映画『SAND LAND』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。
『SAND LAND』は、2000年に週刊少年ジャンプにて連載されていた、アクション・アドベンチャー漫画。
作者は『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』等でおなじみの、鳥山明氏。
『ドラゴンボール』連載時の鳥山さんはあまりにも多忙を極めていたため、連載終了後は長期での連載をやめ、単行本1巻で収まるくらいの短期での連載を中心にやるようになったそうです。『SAND LAND』のほか、『COWA!』『カジカ』『銀河パトロール ジャコ』といった作品が短期集中連載されました。カジカとジャコは読んだ記憶ありますが、COWA!はまだ読んだことない…いずれ読もう。
『SAND LAND』は「老人と戦車が描きたい」という鳥山さんの希望で始まったそうですが、天下の週刊少年ジャンプでこんなニッチな企画が通るのはこの人くらいのもんでしょうね…。とはいえ、完成度の高いストーリーなどは当時から高く評価され、数か国で翻訳版が発行されるなど、人気を博しました。鳥山さん自身も、お気に入りの作品のひとつなんだとか。
もくじ
概要
そんな『SAND LAND』ですが、連載終了から20年以上経った今になって、どういうわけか映画化されることとなりました。2022年末より「SAND LAND Project」なるものも始動しており、ゲーム化企画も進行中らしいです。なぜ今このタイミングで猛プッシュしてるんでしょうね…?
映画の方は、ガンダムシリーズでおなじみのサンライズと、アニメ『ポプテピピック』や『スター・ウォーズ:ビジョンズ』の1エピソード『The Duel』などを制作している神風動画、『ラブライブ!』のライブシーンのCGアニメなどを手掛けているANIMAが共同でアニメーション制作に携わっている、3DCGアニメ作品となっています。
監督は、神風動画所属の横嶋俊久。
2017の中編アニメ映画『COCOLORS(コカラス)』で監督・脚本・コンテ・演出を務め、ファンタジア国際映画祭の最高賞である今敏賞を受賞しています。何を隠そう、僕は今敏作品が狂おしいほどに大好き(笑)なのですが、その話は絶対長くなるので割愛。
脚本は、元芸人という異例の肩書を持つ森ハヤシ。
TVドラマや舞台のほか、アニメでは『スペース☆ダンディ』や2022年版の『うる星やつら』などの脚本を務めています。
音楽は、数々の月9ドラマやNHKの大河ドラマ、アニメでは『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズや『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズなど、幅広く活躍している菅野祐悟。
キャスト陣は、『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』のエルメェス役などで知られる田村睦心、ジェイソン・ステイサムの吹替を長年務める山路和弘、『ワンピース』のブルック役などで有名なチョー、『名探偵コナン』の目暮警部役でおなじみの茶風林、『機動戦士Zガンダム』のカミーユ・ビダン役など数多くの作品に出演している飛田展男といった、豪華な顔ぶれとなっています。
予告編
あらすじ
天変地異と人類が起こした戦争によって水が枯れ果て、砂漠だらけになってしまった世界。
残された数少ない水源は国王(声:茶風林)によって独占され、法外な価格で取引される水をなかなか買うことの出来ない市民たちは、常に渇きに耐える生活を強いられていました。
辺境の村で保安官をしているラウ(声:山路和弘)は、世界のどこかに「幻の泉」があると考え、腕の立つ魔物たちに加勢を求めます。水は魔物たちにとっても死活問題であり、魔王の息子であるベルゼブブ(声:田村睦心)と、盗みが得意なシーフ(声:チョー)が同行することに。
そうして始まった、泉を探す旅。
その中で、国王軍、ひいてはそれを率いるゼウ大将軍(声:飛田展男)の、水を巡る陰謀が明らかになっていくのでした――。
というのがあらすじ。
本編感想
全体的に、とても良くまとまっているなーと思いました。
映画を見る前に原作を電子で買って、行きの電車で序盤を、帰りの電車で残りを読んだのですが、映画はすごく原作に忠実でありながら、原作で少し駆け足気味、もしくはちょっとあっさりしているように感じた箇所をいい感じに膨らませていたり、盛り上がるシーンはさらに盛り上がるようになっていたりと、エンターテインメントとして更に完成度が上がっているような、そんな風に思いました。
特に、中盤の戦車バトルの決着と、ラストの展開が顕著だったかと。
アレ将軍(声:鶴岡聡)との戦車バトルでは、原作ではラウと一騎打ちせずに降参しますが、映画では最後まで戦ったうえで降参します。原作でもそうですが、この戦車バトルのシーンの見応えがものすごくて、全編この戦車バトルでも良かったんじゃないかと思うくらいに良かったです。
ベルゼの人並外れた視力と聴力で敵の位置を把握し、シーフに的確に指示を出して戦車を操り、そして自身は砲身の付け根と履帯を狙い撃ち、敵の戦力だけを確実に奪う。さらに最後は、「相手の砲身は強力だけど通常よりも長いため、ゼロ距離まで近づけばその長さが邪魔をしてこちらに砲身を向けることが出来ない」というところまで読みきり、戦力差をものともせずに完全勝利する。この一連のラウの活躍には、本当に痺れました。
ラストは結構大幅に変更されており、原作ではゼウ大将軍が単身で攻めてきますが、映画ではオリジナルの巨大な空母が登場し、クライマックスらしい最高潮の盛り上がりを見せてくれます。虫人間も、原作では1体(1匹?)だけの登場でしたが、映画では何体も出てきて、ピンチをより際立たせていました。そしてそこからの、キレたベルゼの無双のごときド迫力アクションにも一役買っていて、複数出すのは非常にナイス判断だったように思います。虫人間が爆発したあとのベルゼがモロに「ヤムチャしやがって…」だったのは、パロディですかね?まんまと笑わせていただきました。
最終的にゼウ大将軍を殺さない、というのも原作から大きく変わった部分。ラウの人柄がよく出ていて、ここもすごく良かったと思います。
アニメーションに関しては、全てがCGアニメではなく、主要キャラ以外は普通のアニメになっていて、ここは少し残念ポイント。流石に『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』ほどの予算は出せなかったんですかね…。とはいえ、全体的にハイクオリティでしたし、違和感もあまりなかったので、不満というほどのものでもないです。
キャスティングは全員イメージピッタリで、大変素晴らしかったです。
おわりに
ちょっと短いですが、こんなもんにしときます。
知名度の低さとタイミングの問題なのか、なんだか「連日劇場はガラガラ!」みたいな声をちょくちょく耳にしますが、非常に完成度の高い、とても面白い作品なので、ぜひ多くの方に見ていただきたいです。
ということで、映画『SAND LAND』の感想でした。
ではまた。