映画『マダム・ウェブ』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。
コロンビア・ピクチャーズとソニー・ピクチャーズが贈る、マーベルコミック原作のスパイダーマンに関わる様々なキャラクターを実写映画化したシネマティック・ユニバース、それが『ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)』。
2022年公開の『モービウス』に続くSSU第4弾となるのが、本作『マダム・ウェブ』です。
主人公が能力を開花させ、スーパーヒーローとなるまでのオリジンを描いているほか、マーベル映画史上初となる、本格的なミステリー・サスペンス作品(自称)となっています。
ホントは一番出したいであろうスパイディは、マーベル・スタジオにレンタル中なので今はまだ出せず。だから代わりにスパイディ絡みのキャラでユニバースを作り、今後実現するかわからないスパイディの登場に備えよう、ということで始まったSSU(個人の印象です)。
公開されるたびに酷評されている印象ですが、僕はこのシリーズ結構好きです。良くも悪くもシンプルなつくりで、肩肘張らずに見れるのがいいなぁと。実際そういう狙いもあるようですし、まんまと策略にはまっていますね。今後もがんばって続けていって欲しいです。
本来であればSSU第4弾は『クレイヴン・ザ・ハンター』でしたが、去年起きた脚本家や俳優たちのストライキの影響で、今年8月公開予定に延期。逆に本作は公開が若干早まり、結果として公開順が入れ替わったようです。ついでに『スパイダーバース』続編も、ストライキの影響で公開時期未定となってしまっています。本当ならもうすぐ公開されるはずだったのに…!早く見たいぜ…!
もくじ
マダム・ウェブとは
カサンドラ・ウェブ/マダム・ウェブの初登場は、1980年に刊行されたコミックから。
生まれつき盲目で、重症筋無力症のため自力で動くことが出来ず、生命維持装置付きの車椅子がなければ生きていけない体なんだとか。しかし、病気を克服しようと懸命に努力する過程で、未来予知・透視・テレパシー・幽体離脱などの様々な超能力を身に着けており、その能力でスパイダーマンの窮地を何度も救ったヒーロー、なんだそうです。
原作では高齢の女性ですが、本作では30代の女性にアレンジされています。盲目でもなければ動けない体でもなく、いたって健康な女性です。まぁ、主役にするならそりゃそうするよね。
概要
本作の特徴は、上で書いた通りマーベル映画史上初の本格ミステリー・サスペンス作品(自称)であること。そのため、アクションは少なめで、ドラマが主体の作品となっています。
また、時系列が違うので他のSSU作品との関連性がほぼないのも、特徴と言えるかもしれません。そのため、これまでアメコミ映画に触れてこなかった人でも気兼ねなく鑑賞できる作品になっていると思います。
監督は、イギリス出身のS.J.クラークソン。
劇場用映画の監督は本作が初だそうですが、数々のTVドラマで監督として参加しています。また、マーベル作品では、Netflixで配信されたMCUの派生作品、『Marvel ジェシカ・ジョーンズ』『Marvel ザ・ディフェンダーズ』の監督および製作総指揮を務めています。ちなみに現在はどちらもDisney+で配信中です。
脚本はクラークソンのほか、『モービウス』でも脚本を務めたマット・サザマとバーク・シャープレス、フィルモグラフィー不明のクレア・パーカーが共同で執筆しています。
主演を務めるのは、ダコタ・ジョンソン。
2015年公開の『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』をはじめとする、『フィフティ・シェイズ』シリーズ3部作で主役を務め、ヌードやラブシーンに挑戦し話題となりました。ちなみに彼女の母の再婚相手はスペインの名優、アントニオ・バンデラスだそうで、継父という間柄になるそうです。2015年に離婚されているそうなので、継父“だった”と言った方が正確かもしれません。
本作のヴィラン(敵役)を演じるのは、タハール・ラヒム。
中東系っぽい名前ですが、フランス出身の俳優さんだそうです。もともとはフランスで俳優として活動していましたが、現在はアメリカを中心に活動中の模様。昨年公開された伝記映画『ナポレオン』では、総裁政府のメンバーであるポール・バラスを演じました。
そのほか、TVドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』などのシドニー・スウィーニー、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』などのセレステ・オコナー、『トランスフォーマー/最後の騎士王』などのイザベラ・メルセドらが、主要キャストとして出演しています。
予告編
あらすじ
2003年、ニューヨーク。
キャシーことカサンドラ・ウェブ(演:ダコタ・ジョンソン)は、救急救命士として忙しい日々を送っていました。ある日、キャシーは救命中に橋から海に転落し、心肺停止に陥ってしまいます。相棒のベン・パーカー(演:アダム・スコット)の処置により九死に一生を得たキャシーは、それ以来、謎のビジョンを見るようになりました。
後日、電車に乗り込んだキャシーは、またビジョンを見ます。それは、3人の少女が謎の男に殺害される、というもの。ビジョンの正体がわからず戸惑っていると、先ほど見た少女たちが電車へ乗り込んできて、更に男も隣の車両にいるのを発見。まさか、自分は未来を予知しているのか…。キャシーは咄嗟に少女たちを電車から降りるよう促します。それを察した男は、超人的な力で少女たちに迫ってくるのでした。
果たして、少女たちを守り切ることが出来るのか。
そして、彼女に発現したこの“力”の秘密とは――。
というのがあらすじ。
本編感想
だいぶ酷評されているらしいですが、僕は割と好きです。
最初にはっきり言っときますが、本作はミステリー・サスペンス作品とは程遠いかと思います。
ヴィランであるエゼキエル・シムズ(演:タハール・ラヒム)の目的は最初から明かされているし、キャシーの母がコイツに殺害されているのも冒頭で出てきます。「3人の少女とキャシーには接点があった」というのも別にミステリーでもなんでないですし、キャシーの出生の秘密はあまりにも唐突に出てきて「いや知らんし」ってなりましたし。全体的にひたすらエゼキエルから逃げているばかりで、“謎”と呼べる要素が残念ながら皆無なんですよね。
では肝心要のスーパーヒーロー映画としてはどうなのかというと、そちらも微妙と言わざるを得ない…。
思っていたよりはアクションシーンがあった印象ですが、それはほぼエゼキエルが頑張ってアクションしているものであり、あとは未来のビジョンで少女3人がスパイダー・ウーマンになってうんぬん、というのと、クライマックスに少々、という感じ。このクライマックスの未来予知アクションは、ニコケイの『NEXT-ネクスト-』を彷彿とさせて良かったんですが、均等な距離感と絶妙なタイミングで全員がピンチに陥るところは、わかりやすすぎて逆に笑えました。んなアホな。
なんだろう、最初はいつも通りヒーローアクション映画として作っていたけど、あまりにもキャスト陣が動けなさすぎるので、半ばヤケクソ気味に「ミステリー・サスペンス映画です!」って言ってるんじゃないかと邪推してしまうような、そういう印象を受けました。
なんだかこのままだと「いやお前も悪い意見ばっかやないかい、どこが好きなんじゃい」と思われそうですね…。
好きな点としては、3人の女の子がとにかくかわいかった、という点。
まず、3人がそれぞれ全く異なるキャラクターなのがいいですよね。
引っ込み思案なジュリア・コーンウォール(演:シドニー・スウィーニー)。
ハッキリした性格のマティ・フランクリン(演:セレステ・オコナー)。
クールなアーニャ・コラソン(演:イザベラ・メルセード)。
性格も境遇も全く異なる3人が、運命の糸に導かれるように出会い、いつの間にか仲良くなってダイナーのテーブルの上でキャッキャと踊ってみたり、モーテルでは3人でくっついて寝てたりと、めっちゃくちゃかわいかったです。
僕がいつも提言している「女の子がかわいい作品は名作」というジンクスは、本来は「名作に登場する女の子はかわいいことが多い」という意味合いですが、本作においては「女の子がかわいけりゃ内容がどうあれ名作に違いない」ということになります(暴論)。どういうわけかみんな無条件にキャシーを信じちゃうのは、スパイダーセンスのなせる業なのか、ポリコレ的なサムシングなのか。でもそれもかわいいので許しちゃう。
今後もしSSU作品同士のクロスオーバーが実現した際には、マダム・ウェブよりもこの子たちが出張ることになりそうですね。彼女たちの本格的な活躍が楽しみです。まぁ、実現するかは非常に怪しいところですが…。
あとは、変に奇をてらいすぎないとことか、SSU作品らしくて個人的には良かったです。2時間弱とSSUにしては上映時間が長めですが、シリーズおなじみのシンプルなつくりなので、難解さはなく、サラッと見れるかと思います。
それから、「スーパーヒーロー作品でミステリー・サスペンス作品をやる」という、新しいことにチャレンジしようという気持ちはとても良いと思います。結果としてミステリーでもサスペンスでもなかったですが、そのマインドは評価したい。
…ってこれ褒めてるのだろうか?
おわりに
こんなもんにしときます。
なんかあんまり良い意見を書けなかったな…。好きなのは本当なんです、信じてください。
主演俳優に「二度とアメコミ映画には出演しない」と言わしめるほど本作は大失敗しているようですが、そうした評価を気にせず、あまりハードルを上げ過ぎずに鑑賞すれば、きっと楽しむことが出来ると思います。批評家の意見をあまり真に受けず、面白いか面白くないかは、ぜひ自分の目で確かめて欲しいです。
ということで、映画『マダム・ウェブ』の感想でした。
ではまた。