GORGOM NO SHIWAZAKA

ゴルゴムのしわざか!

映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』感想(ネタバレ)

映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

マーベルコミックに登場するスーパーヒーロー、スパイダーマンを主役とした作品のひとつである本作。
日本では2019年に公開された『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編であり、来年公開予定の『スパイダーマンビヨンド・ザ・スパイダーバース』との前後編、という構成になっています。
前作はアカデミー賞で長編アニメ映画賞を受賞するなど、大きな話題となりました。

このシリーズはソニー・ピクチャーズ アニメーション等が製作しているものであり、ディズニー傘下のマーベル・スタジオが製作する『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』との関連性はありません。まぁ、全くないとも言い切れないですが…。

 

もくじ

 

スパイダーマンとは

それじゃあ、もう一度だけ説明するね!

スパイダーマンは、放射能汚染された蜘蛛に咬まれたことによって、蜘蛛由来の能力を身に着けたヒーロー。超人的な身体能力のほか、危険を事前に察知するスパイダーセンスや、壁に貼りついて移動するなど、様々な能力を持っています。

初登場は、1962年刊行のコミックから。

すばしっこい身のこなしと、自身で開発した蜘蛛糸状の粘着物質を発射するウェブ・シューターを駆使し、ロープ状にした糸を引っ掛けて移動したり(ウェブ・スイング)、敵を拘束したりするのが、彼の戦闘スタイルになります。
トビー・マグワイア主演のサム・ライミ監督版『スパイダーマン』では、ウェブ・シューターは使用せず、手首の付け根から直接ウェブが出てくる設定になっていましたね。

 

最大の特徴が、ティーンエイジャー(10代)のヒーローであり、ヒーロー活動におけるメンター(指導者)を持たないこと。それにより、自身の未熟さからくる過ちや葛藤などがリアルに描かれ、特に若い読者から高い人気を獲得したんだとか。映画化、アニメ化、ゲーム化などの機会も非常に多く、今やマーベルヒーローの中でもトップクラスの人気を誇るヒーローとなっています。

 

本作概要

本作、というか本シリーズの特徴は、コミックやイラストがそのままアニメになったような革新的な映像表現と、多元宇宙=マルチバースを舞台とした壮大な世界観。前作は主人公の世界に別の次元からスパイダーマンがやってくる話でしたが、本作は逆に、主人公が別の次元へと向かうような話になっています。

 

監督は、前作同様、ホアキンドス・サントスジャスティン・K・トンプソン、そしてピクサー作品『ソウルフル・ワールド』の脚本・監督を務めたケンプ・パワーズを加えた3名。

脚本は、『ワンダーウーマン1984』、リブート版『モータルコンバット』、『シャン・チー テン・リングスの伝説』といった僕が大好きな作品の脚本を多く手掛けているデヴィット・カラハムと、『くもりときどきミードボール』や『LEGO ムービー』などで高い評価を獲得している、フィル・ロードクリス・ミラー

 

主人公の声を演じるのは、前作同様、シャメイク・ムーア
俳優のほか、ラッパーとしても活動しているそうです。

ヒロインの声優を務めるのは、こちらも前作同様、ヘイリー・スタインフェルド
バンブルビー』の主人公チャーリー役や、MCUドラマ『ホークアイ』にて、2代目ホークアイというべきケイト・ビショップ役で出演しています。

そのほか、『ムーンナイト』や『DUNE/デューン 砂の惑星』のオスカー・アイザック、『エターナルズ』や『ブレット・トレイン』のブライアン・タイリー・ヘンリー、『ブラックパンサー』や『NOPE/ノープ』のダニエル・カルーヤといった、豪華俳優陣が声優を担当しています。

また、日本語吹替版でも、小野賢章悠木碧関智一宮野真守木村昴といった、豪華声優陣が声を当てています。話題性欲しさに声優未経験の俳優を起用したりしていないのも、好感が持てるところ。

 

そーいや、『ザ・フラッシュ』の吹替ではスーパーガールの声を俳優の橋本愛が演じていましたが、すごく上手で違和感は感じませんでした。いやまぁ、僕は洋画は字幕派なので、吹き替え版は見てなくてyoutubeの映像とかで見ただけなんですけども。

ナターシャ役の米倉涼子とかもかなり良かったと思いますし、こういう俳優さんの使い方であれば不満はないんですけどね…。キャスティングがいいのか俳優さんが声当てるの上手くなっているのか、最近は「吹替の演技酷すぎると思ったら若手俳優でした」みたいなケースはめっきり減った気がします。

 

予告編


www.youtube.com

 

あらすじ

アメリカ、ブルックリン。

この世界でただ一人のスパイダーマンマイルス・モラレス(声:シャメイク・ムーア)は、たったひとりで街の平和を守っていました。高校生のマイルスは今日も、コンビニでATMから金を奪おうとしていたスポット(声:ジェイソン・シュワルツマン)と名乗る小悪党を捕まえ、学校へと急ぎます。

スパイダーマンであることを隠しているマイルスと両親との関係は、思春期ということもありギクシャクしていました。大事な約束に遅刻を繰り返すマイルスに対し、怒った両親は外出禁止を言い渡します。「スパイダーマンが外出禁止かよ…」と部屋でふてくされる彼の前に、マルチバースへ帰ったはずのグウェン・ステイシースパイダーグウェン(声:ヘイリー・スタインフェルド)が姿を現します。彼女は現在、ミゲル・オハラスパイダーマン2099(声:オスカー・アイザック)率いる、マルチバーススパイダーマンが集まる集団、スパイダー・ソサエティのメンバーとして活動している、とのこと。

再会を喜ぶ2人ですが、グウェンには目的がありました。それは、マルチバースの秩序を乱す異常分子を監視し、問題が起こる前に対処すること。彼女の監視対象はあのスポットであり、彼はマイルスを“宿敵”と見なし、どんどん力を増幅させていました。

次元間を移動出来るスポットを止めるために、マルチバースを旅するマイルスたち。その中で、マイルスは全てのスパイダーマンに課せられた、悲しき“運命”を知ることになるのでした――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

何度見ても楽しめる、大傑作だと思います。
2回見て2回とも最高に楽しんだ僕が言うんだから、間違いありません。(異論は認める)

本作を見に行く際、移動時間短縮のためにいつも使ってるのとは異なる乗り換えルートを選んでしまったばかりに、間違えて反対方面に行く電車に乗ってしまい、まんまと大遅刻してしまいまいました…。おかげで始めの10分くらいを見逃してしまったので、後日MX4D吹替版でもう一度鑑賞した次第。あ、ちなみに1回目は『ザ・フラッシュ』と同じ日にIMAX字幕版で鑑賞したのですが、2回目を見てから本記事を書き始めたので、ずいぶん日が空いてしまいました。

4Dは臨場感抜群で最高に楽しかったものの、縦横無尽に動き回るスパイダーマンにあわせて座席がガックンガックンするもんだから、ジェットコースターが苦手な僕は普通に怖かったです…。

 

更にクオリティを増した映像美

前作同様、アメコミがそのままグリグリ動き回るような超絶クオリティの映像は、見事というほかありません。

更に、色彩豊かでどこか幻想的な街並みのマイルスの世界、水彩画のような色合いで、感情の色が映像に反映されるグウェンの世界、伝統と近未来を融合したようなムンバッタンの街並みと、ビビットな色合いが特徴のパヴィトラ・プラバカールスパイダーマン・インディア(声:カラン・ソーニ)の世界、シド・ミードを思わせる未来的建造物と、その地下に押し込められた退廃的な世界を併せ持ったミゲルの世界、といった風に、各世界で見せ方をガラっと変えてきているのも本当にすごい。

隅から隅までこだわり抜かれた映像は、一度だけの鑑賞ではもったいないと思えるほど。見るたびに新しい発見があるのではないかと思います。僕もきっと見逃しているところがいっぱいあるはず。何回見ても楽しすぎるので、出来ることなら毎日見たいくらい。

 

余談ですが、マルチバースのひとつとしてレゴの世界が出てきます。
コレ、14歳の少年がレゴで予告編を再現したら実際にアニメーターとして雇われる、という夢のような話があって、恐らくこの少年が手掛けていると思うと、感慨深いものがありますよね。しかも、物語的に重要というわけではないけれど、結構見せ場があるというのがまたアツい。

gigazine.net

 

逃れられない“運命”

全てのマルチバースは蜘蛛糸が絡み合うように交わり合っており、お互いに影響し合っています。そして、それらの均衡を保っているのが、カノン・イベントと呼ばれる象徴的な出来事。

特に有名なのが、ピーター・パーカーのおじ、ベン・パーカーとの死別。実写映画化される際にも何度も描かれている出来事です。ミゲルがカノン・イベントを説明する際、ベンおじさんの死を経験した数多の宇宙の中に『アメイジングスパイダーマン』と思しき映像も使われていて、興奮しました。

それらは決して回避出来ないものであり、もしその“運命”を覆そうものなら、マルチバース全体の崩壊を引き起こしかねない。なのでスパイダー・ソサエティは、イベントが滞りなく起こるように管理しているのでした。

変えられないもの、それが運命。

更に、マイルスの世界で次の起こるイベントは、2日後に発生が予測されている、マイルスの父、ジェファーソン・デイヴィス(声:ブライアン・タイリー・ヘンリー)の死であることが判明。マイルスは父と世界、どちらを救うのかといった選択を迫られることになります。

「世界の均衡を保つ」と言えば聞こえはいいですが、それは「死ぬ運命にある人を見殺しにする」ことに他ならないわけで。それに納得出来ないマイルスは、「父さんも世界も、両方救う!」と父を助けに行こうとします。そしてそんなマイルスを、ミゲル率いるソサエティは総力をもって止めようとするのでした。というか、そもそもソサエティ本部にマイルスを招いたのは、イベント発生まで彼を足止めするのが本当の目的だった様子。
運命を受け入れるのか、それとも運命に抗うのか、その対立構造を、スパイダー・ソサエティ vs マイルスという形で視覚化しているわけですね。これまで登場してきた無数のスパイダーマンが誰一人として逃れることの出来なかった運命を、マイルスは果たして覆すことが出来るのか。

 

あんなスパイディ、こんなスパイディ

ソサエティ本部のシーンは、とてつもない種類のスパイダーマンが登場する、まさにお祭りのような場面でした。人間だけでなく、猫だったり、恐竜だったり、車だったり、バリエーションがエゲつなくて最高に楽しかったです。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で有名になった指差しポーズのパロディとかも笑いました。

あと、PS4等で発売されているゲーム、『Marvel's Spider-Man』に登場した、ピーター・パーカーインソムニアック・スパイダーマン(声:ユーリ・ローエンタール)まで出てきたのには驚きました。そーいやゲームはずっと前に購入したまま全くやってないや…。続編も出ることだし早くやらねば…。

 

中でも最高にイカしていたのが、アナキスト(反体制主義者)のホバート・“ホービー”・ブラウンスパイダーパンク(声:ダニエル・カルーヤ)。
パンクバンドをやっているようで、ギターを武器にして戦います。ミゲルとあまり馬が合わない、というか大きな組織(この場合はソサエティ)の言いなりにならないことがカッコいいと思っている節があり、だからこそミゲルの意志に反した行動を取ろうとするマイルスに味方してくれます。グウェンとも気が合うようで、たびたび行動を共にしていたことが語られますが、それを聞いてムッとするマイルスが微笑ましかったですね。

あと、前作でマイルスの師匠的な立ち位置だったピーター・B・パーカースパイダーマン(声:ジェイク・ジョンソン)の娘、メイ・“メイデイ”・パーカーちゃんがもう、最っ高に可愛かったです。僕もメイデイちゃん抱っこして癒されたい…。

 

スパイダーマンのいない世界

自分こそが「一番最初の異常分子」であるとミゲルに告げられ、動揺するマイルス。しかし、「その運命だって覆してみせる」とばかりに、たったひとりでソサエティの全員を出し抜き、自分の世界へと帰還します。ちょっとやり方がまどろっこしいなぁ、あんなとこまでわざわざ行く必要あったかなぁと思いつつも、ソサエティ全員にひとりで勝つという、見事過ぎるマイルスの立ち回りに感動すら覚えました。

 

しかし、決死の思いで帰還したそこは、彼が元居た世界ではありませんでした。
マイルスを咬んだ蜘蛛は異次元から来たものであり、その蜘蛛が元々いた世界。そこへと来てしまったのでした。そしてこの世界にはスパイダーマンが存在しておらず、父は既にこの世を去っていた…というのが明かされる一連の流れには驚かされました。

更に、前作でヴィランのひとり、プラウラーとして暗躍していたマイルスのおじ、アーロン・デイヴィス(声:マハーシャラ・アリ)に捕らえられ、その世界でのプラウラーの正体は、なんと自分自身だった…という展開には、背筋が凍る思いがしました。
“運命”とは、かくも残酷なものなのか…。

 

グウェン・ステイシー:オリジン

一方、グウェンもマイルスに近しい人物ということで、ソサエティを追放され、自身が元居た世界へと戻されてしまいます。

冒頭がグウェンの世界から始まることからも、本作がグウェンの物語としても重要な立ち位置にあることは間違いないかと思います。前後編で時間をたっぷりと使えるからなのか、グウェンの苦悩や、父との確執とそこからの和解といった、彼女の掘り下げがしっかりとしていて、好感が持てました。前作も非常に好きなキャラでしたが、本作でもっと彼女のことを好きになりました。

 

ラストでグウェンはマイルスを助けようと、マルチバースから味方になってくれるスパイディを集めて“新バンド”を結成。いざマイルスを助けに行こうというところで、本作は幕を閉じます。前作でも登場した、ペニー・パーカースパイダー・ハムスパイダー・ノワールもいてテンション上がりましたが、ソサエティのシーンでチラッと出てきたペニー以外、今までどこで何してたんでしょうね…。

それと、『鋼の錬金術師 完結編』の時も書きましたが、連ドラと違って映画はスパンが長いんだから、ひとつの作品で何かしら区切りを付けて欲しかったところ。ここは本作の数少ない不満点ですね。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』なんかはその点、やはり偉大だなーと。

 

↓日本版主題歌。疾走感抜群でかなり好き。

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おわりに

感想は以上になります。

間違いなく、現時点で世界最高峰のアニメーション作品です。普段アニメを見ない人、ヒーロー作品に興味がない人も楽しめる作品になっていると思います。

後編である『ビヨンド・ザ・スパイダーバース』は、来年3月公開予定。1年経たずに公開してくれるのは非常に嬉しいけど、待ちきれないぜぐぬぬ…!

ということで、映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の感想でした。

ではまた。