GORGOM NO SHIWAZAKA

ゴルゴムのしわざか!

ドラマ『ミズ・マーベル』感想(ネタバレ)

Disney+にて配信中のドラマ『ミズ・マーベル』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

2023/01/06:目次を付けました。

マーベルコミックを原作とした複数の実写映画を同一の世界観で描くクロスオーバー作品群、それが『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』。

本作は、MCU初登場となるティーンエイジャーのヒーロー、ミズ・マーベルを主役としたドラマとなります。
2020年に発売されたゲーム『Marvel's Avengers』にもメインキャラとして登場しており、話題になりましたね。
個人的には、『マーベル ライジン』のアニメを最近視聴したので、そこでの活躍が記憶に新しいです。1エピソード10分くらいと、気軽に見れるのでオススメ。

↑ゲーム版。オンラインに登録したりするのがめんどくてやってない…。

ライジングの原作コミック。アニメはDisney+で見れます。

 

もくじ

 

ミズ・マーベルとは

彼女の最大の特徴は、パキスタンアメリカ人であり、ムスリム(イスラム教徒)であること。なんでも、マーベルコミック内でムスリムのキャラを主役とした作品は、これが初なんだとか。マーベルに限らず、全世界のスーパーヒーロー作品の中でも、ムスリムのキャラというのは相当珍しいのではないでしょうか。

また、アベンジャーズの大ファンであり、特にキャプテン・マーベルを尊敬している、というのも大きな特徴のひとつ。ミズ・マーベルというヒーロー名も、キャプテン・マーベルがかつて名乗っていたことに由来しています。何気にコミックでは、ミズ・マーベルを名乗った人物はほかに2人、つまり計4人いるらしいですね。

 

原作における彼女の能力は、自身の身体の大きさを自在に変えられる、というもの。手足をロープのように伸ばして敵を拘束したり、拳を大きくして強力なパンチをお見舞いしたり、体を小さくして敵に見つからないようにしたりと、使い方は様々。ゴムゴムの実の能力者とか言ってはいけない
また、顔や髪形、服装などを変化させる変身能力も持っており、他人に成りすますことも出来ます。
更に、ウルヴァリンのような治癒能力(ヒーリングファクター)も持っているなど、正面突破から潜入まで、万能にこなすことの出来る優秀なヒーローと言えます。

 

概要

そんなミズ・マーベルこと、カマラ・カーンを本作で演じるのは、パキスタン生まれのカナダ人、イマン・ヴェラーニ
彼女自身も根っからのマーベルファンであり、パキスタン出身という点も共通しているなど、これほどまでにカマラ役にふさわしい俳優さんは他にいないですよね。記者にMCUに関するクイズを出されてそれに即答していく動画がSNSなんかによく上がっているので、それを見れば彼女がいかに“本物”かがわかります(笑)

その知識を活かし、監督たちに様々なアイデアを提案するなど、製作方面にも深く関わっているそうで、既にトップスターの片鱗を見せ始めています。ほんと、毎回よくこんな逸材を見つけ出せるもんだ…。

 

そのほか様々な俳優さんたちが出演していますが、出演作とかを調べてもパッと出てこなかったので、割愛。
さっさと感想に参りたいと思います。

 

予告編


www.youtube.com

 

あらすじ

場所はアメリカ、ジャージーシティ

16歳の高校生、カマラ・カーン(演:イマン・ヴェラーニ)は、ごく普通の女の子。
彼女は熱心なアベンジャーズファンであり、特にキャプテン・マーベルには強いあこがれを抱いています。ファン・フィクション(二次創作)を積極的に行っており、アベンジャーズの活躍をイラストにして動画サイトに投稿したり、コスプレをしたりと、俗にいうオタク女子です。

よく空想にふける癖があり、そのおかげで学校の成績はイマイチ。スポーツも決して得意な方ではありません。校内にはオタク仲間のブルーノ・カレッリ(演:マット・リンツ)や、同じムスリムで親友のナキア・バハディール(演:ヤスミーン・フレッチャ)はいるものの、割と典型的なギーク(オタク)=スクールカースト下層の生徒、という感じでした。

カマラは、もうすぐ開催されるアベンジャーズ・コン”を楽しみにしており、そこで行われるコスプレ大会のために、大好きなキャプテン・マーベルの衣装を制作していました。しかし、母のムニーバ・カーン(演:ゼノビア・シュロフ)は、イベントへ行くことを認めてくれません。いろいろと策を講じるも母が首を縦に振る事は無く、カマラは最終手段としてこっそり家を抜け出し、ブルーノと一緒にイベントに参加。コスプレ大会では、個性を出すために祖母のサナ(演:サミナ・アーメッド)から送られた腕輪をつけて出場することに。

その腕輪を装着した瞬間、不思議な光が彼女を包み込み、謎のビジョンを目撃します。更に、手から光の結晶のようなものが発射され、セットの一部を破壊してしまいます。幸い、演出の一環と思われて会場は大盛り上がりするのですが、コスプレ大会に参加していたクラスメイトのゾーイ・ジマー(演:ローレル・リーチマン)が、破壊されたセット(ムジョルニア…w)に吹き飛ばされてしまいます。カマラが彼女を助けようと手を伸ばした瞬間、光が長く伸びた腕のようになって、助けることに成功します。何とか事なきを得たものの、逃げるように会場を後にするカマラとブルーノ。

いったい、カマラに発現した能力は何なのか。
そこには、彼女の一族にルーツがあるのでした――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

みんな可愛くて最高!

最初にイマン扮するカマラの姿を見たとき、「ちょっと原作のイメージと違うなぁ」と思ったのですが、いざドラマを見るとその明るいキャラクターもあって、「いやむちゃくちゃ可愛いな!」と評価が一気に変わりました。自身との共通点が多いからなのか、イマンはすごく自然体でのびのびと演じているように見えて、それがまた大変素晴らしかったです。

能力も、手足の大きさが変わるのではなく、光(ヌール)の結晶を生み出して、それが伸びた手足のようになる、という感じになっていて、キラキラしていて綺麗でした。(ちょっとグリーン・ランタンみたいだな…と思ったのは内緒)
足元に光を発生させて足場にしたり、光弾のように飛ばしたりと、独自のアレンジも面白かったです。ただ、変身能力はなさそうだし、普通に膝擦りむいたりしてたので、ヒーリングファクターもなさそう。まぁ、あんまり万能すぎても扱いに困るだろうし、良い判断かと。今後の楽しみにもなりますしね。

 

カマラの良き理解者であるブルーノも、とにかくいいヤツで最高でした。
中盤、転校生のカムラン(演:リッシュ・シャー)にカマラがメロメロになってる時も、露骨に対抗心を燃やしてわざと話に割って入ったり邪魔したりして、「も~~可愛すぎかよ~~~」って感じでした。

雑貨屋で働きながら、自分でスマートスピーカーを手作りしたり、授業中にカマラに話しかけられた際にめっちゃ真面目に授業を聞いてる描写があったりと、学費免除で工科大に行けるくらいの秀才、というのに説得力を感じたのもナイスでした。
ただ、「腕輪がパワーを与えているのではなく、腕輪がカマラ自身に宿ったパワーを呼び覚ました」とか、「カマラのパワーは遺伝的なものかと思ったけどそうではなく、突然変異(ミューテーション)のようだ」とか、やたら分析能力が高いのは流石に「いや天才過ぎるだろ…」と思いましたが…。

 

カマラの親友、ナキアは、部屋に入るなりベッドにボフーンって倒れこんで愚痴りだしたりと、カマラとの信頼関係が伝わってきて「なかよし…かわよ…」ってなったし、モスク(礼拝所)の男女格差をなくすために理事に立候補するなど、聡明且つ逞しい女性で、とても良いキャラクターでした。あとめっちゃ美人。

モスクにトラブルを持ち込んだカマラに怒ってるのかと思いきや、スーパーパワーの事を自分に内緒にしてたことに怒っていた、というのも、「えぇい、可愛すぎか!」となりました。

 

あと、スクールカースト上位のいけ好かないヤツと思ってたゾーイも、謎のヒーローの正体を知ってたのに、カマラの意思を尊重して黙ってくれてたことがわかったり、最後は一緒に戦ってくれたりと、「えっ、めっちゃいい子やん…可愛い…」って感じで、心を鷲掴みされました。

ラストで自分の動画にナキアを出すくらい仲良くなってるのも、「あー可愛い、ほんとご馳走様です」って感じでした。

 

他のキャラも、母ちゃんがカマラに厳しくしてたのは「子離れ出来てないから」とか可愛らしい理由だったし、父ちゃんはずっと優しくて可愛かったし、兄ちゃんとその婚約者はアホで可愛かったし、おばあちゃんは元気で可愛かったし、曾祖母のアイシャ(演:メーウィッシュ・ハヤト)は顔の造形が良過ぎて可愛かったし、モスクの人達もみんないい人で可愛かったし、登場人物全員が可愛くてホッコリしました。

あと、アラビア語圏での両親の呼び方、アミ(母)、アブー(父)も、なんかすごい可愛くて良かったです。

 

自身のルーツを探る物語

お話としては、カマラに発現した能力の秘密を解明していくのを主軸として、家族との絆、学校での青春、現代社会における数々の問題、といった要素をブレンドしたストーリーになっていました。また、序盤はブルーノ、中盤はカムラン、後半はレッドダガーカリーム(演:アラミス・ナイト)と、いろんな男の子と出会って成長していく、“カマラの成長譚=ヒーローとしてのオリジン”としての側面も強いと思います。

全体を通して暗くなり過ぎず、若々しいエネルギーに満ちていて、未来への希望みたいなのが感じられて、見ていてなんだか元気を貰えるような、そんな気がしました。

 

第二次世界大戦後に起こった、インド・パキスタン分離の問題に深く切り込んでいたのも特徴的でした。僕はこんなことがあったなんて露知らず…。いやはやお恥ずかしい限り。こうした歴史上で実際に起こった出来事を上手く物語に絡めてくるのは、すごく勉強にもなるし、後世に残すという意味でも非常に良いと思います。

ただ、タイムパラドックス的な展開は、感動はしたけど、わかるようなわからんような…って感じでした。あまり必要性を感じなかったかな…。

 

コミックではイスラムが抱える問題に立ち向かっていく、といった要素も大きいらしいですが、本作ではその辺はマイルドになっていたように思います。モスク内の古臭い伝統や未だ残る男女格差をどうにかしようと、ナキアががんばる、カマラはそれを応援する、とかそのくらい。まぁ、この辺はいろいろと難しいと思うし、致し方なしかと。

 

イマドキなメッセージ

スマホでメッセージを送る時とかに、その内容がグラフィティ・アートのように壁や道路などに表示される演出は、視覚的にも面白い演出でした。なんというか、「若さ!」って感じがしてすごく良かったです(どゆこっちゃ)。カマラが黒板に書いたイラストで作戦の説明をするのも、非常に“らしく”て良かったですね。今後ほかのヒーローとクロスオーバーするときにもやって欲しい。

ラストでも、SNSで拡散して賛同者を集める、というイマドキな展開を見せてくれて、とても興味深かったです。あの場面を打開するほどのメリットがあったのかはイマイチわかりませんでしたが、「世論を味方につける」というのはなんとも今っぽいなーと。「普通とは何か」という問いに、「普通の人なんていない」という回答を用意するのも、現代的で良かったと思いました。

 

余談ですが、『スター・ウォーズ エピソード9 スカイウォーカーの夜明け』で、一度は主人公を“何者でもない人”としながらも、最終的に実は“シスの子供”だったと後付けすることで、血筋の物語に強引に立ち返らせたのが本当に不満でして。
EP8でせっかくスター・ウォーズを「スカイウォーカーの物語」から脱却して新たな可能性へ踏み込もうとしていたのに、というかEP9の副題もそういう意味だと思っていたのに、製作陣は自らそれを台無しにしてるじゃん、と。(何かと戦犯扱いされているEP8ですが、上述の理由もあって僕は結構好きです。)

でもその後リークされた当初予定されていた没案では、主人公は“何者でもない人”のままで、しかし最終的に「“何者でもない人”なんていない」という結論に辿り着く、というプロットがあったことを知り、「これや…これこそが見たかった展開なんや…」と非常に悔しい思いをしたことを、本作のラストを見て思い出しました。この没案の方が本来のEP9で、公開された方は幻だった…と自己暗示をかけることで、どうにか心の平穏を保っている感じです。

jp.ign.com

とまぁ何が言いたいかというと、本作ではしっかりと見たかったものを見せてくれたように思うので、個人的な満足度は高かった、ということです。

 

でもあえてマイナス面を言うとしたら、ちょっとフックが足りないというか、無難すぎるかなーという印象があります。インド・パキスタン分離の問題は非常に有意義なものでしたが、いかにもなキャラ、いかにもなストーリー、いかにもな問題提起、といった感じで、これといって突出したものが無かったように思います。うーんでもそんなこともないような気もするし…自分でもよくわからん。無理に捻り出そうとするのやめよう。

あとこれは気のせいかもしれないですが、最近のMCU作品としてはCGのクオリティが若干低いような、そんな気がしました。

 

追記:とか言うてたら、VFXスタッフの過酷な労働環境が問題になっているみたいですね。改善する気があるっぽい分、日本のアニメ制作現場とかよりかはマシな気もしますが…。とりあえず、もうちょっとペース落としてもいいのよ…?

theriver.jp

ヴィラン不在?

これといったヴィラン(敵役)がいないのも、本作の特徴のような気がします。

カムランの母であり、この世界と隣接する別次元、“ヌール・ディメンション”の人間であるナジマ(演:ニムラ・ブッチャ)と一応敵対することになりますが、その目的は多少強引な手段を使ってでも故郷に帰りたい、ってだけでした。ただまぁ、ナジマは殺人も厭わない人物だったし、自分がヌール・ディメンションに帰る際にこの次元が消滅する、と分かった上で行動してたっぽいから、ヴィランっちゃヴィランかも。
最後のカムランも、怒りで能力を制御出来なくなってた(もしくはヤケクソになってた)だけでしたし、決して根っからの悪人ではなかったと思います。

 

最後はダメージ・コントロールサディ・ディーバー捜査官(演:アリシア・ライナー)とひと悶着ありますが、彼女もカマラやカムランを捕まえるためには手段を選ばない、とかそんな程度でした。学校内にある色んな道具を駆使ししてやいのやいのするところは、なんというか『ホーム・アローン』っぽくて楽しかったです。しかし、彼らは能力者を生け捕りにして一体何がしたかったんでしょうね…?よくわからなかった…。

サディの上司であるクレイアリー連邦捜査官(演:アリアン・モーエイド)は、『スパイダーマン:ノーウェイ・ホーム』で、スパイダーマンをミステリオ殺害容疑で尋問した人だったらしく、後で知って驚きました。あと、ゾーイを尋問する時に、始めは「うっそ!あのゾーイ・ジマー!?いつも動画見てるよ!家族みんな大ファンなんだ!」みたいな語り口だったのが、急に真顔になって「…で、視聴数稼ぎにこんなことしたんだろ?どうなんだ?ん?」とか言い出して、その豹変ぶりにゾッとしました。大人って怖い…。

 

新たなヒーローの誕生

本作では、最後の最後までカマラのヒーロー名は決まってない感じでした(市民に言われていた“ナイトライト”はダサいからと拒否していた)。しかしラストで、父ちゃんに自身の名前の由来を聞き、「ウルドゥー語で“完璧(Perfect)”、”奇跡(Wonder)”、そして“感嘆(Marvel)”という意味があるんだ。つまり君は、産まれたときから私たちの“ミズ・マーベル”なんだよ!」と明かされたことで、遂にヒーロー名が決定。家族愛が伝わってくる、とても感動的なシーンでした。

 

最終話のミッドクレジットシーンは、家でくつろいでいたら突然腕輪が光りだし、クローゼットに吹き飛ばされるカマラ。出てきたその姿は、なんとキャロル・ダンヴァースキャプテン・マーベル(演:ブリー・ラーソン)、その人ではないですか!というもの。キャロルも何が何だかわからない様子で、慌ててその場を後にし、そして「ミズ・マーベルは映画『マーベルズ』で帰ってくる」というテロップが出て、ドラマは幕を閉じます。

カマラはどこへ行ってしまったのか…腕輪の力、というかカマラの力と、キャロルの力には何かしらの因果関係があるのだろうか…という、これまた先が気になり過ぎる終わり方で、「あぁもう、早よ続き見せてくれぃ!」となりました(大体いつもこうなる)。

 

おわりに

そんな感じで、感想は以上です。
なんというか、若い子に見てほしいなぁと、そんな風に思えるドラマでした。

これを見て、
カマラが好きなキャプテン・マーベルってどんな人だろ?
→映画『キャプテン・マーベル』を見る
→ニック・フューリーやコールソンがカッコ良かった!もっと活躍を見たい!
→映画『アベンジャーズ』を見る
→ほかのヒーローの活躍も見たい!
→ようこそMCU沼へ…
という連鎖が起きないかなぁ、とか期待しているオッサンなのでした。

ということで、ドラマ『ミズ・マーベル』の感想でした。

ではまた。