GORGOM NO SHIWAZAKA

ゴルゴムのしわざか!

ドラマ『シークレット・インベージョン』感想(ネタバレ)

Disney+にて配信中のドラマ『シークレット・インベージョン』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

2023/07/29:思い出した点を追記しました。

マーベルコミックを原作とした複数の実写映画を同一の世界観で描くクロスオーバー作品群、それが『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』。

本作は、MCUにおいて非常に重要な立ち位置のキャラクター、ニック・フューリーを主人公としたドラマ作品になります。
誰も信用出来ない状況の中、密かに、しかし確実に侵略されていく地球を救うため、孤軍奮闘するニックの姿が描かれています。

 

マーベル・スタジオ製作のドラマシリーズは、昨年末の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデースペシャ』以来であり、連続ドラマでいうと『シー・ハルク:ザ・アトーニー』以来、およそ10ヵ月ぶり。時の流れが早すぎて、10ヵ月前がつい先日のことのように思える…。

 

もくじ

 

ニック・フューリーとは

MCUにおけるニック・フューリーは、アベンジャーズ計画”を始動させ、ヒーローたちをチームアップした立役者です。

秘密組織S.H.I.E.L.D.(シールド)の長官として、MCU1作目『アイアンマン』のポストクレジットで初登場。S.H.I.E.L.D.崩壊後もヒーローたちを陰からサポートする、戦隊ものでいう司令官ポジションのキャラクターとなっています。2019年の『キャプテン・マーベル』では、S.H.I.E.L.D.エージェント時代の若かりし姿が描かれました。

特殊な能力は持っていませんが、数々の戦争を経験し培った戦闘スキルと、優れた頭脳、高い指揮能力を持ち、様々な作戦や計画を立案し、執り仕切っています。味方にすら情報を漏らさず、目的遂行のためなら利用さえする冷徹な一面もありますが、誰よりも平和を望み、いかなる脅威にも立ち向かう強い意志を持った人物でもあります。

 

原作での初登場は、1963年に刊行されたコミックから。この頃は米軍のエリート部隊の一員という設定だったようです。
1965年刊行のコミックよりS.H.I.E.L.D.が初登場し、ニックはエージェントのひとりとして登場。以後は長官としての登場がメインになっていきます。

当初は隻眼の白人男性という外見でしたが、2014年のコミックで表舞台から身を引き、以降はスキンヘッドの黒人男性がその座を継ぐことになります。MCUでの登場に合わせての変更だそうですが、ある意味二次創作と言える映画化に伴って原作の方を変えるって、なかなか例を見ないのでは。

 

本作概要

そんなニック・フューリーがいよいよメインとなる作品が、本作。
対するは、『キャプテン・マーベル』などでも登場している、擬態能力を持った宇宙人、スクラル人たちです。どんな人物にも完璧に擬態出来る彼らなので、誰が敵で誰が味方かわからない、緊迫感のあるサスペンス・アクションドラマになっています。

 

主人公、ニック・フューリーを演じるのは、おなじみサミュエル・L・ジャクソン
数えきれないほどの作品に出演している、ベテラン俳優ですね。『スター・ウォーズ EP.1~3』では、「ノーギャラでいいからヨーダと共演させてくれ」と監督に直談判して役を獲得した、という話が面白いなぁと。アニメやコミック好きとしても知られ、アニメ『アフロサムライ』では主演とプロデューサーを務めました。また、千葉真一の熱狂的なファンだそうで、ニックのキャラクターはかつて千葉真一が演じた、柳生十兵衛を参考にしているんだとか。

そのほか、コビー・スマルダーズドン・チードルベン・メンデルソーンといった過去作にも登場しているキャストや、数々のTVドラマに出演しているキングズリー・ベン=アディル、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』のサラ・コナー役や『ゲーム・オブ・スローンズ』でメインキャストとして出演したエミリア・クラークなどの俳優陣が出演しています。

 

予告編


www.youtube.com

 

あらすじ

地球を離れ、長らく宇宙で活動をしていた、ニック・フューリー(演:サミュエル・L・ジャクソン)。

S.H.I.E.L.D.時代からの側近、マリア・ヒル(演:コビー・スマルダーズ)に招集され、地球へ帰還したニック。高い擬態能力を持つスクラル人が地球人に成りすまし、密かに地球侵略を進めていることを知り、かつてスクラルの将軍だった、現在はニックと協力関係にあるタロス(演:ベン・メンデルソーン)と共に、侵略を食い止めるため奔走します。

敵のリーダーは、かつてタロスの部下だった、グラヴィグ(演:キングズリー・ベン=アディル)。彼は地球を自分達の星にするため、地球人を滅ぼそうとしていました。また、グラヴィグのもとには、タロスの娘であるガイア(演:エミリア・クラーク)もおり、馬鹿な真似はやめるよう説得しようとするタロスにも耳を貸しません。

敵がどこに潜んでいるのかわからない状況の中、果たしてニックは彼らを止めることが出来るのか――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

上質なサスペンス

本作には、スーパーパワーを持ったキャラはほぼ登場しません。スクラル人も、地球人に多少毛が生えた程度の身体能力しか持っていないようです。そのため、ド派手なアクションシーンはほとんど無く、全編に渡り非常にリアリティのあるドラマになっていました。

また、第1話冒頭で『シビル・ウォー』や『ブラックパンサー』などに登場したエヴェレット・ロス(演:マーティン・フリーマン)が出てきた…と思ったら擬態したスクラル人だった、といったシーンや、後半ではあのジェームズ・“ローディ”・ローズ(演:ドン・チードル)までもがスクラルの擬態だったことが判明することからも、旧知の人物だからといって信用出来るわけではないと、本作が非常に緊迫感のあるドラマであることを印象付けていて良かったです。

 

ニックという人間

これまでのニックは、多少声を荒げることはあっても、あくまで冷静(冷徹)に指示を出し、目的のためなら手段を選ばない人物として描かれてきました。しかし本作では、加齢による体力の衰えや、感情的に言い争った後「何をやってんだ俺は…」と後悔する姿などが描かれており、非常に人間らしいニックの姿を見ることが出来ます。なかなか新鮮で、面白かったです。

何より、彼が既婚者だったというのには驚きました。しかも相手はスクラル人だし。
奥さんのプリシラ・フューリー(演:シャーレイン・ウッダード)は、優しく出迎えてくれたと思ったら急に「あなたが姿を消すから、私も自分の道を進むことにしたわ!」みたいなこと言ってキレだし、直後また笑顔になって抱きしめたりと、情緒は大丈夫なのか?と思うところはありましたが、ニックとの信頼関係が伝わってきたのは良かったです。

ところで、ニックはプリシラがスクラル人だということをはじめから知ったうえで結婚したんでしょうかね?それとも、後から気付いたけど愛情は変わらないし正体なんて関係ないや、って感じなんでしょうかね。まぁ、別にどっちでもええやん、って話なんですけど。

 

ビックリするほど重要キャラが○ぬ…

第1話ラストで、これまでずっとニックと共に活躍してきたマリアが、敵の凶弾に倒れてしまいます。超重要キャラの突然の死に、「えっ…ウソでしょ…?」と驚きを隠せませんでした。更に、『キャプテン・マーベル』や『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』などで存在感を発揮してきたタロスまでもが、戦いの中で命を落としてしまいます。ま、マジかよ…。

それほどの非常事態、ということなのかもしれませんが、もしかすると、おなじみのキャラが出続けることによるマンネリを打破するために、マーベル・スタジオは世代交代を推し進めようとしているのかも。いやまぁ、それもいいんですが、「うわーやめろー、好きなキャラをあっさり死なすのはやめてくれー」と古参のファンはどうしても思ってしまいますね。世代交代させるにしても、わざわざ死なせる必要は無かったのでは。

マリアの葬儀のシーンは、「頼む…嘘であってくれ…」と泣きながらずっと祈っちゃいましたよ…。死を偽装してうんぬん、みたいなニックの作戦であることを期待していましたが、そうではなかったようで、悲しみ。
そーいや、マリアもタロスも、しっかりと葬儀シーンが描かれていましたね。「彼らは完全に○にましたよー、もう復活することはありませんよー」ということでしょうか。

 

過去との戦い

スクラル人を地球へ連れてきたのは、他ならぬニック。
また、ニックは彼らに、自分に協力してくれれば、安住の地を用意すると約束していました。

その約束が果たされぬまま、ニックがサノスデシメーション(通称:指パッチン)などによって長らく不在となってしまったことも相まって、痺れを切らしたスクラルの若い衆が「自分達の暮らす場所は自分達で手に入れるしかない」と行動に出ることにした…というのが、全ての発端だったわけで。ニックの過去から現在に至るまでの行為が、今回の事態を招いてしまったわけですね。だからこそ、ニックは宇宙から地球へ戻ってきて、自らその清算をしようとする、と。ふーむ、なるほどね。

…って、悪いのはほぼニックやないかい。意外とやらかしまくってるんですよね、この人。
「つまり全部あなたのせい?」「あぁ、そうだ、その通り」みたいなやり取りがあって、素直に認めてるのだけは偉いな、と思ってしまいました。

 

クロスオーバー要素

ニック、マリア、タロスといった古参キャラ以外にも、いろいろな部分で他作品との関連性を匂わせており、ファンをニヤリとさせてくれます。

例えば、グラヴィグがスクラルにパワーを与えるために作らせた装置。あれがどういうものなのかはイマイチよくわかりませんでしたが、ヒーローたちが持っているスーパーパワーを解析し、その力を対象者に与えるもののようで、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のグルートや、『アイアンマン3』に出てきたエクストリミスなどの力をグラヴィグに付与していました。

最終話では、ハルクやらドラックスやら、多数のヒーローの能力を獲得していましたね。ゴツゴツした岩のような腕も出てきましたが、アレ誰の能力なんだろ…ザ・シング(ファンタスティック・フォー)はまだMCUには出てきてないし…コーグとか?

 

すごーくどうでもいいですが、ヒーローたちが流した血液などから採取したDNAのことを“収穫(ハーヴェスト)”と呼んでたの、本作を見たアラサーアラフォー辺りの男性は全員「重ちー?」と思ったことでしょう。

これね。(ジョジョ第4部より)

あと、『ブラック・ウィドウ』に登場した調達屋、リック・メイソン(演:O.T.ファングベンル)がまた出てきたのにはちょっと驚き。というか、あれ?この人もしかして…と思ったらやっぱりあの人だった、という感じでした。ニックにチャーター機を手配し、「やっぱヘリキャリアの方が良いなぁ」とかぼやかれてましたね。調達屋としてはかなり優秀なのに、いっつも損な役回りでかわいそう。

過去作見てないと楽しめないというわけではなく、本作だけ見ても十分楽しめる…けど、今やドラマまでしっかりとシリーズ追ってるの、歴戦のMCUファンしかいないんじゃないかな…。

 

すっごい消化不良…

第5話までは、かなり楽しんで鑑賞していました。
しかし、最終話である第6話は、すごくモヤモヤの残るものだったように思います。

 

まず、グラヴィグのもとへ向かったニック、しかしそれはガイアの擬態で、本物のニックは大統領のもとへ行っていた、というのはいいとして。

ニック(擬態)がわざわざ本物の“収穫(ハーヴェスト)”を持って行く意味もよくわからないし(出来れば説得したいと思い、誠意を見せるために持って行った、とか?)、そのまま2人でスーパーパワーを手に入れてドッカンドッカン大バトル!に発展するのも、正直うーん…という感じでした。このドラマでそういうの求めてないというか、そうならないようにして欲しかったというか。結局ガイアが勝ったからよかったものの、負けてたら最悪のヴィランが誕生していたわけで、ご都合主義的なものも感じてしまいますし。

 

その後、擬態されていた各国首脳は開放され、擬態していたスクラルを全員殺害、米大統領はスクラル人を地球から徹底的に排除することを宣言します。英首相とかが擬態されている中、米大統領はなぜか無事、というところは、ローディより大統領に擬態した方が手っ取り早かったのでは…?という思いもあって、なんとなくプロパガンダ臭を感じるな…と思っていましたが、こういう展開になるとは。

ここで、ニック&スクラル vs 地球人(アメリカ)、となれば面白くなった気がするんですが、ニックはプリシラと共にS.A.B.E.R.(セイバー)とかいう宇宙ステーションへ戻り、クリー人との和平交渉へ…という感じで終わるので、「えっ、これで終わり!?」という気持ちが拭えませんでした。ポストクレジットも無かったし、すごい消化不良感…。

シーズン2とかあればいいんですが、まだそういった情報は無いし、どうなることやら。

 

あ、そーいや擬態されていた人たちが解放されるシーンで、ローディだけが歩くのもままならないほど消耗していましたが、あれなんでなんすかね。彼だけかなり長いこと囚われていた、とか?

だとすれば一体いつから…?からの、『エンドゲーム』等で一緒に戦ってたローディも実は偽物だった…みたいな展開があれば面白かったと思いますが、特にそういった描写は無いのでわからずじまい。うーん、惜しいところが多いなぁ。

 

追記:ローディは『シビル・ウォー』で半身不随になっていたんだった…。すっかり忘れてました…。そりゃ歩くのままならないのも当然ですわ。
でも実際、「ローディいつから問題」はファンの間でちょっとした話題になっているみたいですね。「ふらついてたのなんで問題」が勘違いだとわかった今、僕はローディが擬態されたのはグラヴィグたちが本格的に行動を開始したタイミング=そこまで前じゃないんじゃないかと思います。少なくとも、『エンドゲーム』より前ってことはないんじゃないかと。

 

もちろん悪いところばかりではなくて、MI6エージェントのソーニャ・ファルワーズ(演:オリヴィア・コールマン)は、ソーセージでも切るかのようにナチュラルに指を切り落としたりと相当イっちゃってる人でしたが、そういう人物だからこそ逆に信用出来る、というのは納得度が高かったです。新キャラの中ではこの人が一番魅力的だったかと。

あとガイア役のエミリア・クラークは、幼女のようにも見えるし大人にも見えるしで、不思議な魅力を持つ俳優さんだなーと思いました。

グラヴィグは、イキリ散らかしたヤンキーグループのリーダー、という印象が最後まで変わらず…。

 

おわりに

はい、感想はこんな感じです。
概ね楽しめた、というのが率直な感想ですかね。すごく期待していた分、落胆もそこそこ大きかった、そんな印象です。

第1話のみ1時間弱で、以降は30分ちょい、という構成でしたが、1話ごとの時間をもうちょっと長く取って、もっと深く掘り下げて欲しかった、または「その先」を見せて欲しかった、と思うところがそこかしこにあったように思います。MCUの底力はまだまだこんなもんじゃないと思うので、ぜひシーズン2も製作していただいて、このモヤモヤをきれいさっぱり晴らして欲しいものです。

ということで、ドラマ『シークレット・インベージョン』の感想でした。

ではまた。