映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。
2023/01/22:諸々書き直しました。
『ドラゴンボール(DRAGON BALL)』は、1984年~1995年にかけて、週刊少年ジャンプにて連載されていた、バトルアクション漫画。
全世界での累計発行部数は2億6000万部を記録している、ジャンプ黄金期の作品の中でもぶっちぎりの人気を誇っていた漫画です。手から発射されるエネルギー波、縦横無尽な空中戦、とてつもないスケールのアクションなど、アラサーの男性で読んでないヤツは日本人じゃねぇ(個人の感覚です)というくらいに、エポックメイキングな作品といえます。
連載終了後もアニメやゲームなどが展開され続け、その人気は未だ衰え知らず。
現時点でのTVアニメ最新作が、魔人ブウとの戦いの直後からをオリジナルストーリーで描いた『ドラゴンボール超(スーパー)』。
多元宇宙にまで話が発展し、宇宙を一瞬で消滅させることの出来る全知全能の存在、全王様が登場したりと、マルチバースなんぞ目じゃないほどのスケールでストーリーが展開されました。
2018年には『超(スーパー)』名義での劇場版第1作目、『ドラゴンボール超 ブロリー』が公開。
そして劇場版第2弾となるのが本作、『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』です。
※『神と神』と『復活の「F」』は『超』名義ではないため、ここでは除外しています。
もくじ
概要
本作は、かつては敵として死闘を繰り広げたものの、現在は最も頼りになる仲間のひとり、ピッコロと、主人公孫悟空の息子である、孫悟飯にスポットを当てた作品になります。
壮大なお話が展開された『超』本編に対し、本作では地球のとある町を舞台とした、割とこじんまりとしたストーリーが展開されるのが特徴。また、従来のような手書きアニメではなく、全編に渡ってCGアニメで制作されているのも大きな特徴となっています。
監督は、プリキュアシリーズのEDアニメーションなどを手掛けるアニメーター、児玉徹郎。
そして脚本とキャラクターデザインは、『復活の「F」』や『ブロリー』に引き続き、原作者鳥山明が自ら務めています。
キャスト陣は、ピッコロ役の古川登志夫、悟空及び悟飯役の野沢雅子などのおなじみの面々のほか、神谷浩史や宮野真守などの若手人気声優が初参加しています。
余談:公開延期について
当初、本作は今年の4月に公開される予定でした。しかし、制作会社である東映アニメーションの社内ネットワークに何者かが不正アクセスをしたことが確認され、一部システムが停止された事で、公開が6月に延期される事に。同じく東映アニメーションにて制作されている、『ワンピース』『プリキュア』『ダイの大冒険』など、TVアニメの放送スケジュールにも影響を与えました。
僕は部外者ではありますが、ただでさえコロナ禍とかで制作現場は大変な思いをしてるはずなのに、さらに追い打ちをかけるようなことをするんじゃねぇよ…という思い。
さて、前置きはこのくらいにして、感想を書いていきたいと思います。
予告編
あらすじ
かつて、たったひとりの少年によって壊滅させられた、レッドリボン軍。
年月が経ち、レッド総帥の息子であるマゼンタ(声:ボルケーノ太田)は、密かに軍の再起を企てていました。
彼が目を付けたのは、軍の科学者だったDr.ゲロの孫である、Dr.ヘド(声:入野自由)。ゲロを超えるほどの天才的な頭脳を持つヘドを言葉巧みにスカウトし、新たな人造人間、ガンマ1号(声:神谷浩史)とガンマ2号(声:宮野真守)を作らせます。
マゼンタの野望に気付いたピッコロ(声:古川登志夫)は、孫悟空(声:野沢雅子)やベジータ(声:堀川りょう)に援軍を頼もうとするも、連絡がつかず。仕方が無いので、今は戦いから離れて久しい孫悟飯(声:野沢雅子)に協力してもらうことに。
果たしてピッコロと悟飯は、新生レッドリボン軍の野望を阻止することが出来るのか――。
というのがあらすじ。
本編感想
ジャパニメーションの新たな可能性
上述の通り、本作はプロローグ的なこれまでの戦いを振り返るシーン以外、全編に渡ってCGアニメで制作されています。
CGアニメって、動きに外連味がなかったり、無機質な感じになってしまうイメージがあって、これまであまりいい印象がありませんでした。しかし、本作のアニメーションはCGアニメ特有の滑らかな動きはもちろん、手書きアニメのようなダイナミックさや鳥山作品特有の温かさやポップさのようなものがちゃんとあって、すごく完成度の高いアニメーションになっていると思いました。『ブロリー』の時の超絶手書き作画も最高でしたが、本作のアニメも甲乙つけがたいほどに良かったです。
ディズニーなどの世界的企業が手掛けるCGアニメと比較すると、流石に細かな表情や書き込みの緻密さなど、資本力の差のようなものを感じてしまいますが、日本のアニメもまだまだ負けてないぞ、というのを見せてくれたような気がして、喜ばしい限り。アニメ産業は日本が世界に誇れる大事な財産だと思うので、若い才能が根こそぎ海外に持っていかれる前に、待遇を改善するなりしてその文化を守っていって欲しいですね。
原点回帰なストーリー
前作『ブロリー』では、ストーリーパートは前半に集約して後半はひたすらずっとバトル、という割り切った作りで、これはこれで最近のDBらしくて最高でした。対して本作では、最初から最後までストーリーが展開していくような作りになっており、なんというか初期のDB的な、まさしくRR軍編のような“摩訶不思議アドベンチャー”な感じがしてとても良かったです。
ちなみに、本来の主人公である悟空やそのライバルであるベジータは、最初と最後にちょっと出てきますが、本筋には一切関わってきません。魅力的なキャラがたくさんいるので、主役不在でもちゃんと作品として成り立つのがDBのすごいところだよなぁと。なにより、こうした形で強さのインフレを防いでいるのが上手いなーと思いました。…まぁ、過去の劇場版でも度々用いられている手法ではありますが。
あと、ブロリー(声:島田敏)が力を制御するために悟空たちと一緒に修行してたり、レモ(声:杉田智和)やチライ(声:水樹奈々)も再び登場してくれたりと、前作『ブロリー』に登場したキャラが少しだけとはいえまた出てくれたのもありがたかったです。
久々の登場、レッドリボン軍
今回、敵として立ちはだかるのは、シリーズ序盤にて敵として暗躍していたレッドリボン(RR)軍。強さのインフレが凄まじいDBの世界ではもはやRR軍なんて敵じゃないような気もしますが、上述のように悟空やベジータといった最強戦力を出さない等、色々と理屈をこねくり回して、しっかりと敵として成立させています。
中でも、今回のメインヴィランというべきガンマ1号&2号は、すごくキャラが立っていて良かったです。ピッコロ大魔王、フリーザ、セル、バビディなど、DBに登場する敵キャラは割とちゃんとした悪人が多いなか(魔人ブウはちょっと違う)、ガンマ1号&2号は「自分達の事を正義のヒーローだと思っている(無自覚で悪事に加担している)」という、これまでになかったキャラになっていて、非常に新鮮でした。そして声優もバッチリハマってましたね。
冷静沈着な1号と、お調子者の2号、というキャラクターも、某バッタの改造人間を彷彿とさせて良かったです。そーいや衣装は同じ原作者の某サイボーグみたいでしたね。もしかして意識してる…?
優しい親戚、ピッコロさん
僕はDBに登場するキャラの中で最も好きなのがピッコロさんなので、本作で主役として扱われるのが非常に嬉しかったです。スマホの操作に悪戦苦闘しながら電話をかけたり、変装して潜入するなど、これまでにないピッコロさんの姿が見れたのもとても良かったですね。ビーデルさんにお願いされてパンちゃんの送り迎えをしてあげるなど、すっかり親戚のおじさんみたいになってるピッコロさんにホッコリしました。
強さに上限の無いサイヤ人と比べるとどうしても戦闘力で劣ってしまうピッコロさんですが、ナメック星の最長老のような潜在能力開放がドラゴンボールでも出来ることがわかり、秘められた強さを解放してもらいます。ドラゴンボールのアップグレードってそんな気軽に出来るのか…とちょっと思ってしまいましたが、理由付けしようという心意気は評価したい。神龍が「ちょっとオマケしときました」と言ってたのは、てっきり体の色がちょっと黄色っぽくなるという見た目の変化の事だと思って見てたら、終盤であんなことになるとは…。
設定ブレブレな悟飯くん
潜在能力は作中No.1だけど、優しい性格で戦いを好まない悟飯くんも、個人的に大好きなキャラクターです。でも、『超』での悟飯くんはすごく強さにブレがあって、良くわからんキャラになっている印象があります。
シリーズ序盤では、戦いから離れて修行も全くしていなかったため、復活したフリーザに手も足も出ないほどに衰えていました。その後、自分の非力を痛感した悟飯くんはピッコロさんに修行をつけてもらい、本来の力を取り戻します。確かこの時、「あんまり弱くならないように鍛錬を怠らないようにします」みたいなことを言っていた気がするのですが、本作ではまた修行そっちのけで学業に力を入れており、『超』序盤くらいの強さに戻ってしまっているように見えました。あの時の発言は一体…。
これに関しては、本作の脚本は鳥山さんが書いているので、鳥山さんがほとんど関わっていないアニメ版ではなく、割とガッツリと監修している漫画版『超』の方に準じているのではないか、とどなたかが言っていて、なるほどなーと思いました。確かに漫画版では悟飯くんの掘り下げはアニメほどしっかりしておらず、“力の大会”に向けてピッコロさんと修行をした際にも、「本来の強さを取り戻す」というよりかは「連携を強化する」方向で鍛えていたようですしね。
とまぁそんな感じで、また弱くなってしまった悟飯くん。
ピッコロさんのパンチをよけきれなかったり、パンちゃんが一瞬で見抜いたピッコロさんの変装に全く気付けなかったりと、しっかりと弱体化している姿が描かれていました。そしてそこから、ノーマル→超サイヤ人→超サイヤ人2→アルティメットと、本来の強さを取り戻していく過程を上手いこと視覚化していたのも、非常に面白かったです。
ただ、アルティメットを変身形態のひとつとして扱っていたのにはちょっとモヤっとしました。あれは潜在能力を極限まで引き出されて「変身する必要が無い」状態な訳で、だからそもそも超サイヤ人になる必要もないはずなんだよなぁ、という…
…おっと、またメンドクサイオタクが出てきてしまった、イカンイカン。
ずっと可愛いパンちゃん
悟飯くんの娘、パン(声:皆川純子)。『神と神』のときはまだビーデルさんのお腹の中でしたが、本作では3歳になり、幼稚園に通っています。
このパンちゃんが、もーとにかくずっと可愛いんですよ。修行中のピッコロさんに水を差し入れしてあげる場面では、「ピッコロさんが水しか必要としないのをちゃんとわかってるんだな…なんて聡明かついい子なんだ…」と思ったし、RR軍に誘拐されたフリをする作戦にもノリノリで協力してくれるとこでは、「なんて物分かりのいい素直な子なんだ…」ってなったし、終始可愛さが爆発しておりました。こんな可愛い子が娘だったら、そりゃ悟飯くんも命懸けで大切にするよなぁ。
最後は大怪獣バトル
最後の最後に出てくる、あのキャラ。
巨大な体躯に凄まじいパワー、モロに『シン・ゴジラ』な全身から発射されるレーザーと、ラスボスらしい大暴れっぷりでしたね。喋る事は無くひたすら叫んでるだけでしたが、ちゃんと声優はあの人なのもありがたい。もう結構な御年だろうけど、喉大丈夫かな…。
巨大化したピッコロさんとのバトルは、ひたすらピッコロさんがボコボコにされるだけとはいえ、さながら大怪獣バトルのようで見応えがありました。これまで宇宙規模の壮大過ぎるバトルの数々を見せてくれましたが、こうした巨体 vs 巨体な戦いって意外とDBでは無かったと思うので、逆に新しくて良かったと思います。
クライマックスでは、ボコられて白目を剥くピッコロさんを見て“プッツン”きちまった悟飯くんが、セル編のような演出で覚醒、新たな姿へと進化します。悟空の「身勝手の極意」やベジータの「我儘の極意」とは違う、悟飯くん独自の進化、という点では好感が持てます。ただ、あの姿はなんというか、海外ファンの二次創作である『ドラゴンボールAF』みたいだな…と思ってしまいました。個人的には要らなかったかな…。
キメ技があの技なのとか、「こっそり練習してました」の言葉にニヤけが止まらないピッコロさんとかは…最高でしたよ、えぇ(満面の笑み)。
おわりに
そんな感じで、非常に楽しい映画でした。
DBを読んだことが無い、という方でも気軽に見れる作品になっていると思いますし、これからも語り継がれていくであろう往年の名作、それに触れるきっかけとして、本作はふさわしいものになっていると思いました。
…つまりアレだ、日本男児は全員見ろ!!(暴論)
ということで、映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』の感想でした。
ではまた。