映画『エターナルズ』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。
2022/01/30:ところどころ文章を修正しました。
2023/01/08:目次を付けました。
マーベルコミックを原作とした複数の実写映画を同一の世界観で描くクロスオーバー作品群、それが『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』。
今年からフェーズ4に突入しているMCU。去年はコロナ禍での公開延期もあり停滞していましたが、いざ始まったらまぁー早い早い。映画とドラマあわせて今年だけでも既に、
『ワンダヴィジョン』
『ファルコン&ウィンターソルジャー』
『ロキ』
『ブラック・ウィドウ』
『シャン・チー テン・リングスの伝説』
『ホワット・イフ…?』
が公開されています。
更に、11/24よりDisney+にて『ホークアイ』が、来年1月には劇場にて『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が公開予定となっており、怒濤のMCUラッシュに追い付くのがやっとといった感じ。
もくじ
概要
本作の特徴は、やはり多様性なのかな、と思います。エターナルズのメンバーを演じる俳優陣は、白人、黒人、アジア系などの様々な人種が出演しているだけでなく、耳の聞こえないキャラや同性愛のキャラが出てくるなど、多様性に溢れています。
『ブラックパンサー』では初の黒人系主役のヒーローを、『キャプテン・マーベル』では女性が主役のヒーローを、『シャン・チー』では初めてアジア系人種を主役にするなど、これまでも挑戦的な作品を作ってきたMCUですが、本作はそれら全てを合わせた上に更に踏み込んでいると言いますか、今まで以上にチャレンジ精神を感じられる作品になっていると感じました。
過去作の要素はおしゃべりの中でちょろっと出てくるだけなので、見る前にコレ見といた方がいい、通称“MCUマラソン”も全く必要なし。ヒーロー同士のクロスオーバーを楽しむことは出来ませんが、シリーズとしてでなく単体の作品として楽しめる作品となっております。ただあまりにも繋がりが無さすぎるので、MCU入門編としてはあまりオススメは出来ないかもしれない…。
そんな本作の監督は、『ノマドランド』でアカデミー賞を受賞した、中国出身のクロエ・ジャオ。アカデミー賞を獲っているとはいえ、ドキュメンタリー色の強い作品を撮る人にスーパーヒーロー映画を任せるという、こういったところにもマーベルスタジオのチャレンジ精神を感じます。
観賞後の僕の率直な感想は以下インスタに投稿した通り。
上述の通り本作は非常に多様性に溢れているのですが、それがただ単に時流に乗っているだけではなく、各キャラクターの強みになっているような気がして、すごくいいなぁと思った次第です。
てな訳で、これより感想に参ります。
予告編
あらすじ
宇宙を創造したとされる、セレスティアルズという存在。そして、遥か太古に彼らにより産み出されたエターナルズという不死の種族。紀元前に地球へと派遣されたエターナルズは、ディヴィアンツと呼ばれる宿敵から人類を守り、時に導きながら戦いを繰り広げていました。その過程で、人類は文明を進化させ、繫栄していくこととなります。
長く激しい戦いの末、遂にディヴィアンツを殲滅。その後は散り散りになって人類に紛れてひっそりと暮らしていたのですが…。
現代になってなぜか再びディヴィアンツが出現。理由はともかく、その脅威に立ち向かうために、再度メンバーを召集していくのですが――。
というのがあらすじ。
本編感想
エターナルズのメンバーは10人。全員新規のキャラクターです。そのため、中盤くらいまではメンバー召集という名のキャラ紹介に時間が費やされています。でも、キャラ紹介とストーリーの進行をリンクさせるような作りになっていて、全く飽きることなく見れました。各キャラはソーのように神話に出てくる神様などがモチーフになっているので、元ネタが何か予想しながら見るのも楽しかったです。
各キャラクターについて
各キャラの紹介と思ったことを、簡単に書いていきたいと思います。
- セルシ(演:ジェンマ・チャン)
人類に対して最も愛情を持っているエターナルズのメンバー。モデルはギリシャ神話の魔女キルケ。岩を砂にしたり、何もない荒れ地から水を生成したり、手で触れた生物以外の物質をほかの物質へ変化させる能力を持っている。
この能力、ちょっと『鋼の錬金術師』を連想しました。イカリスと恋仲だったものの、イカリスが突然いなくなってしまったために、現在はデイン・ウィットマン(演:キット・ハリントン)という人間の男性と交際中。遅刻癖があったり、ちょっと天然な一面があったり、性格も人間らしくて可愛らしかったです。
ちなみに演じるジェンマ・チャンは『キャプテン・マーベル』にてミン・エルヴァという役でも出演していたんだとか。全然覚えてない…。 - イカリス(演:リチャード・マッデン)
エターナルズの戦術的リーダー。モデルはギリシャ神話のイカロス。超人的なパワー、目からビーム、飛行能力と、完全にスーパーマンな人。つまりチート級に強い。
でもスーパーマンというよりどちらかというと『ザ・ボーイズ』のホームランダーみたいだな…と思ってたら、終盤の展開がソレっぽくなっちゃったのでちょっとビックリしました。『ザ・ボーイズ』、シーズン3まだかな…。
エターナルズ側からすると終盤の彼は裏切り者ですが、客観的に見ると誰よりも使命に忠実なだけで、一概に悪い奴とも言えないのが切ない。最後に太陽に飛び込んでいくところとか、太陽に近づきすぎて蝋で出来た翼が溶けて墜ちてしまう、というイカロスの神話を反映してるんだなぁ、とか思ってみたり。 - スプライト(演:リア・マクヒュー)
12歳の少女のような容姿をしたエターナルズ。神話に出てくるエルフや妖精、ピーターパンがモデルとの事。自在に幻影を作り出す能力を持つ。
役者さんの演技力のおかげで、「見た目は12歳だけど実際は何千年も生きている」という設定に何の違和感も感じませんでした。回想で、幻影を使って臨場感たっぷりに神話を語るシーン、キンゴに影響を与えるのも納得の素晴らしさでした。成長しない見た目をコンプレックスに感じているところとか、実はイカリスがずっと好きだったけどセルシがいるから我慢してたりとかも、非常に人間味があって良かったです。 - エイジャック(演:サルマ・ハエック)
エターナルズの精神的なリーダー。モデルはギリシャ神話の英雄アイアースや、アステカ神話の風の神ケツァルコアトル。治癒能力を持つ。唯一セレスティアルズと交信することができ、その知恵と指導力をもってメンバーや人類を導いてきた。
人類が現在のような文明を築けたのは、彼女らが人類を導いてきたおかげ、という設定。まさにみんなのお母さん的存在。なので割と早い段階で死んでしまうのには驚きました。でも死んだ後もずっと存在感を放っているのがすごい。そしてセレスティアルズとの対話と精神的リーダーの役割は、セルシに引き継がれるのでした。 - キンゴ(演:クメイル・ナンジアニ)
インド系の容姿の陽気なエターナルズ。モデルはバビロニア神話のキングやら、日本の金剛(こんごう)やら。原作では二刀流の侍でしたが、本作ではボリウッドスターにアレンジされていました。「BTSが出演するのに!」のシーンや、ギルガメッシュの唾液ビールを吹き出すところなど、笑いに事欠かないキャラで楽しかったです。
指からエネルギー光弾を放つ能力を持っており、これは『幽遊白書』が大好きな監督が霊丸(れいがん)をイメージしたんだとか。僕はどちらかというと『HUNTER×HUNTER』のフランクリンみたいだなと思ってしまいました。
あと無限にカメラを生み出せる能力を持っているかのような普通の人間のマネージャー、カルーン(演:ハーリッシュ・パテル)も非常にいい味を出していましたね。地球が滅びるとかそういう話をしているときに「皆さんの幸せを祈っています」みたいなこと言うの、「お前…(泣)」という気持ちになりました。エイジャックやセルシが人類に愛情を抱くのって、こういうところだよなぁ。
- ドルイグ(演:バリー・コーガン)
ちょっと根暗な感じのエターナルズ。モデルはドルイド僧などといわれていますが、詳細は不明。他人の心を操る能力を持っている。
回想シーンで、争いを止めるために心を操った人をぞろぞろ引き連れて去っていくところ、教徒を引き連れて歩くイエス・キリストやブッダみたいだなと思いましたが、意識してるのでしょうかね。冷徹なようで実は人類に対して深い愛情を持っているところとか、マッカリとの若者っぽいじゃれ合いとか、見ていくごとに好感度が上がっていくキャラでした。 - セナ(演:アンジェリーナ・ジョリー)
自在に武器を作り出して使いこなす能力を持ち、非常に高い戦闘力を持つエターナルズ。モデルはローマ神話の女神ミネルヴァ。
アラサー以降の人にはギリシャ神話のアテナといった方がわかりやすいかと思います(聖闘士星矢とか、KOFとか)。見た目も一番神々しい感じでした。演じるのが強い女性の代表格というべきアンジーなので、ちゃんと強いキャラに設定しつつ、精神面が不安定で本来の強さが発揮出来ない設定にしてパワーバランスを取ってるのが上手いなーと思いました。そして「暴走したときに止められるのは俺しかいない」ということで一緒にいることになったギルガメッシュとの、愛情のような友情のような関係性もとても良かったです。 - ギルガメッシュ(演:ドン・リー)
「気は優しくて力持ち」を具現化したようなエターナルズメンバー。シュメール神話の古代メソポタミアの王、ギルガメッシュがモデル。ソシャゲとかやってる人は良くご存じなんじゃないですかね知らんけど。外骨格を生成する能力を持ち、その防御力とそこから繰り出される超パワーのパンチで、トップクラスの強さを誇る。
演じるのはドン・リーこと韓国の大スター、マ・ドンソク。温厚な性格で料理も上手という、みんなのお父さん的なキャラ。スプライトをからかった仕返しに赤ちゃんの服に変えられるとことか、劇場内に爆笑が巻き起こるほど面白かったです。 - ファストス(演:ブライアン・タイリー・ヘンリー)
大柄な黒人の容姿をしたエターナルズ。モデルはギリシャ神話の鍛冶の神ヘパイストス。発明の能力で、イメージするものは何でも作り出せる。その力で、人類の科学技術の発展を密かに支えてきた。しかし、その結果人類が史上最悪のあの兵器を作り出してしまったため、人類に絶望してしまう。
日米最大のトラウマであるあの大惨事を、アメリカ側がああいった形で描くというのは前代未聞なのではないでしょうか。監督が中国出身だから?
その後、なんだかんだで人類の男性とカップルになり、養子も迎えて睦まじく暮らしていました。キスシーンも出てきたりと、MCU初のゲイのスーパーヒーローとして話題になりましたね。ちなみに家の机はIKEAの秋の新作(そしてイカリスに叩き割られる)。 - マッカリ(演:ローレン・リドレフ)
超スピードで動くことが出来るエターナルズ。あと本読むのもめちゃくちゃ早い。モデルはギリシャ神話の旅と商売の神マーキュリー。
MCU初の聴覚障害を持ったスーパーヒーローで、手話で会話する。でも、そのお陰で超スピードで発生する衝撃波(ソニックブーム)の影響も受けない。戦闘時にはクロックアップからのオラオララッシュのような連続攻撃(パンチではなく体当たりか衝撃波で攻撃している感じだった気がします)を繰り出したりして、めっちゃ派手でカッコよかったです。あと彼女が耳が聞こえないのをみんなが当然のように認識してて、余計な気遣いや遠慮とか一切なく接しているのがすごくいいなぁと思いました。
はい、エターナルズメンバーについてはこんな感じです。
ストーリーについて
中盤以降、この宇宙を創造したとされるセレスティアルズ、アリシェム・ザ・ジャッジ(声:デビッド・ケイ)によって、エターナルズやディヴィアンツの出生の秘密や、セレスティアルズの目的が明かされます。地球を卵に新たなセレスティアルズを誕生させるとか、誕生には大量の生命エネルギーが必要になるので、生命体を増やすために地球の繁栄を促していたとか、スケールがでかすぎてちょっと引きました(笑)
サノスの指パッチンで生命体が半分になったことでセレスティアルズの誕生が遅れたとか、それを自分達の力でひっくり返した人類にエイジャックが可能性を見出したとか、その辺のロジックはほーんなるほどなーと思いました。
最後、大きくなり過ぎたスケールにどうやってオチをつけるのかと思っていましたが、エターナルズみんなで力をセルシに集約して、生まれてくるセレスティアルズの体組織を石?氷?に変えて殺すという最後に。最終的にセレスティアル自身も力を貸す形(=ほぼ自殺?)になりましたが、その理由はよくわからなかった…。地球に愛着を持っていたということなのでしょうか。
その後、地球に平和が訪れ地球に残ったエターナルズも平穏な時を過ごす…と思いきや、「やってくれるやんけお前ら、どうなるかわかっとんのやろな」とばかりに現れたアリシェムに、セルシ達何人かは連れ去られてしまいます。まだわかんないけど、もしセレスティアルズが敵になったらどうやって勝つんだろ…。無理ゲ―過ぎない?
毎度おなじみエンドクレジット後のおまけは、創造主のもとへ向かうセナ、ドルイグ、マッカリのところへ、サノスの弟だというエロス/スターフォックス(演:ハリー・スタイルズ)とその家臣のピップ(声:パットン・オズワルト)が現れ、「他のエターナルズに危機が迫っているからその場所教えたる」と言うシーン。原作知らないのでサノスに弟がいたことにも驚きましたが、危機が迫っているというのはセルシ達の事なのか、別宇宙(マルチバース)のエターナルズの事だったりするのかとか、妄想が膨らみましたぐへへ。
それから、複雑な家系であることを明かしていたセルシの今彼デインが、目の前で連れ去られたセルシをなんとかしようと、家に保管されていたエボニーブレイドなる呪われた剣を手に取ろうとするところで映画は終わります。原作知らないのでよくわかりませんが、彼も今後スーパーヒーローになっていくのか?この辺はどうやらMCU版『ブレイド』の伏線らしいですね。うーん、楽しみは尽きないですな。
おわりに
とまぁ、こんな感じです。
他のヒーローたちとの繋がりはほとんどないけど、全くないとも言い切れないバランスがとても良かったです。死んでしまったメンバーも記憶は保管されているようなので、違った役割とかで再登場してくれると嬉しいなぁ。
上述の通り他のMCU作品との繋がりはほとんどないので、どれ見ればいいのかわからない、という人も十分に楽しめる作品になっております。非常に現代的なテーマの作品になっていると思いますので、見るなら今!です。
ということで、映画『エターナルズ』の感想でした。
ではまた。