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ゴルゴムのしわざか!

映画『マーベルズ』感想(ネタバレ)

映画『マーベルズ』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

マーベルコミックを原作とした複数の実写映画を同一の世界観で描くクロスオーバー作品群、それが『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』。

本作は、アベンジャーズのメンバーであるキャプテン・マーベルを主人公とした映画であり、2019年公開の『キャプテン・マーベル』に続く、第2作目となります。

アベンジャーズの中でもトップクラスの実力を持つキャプテン・マーベルが、2人のヒーローと協力しながら宇宙の危機に立ち向かう、アクション大作となっています。

 

もくじ

 

キャプテン・マーベルとは

キャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースの初登場は、1968年刊行のコミックから。当初はまだスーパーパワーを持ってはいませんでしたが、1970年代に刊行されたコミックでクリー人と融合し、ミズ・マーベルを名乗ることになります。(ちなみにクリー人というのは、ドラゴンボールにおけるサイヤ人のような戦闘民族と思っていただければ、おおよそ間違いないかと思います。)その後は何度か名前を変えつつほかのヒーローと共闘を続け、正式にキャプテン・マーベルを名乗るようになったのは2012年と、割と最近みたいです。

その能力は、超人的な身体能力、耐久力、持久力、飛行能力、手からエネルギー波を発射する能力、などなど。要はめちゃくちゃ強い、ということです。とりあえず見ていて「つよっ!」と思うことは大体できる感じ。コミックではそれらの能力は融合したクリー人由来のものらしいですが、MCUではインフィニティ・ストーンのひとつ、スペース・ストーンのエネルギーを吸収したことで、能力を獲得しました。

 

本作に登場するヒーローのひとり、モニカ・ランボーも、コミックでは2代目キャプテン・マーベルとして活躍した人物です。

MCUでは、1作目『キャプテン・マーベル』にて初登場。キャロルの親友であるマリア・ランボーの娘であり、この頃はまだ子供でした。その後、MCUドラマシリーズ第1弾『ワンダヴィジョン』にて、成長した姿で再登場。サノスデシメーション(通称:指パッチン)で消滅していたことが明らかになり、更に消滅していた間に、母のマリアは癌で亡くなっていたことがわかります。

ドラマ終盤には、ワンダ・マキシモスカーレット・ウィッチの作り出したヘックスと呼ばれる現実改変能力を持つエネルギーフィールドを何度も行き来したことで、能力に覚醒。電磁スペクトラムがなんたらとかよくわかんないこと言ってましたが、要は様々なエネルギーを見ること、操ることが出来る、という感じみたいです。

 

カマラ・カーンミズ・マーベルに関しては、以下をお読みいただけると幸いです。

blacksun.hateblo.jp

 

本作概要

本作で監督を務めるのは、ニア・ダコスタ
NOPE/ノープ』などで知られるジョーダン・ピールが製作を務めたホラー作品、『キャンディマン』を監督したことでも知られています。まだ若干33歳だそうで、MCUの監督としては最年少、しかも初の黒人女性監督とのことです。

脚本はダコスタと、『ワンダヴィジョン』の3,4話の脚本を執筆したミーガン・マクドネル、『ロキ シーズン1』の第2話の脚本を担当したエリッサ・カラシクが共同で書いています。マクドネルは今後、MCU作品『Agatha: Darkhold Diaries(原題)』や『Vision Quest(原題)』の脚本も執筆するそうです。どっちも楽しみなヤツ…!

 

主人公、キャロル・ダンヴァースを演じるのは、ブリー・ラーソン
キングコング:髑髏島の巨神』などの作品への出演のほか、2019年の『ユニコーン・ストア』という作品では監督も務めており、更にシンガーソングライターとしての顔も持つなど、多彩なお方です。僕はブリー・ラーソンというと、2015年の『ルーム』という映画がものすごい印象に残っています。お子さんのいる全ての親御さんに見ていただきたい作品です。

モニカ・ランボーを演じるのは、テヨナ・パリス
舞台、TVドラマ、映画と幅広く活躍しているお方で、ダコスタ監督の『キャンディマン』にも出演しています。名門音楽学校を出ているとのことで、今後そっち方面の仕事も増えるかもしれないですね。

カマラ・カーンを演じるのは、イマン・ヴェラーニ
『ミズ・マーベル』にて華々しくデビューを飾った、若干21歳の俳優さん。イマン自身もかなりのマーベルオタクで、ドラマの撮影の際にもいろいろアイデアを出したりしていたそうです。その経験が活きてなのか、今後ミズ・マーベルの新たなコミックシリーズの共同脚本もやるとかやらないとか。なんだかとんでもないことになってきたぞ。

本作におけるヴィラン(敵役)を演じるのは、ゾウイ・アシュトン
TVドラマ『フレッシュ・ミート』のメインキャストとして出演していることでも知られています。ロキ役でおなじみのトム・ヒドルストンと婚約関係にあるそうで、彼からMCUに出演するにあたってのアドバイスをもらったそうです。恥ずかしながら全然知らない俳優さんでしたが、トムヒの婚約者だったとは驚き。

そのほか、おなじみサミュエル・L・ジャクソンや、カマラの家族を演じた俳優さんたちが引き続き出演。また、『梨泰院クラス』などで知られる韓国の俳優パク・ソジュンが、本作にてハリウッドデビューしています。僕にはワンマンドゥ(餃子)の人、というイメージしかない…。

 

予告編


www.youtube.com

 

あらすじ

宇宙をパトロールしていたキャロル・ダンヴァースキャプテン・マーベル(演:ブリー・ラーソン)のもとへ、宇宙ステーションS.A.B.E.R.の責任者、ニック・フューリー(演:サミュエル・L・ジャクソン)より通信が入ります。とある星で謎のエネルギーが発生しており、その調査をしてくれ、とのこと。エネルギーの発生源は、不安定なジャンプポイント(ワープゲート)でした。ジャンプポイントは宇宙の均衡を乱しかねないため厳重に管理されており、本来この場所にあるべきではないもの。いったい誰がこんなことを…。

そのエネルギーはS.A.B.E.R.にも不具合をもたらしており、モニカ・ランボー(演:テヨナ・パリス)はステーションの外から調査をしていました。あらゆるエネルギーを知覚することの出来る彼女は、付近のジャンプポイントに謎のエネルギーが残留していることに気付きます。

一方その頃、ニュージャージー州に住む高校生、カマラ・カーンミズ・マーベル(演:イマン・ヴェラーニ)は、今日も大好きなキャプテン・マーベルの二次創作に夢中。いつか彼女と共闘し、チームになることを妄想していました。

キャロルとモニカが謎のエネルギーに触れた瞬間、カマラの腕のバングルが光りだし、突如3人は入れ替わってしまいます。突然の出来事に驚きを隠せない3人。いったい何が起こっているのか――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

ひそかに本作にはとても期待していたんですが、その期待に十分応えてくれるほどには面白かったです。

 

本作は猫映画です

前作『キャプテン・マーベル』にも登場した、猫のグース
実際は猫ではなく、フラーケンという凶悪な宇宙生命体。ニックの片目を奪ったのも、実はこのグース。タコのような、エイリアンのような、なんだかよくわからん触手を伸ばし、どんなものでも呑み込んでしまう恐ろしい存在。
…なのですが、どうしてもかわいいよグース!かわいすぎるよ!

序盤でいきなり人を呑み込んでカマラを驚愕させたり、カマラの家の家具を呑み込んでは吐き出したりと、やりたい放題。でもニックにはおとなしくナデナデされる。はぁーかわいい。後半ではグースの子供と思われる子猫(の姿をしたフラーケン)がいっぱい出てきて、状況としては完全に地獄絵図なのに対し、「なんだここは…天国か…?」となるほっこり映像が楽しめます。結果的にそれが絶体絶命のピンチを打破することになるので、つまりは本作は猫映画ということになりますね(暴論)。

ただまぁ、不満というほどのものでもないのですが、前作ではマジで何するかわからない、得体の知れない存在だったのが、本作ではかなり味方側に寄っていたのが気になりました。作劇上の都合みたいなのを感じてしまうといいますか。

 

カマラが最高!

やはり何といっても、イマン演じるカマラですよ。ドラマですっかりお気に入りのキャラになったので、彼女が再登場する本作には期待せざるを得ませんでした。喜怒哀楽が全部顔に出るところとか、未熟ながら一生懸命みんなのためにがんばるところとか、すごく応援したくなるような魅力に溢れているんですよね。そんな彼女の魅力が、本作でもしっかりと発揮されていたのがとても良かったです。

特に、スクラル人が居留地としていた惑星ターナックスで、崩壊しようとする星から懸命にスクラル人を救おうとしていた姿が印象的でした。ここで「全員を救おうとしていたら、救える人も救えなくなる」とキャロルに言われて嫌々ながら従っていましたが、カマラにはこれからも「迷わず全員救う」マインドでいてほしいなぁ。まぁ、キャロルももちろん、出来ることなら全員救いたいと思ってたんでしょうけどね。これまでの経験から、ひとりの力で出来る限界というのを散々思い知っての発言なのかな、と思いました。

カマラの家族も、相変わらずのドタバタっぷりで楽しかったです。キャロルとモニカに入れ替わるたびにどんどん家が破壊されていき、しまいには父ちゃん母ちゃんも食器投げて応戦したりしてヤケクソ気味になってたのには笑いました。しかし、フューリーにくっついてS.A.B.E.R.に行ったり、終始出番があるとは正直思わなかった…。

 

人間味のあるキャロル

ブリー・ラーソンのスタイルがあまりにも良すぎる。ビジュは間違いなく過去一。冒頭のヒーロースーツを腰にぶら下げてくつろぐスタイルも最高だし、終盤の比較的地味目な衣装もスター性が全く衰えない(むしろウエストの細さが更に際立ってヤバい)のがすごすぎる。
…というのは一旦置いといて。

MCUにおけるこれまでのキャロル、特にパワーを得てからの彼女は、とにかく強くてクールで、カマラをはじめ誰もが憧れるようなキャラクター像だったように思います。しかし本作では、そんな彼女の人間らしい面がたくさん出てきて、非常に魅力が増していたように思いました。まさかの歌唱シーンもあり、シンガーの顔も持つラーソンなだけあって素晴らしい歌声でした。急にディズニー感出してきて、笑いを堪えられませんでしたよ。

彼女がクリー人から呼ばれていた“殺戮者”という呼称。最初は「そりゃ悪者からしたらそうなるよな」くらいの、軽い気持ちで捉えていました。しかし中盤、キャロルが(故意ではないとはいえ)クリー人の惑星ハラの環境をまともに人が住めないほどに荒廃させてしまったがゆえにそう呼ばれていることが明かされます。まさかあの呼称がこんなにも重みを帯びてくるとは…。助けようとしたら逆に恨まれるとか、そういうのとも彼女はこれまでたったひとりで戦ってきたんだなぁというのが伝わってきて、ちょっとつらい気持ちになったり。今回チームを組んだことによって、「自分はひとりで戦っているんじゃない」「チームがひとつになれば、今まで出来なかったことも出来る」と思ってくれたらいいなぁ。

 

頼れるお姉さんモニカ

キャプテン・マーベル』ではまだ子供、『ワンダヴィジョン』ではほぼほぼ巻き込まれる立場だったモニカですが、本作ではしっかりと頼れる存在に成長していました。ちょっと真面目過ぎるキャラも良き。キャロルにとってはかわいい親戚の子、カマラにとってはステキなお姉さんと、なかなか絶妙な位置にいるキャラになっていましたね。モニカが入れ替わりのメカニズムを解明して、逆にそれを利用してうまいこと使いこなそうとみんなでトレーニングするシーンとか、めちゃくちゃ良かったです。専門用語をまくしたてて、カマラとキャロルにキョトン顔されるのとか最高でした。キャロルまでそんな顔するのやめたげて!

ただ、彼女の能力がどういうものなのかは、僕の足りない頭ではイマイチよくわかりませんでした。透明化とか、飛行能力とか、エネルギー吸収とか、とりあえず万能にいろいろ出来るんだな、くらいの理解です。

「自分はヒーローにはならない」とヒーロー名を付けられるのを拒否していたのは、今後の展開のためかな?とあのポスクレシーンを見て思いました。

 

スクラル人の扱いの悪さ

これまでもMCU作品にたびたび登場している、スクラル人。

ドラゴンボールでいうところのナメック星人のようなもの、と思っていただければと。…ハイスミマセン、完全に見た目だけで言いました。なんとなく上で書いたクリー人の例えと合わせてみたくなって…。

コミックでは銀河三大帝国のひとつとされるほどに強大な種族らしいですが、MCUでは色んな意味で酷い目に遭っているような気がします。前作『キャプテン・マーベル』ではとばっちりで悪者扱いされたり、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』ではフューリーに小間使いされたり、『シークレット・インベージョン』では完全に小者に成り下がったり…。

本作でも、ようやく手に入れた居住地をいきなり奪われ、宇宙ホームレスになってしまうという、散々な目に遭っています。どうしてこうなった…。MCUにおけるスクラル人は現実でも大きな問題となっている移民問題のメタファーだと思うのですが、この扱いではいろいろとヤバいのでは…。ここからいい方向に舵を切っていけるのか、今のところ期待よりも不安の方が大きい…。

 

魅力が足りないヴィラン

本作でキャロルたちと敵対するのは、クリー人の指導者、ダー・ベン(演:ゾウイ・アシュトン)。

カマラがつけているのと同じバングル(腕輪)を発見し、その力でもって惑星を滅ぼそうとする悪い奴。…と思われていましたが、実際は荒廃した惑星ハラの環境を蘇らせるために、バングルの力で大気や水などの資源をほかの星からハラへ転送するのが目的でした。とはいえ、奪われたものを奪い返しているだけで、資源を奪われた星のその後など知ったこっちゃないといった感じでしたし、結局はキャロルへの復讐もしようとしていたようなので、ヴィランには違いないですね。

なんだろうなぁ…このキャラにいまひとつ魅力を感じませんでした。思想的にもそれほど面白味を感じるものではなかったし、強さもそこまででもない感じでしたし。最期も両腕に装備したバングルのパワーに耐えきれず自滅するという、なんともパッとしない感じでした。直後、カマラは両腕にバングル付けて平然としていたので、余計に小者感を感じざるを得ない…。俳優さんに魅力がないわけではないですし、役作りもちゃんとされていたと思いますが、何が原因なんでしょうね…?

 

ちょっと愚痴になってしまいますが、ここ最近のMCU作品って、ヴィランに魅力がないおかげで作品自体の評価もイマイチ、というのが多い気がします。ここ最近で良かったのは、『ドクター・ストレンジ/MoM』のワンダと、『アントマン&ワスプ:クアントマニア』のモードックとかかな。後者に至ってはメインヴィランでもないという…。

サノスにあまりにも魅力があり過ぎた、というのも無いことは無いと思いますが、それにしたって顕著な気がするんですよね。次のアベンジャーズのために、いいキャラを出し惜しみしてるんじゃないか、と疑いたくなってしまいます。でもクアントマニアのメインヴィランとして登場したカーンは、サノスに代わるスーパーヴィランになる予定なはずなのに、蓋を開けてみれば完全にモードックに食われてる状況。うーん、先行き不安…。なんとか盛り返して欲しいものです。

 

ポストクレジットシーンについて

なるほど、モニカは別次元のキャプテン・マーベルになるのか。そしてそこでは“あの集団”との共闘も…?ということは今後公開予定の“あの作品”にモニカも出てきたりするのか…?そして元居た次元では母だったマリアのあの衣装は…?というか、“あの作品”はマルチバース上での話=今のMCUとのクロスオーバーは無い、のか…?

などなど、今後の展開への種蒔きがいっぱいされているポスクレでしたね。どうなっていくのか、ワクワクが止まりませんわ。

 

おわりに

以上でございます。

MCU作品は良くも悪くも書くこと多いですね。後半ちょっと不満が漏れてしまいましたが、キャラクターの魅力がよく出ている、とても良い作品だと僕は思いました。

ということで、映画『マーベルズ』の感想でした。

ではまた。