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ドラマ『ムーンナイト』感想(ネタバレ)

Disney+にて配信中のドラマ『ムーンナイト』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

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マーベルコミックを原作とした複数の実写映画を同一の世界観で描くクロスオーバー作品群、それが『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』。

この書き出しも久しぶり…と思ったけど、スパイディの記事書いたのほんの数ヶ月前なんですよね。去年が異常なペースだったせいで、感覚がおかしくなってるような気がします。とはいえ、間にちょこちょこSSU作品も挟まっているので、マーベルコミック原作の作品という点では、ずっと絶え間なく供給されているような感覚もあります。全く、いい時代になったものだ。

世紀末はとうに過ぎましたが…

タイトルの通り本作は、マーベルコミックに登場するヒーローのひとりである、ムーンナイトを主役にしたドラマになります。ムーンナイトの特徴はなんと言っても、解離性同一障害、いわゆる多重人格者であること。彼の中には複数の人格があり、時折それらを切り替えながら戦うというのが、原作における彼の戦闘スタイルとなります。一時期には、キャプテン・アメリカスパイダーマンウルヴァリンの人格を持っていた事もあるんだとか。

本作は、そんな多重人格者という設定を存分に活かしたアクション・サイコスリラーとなっており、これまでのMCU作品にはないサスペンスチックな作風になっているほか、精神に問題を抱えた人たちに対するメンタルヘルスといった点に関しても、丁寧に描かれたドラマとなっています。また、エジプト神話が随所に登場し、『インディ・ジョーンズ』や『ハムナプトラ』シリーズの様な、宝探し冒険ものとしても楽しめるような作りになっています。

正真正銘MCUのドラマシリーズである本作ですが、他の作品との繋がりは見事なまでに全くありません。「独立した作品にしたい」という製作陣の想いがあり、意図してそういう作りにしているんだとか。そのため、「この作品を楽しむためにはあの作品やこの作品を見とくべき」といった、通称MCUラソンも全く必要なし。「いっぱいありすぎてどれから見たらいいのかわからない」といった方でも、気兼ねなく見れる作品となっています。まぁ、他の作品とは毛色が違い過ぎるので、本作を見て「MCUってこんな感じなのかー」と思うのもまた違うような気がしますが…。

 

主演、および製作総指揮を務めるのは、オスカー・アイザック
スターウォーズ』エピソード7、8、9、通称シークエル・トリロジーの、ポー・ダメロン役が有名ですね。アメコミ作品でいうと、2016年公開の『X-MEN:アポカリプス』にて、ラスボスであるアポカリプスを演じていました。アポカリプス、原作だとサノス級の強敵なはずなのに、映画だとあんまり強さを感じなかったなぁ。すごい力を持っている描写とかは結構あったのに、それがかえってかませ犬感を増幅させていたような…なんでだろ…。よくわからん。少なくとも、ひとつの映画で終わらせてしまうのはもったいないなぁと思いました。

敵として立ちはだかる男を演じるのは、イーサン・ホーク
言わずと知れた名俳優ですね。色々出てるので、代表作といったら何になるんだ…?『レーニング・デイ』や『6才のボクが、大人になるまで。』でアカデミー賞にノミネートされたらしいので、その辺になるのかな。個人的には、『プリデスティネーション』という映画を最近見たので、印象に残っています。いろんな意味でイーサン・ホークのひとり舞台、って感じの映画で面白かったです。

監督を務めるのは、エジプト出身のハメド・ディアブ
カイロ678』や『クラッシュ』など、エジプト文化を描く映画を撮ってきた、新進気鋭の監督だそうです。本作もエジプトに深い関わりを持つ作品なので、ピッタリの人選ですね。
また、2話、4話では、『モンスター 変身する美女』や『アルカディア』等のアーロン・ムーアヘッドジャスティン・ベンソンのコンビが監督を務めています。見てない作品ばかりですが、調べてみるとなかなか面白そう。彼らの最新作『シンクロニック』は、主演がファルコンでおなじみのアンソニー・マッキーみたいだし、今度見てみようかしら。

 

とまぁ、前置きはこのくらいにして、ざっくりとしたあらすじと感想を書いていきたいと思います。

 

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国立博物館のショップ店員であるティーブン・グラント(演:オスカー・アイザック)は、睡眠障害に悩まされていました。朝起きると全く知らない場所にいたり、数日が経過していたりと、日常生活にも支障をきたすほどに。

ある日、目を覚ますと、またもや知らない場所にいました。手の中には、見覚えのない黄金のスカラベ。どこからともなく、不気味な声も聞こえてきます。更に、謎の男たちが銃を向けてきて、すごい形相で追いかけてくるではありませんか。訳も分からず町へ逃げ込んだスティーブンでしたが、そこにはアーサー・ホロウ(演:イーサン・ホーク)という謎の男が。先程自分を追ってきた男たちはこの男の手下らしい。アーサーに言われてスカラベを渡そうとした瞬間、またも気を失うスティーブン。気付くと、手下の男たちが倒れており、自分の手は血で真っ赤に染まっていました。いったい何が起こったのか?

どうにか追手から逃げ切り、日常生活に戻ろうとするスティーブンでしたが、ヤツらは職場である博物館にまでやってきます。巨大な犬のような化け物に襲われ、トイレに逃げ込むも、絶体絶命のピンチ。その時、鏡の中からもうひとりの自分である、マーク・スペクターが話しかけてきます。
「俺に任せろ。俺が救ってやる。」
その声に従い、意識をマークに預けると、彼は白いスーツとマントを身に纏ったダークヒーロー、ムーンナイトへと変身する――。

というのがあらすじ。

 

まずは各キャラクターについて。

気弱であまり仕事の出来る方ではなく、同僚のドナ(演:ルーシー・サッカレー)に怒られてばかりいる、国立博物館のショップ店員、ティーブン・グラント。しかし、歴史や神話、遺跡などに詳しく、その知識がストーリーの中で役立つことも。
彼のもうひとつの人格、それがマーク・スペクター。元傭兵で、コンスのアバターとしての契約を結び、ムーンナイトの力を授ったのはこの人格。戦闘に秀でており、敵に対しては容赦しない性格。

原作ではマークが主人格のようですが、本作ではスティーブンの状態から物語が始まるのが面白いですね。原作のスティーブンは富豪の人格らしいですが、ごく普通の人にしているのも特徴的。そうすることで、「何が起こっているのかわからないけど、何かとんでもない事態に巻き込まれている」という状況を一般人目線で表現出来るので、ナイスな判断ではないかと。

それと、やはりオスカー・アイザックの演技力がすごい。表情だけで今どの人格なのかがすぐにわかるし、ビックリしたときの反応(スティーブンはたじろぎ、マークは反射的に身構える)とか、僕は英語わかんないのでなんともですが、スティーブン状態の時にレイラに「何そのイギリス訛り!?」ってツッコまれたりと、しゃべり方も変えているようで、表現力がすごいな、と。おかげで、多重人格という設定に説得力が生まれているように思いました。

ムーンナイトに変身するときの、目が白く光って、包帯のような衣装を身に纏っていくシーンがまたカッコいいのなんの。3話でコンスがアレしちゃって、それ以降は最終話まで変身能力を失ってしまうのがなんとも惜しい。もっと活躍を見たかった。でもドラマとしては非常に面白いので、甲乙つけがたし。
ティーブンがスーツを召喚する時は、Mr.ナイトという、白い背広に覆面といった姿になるのもとても良い。レイラに「早く“スーツ”を呼び出して!」って言われて咄嗟に背広の方を思い浮かべたからこうなった、というのもまた面白い。防御力は高いけど、スティーブンの人格なので戦闘力はめっちゃ低い、というのも最高。でも最終話ではやたら強くなってましたね。

 

ティーブン/マークと敵対するのは、元々はコンスのアバターだったものの、現在はアメミットの復活を目論む、アーサー・ホロウ
イーサン・ホークの渋さ満点な演技で非常に魅力的なキャラになっていました。
アメミットは、神というよりは幻獣のようで、死者が冥界から転生する際に、真実の羽と死者の心臓を秤にかけて、心臓の方が重かった時にそれを貪り食う、という獣なんだとか。心臓を食われた死者は二度と転生することが出来ない=永遠の破滅(完全な死)、というところから、「将来悪人になる可能性があると見なされた者の命を奪う」という能力にアレンジされたようですね。うーん、実に面白い。

眠たくなっちゃいました。…ってこっちじゃねぇ。

マークと契約を結び、ムーンナイトの力を授ける、古代エジプトに伝わる月の神、コンス(声:F・マーリー・エイブラハム)。
頭が鳥の頭骨のようになっていて、身長はかなり高く、不気味な容姿。神話では隼の頭を持った姿で描かれているらしく、それが活かされているんでしょうね。夜に三日月の刃で罪人に制裁を与える恐ろしい神、と言い伝えられており、本作でも罪人を処刑する役割を担っています(直接手を下すのはアバターであるムーンナイト=マークの役割)。暦を司る神ともいわれているようで、古代エジプト時代の星座の配置を覚えている、というのもそこから来ているのかな。そーいや最終話で「夜空を司る神」って言ってましたね、
本作でのコンスは事あるごとに「殺せ!」とか言ってくるヤバイ神様ですが、マークにもスティーブンにも反発されちゃうし、自身が封印されることを承知の上でスティーブンに力を貸したりするし、どこか憎めないキャラになっていました。とはいえ、瀕死の状態で冷静に物事を考えている余裕なんてないマークに、更にダメ押しで弱みに付け込んだうえで契約するよう持ち掛けるなど、決して良い神様ではなさそうですが…。

 

ティーブンの前に現れる謎めいた女性、レイラ・エル=フォーリー(演:メイ・カラマウィ)。
考古学者兼冒険家であり、なんとマークの奥さんだったという、要素盛りだくさんの人。マークとは肩を並べ、スティーブンをグイグイ引っ張っていくような、非常に強くたくましい女性として描かれています。でも笑顔とかはとってもキュート。魅力も盛りだくさんなキャラになっていました。

最終話では、家庭と出産を司る女神タウエレト(声:アントニア・サリブ)のアバターとなり、まさかのヒーローに。『キング・オブ・エジプト』を思わせるコスチュームが非常にカッコよかった。この時の彼女はスカーレット・スカラベという名前らしいのですが、これは彼女の父親のモデルとなった人物のヴィラン名なんだとか。ドラマでは父は既に亡くなっており、葦の楽園(たぶん天国みたいなとこ)に導かれたらしいので、きっと善人だったんでしょう。まぁ原作でもエジプトを守護する戦士らしいので、一概にヴィランとも言えないですが。
タウエレトはやたら明るい性格で、すごいかわいかったですね。近所にいる気のいいおばちゃん、て感じ。

これが原作のスカーレット・スカラベ

これが本作に登場した方。めちゃめちゃカッコよくなってる。

 

続いて、ストーリーに関して。

1、2話は、スティーブンの主観で描くことで、自分の中に別の誰かがいる、という恐怖を描いたサイコスリラーになっていました。
3、4話は主観がマークに移り、アメミットの墓の場所を探すアクションアドベンチャーに。
そして4話の終盤から一気にテイストが変わり、マークとスティーブンが自身の内面と向き合う、メンタルヘルスの要素が強くなります。

特に、4話終盤からのどんでん返しにはビックリしました。
「これまでの話は全て妄想だったのか?」という切り口は、なんとも不気味でゾッとする展開でした。
そこから、自身の過去と向き合う中で明かされる、更なる真実。
これまでスティーブンが主人格のような描かれ方をしていましたが、実はマークこそが主人格(オリジナル)であり、弟の死をきっかけに精神を病んだ母親からの、激しい罵倒や暴力から逃れるために作り出した人格、それがスティーブンでした。
原作を知っている人からすれば「あぁ、やっぱりね」って感じでしょうが、知らない人からしたら衝撃でしょうね。あ、はい、僕がそうです。
そして、スティーブンが舟を降りる(いなくなる)事でマークの精神のバランスが取れるというのは、確かにスティーブンは本来存在するはずのない人格なので、非常に納得度の高い展開だと思いました。

しかし、このドラマはそんな安易な着地で終わりません。
最終話で、マークは自ら舟を降り、スティーブンに「お前がオレを救ってくれた。お前こそがスーパーパワーなんだ」と告げます。きっとマークにとってスティーブンは負の象徴みたいだったと思うのですが、そんなスティーブンを認め、許し、必要なんだと。
ティーブンも、当初はマークの事を“乱暴でよくわからない怖いヤツ”くらいに思っていたのが、最終的に自分の身を顧みずにマークを助けようとするまでになります。
問題を排除するのではなく、認め合い、許し合い、折り合いをつけるという、メンタルヘルスのひとつの形を見せてくれて、なんだかすごい感動しました。

その後は、まさかの大怪獣バトルに、マークとスティーブンを自在に切り替えながらのひとりバディアクション、レイラの翼を利用したカッコいいアクションと、大変見応えのあるアクションシーンが満載。「うおぉー!サイコー!」と言いながら見てました。

最終的にアメミットを再度封印することは出来たものの、かなり謎を残したままエンドロールに突入。「えっ?これで終わり!?」と思ってたら、ミッドクレジットにて、隠されていた第3の人格、ジェイク・ロックリーが一瞬だけ出てきて終わるという、再びサイコスリラーに立ち返るラストに。これには鳥肌ブワーでしたわ。

 

てな感じで、なんとも異色なMCUドラマで、大変楽しむことが出来ました。
MCU作品が好きな人もそうでない人も、新鮮な気持ちで見ることの出来るドラマとなっております。Disney+に登録している方は、是非見てみてはいかがでしょうか。

ドクター・ストレンジ/MoM』も見てきたので、そちらの感想記事も近々更新予定です。そちらも読んでいただけると非常に嬉しいです。

ということで、ドラマ『ムーンナイト』の感想でした。

ではまた。