映画『PERFECT BLUE』(4Kリマスター版)の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。
『PERFECT BLUE』は、1997年に公開された日本のアニメ映画。
1991年に刊行された竹内義和著の『パーフェクト・ブルー 完全変態』という小説が原案となっている、サイコホラー作品となっています。当時としてはまだ新しいジャンルだったサイコホラーをいち早く取り入れ、日本のみならず世界各国で高い評価を獲得しました。
どうやら、原案となった小説と映画はかなり内容が異なるらしいですね。僕は読んでないですが、小説はもっとストレートなスプラッターホラーらしいです。
それと、同じ作者の書いた小説を原作にした『Perfect Blue 夢なら醒めて』とかいう似たような名前の実写映画もあるらしいですが、それはまた全然別物なのだとか。
また、『ブレイブ・ストーリー』や『ソロモンの偽証』などで知られる宮部みゆき氏も『パーフェクト・ブルー』という小説でデビューしており、ドラマ化などもされているらしいですが、こちらはミステリーものだそうです。
そんな本作。
25年前の割と古い映画ですが、今年8月にマッドハウス50周年記念の上映イベントにて4Kリマスター版が上映されたのを皮切りに、期間限定で劇場上映されることとなりました。僕はずいぶん昔にDVDレンタルして鑑賞していましたが、思い出すたびに身震いするほど大好きな作品だったので、このチャンスを逃す手はないと思い、映画館へ足を運んだ次第。
というか、上映イベント行きたかったな…。情弱なのでイベントの存在を知らなかった…。
もくじ
概要
監督は、今は亡き奇才、今敏(こん さとし)。
元々『AKIRA』などで知られる大友克洋氏のアシスタントをしながら漫画家として活動をしており、大友さんが手掛ける『老人Z』や『MEMORIES』といった作品でアニメ業界に参入。その後、『機動警察パトレイバー2 the Movie』やOVA版『ジョジョの奇妙な冒険』などで実績を積み、本作で映画監督デビュー。ほかにも、『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』などの作品を世に送り出しました。しかし2010年に、膵臓癌により46歳という若さでその生涯を終えます。今も存命であれば、間違いなく日本、いや世界を代表するアニメ作家になっていたことでしょう。本当に、本当に惜しい才能を亡くしたものです。
脚本は、『キノの旅』や『夏目友人帳』などの脚本も執筆している、村井さだゆき。
アニメ制作は上で触れている通り、現在も第一線を走り続ける老舗制作スタジオ、マッドハウス。
古くは劇場版『エースをねらえ!』から、最近では映画『金の国 水の国』やTVアニメ『葬送のフリーレン』など、話題作を数多く手掛けています。
声優陣は、『カードキャプターさくら』の大道寺知世役や『新世紀エヴァンゲリオン』の委員長こと洞木ヒカリ役などで知られる岩男潤子や、『ポケットモンスター』のサトシ役でおなじみの松本梨香らが出演しています。
予告編
あらすじ
アイドルグループCHAM(チャム)の元メンバー、霧越未麻(声:岩男潤子)。
グループを脱退し、アイドルから女優への転身を計る彼女は、レイプシーンの撮影やヘアヌード写真集のオファーなど、アイドル時代からは考えられないような仕事にも懸命に向き合い、少しずつ結果を残していきます。
しかし、本当にこれで良かったのかといった迷いや、つきまとってくるストーカーへの精神的苦痛などから、何が現実で何が現実でないのかがわからなくなり、自身の幻影を見るなど精神が不安定になっていくのでした。
そんな中、彼女が出演したドラマの脚本家など、未麻に関わりのある人物が次々と殺害される事件が発生し――。
というのがあらすじ。
本編感想
社会人になって間もなくくらいだったかな。TSUTAYAを適当にブラブラして気になった映画をレンタルして見るのにハマっていた時期がありまして。その中で、たまたま目に留まって借りたのが、大友さんが製作総指揮・総監督を務めたオムニバス映画、『MEMORIES』だったんです。大友さん原作の3つの漫画をオムニバス形式でアニメ化したもので、巷で「作画がすごい!」とよく言われるのが『Episode.2 最臭兵器』というお話なのですが、僕が一番琴線に触れたのは『Episode.1 彼女の想いで』というお話でして。なにがどう良いのかを言葉にするのは難しいのですが、とにかくすごく感動してしまったんです。秀逸な脚本とか、幻想的な世界観とか、タイトルに隠された伏線とか、そういったところが悉くツボにはまったんだと思います。
で、それの脚本・美術設定・レイアウトを担当したのが今さんだと知り、この人の手掛けた作品を見てみたい!となって後日『PERFECT BLUE』をレンタルしたが最後、もう完全にドハマり。ほかの今監督作も一気にレンタルして、そのどれもがまー素晴らしいのなんの。『東京ゴッドファーザーズ』とか、クリスマス・ムービーとしては『ホーム・アローン』を超えるくらいに好きかもしれない。金ローはクリスマスシーズンは毎年コレを放送すべし。午後ローでもいい。TVアニメ『妄想代理人』だけ近所のTSUTAYAに置いてなくて未だ未視聴なので、いずれ見なくては。
とまぁそんな感じで、今敏作品は大好きなんですけど映画館で見たことはなかったので、4Kリマスター版が上映されるこの機会に見てきたわけなんですけども。夜勤明けの疲れがピークの状態での鑑賞となり、見る直前まで体調最悪の状態でした(チャンスがこの日しか無くて…)。なので、上映途中でも本当にヤバい時には躊躇せずに退席しようと覚悟して臨んだんです。でも不思議なもので、見終わった後はすごい体調がよくなってました。鑑賞中は自分の体調とかすっかり忘れて、映画に没頭していたおかげかもしれません。多少の体調不良は面白い映画を見れば吹っ飛ぶという、新たな知見を得ました(笑)
それと、劇場はギッチギチの満席でした。どうやら都内の劇場は軒並み同じような状況のようです。ほかの新作映画の空き状況を見るとそこまで混んでいるわけではなかったのに、本作だけ異様に混んでいて驚きました。普段は人口密度が高いの嫌なタイプの人間(ド陰キャ)なのですが、今回ばかりは僕以外にも今敏作品が好きな人いっぱいいるんだなぁと、なんだか嬉しくなったり。元々本作のファンの人が未見の友達を連れてきているのも散見されて、鑑賞後に劇場を出る時に「うわー、マジ面白かったわ。(連れてきてくれて)ほんとありがとう」みたいなことを話している人もいて、これまた嬉しくなりました。
…えぇ、もちろん僕はぼっちでの鑑賞でしたとも(泣)
作品自体の感想としましては、はっきり言って本作はかなり怖い映画だと思います。
それも、いわゆる“ジャンプスケア”と呼ばれる、いきなり目の前に大きな音と共に恐ろしい映像が映し出されるような、ビックリさせることで恐怖を表現する類のものではなくて、人間の狂気的な部分を描いていたり、現実と虚構の境目がどんどん曖昧になっていったりといった、不安がジワジワとずっと続くタイプの作品です。『ファイト・クラブ』とか割と近いかもしれない。小心者の僕はジャンプスケアは苦手ですが、本作みたいなホラーよりもスリラー寄りなのは割と好きなタイプです。こういった映画がアニメ作品で、しかも「インターネット?なぁにそれ?」みたいなセリフが出てくるような時代に生み出されたというのは、本当に驚くばかり。
それから、本作は意図的に「わけわからなく」作られているような気がして。それによって、「何が本当で、何が嘘なのかわからない」という主人公の精神状態を追体験できるようになっているのがすごいなぁと。「10分程度しか記憶を維持出来ない」という主人公の状態を追体験出来る『メメント』とかと似たような感覚を味わえる、といいますか。(『メメント』、本当に大好きな映画なので恐らく今後も定期的に布教していくと思いますが悪しからず)
で、あの時やこの時の出来事が現実なのか虚構なのか、明確な種明かしは劇中でされないんですよね。ドラマの中の出来事なのか、現実に起こったことなのかあやふやなところも多いですし、カメラマンの人を殺害したのが誰なのかとかちゃんと説明されないままだったりしますし。
ですが、その「わからないまま」というのがまた独特な余韻を残していて良いんですよ。例えば『13日の金曜日』のジェイソンのような、犯人側に主眼を置いている作品ではなく、本作は「犯人にターゲットにされた主人公の精神がいかに壊れていくか」に重きを置いていて、それが「現実と虚構を曖昧にする」という演出によって表現されているので、非常に理にかなっているといいますか。ラストの未麻のセリフがどういう意味なのかを考えさせられるのにも一役買っているようにも思えて、なんともたまらんのです。最終的に黒幕もちゃんと明らかになりますし、語られないけど見てれば大体わかるように出来ているので、消化不良感は感じないかと思います。
『パプリカ』も、夢の世界が現実に浸食してくるようなお話なので、監督はこういうの好きなのかもしれないですね。
おわりに
こんなもんにしときます。
僕の中で下火になっていた“今敏ブーム”がまた再燃してきてヤバイ。とりあえず、今監督作品で唯一見れていない『妄想代理人』がHuluで見れるらしく、Disney+とのセットプランで加入しようか迷っていたところだったので、加入して見ようと思います。本作もHuluなどで見れますので、気になった方はぜひ見てみてください。
ということで、映画『PERFECT BLUE』(4Kリマスター版)の感想でした。
ではまた。