われていたと思うのですが、1回目はゴジラが迫ってくる恐怖を演出するために使われ、対して2回目は戦艦がゴジラに向かっていくときの期待と決意を演出するために使われていたのが印象的でした。同じ曲でもこうも見え方が変わるのか、と。

ゴジラの原典が「核の恐怖」を象徴するものであるからうんぬん、とかそういうのは詳しい人にお任せするとして。本作のゴジラは、足元にあるものや邪魔してくるものをただひたすらに蹂躙するだけの、破壊の象徴として描かれていました。しかもその強さがあまりにも圧倒的で、特に銀座で放射熱線を放つシーン(発射前の背中のトゲトゲがせりあがってくるシークエンスにテンション爆上がり)とか、民衆は何が起きてるのかわからずただ立ち尽くしてるだけなのが印象的で、絶望感を感じさせるものでした。あのシーンで一瞬、橋爪功さんが映った気がしますが、あれは何だったんだろう…?

そーいや上映終了後、ぞろぞろと劇場を出る列の中で、「俺、ゴジラが悪役なのあんま好きじゃないんだよなぁ~」みたいな感想を話している人がいました(盗み聞きみたいになっちゃってスミマセン)。これを聞いて、僕は「本作のゴジラのどこが“悪”なんだろう?」と思ってしまいまして。というかそもそも、ゴジラが“善”な作品ってあるんでしょうか…?全作見てるわけじゃないのでちょっとわかんないんですけども。ギャレゴジとか、ドハゴジとか、その辺のこと言ってるのかな?僕も大好きな作品ですが、善とか悪とか、そういうもんじゃない気がするけどなぁ…。

とまぁとにかく、本作でのゴジラの描き方も、僕はすごく良いと思いました。具体的にどう良いのかはうまく言葉に出来ないですが、とにかくなんか良かったです(小並感)

 

最後、意味深に典子の首元にズームしていましたが、その意味は果たして…?まさか、続編あるのか…?
…まぁ、単なる映画あるあるの続編匂わせだとは思いますが。

 

おわりに

感想は以上になります。

シン・ゴジラ』との比較とかはね、既に多くの方がやっていますし、僕は特にやりません。というか、あっちがあーで、こっちがこーでみたいな、考察とかできません。シンゴジも超面白いし、本作も超面白かったです(KONAMI感)

今後もこういった、良質な国産のゴジラ映画が製作されていってくれることを願うばかりです。

ということで、映画『ゴジラ-1.0』の感想でした。

ではまた。

映画『ザ・クリエイター/創造者』感想(ネタバレ)

映画『ザ・クリエイター/創造者』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

すっかり近年のホットワードとなっている、人工知能(AI)。
「生成AI」や「チャットGPT」といった、AIに関連したワードが2023年の流行語大賞にノミネートされていることからも、話題性の高さが窺えます。

映画業界でも、AI絡みで色々ありました。『ミッション:インポッシブル』の記事でも書きましたが、映画の制作にAIを用いることに反対してストライキが起こるなど、大きな話題となりました。それに合わせてか、AIをテーマにした作品も数多く公開されましたね。脚本家たちのストライキは9月末に終結したそうですが、俳優たちのはまだ続いてるっぽい…?どうにか平和的に解決してほしいものです。

 

そんな激動の2023年に公開された映画、中でも人工知能をテーマにした映画で恐らく最もスケールの大きいSF超大作、それが本作『ザ・クリエイター/創造者』です。(※個人の感想です)

人類vs人工知能の戦争のさなかで出会った、一人の男と少女との絆が描かれています。

 

もくじ

 

概要

監督を務めるのは、イギリス出身のギャレス・エドワーズ
2014年の『GODZILLA ゴジラ』や、2016年の『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の監督としても知られています。幼少期からスター・ウォーズゴジラの大ファンだったらしいですが、大人になってそのどちらでも監督やっちゃうってすごいですよね。さらに本作では完全オリジナルのSF作品をこれだけの規模でやっちゃうんだから、本当にすごいとしか言いようがない。

脚本はギャレスのほか、『ローグ・ワン』の脚本も執筆した、クリス・ワイツが担当。

ほか特筆すべき点として、本作の音楽を、『インターステラー』『ブレードランナー2049』『DUNE/デューン 砂の惑星』といったSF超大作を数多く手掛けた、アカデミー賞など数々の賞を獲得した経験もある映画音楽の第一人者、ハンス・ジマーが担当しています。『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマ曲を作った人、といえばそのすごさが伝わるのではないでしょうか。

 

主演を務めるのは、ジョン・デヴィッド・ワシントン
イコライザー』シリーズなどで知られるデンゼル・ワシントンの息子で、元アメフト選手という肩書を持ちます。2020年の『TENET テネット』で主演を務めたことでも有名ですね。

物語のカギを握る少女を演じるのが、マデリン・ユナ・ヴォイルズ
ドイツ系の父と東南アジア系の母の間に生まれた、若干9歳の女の子。本作で俳優デビューだそうです。

主人公の妻を演じるのが、香港出身の両親のもとに生まれた、ジェンマ・チャン
MCU作品『エターナルズ』で主人公のひとりセルシを演じたほか、ジブリ作品『君たちはどう生きるか』の英語吹き替え版では、夏子の役を演じています。

そして我が国日本からも、世界の渡辺謙が出演しています。
ギャレス監督作品としては、『GODZILLA ゴジラ』以来2度目の出演。ほかの人が「ガッズィーラ」って発音してたのに、ナベケンだけは頑なに「ゴジラ」って言ってたのが印象的。

 

予告編


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あらすじ

AI技術が発展した未来。

ある日、AIがロサンゼルスに核を落としたのをきっかけに、人類と人工知能との間で戦争が勃発。アメリカをはじめとした西洋各国はAIを根絶しようと武力を行使する一方、アジア諸国はAIとの共存を目指していました。

ニューアジアで潜入捜査の任についていたジョシュア(演:ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、任務の中で最愛の妻マヤ(演:ジェンマ・チャン)を亡くし、自暴自棄になっていました。そんな折、AIを勝利に導く兵器“アルファ・オー”と、それを開発した創造者(ザ・クリエイター)“ニルマータ”がニューアジアにいるとの情報を入手。米軍は兵器の破壊、および創造者の暗殺任務への参加をジョシュアに要請します。

死んだはずのマヤがニューアジアで生きているかもしれないと告げられ、しぶしぶ任務に参加するジョシュア。どうにか兵器のある場所へ到着するも、そこにいたのは少女の姿をした“シミュラント”(模造人間)ただひとり。ジョシュアはとっさにその子にアルフィー(演:マデリン・ユナ・ヴォイルズ)と名付け、破壊せずに連れ出すのでした。

果たして、アルフィーが「AIを勝利に導く兵器」なのか?
そして、彼女を開発したニルマータの正体とは――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

とてもよい「家族の物語」でした。
壮大なSF作品で、こういう人間味あふれるストーリーが展開されるヤーツに最近めっぽう弱い。歳ですね…。

 

SF描写に関しては、さすがは生粋のオタク、ギャレス監督なだけあって、非常に見応えがありました。人類の切り札的存在であり、作品を象徴する存在にもなっていた“ノマド”をはじめとした近未来兵器のデザインは、ことごとく僕のツボにもはまるものでした。終盤に出てきた巨大な戦車とか、昭和スーパー戦隊の拠点メカ(デンジマンのデンジタイガーとか、バイオマンのバイオドラゴンとか、ゴーグルファイブのゴーグルシーザーとか)の雰囲気を感じてテンション上がりました。

ゴジラ発祥の国だからなのか、監督の日本愛が随所に感じられるところも、日本人として嬉しい限り。アジアが主な舞台ということで漢字表記があるだけでなく、カタカナやひらがなの表記も色んなところにあって、見つけるたびに「おっ!」ってなってました。未来アレンジされた新宿や渋谷も出てきて、コレジャナイ感もあまり感じず、めちゃくちゃカッコよくて最高でした。

 

シミュラントの、正面から見ると人間と見間違えそうなのに、横から見ると機械であることが一目瞭然なあのデザインも、なんとも秀逸だなーと。人工皮膚を被ってない、完全にメカな見た目のロボットも大変好みでした。

で、そうしたメカメカしいキャラたちが、時折人間より人間らしい一面を見せるんですよね。序盤、廃棄処理場みたいなところで、機能停止寸前のロボットが「私の子供は!?あの子は無事なの!?」と自分のことよりも子供を気にかけて声を荒げるシーンが印象的でした。そしてそれを目の当たりにした新人が「あれは本当に機械なの…?まるで人間にしか見えなかった…」みたいに軽くパニックになるとか、「人間を人間たらしめているものとは何なのか」を考えさせられました。

そして、人間より人間らしい機械の最たるものが、アルフィーなわけで。
「AIロボットと間に家族愛は生まれるのか」みたいなのが本作の大きなテーマのひとつだと思いますが、人種や性別の問題にも通じるものがありますよね。本作の場合はそもそも人間でもないという。でもそれをひっくり返すくらいに、アルフィーちゃんがまぁーカワイイ。感情豊かに笑ったり泣いたり、あんなんジョシュアじゃなくても「守りたい、この笑顔。」ってなりますわ。

渡辺謙は、紛れもなく渡辺謙でした。以上です。

 

不満というほどではないのですが、オチに関しては正直、僕があまり好きじゃないパターンのヤツでした。ウィル・スミスの『アイ・アム・レジェンド』とか、『ダークナイト ライジン』とかのオチに近い、と言えばわかる人はわかるかと思います。アメリカの人って、やっぱりああいうの美徳と感じるんですかね。僕は「それで万事解決というのはどうなんだ」とか「遺された人のことは考えないのか」とか、いろいろ考えちゃってどうにも好きになれないんですよね。

まぁ本作に関しては、あれだけの超巨大建造物が墜ちてきて、人的被害とか大丈夫なのか…?というのは頭をよぎったものの、「ジョシュアがその決断をするほどにアルフィーを愛している」というのが伝わってきたので、そこまで不満には感じなかったですけども。

 

おわりに

書きたい映画の感想が溜まってきてしまったので、とりあえずパッと思いついたことだけ書いて終わりにしときます。気が向いたらあとで加筆するかも。

大画面に映える壮大な映像が楽しめる、見応え抜群のSF作品ですので、気になっている方は是非とも映画館で鑑賞していただきたいです。

ということで、映画『ザ・クリエイター/創造者』の感想でした。

ではまた。

映画『オオカミの家』感想(ネタバレ)

映画『オオカミの家』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

南米・チリにて、1960年代に実在したドイツ系移民を中心としたコミューン、コロニア・ディグニダ。国を追われた元ナチス党員のドイツ人たちが設立したもので、性的虐待や拷問、殺害などによって運営されていたカルト団体だそうです。

それをベースとして製作されたのが、本作『オオカミの家』になります。

公式サイトによると本作のジャンルは“ホラー・フェアリーテイル”アニメーションというらしいです。その言葉の意味はイマイチよくわかりませんが(笑)、ストップモーション・アニメーションにて製作された、不気味で奇妙な世界観が最大の特徴となっています。

 

コロニア・ディグニダの詳細については以下をご参照ください。

ja.wikipedia.org

まぁ、それっぽい集落で暮らしていた少女が主人公というだけなので、これを知らないと本作を理解できない、というわけではないです。というかそもそも、本作を理解できる人がどれだけいるのか疑問…。

 

もくじ

 

概要

監督は、クリストバル・レオンと、ホアキン・コシーニャのコンビ。
チリ出身のビジュアル・アーティストで、長編映画を手掛けたのは本作が初となります。監督以外にも、脚本・美術・撮影・アニメーションなどを2人で務めています。

 

撮影場所はチリのほか、オランダ、ドイツ、メキシコ、アルゼンチンの美術館を使用しているそうで、部屋のセットに等身大の人形や絵画を作って撮影している、とのこと。また、制作過程や制作途中の映像をエキシビジョンの一環として観客に公開するという、非常に面白い手法で作られているんだそうです。制作風景すら芸術作品になるというのは、なんとも興味深いですね。

 

本作の知名度を一気に押し上げた出来事が、『ヘレディタリー/継承』や『ミッドサマー』などで知られるアリ・アスターが、本作を一晩で何度も鑑賞するほどに惚れ込み、彼の監督最新作『ボーはおそれている』(日本では来年公開予定)のアニメパートの制作にレオンとコシーニャを抜擢した、というエピソード。『ボーは~』も悪夢を映像化したような作品のようですし、『ジョーカー』などでおなじみのホアキン・フェニックス主演だし、公開されたら必ず見に行きたいと思っています。

更にアリ・アスターは、レオン&コシーニャが手掛ける短編映画『』の製作総指揮も務めるなど、すっかり2人の才能にお熱な様子。日本では『オオカミの家』と併せて、こちらの作品も併映されています。

 

それと、本作のおぞましくも美しいデザインのポスターは、日本の塚本陽(きよし)という方がデザインされたんだとか。出来上がったポスターを見て、レオン&コシーニャ監督は「泣きそうになった」と大絶賛したそうです。ほかにも、海外の映画やCDのジャケットのデザインなどを数多く手掛けているようですね。すごいお方だ。

 

予告編


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あらすじ

チリ南部の、とある集落。

そこで暮らしていたマリアという少女は、ある日ブタを逃がしてしまい、厳しい罰に耐えかねて集落を脱走します。森へと逃げ込んだ彼女は一軒家を見つけ、助けを求め家の中へ。しかしそこには誰もおらず、代わりに2匹の子ブタがいました。2匹にペドロアナという名前を付け、かわいがるマリア。すると、子ブタは人間の子供の姿へと変わり、マリアは自分の子供のように世話をするのでした。

そこへ、外から彼女を狙うオオカミの鳴き声が聞こえてきます。すると、怯えるマリアの心を反映するように、子供や部屋がどんどん変貌していき――。

というのがあらすじ。

 

併映短編『骨』について

『オオカミの家』の感想の前に、ちょっとだけ『骨』についても感想をば。

こちらは近年、美術館建設のための発掘調査の際に見つかった映像で、1901年に作られた世界初のアニメーション作品…という設定。つまり嘘です。実際は2021年に制作されました。こちらもストップモーション・アニメーションで作られ、全編白黒の映像になっています。上映時間は15分程度で、『オオカミの家』の前にまずはこちらを見る形になっていました。

内容は、とある少女が2つの人間の死体を使って、何らかの儀式をおこなっているのを撮影した、といったもの。死体の人物は、チリの政治における超重要人物らしいです。『オオカミの家』に負けず劣らず、こちらもなんともグロテスクで奇妙な、悪夢のような作品になっておりました。

上の写真の通り少女が生首を抱きかかえていたり、バラバラになった死体がひとりでに動き出したりと、これ実写で作ってたら相当恐ろしい映像だったろうな…。現に、少女が急に実写になって踊りだすシーンをはじめ、ところどころ実写映像が挟まれていたのですが、それがなんだかとても怖かったです。ストップモーションって怖さやグロさが減るわけではないのに、嫌悪感みたいなのが少しマイルドになるような気がするので、多分僕はそういうところが好きなんだと思います。基本怖いの苦手なので。

 

結局儀式の正体は、「理想の伴侶を作り出す」のが目的だったのかな?よくわかりませんでしたが、この手の作品って「わけわからないこと」を楽しむもんだと思っているので、そういう意味では非常に楽しむことが出来ました。

 

本編感想『オオカミの家』

さて、ここからは『オオカミの家』の感想に行きたいと思います。

まず特筆すべきは、ストップモーションというジャンルにとどまらない、その独創的な映像。部屋の壁にキャラクターなどを直接描いて、それを塗りつぶしてはまた描いて…というのを繰り返すことで動いているように見せていて、まるで絵画がそのまま動いているようでした。トリックアートのような見せ方で立体感を出していたのも良かったです。

ほかにも、粘土で作られた人形や、紙テープを巻き付けて作られたような人形が出てくるのですが、あえて粗雑なつくりというか、材料の質感をわざと残しているのがすごく芸術的で、同時にどこか無機質な感じというか、不気味さも演出しているように思えて、非常に見応えがありました。

 

本作は、コミューンの代表と思しき人物の語りから始まります。「今から見ていただく映像は、私たちが暮らしているコミューンの宣伝映像です。これを見れば、ここがいかに良いところなのか、ご理解いただけるはずです」みたいな語り口だった、はず。つまり、外の人たちへ発信するために作られた映像(という設定)であり、ぜひウチへおいでください、ってことだと思うのですが、コレを好意的に見れる人は相当イッちゃってる人だけの気が…。こういうところでも狂気を感じさせてゾクゾクしますね。

イッちゃってる人といえばこの方。

その後は延々と夢か現かわからない、悪夢のような映像がずっと続きます。『マッドゴッド』がものすごく不快で腐臭のする悪夢だとしたら、こちらは無臭だけど生理的嫌悪感に満ちた悪夢のような、そんな感じ。…うん、絶対伝わらねぇ。

この手の作品って、理解とか納得とか、そういうものから最も遠いところにあるように思います。なんとなくめんどくさい言い方をしましたが、つまりはずっとわけわからなかった、ということです(爆)
でも、それでいいんじゃないかと。『マッドゴッド』の時も同じようなこと言った気がしますが、このおどろおどろしくも美しい映像に身を任せる、というのもまたひとつの鑑賞方法なのではないかと、そう思うのです。少なくとも、僕は本作を見てよかったと、心からそう思っています。楽しみ方って、人それぞれだよね、という話です。(言い訳ともいう)

 

仕事終わりのレイトショーで見たからか、中盤あたりで少しウトウトしてしまったのですが、後半~終盤にかけては狂気に満ちた映像のオンパレードで、目を離せませんでした。ラスト、オオカミの正体は明らかになりますが、あの家は何だったのか、どうして子ブタを残して住人がいなかったのか、全てはマリアの見た悪夢だったのか…といったところはイマイチ判然としない終わり方とかも、また秀逸だと思いました。

 

おわりに

だいぶ短いですが、これ以上書くこともないので、これにて終わりとさせていただきます。

ずっと見たいと思っていた作品だったのですが、タイミングが合わずになかなか見に行けず、そうこうしてたらよく行く映画館での上映が終わってしまったので、半ば諦めていました。しかし、千葉県の柏へ行った際に、駅前周辺をブラブラ歩いてたらたまたまキネマ旬報シアターという映画館を発見。しかもちょうど本作の上映やってる!という感じで、これも何かの運命と思い、鑑賞してきた次第。映画館の雰囲気もすごく良くて、定期的に行きたいと思いました。

www.kinenote.com

ほかにもまだ上映している映画館は全国各地に結構あるみたいです。かなり人を選ぶと思いますし、おいそれとオススメはしづらい作品ですが、もし興味があればぜひ見ていただきたいです。悪夢を楽しみましょう。

ということで、映画『オオカミの家』の感想でした。

ではまた。

映画『イコライザー THE FINAL』感想(ネタバレ)

映画『イコライザー THE FINAL』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

デンゼル・ワシントン演じる主人公が裏社会で暗躍する悪に制裁を与える、「舐めてたオッサンが実は最強でした」の代表格と言っても過言ではない『イコライザー』シリーズ。

その第3作目、及び最終章となるのが、本作『イコライザー THE FINAL』になります。

本シリーズのカテゴリはヴィジランテ・アクション・スリラーというらしく、シリーズおなじみの、悪い人たちがかわいそうに見えてくるほどに容赦なく皆殺しにされる様を、本作でも楽しむことが出来ます。

 

もくじ

 

これまでのおさらい

過去作見てないとわからないということはないので要らないっちゃ要らないんですが、文字数稼ぎのためにも前作までをおさらいしていこうと思います。

  • イコライザー』2014年
    ホームセンターの従業員、ロバート・マッコールは、優秀な仕事ぶりと気さくな性格で誰からも慕われる存在でした。読書が趣味である彼は、行きつけのダイナーで本を読んでいたところ、テリーと名乗る女性と知り合います。彼女は本名をアリーナといい、幼いながら生活のために娼婦をしていました。
    ある日、アリーナは客とトラブルを起こし、元締めであるロシアン・マフィアの手下であるギャングたちから激しい暴力を受け、意識不明の重体に。それを知ったマッコールは、ギャングのアジトへ赴き、彼らをたった19秒で瞬殺。実はマッコールは元CIAの凄腕エージェントであり、報復のために襲撃してくるマフィアの連中を次々と返り討ちにし、最終的にはマフィアのボス、ウラジミール・プーキシンまでをも殺害。マフィアを根こそぎ壊滅させてしまうのでした。

  • イコライザー2』2018年
    マッコールは、タクシーの運転手として生計を立てながら、裏ではイコライザーとして、助けを求める弱き人々のためにその力を使っていました。
    その頃、マッコールの友人でありCIAエージェントのスーザン・プラマーは、とある殺人事件を捜査していたところを、何らかの陰謀に巻き込まれて殺害されてしまいます。彼女の死に疑念を覚えたマッコールは、スーザンと共に事件を捜査していた、かつての相棒であるデイブ・ヨークと共に犯人を追います。しかし、実はデイブこそが黒幕であり、彼はマッコールがCIAを抜けたあと、悪の“イコライザー”として暗殺稼業をしていたことが判明。
    最後は、マッコールが亡き妻と暮らしていた町でデイブと決戦。マッコールは手下たちもろともデイブを殺害し、かつて暮らしていた家で妻との思い出に浸るのでした。

 

本作概要

そうして、物語は本作へと繋がります。

初めて知ったのですが、本シリーズは80年代にアメリカで放送されていた『ザ・シークレット・ハンター』というTVドラマの劇場版という立ち位置らしいですね。『ミッション:インポッシブル』シリーズと同じようなもんなんですね。知らなんだ。

 

本作ではこれまでのアメリカ・ボストンから舞台を移し、イタリアの小さな町を主な舞台としています。

また、シリーズ初のR15+指定となり、これまで以上にバイオレンス要素の強いアクションになっているのが大きな特徴。対して、ストーリーや作りは割と1作目に近いものになっており、原点回帰を窺わせます。

 

監督は1,2作目と同様、アントワーン・フークア
2001年の『トレーニング デイ』でもデンゼルとタッグを組んでおり、彼にアカデミー主演男優賞をもたらしました。

脚本も1,2作目と同じく、リチャード・ウェンクが執筆。
本シリーズのほかにも、『エクスペンダブルス2』『マグニフィセント・セブン』などの脚本を書いており、来年公開予定のSSU作品『クレイヴン・ザ・ハンター』の脚本も担当しています。

 

主演はおなじみ、デンゼル・ワシントン
数々の話題作に出演し、アカデミー賞をはじめ数多くの賞も受賞している、言わずもがなの名優です。てか、もう70歳近いんですね…。とてもそうは見えない。

主人公のバディ的立ち位置のキャラを演じるのは、ダコタ・ファニング
2001年の『アイ・アム・サム』で、若干7歳ながら各種新人賞を総なめにするほどの高い評価を獲得。その後も実力派女優として、数々の作品に出演しています。

そのほか、詳細は割愛しますが、イタリアが舞台ということでイタリア系の俳優陣が数多く出演しています。

 

予告編


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あらすじ

イタリア、シチリア島

とある農園に、元CIAエージェントのロバート・マッコール(演:デンゼル・ワシントン)はひとりで乗り込んでいました。そこはイタリア系マフィアのアジトであり、構成員たちをひとり残らず殺害して目的の品を奪還したマッコール。しかし、帰ろうとしたところをボスの孫と思しき少年に背後から銃撃され、重傷を負います。

イタリア南部の田舎町で気を失った彼は、憲兵ジオ・ボヌッチ(演:エウジェニオ・マストランドレア)によって町医者のエンゾ・アリシオ(演:レモ・ジローネ)のもとへ運ばれ、治療を受けます。CIAのエマ・コリンズ(演:ダコタ・ファニング)に通報してアジトの調査を任せ、傷の治療に専念するマッコール。その中で町の人々と交流を深め、愛着を深めていきます。

しかし、穏やかな町にも、悪の手が忍び寄ってきます。それは、町を一大リゾート地にするべく強引な地上げをしようとする地元マフィア、クアランタ兄弟とその一味。
そんな彼らに対し、静かに怒りを燃やすマッコール――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

本作ってアクション・スリラーでしたっけ?ホラーの間違いでは…?

と錯覚するくらいに、マッコールさんの惨殺っぷりが凄くて最高でした。なんかもう、『13日の金曜日』とか『ドント・ブリーズ』といった作品の方が近いのでは…。しっかりとしたバイオレンス描写も相まって、悪者たちが不憫にすら思えてきます。

 

まぁそれは半分冗談として、最速かつ最小限の動きで敵を葬っていくアクションの数々は、見事としか言えないです。デンゼルさん、ホントに70歳近いんか…?

日本ではアメリカ版『必殺仕事人』”などと呼ばれているそうですが、個人的に本シリーズはスティーヴン・セガール出演作品に近いものがあると思っていて。勧善懲悪なストーリーとか、無表情で敵をバッタバッタなぎ倒していくところとか、主人公がほぼ無傷のまま圧倒的な強さで勝利するところとか。とかとか。
なので、僕は勝手に本シリーズを“新世代のセガール映画”だと捉えています。つまり大好きということです。そうです、僕セガール大好きなんです。最近はロシア国籍を取得したりしているようでちょっと心配になりますが、まぁお元気でいてくれれば良いです。

 

そんな最強無敵のマッコールさんですが、子供には弱かった。「子供が自分を撃てるわけがない」という驕りがあったのかもしれません。それによって、シリーズ初かもしれないピンチに陥ります。撃たれた直後は「あちゃ~、やっちまった~」みたいなリアクションをしていたので、あれ?意外と大丈夫?防弾チョッキでも着てたのかな?と思いましたが、その後車内で気絶するくらいには重傷だったというね。

悪者を追ってたらイタリアまで来てましたって感じで、恐らく目的を果たしたらすぐにアメリカに帰るつもりだったのでしょうが、思わぬ足止めを食う形に。しかし、それがマッコールにとって今後の人生を左右するきっかけになるとは。

 

本作は、これまで数えきれないほどの人を手にかけてきたマッコールへの“救済”が、大きなのテーマになっています。それは“安住の地”であり、これまで“守る”立場だったマッコールが“守られる”立場になる、ということ。

前作はデイブという、自分と鏡写しとなる存在との対決という、バトルにおいては集大成ともいえるお話でした。それに比べると本作は、バイオレンス度は大幅に上がっているとはいえ前作ほど強い敵も出てきませんし、ストーリーもかなりシンプルにまとまっています。その代わり、本作では町の人々との交流が丁寧に描かれており、妻と暮らした家で孤独に幕を閉じた前作とは対照的です。

突然町にやってきたマッコールを町の人たちは気さくに受け入れ、特に素性を聞こうともしません。それどころか、魚屋の主人はエンゾ先生の知り合いだからと購入した魚の代金を受け取らなかったり、カフェの店員はこの町の料理をもっと知って欲しいと食事に誘ってくれたり、とても良くしてくれます。なんやねんこれ…惚れてまうやろ…!とマッコールさんじゃなくても思いますわ。

 

そんな人々がつらい思いをしようとしている…。そんなの許せるわけがない。
というのが、本作におけるマッコールの戦う動機になるわけです。

これまでも弱き人々を守るためにその力を行使してきたマッコールですが、今回はこれまで以上に個人的な感情によるところが大きいような気がします。そのせいか、敵に対する容赦のなさもシリーズ随一だったような。前までは悪者のターゲットを自分に向けて、殺そうと襲ってきたところを返り討ちにするようなスタイルだったのに対し、本作では襲われる前に自分から殺しに行ってますし。
「手下呼んで来い!ぶっ殺してやる!」→その直後に皆殺し
「明日だ!明日ヤツを殺す!」→その日の夜に皆殺し
といった感じ。まぁ、清々しさすら感じて最高でしたけどね。「犬のように殺してやる」と言っていた人が、最期は犬のように這いつくばって絶命させられるのとか、何とも皮肉が利いていて爽快でした。

 

悪党がじきに攻めてくるというときに礼拝みたいなことやっていたり、脅威が去った直後には町を挙げてサッカーチームの応援してたり、ちょっと町の人たちのんきすぎない?とちょっと思いましたが、些細なもんです。

これからもマッコールさんは、時折エマに応援を頼まれてこっそり協力したりしながらも、あの町で幸せに暮らしていくのでしょう。それが何よりです。

 

おわりに

感想は以上になります。

まだ続けられそうな終わり方でしたが、監督はこれで最後と明言しているようですし、おそらくもう続きはないのでしょう。ロバート・マッコール最後の勇姿を、ぜひ多くの方に見届けていただきたいです。

ということで、映画『イコライザー THE FINAL』の感想でした。

ではまた。

映画『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』感想(ネタバレ)

映画『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ(TMNT)』は、1984年にミラージュ・スタジオより出版されたアメリカンコミック(アメコミ)。

突然変異によって人間のような体と知能を手に入れたカメたちが悪者たちと戦いを繰り広げる、SFアクション作品となっています。

 

元々は、マーベルコミックの『ニュー・ミュータンツ』と『デアデビル』のパロディだったらしいですね。知りませんでした。1回限りのパロディ企画のつもりが予想外にヒットしたため、シリーズ化されることになったんだとか。そして現在は、アニメ化、ゲーム化、実写映画化と、幅広く展開される大人気シリーズとなっています。元々はウルトラマンのパロディだったキン肉マンが、今やすっかり市民権を得ているのと似たようなもんでしょうか。

 

僕はといえば、小学生の頃に友達が持っていたスーファミのゲームをよくやっていて、その頃から漠然と好きになった感じです。「シューレッテッテーニンジャタートルズ(伝われ)」みたいな主題歌をいとことよく歌ってたっけ。

↓確かコレ。ファイナルファイトみたいで楽しかった思い出。

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1987年にはTVアニメ化もされ、日本では1991年から放送されていたそうです。各キャラの鉢巻き(目隠し?)が色分けされたのはこのアニメが初めてで、それが定着して今に至っている模様。僕は見た記憶ないです…すみません。

2003年にも再度アニメ化され、日本では2007年に放送されていますが、こちらも見た記憶ないなぁ。

2012年に3度目のアニメ化がされ、日本では2014年にTV放送されました。これは僕も結構楽しく見ていた記憶があります。でもどういう最後だったのか覚えてないな…と思ったら全部で120話以上あるうち、日本では最初の26話までしか放送されなかったようですね。おま国やめて!

2018年には『ライズ・オブ・ミュータント・タートルズ』というアニメが製作され、それの劇場版がNetflixで配信中だそうで。予告編見た感じかなり面白そうなので、いずれ見たい。

 

実写映画に関しては、1990年~1993年に3部作が公開され、大ヒットを記録しました。はるか昔にTVでやってたようなやってなかったような…くらいの認識。

2014年には、実写版『トランスフォーマー』などで知られるマイケル・ベイ製作でリブート版『ミュータント・タートルズ』が公開。2016年には続編となる『ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>』が公開されました。タートルズがフルGCになっていてかなりリアルでキモイ(笑)けど、ベイ作品らしいド派手なアクション満載で、僕も大好きな映画です。どうでもいいですが、邦題は『ニンジャ』がついたりつかなかったりなのなんとかしてほしい。統一しろや。

 

もくじ

 

概要

前置きが長くなりましたが、本作について。
現代のニューヨークを舞台とし、これまでのシリーズとは異なる新たな世界観が構築されています。

特徴は何といっても、グラフィティアートがそのまま動いているようなアニメーションスタイル。『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』でもアメコミがそのままアニメになったような映像に驚きましたが、本作もそれに比肩する見応え抜群の映像美が楽しめます。また、忍者繋がりなのか、ところどころ日本のポップカルチャーが登場するのも大きな特徴となっています。

 

監督を務めるのは、ジェフ・ロウ
2021年のアニメ映画『ミッチェル家とマシンの反乱』で共同脚本・共同監督を務め、アカデミー賞にノミネートされるなど高い評価を獲得しました。単独で監督を務めるのは本作が初のようです。

脚本はジェフのほか、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』でドンキーコングの声を務めた俳優のセス・ローゲン(彼は本作でも声優として参加しているほか、プロデューサーも務めています)、『名探偵ピカチュウ』の共同脚本などで知られるダン・ヘルナンデス&ベンジー・サミットらが執筆しています。

声優陣は、メインキャストにはキャラと同様10代の俳優が起用されています。
そのほか、世界的ラッパーであるアイス・キューブ、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』やそのスピンオフ『ピースメイカ』でメインキャストを務めるジョン・シナMCU映画『アントマン』で主演を務めるポール・ラッド、そして香港映画界のレジェンド、ジャッキー・チェンといった、豪華キャストが出演しています。

僕は字幕版で見たので、日本語吹き替え版のキャストについては割愛。

 

予告編


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あらすじ

アメリカ、ニューヨーク。

15年前、不思議な液体に触れた4匹のカメはミュータントとなり、同じくミュータント化したネズミのスプリンター(声:ジャッキー・チェン)に育てられます。彼は過去の経験から人間を「恐ろしい存在」と認識しており、そんな人間たちから身を守るすべとして、タートルズに忍術を叩きこみました。

しかしそんな父の思いとは裏腹に、タートルズは人間の暮らしに憧れを抱いており、人間に自分たちを受け入れてもらいたいと思っていました。人間のエイプリル・オニール(声:アヨ・エデビリ)に「悪い奴らをやっつけて街のヒーローになればみんなも認めてくれるはず」と持ち掛けられ、世間を騒がせている連続強盗犯を捕まえようと行動を開始します。

ですが、その犯人グループの正体も、タートルズと同じミュータントで――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

本作の日本での認知度はイマイチな気がしますが、このまま埋もれてしまうにはあまりにも惜しい、非常に楽しい作品でした。

 

独創的な映像

まずなんといっても、特徴的な映像は圧巻の一言。

あえて輪郭を歪ませていたり、雑に塗ったような質感にしてみたりと、イラストがそのままアニメになったような映像はとにかく見応えが抜群でした。日本のアニメでこういうの全然見ないのは、やはり普通に作るよりはるかに手間暇がかかるからなんでしょうかね。それとも単に、日本でのアニメのトレンドが新海作品のような「美麗な作画と色鮮やかな色彩」といったものだからでしょうか。ジャパニメーションでもこういうの見てみたいなぁ。

 

見ていて楽しいキャラクターたち

個性豊かなキャラクター達も、本作の大きな魅力のひとつ。

タートルズの面々は、パーソナルカラーや得意武器の違いといったシリーズおなじみの要素だけでなく、ラファが鉢巻きからバンダナスタイルになっていたり、ドニーがメガネをかけていたりと、さらに個性が追加されていました。これいつからでしたっけ。『ライズ・オブ~』からっぽい?とにかくすごくいいと思いました。赤ちゃんの頃のタートルズはとにかく可愛くて、みんなでお風呂入ってるシーンとか、頬が緩みっぱなしでした。

それから、ひとり1台スマホを持っていたり、しっかり現代的にアップデートされているのも好印象でした。あと、マイキーが『進撃の巨人』の大ファンだったり、高校の掲示板だったかに『僕のヒーローアカデミア』のデクっぽいキャラが描かれていたり、そこかしこに現代日本サブカルチャーが出てきて、日本人として嬉しい限り。クライマックスでも、「巨大な奴の弱点は首の後ろの付け根と相場は決まってる!」みたいな展開があって笑いました。

 

タートルズにとって父であり師匠でもあるスプリンターも、結構第一線で活躍していてすごく良かったです。忍術を映画やyoutubeなどで学んでいたりと、こちらも現代的になっていました。ジャッキーが声優やってるからって、見てる映画もジャッキー映画中心だったのには爆笑しました。忍者どころか日本でもないというね。アメリカでの“忍術”の定義って何なんですかねw

子供たち(タートルズ)が何考えてるかわからず思い悩むといった、思春期の子供がいる方々が首ちぎれるほど頷くであろう悩みとかもすごく良かったです。そこまでシリーズ見てるわけではないですが、スプリンターの親としての目線ってこれまであまり見たことなかったので、すごく新鮮でした。

 

成り行きで助けられたことでタートルズの友人となるエイプリルも、これまでとはまた違ったキャラクターになっていて、非常に魅力的でした。2014年のリブート実写版ではミーガン・フォックスが演じていて、なんというかセックスシンボルみたいなキャラになっていましたが、本作では割とどこにでもいるようなルックスになっていました。いろいろ配慮してるんだろうかとか考えさせられますが、これも現代的にアップデートされているということでしょう。カメラの前に立つと緊張で吐いてしまう、というのもリアルでいいと思いました…が、吐く量が尋常じゃなくてビビりました(笑)

 

誰が見ても楽しめるストーリー

ストーリーに関しては、良く言えば王道、悪く言えば捻りがない、割とストレートなもの。ですが、これでいい、いやこれがいい、のです。タートルズの楽しい掛け合いに笑い、カッコいいアクションに興奮し、ピンチにハラハラし、ラストで感動する、老若男女みんなが楽しめるお話になっていると思います。

 

ちょっとだけメンドクサイところに言及すると、本作、というかタートルズというシリーズに共通して、「普通とは違った者は、虐げられたり社会から爪弾きにされたりする」といった、現代社会に確かに根付く問題をテーマにしているような気がします。人種とか宗教とか、そういった問題にも通ずる話ですね。そして、それを受けて「そんな自分たちでも人並みに生きれるように奮闘する」のか、「自分たち以外の存在を排除しようとする」のか、本作ではその思想のぶつかりを描いているのが特徴のように思いました。

ミュータントたちだけでなく人間側でもそれは描かれていて、冒頭でミュータジェン(本作では“ウ~ズ”と呼ばれてました)を開発した化学者は、「誰も自分を受け入れてくれないのなら、受け入れてくれる家族を自分で作る」のを目的としてウ~ズを開発し、最期は孤独に爆死していました。対して、学校で盛大に撒き散らかして疎まれていたエイプリルは、クライマックスで吐き気をグッと堪えて(ちょっと出てたけどw)タートルズのためにカメラの前で真実を報道し、称賛されました。こうした、現代社会で弱い立場に追いやられている人たちにスポットを当てているというのは、胸を打たれる人も多いのではないかと思います。少なくとも僕にはすごく響きました。

 

ラスト、そーいやシリーズを象徴するあの宿敵が出てきてないな…と思っていたら、ポストクレジットで後ろ姿がチラッと映って映画は幕を閉じます。ありがちな続編匂わせですが、期待してもいいんだよね…?いや絶対に作って欲しい。

 

おわりに

感想はこんな感じです。

本国アメリカでは大ヒットしているらしいですが、日本ではどうなんでしょうか。本当に素晴らしい作品だと思うので、ぜひ多くの方々に見ていただきたいです。

ということで、映画『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』の感想でした。

ではまた。カワバンガ

映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』感想(ネタバレ)

映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

https://johnwick.jp/ より

アクション映画好きは全員好きと言っても過言ではない『ジョン・ウィック』シリーズ。もちろん僕も大好きなシリーズです。
その最新作が、本作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』になります。

主人公が自由を追い求めて激しすぎる戦いに身を投じる、アクション・スリラー作品となっています。

 

もくじ

 

これまでのおさらい

本シリーズは地続きになっていますので、簡単に前3作をおさらいしていこうと思います。

  • ジョン・ウィック』2014年
    最愛の妻と平穏な暮らしを送っていたジョン・ウィック。病で妻を亡くし、悲しみに暮れていましたが、彼女が遺した一匹の子犬によって心の平穏を取り戻しかけていました。そんな中、ジョンの愛車を狙って強盗が自宅へ侵入し、その際に子犬が殺害されたことで、復讐の炎に火がつきます。
    犯人は、ロシアンマフィア“タラソフファミリー”のボスの息子、ヨセフ・タラソフとその一味。ジョンはかつて裏社会でその名を知らぬ者はいないほどの超一流の殺し屋であり、その常人離れした戦闘力でもって、ファミリーもろともヨセフを殺害。復讐を果たしたジョンは、動物病院で殺処分寸前だった一匹の犬を連れ、帰路へと就くのでした。

  • ジョン・ウィック:チャプター2』2017年
    再び裏社会から身を引こうとするジョンでしたが、彼に貸しがあるというイタリア系犯罪組織“カモッラ”の幹部、サンティーノ・ダントニオが現れ、殺しの依頼をしてきます。一度は断るジョンでしたが、自宅を爆破されたことで拒否権は無いと悟り、渋々ながらも依頼を完遂。
    しかし、ジョンを生きて帰す気の無いサンティーノは彼に懸賞金をかけ、金目当ての殺し屋たちにジョンを殺させるよう仕向けてきます。ジョンは殺し屋たちを次々と返り討ちにしながら、最終的に「ホテル内での殺人はご法度」という掟を破り、コンチネンタル・ホテル・ニューヨークにてサンティーノを殺害。その結果、ジョンは主席連合(殺し屋の寄り合いのようなもの)から追放され、更に連合の出した暗殺指令によって、世界中の殺し屋から命を狙われることになってしまうのでした。

  • ジョン・ウィック:パラベラム』2019年
    世界中の殺し屋たちを返り討ちにしながら、暗殺指令を撤回してもらおうと、連合の首長の居場所を探すジョン。首長と会うことに成功したジョンは、連合に忠誠を誓うことで指令を撤回してもらいます。
    首長はジョンに、コンチネンタル・ホテル・ニューヨークの支配人、ウィンストン・スコットの殺害を命じます。ウィンストンは、サンティーノの殺害を止められなかったことや、ジョンの逃走を手助けしたことの責任を追及され、ホテルの退去を命じられていました。しかしウィンストンはそれを拒否し、ジョンも彼の殺害を拒否したため、ホテルの聖域指定が解除され、主席連合が派遣した部隊とホテルの従業員たちとの間で抗争が勃発します。最後はホテル側が勝利するも、連合への忠誠の証としてウィンストンはジョンを銃撃。どうにか生きていたジョンは、自身の自由を勝ち取るため、連合への復讐を決意するのでした。

 

本作概要

そんな感じで、物語は本作へと繋がります。
始めは「舐めてたオッサンが実は最強の殺し屋でした」系の作品だったものの、シリーズを重ねるごとにどんどんスケールがアップしていき、本作では世界の裏で暗躍している組織そのものとの戦いになっています。シリーズを象徴する凄まじいアクションは本作でも健在。アメリカ・ニューヨーク、フランス・パリ、そして日本・大阪を舞台に、ド派手なバトルがノンストップで展開される、アクション超大作となっています。

 

監督はシリーズ全作、チャド・スタエルスキが務めています。
マトリックス』にてキアヌのスタントを務め、『ジョン・ウィック』1作目で監督デビューするなど、キアヌと縁の深い人物です。日本のアクション映画にも強い影響を受けているとかいないとか。

主演は、世界を代表する俳優、キアヌ・リーヴス
1994年公開の『スピード』の大ヒットで一躍スターとなり、1999年の『マトリックス』でその地位は不動のものとなりました。2014年の『ファイティング・タイガー』では出演のほか、監督も務めています。ロックバントのベーシストの顔も持っているなど、活躍は多岐に渡ります。大の親日家としても知られ、中でも千葉真一は「彼の映画と共に育った」と言うほどの熱狂的なファン。2015年に来日した際にはサプライズで千葉との対面を果たし、終始子供のように大はしゃぎしていたんだとか。数々の“聖人”エピソードがネットにアップされているほどの人格者でもあり、世界中で彼を嫌いな人はいないほどの大スターです。

そのほか、シリーズお馴染みのイアン・マクシェーン、2作目で『マトリックス』シリーズ以来のキアヌとの共演を果たしたローレンス・フィッシュバーンらや、新キャストとして『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』のペニーワイズ役などで知られるビル・スカルスガルド、香港映画界の大スタードニー・イェン、そして日本からは我らの真田広之らが出演しています。

 

なお、本作は上映時間が169分と3時間近いボリュームになっているので、事前にお手洗いを済ませておくことをおススメします。

 

予告編


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あらすじ

主席連合への復讐に燃えるジョン・ウィック(演:キアヌ・リーヴス)。
彼は地下犯罪組織の王、バワリー・キング(演:ローレンス・フィッシュバーン)に匿われ、その時を待っていました。

まずは連合の首長のもとへ向かい、殺害。しかし、すぐにその座はヴィンセント・デ・グラモン侯爵(演:ビル・スカルスガルド)へ引き継がれます。
続いてジョンは、コンチネンタル・ホテル・大阪のオーナーを務める旧友、シマヅ・コウジ(演:真田広之)のもとを訪れます。それを知ったグラモンは、ホテルの聖域指定を解除し、部下と部隊を派遣。その中には、ジョンの友人であり引退したはずの盲目の暗殺者、ケイン(演:ドニー・イェン)の姿もありました。更に、懸賞金目当てのミスター・ノーバディ(演:シャミア・アンダーソン)も、虎視眈々とジョンの命を狙っています。

果たしてジョンは彼らに“コンセクエンス=報い”を受けさせ、自由を手にすることが出来るのか――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

いやー、大大大満足の映画でした。
極上の料理(アクション)が途切れることなく次々と供給されてくるので、もうお腹はパンパンです(笑)

僕はIMAXでの鑑賞でしたが、開幕早々のジョンの正拳突きの音が体にビリビリ響いてくるくらい凄くて、ビクッとなってしまいました。あれはぜひ映画館の音響で堪能して欲しいところ。

 

その後はもう、超絶怒涛のアクションの応酬。冗談抜きにずーっと銃声が鳴り響いていました。

新作が公開されるたびに「シリーズ最高のアクションだこりゃ!」ってなるのですが、今回もまた最高を更新したんじゃないでしょうか。砂漠、ホテル内、廃墟、階段、etc…といったロケーションもさることながら、見降ろし視点で長回し風に撮っていたりと、見せ方も様々な工夫が凝らされていて、大変見応えがありました。

 

本シリーズの素晴らしいところは、現実と同じようで結構違う、独特の世界観にあると思っていて。
主席連合=殺し屋たちが世界的に相当強い力を持っている(なので尋常じゃないくらい殺し屋がたくさんいる)といったところに始まり、目の前で人が銃殺されても大して驚かない市井の人々とか、ホテルでの掟とか、謎の金貨システムとか、誓約とか、とかとか。

中でも僕がとりわけ素晴らしいと思っているのが、謎技術で作られた超性能の防弾スーツ。アレのおかげで、「主人公だけなぜか被弾しない」という、映画などでありがちな矛盾を解消していて、絶妙なリアリティを演出しているんですよね。本作でも、ジョンがジャケット脱いだら被弾した弾がチリンチリーンって大量に落ちてくるシーンがあって、めっちゃくらってるwってなりました。あれだけ撃たれてたらそりゃ当たりまくってないとおかしいよな、と。

もちろん敵側にもそれは適用されていて、何発撃ち込んでも全然倒れないから、鎧の接合部(首元など)や頭を狙わなきゃならない。でも離れてると袖で隠したりしてなかなか当たらない。なので接近して寝技極めたりして動けなくした状態で頭を打ち抜く。という本シリーズ特有のアクションシークエンスに説得力を持たせていて、マジですごい発明だなーと。大きな男の子が全員好きな映画『リベリオン』のガン=カタを更に一歩推し進めたような感じ、と言いますか。『リベリオン』も「あまり知名度高くないけどオススメの映画ある?」と聞かれたら恐らく真っ先に答えるであろうというくらいに大好きな作品なので、まー本作も好きにならないわけはないですわな。あとジョンが敵を倒した後に毎回わざわざ頭を撃ち抜いてしっかりとどめを刺すところとかも、律儀で大変良き。

 

それから新キャスト、特にドニー・イェン兄貴と我らの真田のお2人は、やはり最高の極みでした。

大阪のシーンで最初に道頓堀の風景が出てきたときは「おぉっ!ちゃんと日本だ!」と思ったものの、その後はネオンがギラギラしている相変わらずのコレジャナイジャパンっぷりで、悔しいけど笑ってしまいました。『G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ』の記事でも書いている通りあーゆーの大好きなんですが、最近はいい加減日本のイメージをアップデートしてくれないもんか、とも思ってしまうジレンマ。ボディーガードが力士ってどういうこっちゃねん、とかね。なんで今この時代に弓矢と刀やねん、とかね。いつまで「Oh!ニンジャ!サムライ!」の時代やねん、とかね。

…まぁでもね、我らの真田が出てきたら、そこはもう大阪や。屋上にデカデカと「初志貫徹」って書かれたネオンがある場所なんて日本のどこにも存在しないけど(多分)、真田がおったらそこはもう大阪なんや。

…えーと、つまり、真田のカッコ良さの前では「そこが日本かどうか」なんてどうでもよくなる、ということです。佇まいからしてもう最高過ぎるのに、アクションはキレッキレというのがもうね、鼻血が出るほどカッコいい。本作で退場してしまうには何とももったいない。あと真田演じるシマヅの娘、アキラ(演:リナ・サワヤマ)もいい味出してましたね。演じる俳優さんは新潟出身の日本人で、現在はロンドンを拠点にシンガーソングライターとして活動しているんだそうです。アクションも相当頑張ってました。着物脱いでカッチョいいバトルスーツ姿になったと思ったら、意外と防弾性能は高くなくて一発食らっただけでほぼ戦闘不能になっちゃったのはちょっと残念でしたけど。

 

ドニーの兄貴も、真田に負けず劣らずの最高ぶりでした。盲目キャラって『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』と被ってるやんけ!と最初思いましたが、あちらは真面目な武僧といった感じだったのが、本作ではちょっと砕けた性格で情に厚いキャラになっていて、ちゃんと差別化されていました。

そして何と言っても、兄貴のとてつもないスピードのアクションの数々は本当に凄かったです。常に杖で周りをカンカンしながら空間を把握したり、人が近づくと音が鳴る装置を使って敵の位置を察知したりと、目が見えないというハンデをものともしない凄まじい戦闘力を見せてくれて大興奮でした。シマヅvsケインのアジアンアクションスター対決も実現し、本当に眼福でした。

 

新キャラのミスター・ノーバディも、まだ真の強さを見せていなさそうでワクワクするキャラでした。手帳をパラパラするだけでどうやってジョンを見つけ出したのか、結局よくわからんままでしたけど。コイツも『パラベラム』に登場したソフィアみたいな犬と連携して戦うキャラでしたが、このシリーズ犬好きすぎやろ!とは誰もが思うところ。毎回どこかで犬を活躍させないとダメな契約とかあるんか?犬派の僕は「カワイイィィ!!」と思いながら見てますけども。

 

あと個人的に良かったキャラと言えば、主席連合のメンバーで“天国と地獄”とかいうクラブのオーナーでもある、キーラ(演:スコット・アドキンス)。かなりの肥満体型なのにやたらキレキレのアクションを魅せてくれて驚きました。あのボディであんなに見事な回し蹴り出来るってどゆこと?…と思ったら、演じる俳優さんはスタントマンとしても活動しながら俳優としても数々のアクション映画スターと共演しており、実際はスリム、というかマッチョなお方みたいです。あの体は特殊メイクのようですね。

クラブでのポーカー対決も、5カードとか隠す気さらさらないほど他の人がイカサマしまくりな中、ジョンだけクソ真面目にやって2ペアというのが、キアヌの人柄出すぎ!と思って爆笑しました。

 

アクションの過剰供給に既に胃もたれを起こしかけている後半も見どころのオンパレードで、凱旋門の前を走ってる全ての車が容赦なく人を轢き殺す殺人マシンと化してたり、見応え抜群の階段での銃撃戦からの、階段落ちのシーンはマジで命の危険を感じるほどだったり、最後の一騎打ちはこれまでとは打って変わって静かで幻想的で素晴らしかったり、いい意味で「まだか、まだ終わらんのか!」という気持ちでした。いい意味で、ですよ!

 

終盤、なんだか眠くなってきて何度か意識が飛びそうになりました。確かに本作は結構な長尺ですが、退屈とかは一切感じなかったのになんでだろうと思ったら、同じような境遇の人が結構いたみたいで、「人間が1日に接種可能なアクションを超過したため体が耐えられなくなった」とか言ってて笑いました。それだwww

なんか予告編とかで「決着、始動!」みたいな、終わるのか終わらんのかどっちやねんみたいな言い回しをしていてイラっとしていたんですが、本作の結末は「ここからどうやって続くの…?」的な終わり方だったので、続編あるかはちょっとわからないですね。『バレリーナ(原題)』というスピンオフが来年公開予定らしいですが、正統続編はどうなるのだろう…?てかもし本作で終わりだとしたら、なぜどっちつかずな言い方をしたんだろう…?そっちの方が気になる。

 

おわりに

感想はこんな感じです。
勢い任せにワーッと書いたので、毎度のことながらしっちゃかめっちゃかな文章ですみません。

ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』と同日に見に行って、というかタートルズの方が先に見たんですが、アニメの記事が続いたのであえてこちらを先に書かせていただきました。…うん、どうでもいいですね。こちらも後日感想をアップする予定です。

本作はアクション映画好きであれば必見!というくらいの素晴らしい作品になっていますので、ぜひ多くの方に本作の怒涛のアクションを浴びに行っていただきたいです。

ということで、映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』の感想でした。

ではまた。

映画『PERFECT BLUE』(4Kリマスター版)感想(ネタバレ)

映画『PERFECT BLUE』(4Kリマスター版)の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

PERFECT BLUE』は、1997年に公開された日本のアニメ映画。

1991年に刊行された竹内義和著の『パーフェクト・ブルー 完全変態』という小説が原案となっている、サイコホラー作品となっています。当時としてはまだ新しいジャンルだったサイコホラーをいち早く取り入れ、日本のみならず世界各国で高い評価を獲得しました。

どうやら、原案となった小説と映画はかなり内容が異なるらしいですね。僕は読んでないですが、小説はもっとストレートなスプラッターホラーらしいです。
それと、同じ作者の書いた小説を原作にした『Perfect Blue 夢なら醒めて』とかいう似たような名前の実写映画もあるらしいですが、それはまた全然別物なのだとか。
また、『ブレイブ・ストーリー』や『ソロモンの偽証』などで知られる宮部みゆき氏も『パーフェクト・ブルー』という小説でデビューしており、ドラマ化などもされているらしいですが、こちらはミステリーものだそうです。

 

そんな本作。

25年前の割と古い映画ですが、今年8月にマッドハウス50周年記念の上映イベントにて4Kリマスター版が上映されたのを皮切りに、期間限定で劇場上映されることとなりました。僕はずいぶん昔にDVDレンタルして鑑賞していましたが、思い出すたびに身震いするほど大好きな作品だったので、このチャンスを逃す手はないと思い、映画館へ足を運んだ次第。

というか、上映イベント行きたかったな…。情弱なのでイベントの存在を知らなかった…。

 

もくじ

 

概要

監督は、今は亡き奇才、今敏(こん さとし)。
元々『AKIRA』などで知られる大友克洋氏のアシスタントをしながら漫画家として活動をしており、大友さんが手掛ける『老人Z』や『MEMORIES』といった作品でアニメ業界に参入。その後、『機動警察パトレイバー2 the Movie』やOVA版『ジョジョの奇妙な冒険』などで実績を積み、本作で映画監督デビュー。ほかにも、『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』などの作品を世に送り出しました。しかし2010年に、膵臓癌により46歳という若さでその生涯を終えます。今も存命であれば、間違いなく日本、いや世界を代表するアニメ作家になっていたことでしょう。本当に、本当に惜しい才能を亡くしたものです。

脚本は、『キノの旅』や『夏目友人帳』などの脚本も執筆している、村井さだゆき

アニメ制作は上で触れている通り、現在も第一線を走り続ける老舗制作スタジオ、マッドハウス
古くは劇場版『エースをねらえ!』から、最近では映画『金の国 水の国』やTVアニメ『葬送のフリーレン』など、話題作を数多く手掛けています。

声優陣は、『カードキャプターさくら』の大道寺知世役や『新世紀エヴァンゲリオン』の委員長こと洞木ヒカリ役などで知られる岩男潤子や、『ポケットモンスター』のサトシ役でおなじみの松本梨香らが出演しています。

 

予告編


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あらすじ

アイドルグループCHAM(チャム)の元メンバー、霧越未麻(声:岩男潤子)。
グループを脱退し、アイドルから女優への転身を計る彼女は、レイプシーンの撮影やヘアヌード写真集のオファーなど、アイドル時代からは考えられないような仕事にも懸命に向き合い、少しずつ結果を残していきます。

しかし、本当にこれで良かったのかといった迷いや、つきまとってくるストーカーへの精神的苦痛などから、何が現実で何が現実でないのかがわからなくなり、自身の幻影を見るなど精神が不安定になっていくのでした。

そんな中、彼女が出演したドラマの脚本家など、未麻に関わりのある人物が次々と殺害される事件が発生し――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

社会人になって間もなくくらいだったかな。TSUTAYAを適当にブラブラして気になった映画をレンタルして見るのにハマっていた時期がありまして。その中で、たまたま目に留まって借りたのが、大友さんが製作総指揮・総監督を務めたオムニバス映画、『MEMORIES』だったんです。大友さん原作の3つの漫画をオムニバス形式でアニメ化したもので、巷で「作画がすごい!」とよく言われるのが『Episode.2 最臭兵器』というお話なのですが、僕が一番琴線に触れたのは『Episode.1 彼女の想いで』というお話でして。なにがどう良いのかを言葉にするのは難しいのですが、とにかくすごく感動してしまったんです。秀逸な脚本とか、幻想的な世界観とか、タイトルに隠された伏線とか、そういったところが悉くツボにはまったんだと思います。

で、それの脚本・美術設定・レイアウトを担当したのが今さんだと知り、この人の手掛けた作品を見てみたい!となって後日『PERFECT BLUE』をレンタルしたが最後、もう完全にドハマり。ほかの今監督作も一気にレンタルして、そのどれもがまー素晴らしいのなんの。『東京ゴッドファーザーズ』とか、クリスマス・ムービーとしては『ホーム・アローン』を超えるくらいに好きかもしれない。金ローはクリスマスシーズンは毎年コレを放送すべし。午後ローでもいい。TVアニメ『妄想代理人』だけ近所のTSUTAYAに置いてなくて未だ未視聴なので、いずれ見なくては。

 

とまぁそんな感じで、今敏作品は大好きなんですけど映画館で見たことはなかったので、4Kリマスター版が上映されるこの機会に見てきたわけなんですけども。夜勤明けの疲れがピークの状態での鑑賞となり、見る直前まで体調最悪の状態でした(チャンスがこの日しか無くて…)。なので、上映途中でも本当にヤバい時には躊躇せずに退席しようと覚悟して臨んだんです。でも不思議なもので、見終わった後はすごい体調がよくなってました。鑑賞中は自分の体調とかすっかり忘れて、映画に没頭していたおかげかもしれません。多少の体調不良は面白い映画を見れば吹っ飛ぶという、新たな知見を得ました(笑)

それと、劇場はギッチギチの満席でした。どうやら都内の劇場は軒並み同じような状況のようです。ほかの新作映画の空き状況を見るとそこまで混んでいるわけではなかったのに、本作だけ異様に混んでいて驚きました。普段は人口密度が高いの嫌なタイプの人間(ド陰キャ)なのですが、今回ばかりは僕以外にも今敏作品が好きな人いっぱいいるんだなぁと、なんだか嬉しくなったり。元々本作のファンの人が未見の友達を連れてきているのも散見されて、鑑賞後に劇場を出る時に「うわー、マジ面白かったわ。(連れてきてくれて)ほんとありがとう」みたいなことを話している人もいて、これまた嬉しくなりました。
…えぇ、もちろん僕はぼっちでの鑑賞でしたとも(泣)

 

作品自体の感想としましては、はっきり言って本作はかなり怖い映画だと思います。

それも、いわゆる“ジャンプスケア”と呼ばれる、いきなり目の前に大きな音と共に恐ろしい映像が映し出されるような、ビックリさせることで恐怖を表現する類のものではなくて、人間の狂気的な部分を描いていたり、現実と虚構の境目がどんどん曖昧になっていったりといった、不安がジワジワとずっと続くタイプの作品です。『ファイト・クラブ』とか割と近いかもしれない。小心者の僕はジャンプスケアは苦手ですが、本作みたいなホラーよりもスリラー寄りなのは割と好きなタイプです。こういった映画がアニメ作品で、しかも「インターネット?なぁにそれ?」みたいなセリフが出てくるような時代に生み出されたというのは、本当に驚くばかり。

 

それから、本作は意図的に「わけわからなく」作られているような気がして。それによって、「何が本当で、何が嘘なのかわからない」という主人公の精神状態を追体験できるようになっているのがすごいなぁと。「10分程度しか記憶を維持出来ない」という主人公の状態を追体験出来る『メメント』とかと似たような感覚を味わえる、といいますか。(『メメント』、本当に大好きな映画なので恐らく今後も定期的に布教していくと思いますが悪しからず)

で、あの時やこの時の出来事が現実なのか虚構なのか、明確な種明かしは劇中でされないんですよね。ドラマの中の出来事なのか、現実に起こったことなのかあやふやなところも多いですし、カメラマンの人を殺害したのが誰なのかとかちゃんと説明されないままだったりしますし。

ですが、その「わからないまま」というのがまた独特な余韻を残していて良いんですよ。例えば『13日の金曜日』のジェイソンのような、犯人側に主眼を置いている作品ではなく、本作は「犯人にターゲットにされた主人公の精神がいかに壊れていくか」に重きを置いていて、それが「現実と虚構を曖昧にする」という演出によって表現されているので、非常に理にかなっているといいますか。ラストの未麻のセリフがどういう意味なのかを考えさせられるのにも一役買っているようにも思えて、なんともたまらんのです。最終的に黒幕もちゃんと明らかになりますし、語られないけど見てれば大体わかるように出来ているので、消化不良感は感じないかと思います。

『パプリカ』も、夢の世界が現実に浸食してくるようなお話なので、監督はこういうの好きなのかもしれないですね。

 

おわりに

こんなもんにしときます。

僕の中で下火になっていた“今敏ブーム”がまた再燃してきてヤバイ。とりあえず、今監督作品で唯一見れていない『妄想代理人』がHuluで見れるらしく、Disney+とのセットプランで加入しようか迷っていたところだったので、加入して見ようと思います。本作もHuluなどで見れますので、気になった方はぜひ見てみてください。

ということで、映画『PERFECT BLUE』(4Kリマスター版)の感想でした。

ではまた。

映画『SAND LAND』感想(ネタバレ)

映画『SAND LAND』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

SAND LAND』は、2000年に週刊少年ジャンプにて連載されていた、アクション・アドベンチャー漫画。

作者は『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』等でおなじみの、鳥山明氏。

 

ドラゴンボール』連載時の鳥山さんはあまりにも多忙を極めていたため、連載終了後は長期での連載をやめ、単行本1巻で収まるくらいの短期での連載を中心にやるようになったそうです。『SAND LAND』のほか、『COWA!』『カジカ』『銀河パトロール ジャコ』といった作品が短期集中連載されました。カジカとジャコは読んだ記憶ありますが、COWA!はまだ読んだことない…いずれ読もう。

『SAND LAND』は「老人と戦車が描きたい」という鳥山さんの希望で始まったそうですが、天下の週刊少年ジャンプでこんなニッチな企画が通るのはこの人くらいのもんでしょうね…。とはいえ、完成度の高いストーリーなどは当時から高く評価され、数か国で翻訳版が発行されるなど、人気を博しました。鳥山さん自身も、お気に入りの作品のひとつなんだとか。

 

もくじ

 

概要

そんな『SAND LAND』ですが、連載終了から20年以上経った今になって、どういうわけか映画化されることとなりました。2022年末より「SAND LAND Project」なるものも始動しており、ゲーム化企画も進行中らしいです。なぜ今このタイミングで猛プッシュしてるんでしょうね…?

映画の方は、ガンダムシリーズでおなじみのサンライズと、アニメ『ポプテピピック』や『スター・ウォーズ:ビジョンズ』の1エピソード『The Duel』などを制作している神風動画、『ラブライブ!』のライブシーンのCGアニメなどを手掛けているANIMAが共同でアニメーション制作に携わっている、3DCGアニメ作品となっています。

 

監督は、神風動画所属の横嶋俊久
2017の中編アニメ映画『COCOLORS(コカラス)』で監督・脚本・コンテ・演出を務め、ファンタジア国際映画祭の最高賞である今敏賞を受賞しています。何を隠そう、僕は今敏作品が狂おしいほどに大好き(笑)なのですが、その話は絶対長くなるので割愛。

脚本は、元芸人という異例の肩書を持つ森ハヤシ
TVドラマや舞台のほか、アニメでは『スペース☆ダンディ』や2022年版の『うる星やつら』などの脚本を務めています。

音楽は、数々の月9ドラマやNHK大河ドラマ、アニメでは『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズや『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズなど、幅広く活躍している菅野祐悟

 

キャスト陣は、『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』のエルメェス役などで知られる田村睦心ジェイソン・ステイサムの吹替を長年務める山路和弘、『ワンピース』のブルック役などで有名なチョー、『名探偵コナン』の目暮警部役でおなじみの茶風林、『機動戦士Zガンダム』のカミーユ・ビダン役など数多くの作品に出演している飛田展男といった、豪華な顔ぶれとなっています。

 

予告編


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あらすじ

天変地異と人類が起こした戦争によって水が枯れ果て、砂漠だらけになってしまった世界。

残された数少ない水源は国王(声:茶風林)によって独占され、法外な価格で取引される水をなかなか買うことの出来ない市民たちは、常に渇きに耐える生活を強いられていました。

辺境の村で保安官をしているラウ(声:山路和弘)は、世界のどこかに「幻の泉」があると考え、腕の立つ魔物たちに加勢を求めます。水は魔物たちにとっても死活問題であり、魔王の息子であるベルゼブブ(声:田村睦心)と、盗みが得意なシーフ(声:チョー)が同行することに。

そうして始まった、泉を探す旅。
その中で、国王軍、ひいてはそれを率いるゼウ大将軍(声:飛田展男)の、水を巡る陰謀が明らかになっていくのでした――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

全体的に、とても良くまとまっているなーと思いました。

映画を見る前に原作を電子で買って、行きの電車で序盤を、帰りの電車で残りを読んだのですが、映画はすごく原作に忠実でありながら、原作で少し駆け足気味、もしくはちょっとあっさりしているように感じた箇所をいい感じに膨らませていたり、盛り上がるシーンはさらに盛り上がるようになっていたりと、エンターテインメントとして更に完成度が上がっているような、そんな風に思いました。

 

特に、中盤の戦車バトルの決着と、ラストの展開が顕著だったかと。

アレ将軍(声:鶴岡聡)との戦車バトルでは、原作ではラウと一騎打ちせずに降参しますが、映画では最後まで戦ったうえで降参します。原作でもそうですが、この戦車バトルのシーンの見応えがものすごくて、全編この戦車バトルでも良かったんじゃないかと思うくらいに良かったです。

ベルゼの人並外れた視力と聴力で敵の位置を把握し、シーフに的確に指示を出して戦車を操り、そして自身は砲身の付け根と履帯を狙い撃ち、敵の戦力だけを確実に奪う。さらに最後は、「相手の砲身は強力だけど通常よりも長いため、ゼロ距離まで近づけばその長さが邪魔をしてこちらに砲身を向けることが出来ない」というところまで読みきり、戦力差をものともせずに完全勝利する。この一連のラウの活躍には、本当に痺れました。

 

ラストは結構大幅に変更されており、原作ではゼウ大将軍が単身で攻めてきますが、映画ではオリジナルの巨大な空母が登場し、クライマックスらしい最高潮の盛り上がりを見せてくれます。虫人間も、原作では1体(1匹?)だけの登場でしたが、映画では何体も出てきて、ピンチをより際立たせていました。そしてそこからの、キレたベルゼの無双のごときド迫力アクションにも一役買っていて、複数出すのは非常にナイス判断だったように思います。虫人間が爆発したあとのベルゼがモロにヤムチャしやがって…」だったのは、パロディですかね?まんまと笑わせていただきました。

最終的にゼウ大将軍を殺さない、というのも原作から大きく変わった部分。ラウの人柄がよく出ていて、ここもすごく良かったと思います。

 

アニメーションに関しては、全てがCGアニメではなく、主要キャラ以外は普通のアニメになっていて、ここは少し残念ポイント。流石に『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』ほどの予算は出せなかったんですかね…。とはいえ、全体的にハイクオリティでしたし、違和感もあまりなかったので、不満というほどのものでもないです。

キャスティングは全員イメージピッタリで、大変素晴らしかったです。

 

おわりに

ちょっと短いですが、こんなもんにしときます。

知名度の低さとタイミングの問題なのか、なんだか「連日劇場はガラガラ!」みたいな声をちょくちょく耳にしますが、非常に完成度の高い、とても面白い作品なので、ぜひ多くの方に見ていただきたいです。

ということで、映画『SAND LAND』の感想でした。

ではまた。