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ゴルゴムのしわざか!

映画『ボーはおそれている』感想(ネタバレ)

映画『ボーはおそれている』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』で知られるアリ・アスター監督と、数々の名作ホラーを世に送り出してきた映画配給会社A24の3度目のタッグとなるのが、本作『ボーはおそれている』となります。

母の死の連絡を受けた主人公が実家へ帰るまでの道中を、現実と非現実がごっちゃになった独創的な映像で描いた、ホラー?スリラー?コメディ?作品となっています。公式が言っているジャンルは、オデッセイ(帰省)・スリラーというらしいです。

 

もくじ

 

概要

本作は、監督が2011年に発表した短編映画『Beau(原題)』という作品を、長編向けに作り直したものらしいです。以前はYoutubeで見れたようですが、今は見れなくなってるっぽいので僕は未見。機会があれば見てみたい。

 

監督・脚本は、最初に書いた通り、アリ・アスター
2011年から製作していた複数の短編映画が高く評価され、2018年の『ヘレディタリー/継承』で長編映画デビュー。ホラー映画ファンから絶賛されました。さらに、長編監督2作目の『ミッドサマー』は世界中で大ヒットを飛ばし、一躍その名は世界中に知れ渡ることとなりました。そして、本作は長編監督3作目となります。なんかもう既に巨匠っぽい印象ですが、まだ3作目なんですね。

また特筆すべき点として、『オオカミの家』を手掛けたクリストバル・レオンホアキン・コシーニャのコンビが、劇中のアニメーションパートを制作しています。いやー、『オオカミの家』を見て以降、本作が公開されるのを心待ちにしてましたよホント。感想記事に彼らが起用された際のエピソードも軽~く書いているので、併せてお読みいただけると嬉しいです。そしてあわよくば、より多くの人がこの作品に触れてくれることを祈るばかり。

blacksun.hateblo.jp

 

主演を務めるのは、ホアキン・フェニックス
兄のリヴァー・フェニックスをはじめ、姉や妹も俳優として活動しており、彼も幼少期から子役として活躍していました。その後、兄の早すぎる死やラッパーへの転向などで何度か俳優を引退したものの(ラッパー転向は映画の演出だったようですが)、2011年に復帰。2019年の『ジョーカー』でのアカデミー賞受賞が特に有名ですが、2000年の『グラディエーター』、2013年の『her/世界でひとつの彼女』など、高く評価されている作品は数知れずな名優です。

そのほか、『DUNE/デューン 砂の惑星』などのティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン、『プロデューサーズ』などのネイサン・レイン、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』などのエイミー・ライアン、『レ・ミゼラブル』などのパティ・ルポーンといった俳優陣が出演しています。

 

予告編


www.youtube.com

 

あらすじ

臆病な性格のボー・ワッサーマン(演:ホアキン・フェニックス)は、常に何かをおそれています。セラピストであるフリール医師(演:ティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン)のカウンセリングを受けていますが、不安は拭えません。

顔も知らない父の命日を間近に控え、母のモナ・ワッサーマン(演:パティ・ルポーン)の暮らす実家へ帰省する準備を整えていたボー。しかしトラブルに見舞われ、飛行機に乗り遅れてしまいます。謝ろうと家に電話をかけると、なんと母が亡くなったと告げられます。突然の報せに、激しく動揺するボー。一体どうして…?昨日も普通に話していたのに…。

どうにかしてボーは家へ帰ろうとしますが、その道のりは現実か、それとも悪夢なのかわからない、奇妙なもので――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

いやー、マジでわけわからなかったです(笑)

なので、「見た映画の備忘録」という当ブログの用途をフル活用し、劇中で起こった出来事が現実か否か、自分なりの解釈をつらつらと書いていきたいと思います。あくまで僕がこうかなと思っただけであって、正しい解釈とは限りませんので悪しからず。

 

現実(実際に起こったこと)
  • カウンセリングを受けて、薬を処方されている
    カウンセリングを受けていたこと自体はマジだったのではないかと。まぁ結局セラピストがアレだったので、薬もちゃんとしたものなのかヤバいものなのかわかりませんが…(“ジプノチクリル”という薬は実在しないっぽい)

  • 車に轢かれる
    医者夫婦の乗る車に轢かれ、彼らの家で看病を受けるのは本当だったんじゃないかと思います。でも、医者夫婦の家で起こった様々な出来事がどこまでが現実なのかはイマイチ判然としません。

  • 医者が監視している
    轢く前からそうだったのか轢かれて家に連れていかれたのがきっかけだったのかはわかりませんが、医者の旦那が母の差し金だったのは事実でしょうね。

  • 医者の娘の死
    円満に見えて実はかなり歪んでいた医者家族ですが、長男の死を受け入れられないのとか、ボーの登場でその歪みが修復不可能になっていく様とか、この家族のエピソードだけでホラー映画1本作れるんじゃないかってくらい内容盛りだくさんだった気がします。精神崩壊した帰還兵のくだりは、どこまで本当なんでしょうかね。

  • エレインとの出会い
    ボーの初恋の女性、エレインとの出会いのシーンは実際にあった出来事かと思いました。ドラッグをキメてる状態での回想なのでいかにも幻覚っぽいけど…。

  • 森に迷い込む
    迷い込んだこと自体は現実かなと。ただ、そこで起こったことがどこまで現実だったかは…。

  • ヒッチハイクして実家に辿り着く
    ここ、めっちゃあっさりしてましたね。要は「本当はこれくらい簡単に行けるものであり、劇中で起こったあれやこれやはボーの現実逃避や言い訳を映像化したもの」ということかな、と思いました。

  • 母の葬式
    葬式が行われたのは本当なんだと思います。ボーをおびき出す(言葉はアレだけど間違ってはいない)ためだけにこれだけのことをするって、なかなかヤバいですよね。

  • 死の偽装
    「“彼女”の方から志願した」とか、絶対そんなわけないよね…。金の力で丸め込んだのか、それとも何も知らない“彼女”の頭にシャンデリアを落としたのか…。どちらにせよまともじゃねぇ。

 

非現実(ボーの妄想や悪夢)
  • 住んでいる町の治安の悪さ
    意味わかんないくらい治安が悪いので、最初は「崩壊後の世界が舞台なのか?」と思ってしまいましたが、要は「ボーにはこう見えてる」ってことなんでしょう。なので、「音楽の音量を落とせ」という手紙が部屋に差し込まれるのも、水を買いに行った隙にぞろぞろ人が家に入っていくのも、恐らくボーの妄想かと。忘れ物を取りに行ったわずかな時間で家の鍵と荷物が盗まれるのとか、毒グモのくだりとか、風呂入ってたら天井に不審者が貼りついてたのとかは、よくわからん。ボーが轢かれたときに腹を刺され、手もめった刺しにされ…というのは本当かもしれない。

  • 森の中でのあれやこれや
    森をさまよう中でひとりの女性に出会い、奇妙なコミュニティへ案内されるくだり。あれどこまで現実なんですかね。個人的にはまるごとボーの妄想だったような気もしています。ひとつ言えるのは、『オオカミの家』コンビが手掛けるアニメーションパート、やたら尺が長くて見応え抜群でした。そりゃもう、「え、このパートまだ続くん…?」と思ってしまうほど…。監督の愛が伝わってくるようでした。

  • 人間の父
    森の中で出てきた父は、ボーの「こうあって欲しい」という願望が生み出したものでしょうね。医者の家の庭に一瞬映り込んでたり、森でもチラチラ見切れてたり、普通にコエーのよ。

  • アレの父
    天井裏にいたアレ、マジで何だったんでしょうね…。あそこだけリアリティラインがぶっ壊れててちょっと笑えてしまいました。「女性とヤると死ぬ」と言い聞かされてきたボーの恐怖心の具現化、とかなのかな。
    というか、母がボーにそんな意味わからんこと言い聞かせてたのは、ボーが自分以外の女性のものになるのが許せなかったからなのかな、とか思ってみたり。

  • ラストの裁判っぽいヤツ
    「ボーが犯してきた罪を暴かれる」のは本当でしょうが、あんな仰々しいのはそれを追及されるボーの心情を表したものなのでしょう。エンドロールに突入して、「この後何かあるのかな」と思って最後まで目を凝らし続けたら、そのまま終わって「そのまま終わるのかよ!」となりました。

 

おわりに

「母の強すぎる愛を疎ましく思う臆病すぎる男が、母を避けつつ人に迷惑をかけないよう生きてきた結果、知らず知らずのうちに自身が犯してきた罪を母によって暴かれ、精神崩壊する」というのが、本作の真の姿なのかなーと僕は思いました。僕は割とボーに近い境遇と性格なので、こうしていろいろ整理した後はボーにすごく感情移入できます。さすがにあんなに酷くはないですけどね…。

僕が観賞したTOHOシネマズ新宿では、まだ公開から間もないこともあってかほぼ満席でした。ホアキンアリ・アスターのネームバリューのなせる業、ですかね。(僕含め)一体どれだけの人が本作を理解できてるんだろうと思うと同時に、こういうめちゃくちゃ人を選ぶ作品にこれだけ人が入るってすごいことだなぁと。

あまりにも難解過ぎて本国での興行収入は伸び悩んでいるようですが、見る人の心に何かしら残してくれる作品だと思うので、ぜひ多くの人に見ていただきたいです。

ということで、映画『ボーはおそれている』の感想でした。

ではまた。