映画『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。
『トランスフォーマー』は、日本のタカラトミーとアメリカのハズブロが展開している、メディア・フランチャイズ。
元々は、トミーと合併する前のタカラが日本国内で展開していた『ダイアクロン』や『ミクロマン』などの変形ロボットの玩具を、業務提携したハズブロがアメリカで『TRANSFORMERS』の名称で発売したのが始まり。それがアメリカで大ヒットしたため、『トランスフォーマー』として日本に逆輸入され、シリーズ化されました。車や飛行機といった乗り物や、カメラやカセットデッキといった生活に身近なものが、組み換え無しの完全変形でロボットになる、というのが売りとなっています。
アメリカではコミックやアニメ化もされ、アニメは日本でも『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』のタイトルでTV放送されました。コンボイがたびたび崖から落ちたり、メガトロン様が理想の上司だったり、作画ミスでキャラがしょっちゅう増殖したりすることでおなじみですね(笑)
そして2007年には、スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮、マイケル・ベイ監督のもとで実写映画化され、斬新でスタイリッシュな映像や、ド派手なスペクタクルシーン、実在する車などが巨大なロボットに変形(トランスフォーム)するインパクト抜群のシーンなどが高く評価されました。映画はシリーズ化し、これまでに第1作~第5作が公開。更にスピンオフ作品の『バンブルビー』が製作・公開され、世界で最も成功した映画シリーズのひとつとして数えられています。
もくじ
概要
マイケル・ベイ監督の実写映画は上記の点などは評価されましたが、あってないようなストーリー、希薄なキャラクター性、長すぎる上映時間、シリーズが続くごとに進むマンネリ化など、あまりよく思われていない点も多々ありました。
そこで仕切り直しを図ろうと、前日譚であるスピンオフ作『バンブルビー』が製作されることとなり、監督は『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』などで知られるトラヴィス・ナイトへ引き継がれることに(ちなみにベイはスピルバーグと共に製作として携わっています)。それが功を奏したのか映画は非常に好評を博し、それを受け実写映画シリーズはこの映画をベースにリブート、という扱いになりました。僕はベイ監督の「力こそパワー!」って感じの、とにかく大爆発させときゃいいみたいな作風も嫌いじゃない、いやむしろ好きですけどね。
そんなこんなで、『バンブルビー』の続編として製作されたのが、本作『トランスフォーマー/ビースト覚醒』になります。
監督は、『クリード 炎の宿敵』などで知られる、スティーヴン・ケイプル・ジュニア。
脚本は、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』や『ジョン・ウィック パラベラム』の製作総指揮、『ザ・フラッシュ』の原案などを務めているジョビー・ハロルド、『ソフト/クワイエット』などの脚本を手掛けたジョシュ・ピーターズ、ダニエル・メテイヤー(フィルモグラフィー不明。ごめんなさい)、『バトルシップ』、『RED レッド』、『MEG ザ・モンスター』などのエリック&ジョン・ホーバーが共同で執筆しています。
ちなみに、マイケル・ベイは本作でも製作のひとりとしてしっかり名を連ねています。
人間側のキャストは、主演に『イン・ザ・ハイツ』などのアンソニー・ラモスと、『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』などのドミニク・フィッシュバック。
そのほか、主人公の母親に『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』でも主人公の母の声を演じているローレン・ヴェレス、主人公の弟にニコロデオンのアニメで主役の声を演じているディーン・スコット・バスケス、主人公の悪友にラッパーとしても活動しているトベ・ンウィーグウェ、といった俳優陣が出演しています。
ロボット側のキャストは、オプティマス役をアニメ第1作目より演じているピーター・カレン、ギレルモ・デル・トロ版『ヘルボーイ』で主演を務めたロン・パールマン、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』などに出演しているピート・デイヴィットソン、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で主演を務めたミシェル・ヨーら、こちらも豪華なキャスト陣です。
ちなみに日本語吹替版のキャストには、玄田哲章の続投をはじめ、アニメ『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』でも声優を務めた子安武人、高木渉らが久々に出演し、僕ら世代の大きなお友達の間で話題となりました。
予告編
あらすじ
地球をはるか離れた、自然豊かなとある惑星。
金属生命体トランスフォーマーのビースト種族であるマクシマルは、彼らの力の源であるエネルゴンが豊富なこの地を拠点としていました。
そこへ、デストロンを凌ぐほどの強大な力を持つ悪の軍団、テラーコンが攻めてきます。彼らを従えるのは、惑星を食料とするほどの超巨大な存在、ユニクロン(声:コールマン・ドミンゴ)。ユニクロンの狙いは、この星のどこかにあるという時空を超えることが出来る装置、トランスワープ・キーを手に入れ、別の次元の惑星を食らい尽くすことであり、そのためにテラーコンを遣わしたのでした。マクシマルは、故郷の星とリーダーであるエイプリンク(声:デヴィッド・ソボロフ)を喪うも、ユニクロンを時空の狭間へ閉じ込め、キーを持って別の次元へと逃げることに成功します。
時は流れ、1994年のニューヨーク。
地球にいる正義のトランスフォーマー集団、オートボットのリーダー、オプティマス・プライム(声:ピーター・カレン)は、キーが地球にあることを知り、メンバーを招集。悪の手にキーが渡らぬよう、生き残ったマクシマルの新たなリーダー、オプティマス・プライマル(声:ロン・パールマン)たちや、地球人のノア・ディアス(演:アンソニー・ラモス)とエレーナ・ウォレス(演:ドミニク・フィッシュバック)らと協力し、テラーコン軍団を迎え撃つのでした――。
というのがあらすじ。
本編感想
新シリーズの幕開けにふさわしい、最高に楽しい作品でした。
上映時間も2時間ちょいと以前よりかは短く、全体的に非常に見やすい作品になっているような気がします。
スーパービッグスケールの映像美
僕は今回、IMAX3D上映の、かなり前寄りの座席で鑑賞したのですが、これがもう、最高過ぎました。本作のようなド迫力の映像を売りにしている作品の場合は特に、視界いっぱいに画面が広がってくれる方が、没入感が高くて好きです(3D上映であれば尚更)。公開したばかりということもあり、ほぼ満席でそこしか取れなかったというのもありますが、むしろ大正解でした。
そーいやつい最近、何かのTVで「見たい映画があっても、一番後ろの席が空いてないと見に行かない」みたいなことを言っている人がいて、ほぇ~僕とは感性が真逆だなぁと思った次第。僕は前寄りの方が「映画を見た!」って感じがして好き、というタイプなので。
あ、あと、ユニクロンが地球に迫ってくるときとかの「ゴゴゴゴ…」って感じの重低音もかなり迫力があったので、鑑賞を予定している方は出来るだけ大きい画面と、出来るだけ良い音質のスクリーンで見た方がより楽しめるのではないかと思います。
なんというか、すごく「ちゃんとしてる」
本作はベイ監督の時のような「なんだかよくわからんけどずっと何かが爆発している」ような感じではなく、しっかりと整頓されたストーリーが展開されていると思いました。いや、何度でも言いますが、僕はベイ監督の作風大好きですけどね。
一応『バンブルビー』の続編という立ち位置の本作ですが、バンビーが人間のこと大好き、という点以外は直接的な繋がりは無いので、見てなくても全く問題ないです。前作の主人公、チャーリーが出てきてくれたら興奮必至でしたが、特にそんなことはなく、ちょっと残念。「お前はドライブインシアターで映画見るのやめろ」とか言われてるバンビーがめっちゃ可愛かった…。
人間キャラ、いる…?というのもシリーズお馴染みですが、『インディー・ジョーンズ』っぽい謎解き冒険パートがあったり、なぜかちょうど人間だけが通れる大きさのトンネルをわざわざ用意したりと、出来るだけ人間にも活躍の場を与えようという気概は感じました。ノアとエレーナの2人は、なんだかんだずっと活躍していた気がします。マクシマルは遥か昔から地球人と協力してキーを守り続けており、人間と深い信頼関係を持っている、というのも、人間の必要性を強調していて良かったです。
ただ、パワードスーツは正直いらんかったような気がします。あんまカッコよくなかったし…。
最高にカッコいいロボットたち
今回登場するトランスフォーマーは、オートボットが5体+α(みんなを輸送するだけのヤツが1体)、マクシマルが4体+α(冒頭で死ぬのが1体)、テラーコン軍団は3体と、要所は抑えつつも数を絞っていて、すごく良かったと思います。数が多いと迫力は増しますが、ひとりひとりにそれなりに見せ場を作らなきゃならなくなる=上映時間が延びる、というジレンマがありますもんね。…まぁ、これまでのシリーズのこと言ってるんですけど。
あれ、結局計10体以上出てるし、意外と多いかも?と思って『最後の騎士王』に出てきたキャラを数えてみたら、善悪合わせて30体以上登場してて「いや出スギィ!」となりました。
各ロボのデザインも、実写らしいゴチャメカ感はありつつ、『バンブルビー』の時のような原作に近いアレンジになっているのが素晴らしい。ホイルジャック(声:クリスト・フェルナンデス)はランチア・ストラトスからフォルクスワーゲンのミニバスみたいなのに変わってましたが、ゴーグルを付けたような頭部やシートベルトがサスペンダーのようになっていたりと、なかなか良アレンジだと思いました。そんな超カッコいいロボットたちが、いつものギゴガゴ音とともにトランスフォームするシーンは、嫌が応にもテンションが爆上がりします。
各キャラに関しても、オプティマスが「人間なんぞに」って感じで地球人をめちゃくちゃ下に見てるのとか、相変わらず短気で暴力的なのも、とても正義の味方とは思えなくて良かったです(笑)
バンビーは、中盤辺りで一旦殺されて終盤に復活してましたが、人気過ぎて出番減らされたのかな。いやでもむしろおいしいところ全部かっさらってたような気もする。
ノアと友好を深める、本作のもうひとりの主役というべきミラージュ(声:ピート・デイヴィットソン)も、チャラいキャラがなんだか新鮮で良かったです。命懸けでノアを守ろうとする姿にも、グッときました。吹替版は見てないですが、声優を務めたのは藤森慎吾とのことで、いろいろとピッタリなのではないかと。
あとはなんと言っても、本作の目玉であるビースト軍団、マクシマルの登場は最高の極み。
『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』は僕のトランスフォーマー初体験の作品であり、確か生まれて初めて家族以外の人と見に行った映画がビーストウォーズの映画だったこともあって、特に思い入れが強いシリーズです。地元では劇場でしか売ってなかったアメリカ版の玩具を、どうにかがんばって買ったりしたなぁ…懐かしい。
日本では“声優無法地帯”として有名なビーストウォーズですが、本作ではチーター(声:トンガイ・キリサ)とライノックスのセリフがほぼなかったのは少々残念ポイント。チーターはひとことふたことセリフがあったかどうか、ライノックスに関しては喋ってた覚えが無い…。ゴリラオプとエアレイザー(声:ミシェル・ヨー)はよく喋ってたんですけどね。
あとラストバトル以外、マクシマルがロボットモードに変形(マクシマイズ)しなかったのは、個人的にはアリ寄りのアリ。ロボ状態もいいけど、ビースト状態がみんなカッコ良過ぎるんじゃ…。エイプリンクさんのゴリラ状態での腕ソードとか、あまりのカッコ良さに痺れました。もしかして「エネルゴンの影響が強すぎてロボットモードを長時間維持出来ない」という、アニメの設定を踏襲したのかも、と思うとこれまたアツい。
めっちゃ強いテラーコン
今回の敵であるテラーコン軍団は、ユニクロンから力を与えられているため、ものすごく強いという設定。人数を3人に絞っているおかげで、咬ませ犬がおらず、みんなちゃんと強く見えたのがとても良かったです。あと何よりデザインがみんなカッコいい。
リーダーのスカージ(声:ピーター・ディンクレイジ)は、マスクが外れた際の顔がなんとなく実写版メガトロンに似ていたように見えましたが、気のせいでしょうか。スカージは終始オートボット軍団を圧倒していたものの、最期は「もう我慢ならん!ぶっこ○したるわ!」ってブチ切れたオプティマスに、腕切り落とされたり溶岩に顔押し付けられたり、散々な目に遭っててちょっと可哀そうになりました。実写シリーズの敵のボスは、最後に残虐非道なオプティマスによって酷い目に遭わされがち。
最後はまさかの…
ラスト、ノアはどこかの会社の面接を受けに来た…と思いきや、トランスフォーマーたちとの戦いを見ていたとある組織からの勧誘でした。その組織の名は、“G.I.ジョー”。
いやいや、確かに同じハズブロが展開しているおもちゃのシリーズですけども…。
例えば続編で『G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ』のキャラが合流してきたらめっちゃ興奮するのは間違いないですが、仮面ライダーにいきなりガンダムが出てきても「え、なんそれ…」ってなるのと同じで、「いや、住む世界違いません?」ってなってしまうといいますか。『スネークアイズ』の方はちゃんと単独でケリをつけて欲しいという思いもあって、嬉しいような嬉しくないような、複雑な気持ちになりました。
そーいや、『最後の騎士王』のラストで、実は地球の正体はユニクロンだった…!とかやってた気がしますが、それは無かったことになったんですかね。それはちょっと嫌だな…。
まぁ、本作とベイ監督のシリーズとの間には時系列に開きがありますし、その間に何かあったのかも、と思っときましょう。
おわりに
こんなもんにしときます。
気になる点もありますが、非常に満足度の高い作品でした。
続編!続編!ってやっていくと、どうしても前作以上のものを求められて、その結果ダラダラと間延びしているように見えたりマンネリ化したり、というのが前シリーズの敗因かと思うので、トランスフォーマーに関しては本作のようにあまり繋がりを気にしない、単独の映画として作った方がもしかするといいのかもなぁと、そんなことを思ったりしました。
とはいえ、続編に期待もしてしまうのが、悲しいSAGA。
ということで、映画『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の感想でした。
ではまた。