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映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』感想(ネタバレ)

映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

もくじ

 

概要

ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』『LAMB/ラム』など、ここ最近ヒット作に恵まれている映画配給会社、A24の最新作となるのが本作、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』です。やたら長いタイトルなので、日本では『エブエブ』と略されています。

MCUなどでも取り扱っているマルチバース(パラレルワールドのようなものと思ってください)を舞台とし、壮大でカオスな世界観が描かれているのが特徴となっています。アクションにも力が入っており、中国武術のカンフーなどを駆使した激しいアクションが楽しめます。
本国アメリカでも非常に高く評価されており、ゴールデン・グローブ賞4部門ノミネート2部門受賞、そしてアカデミー賞10部門ノミネート7部門受賞という快挙を成し遂げました。

 

監督・脚本は、ダニエル・クワンダニエル・シャイナートの、“ダニエルズ”と呼ばれるコンビ。
ミュージック・ビデオ出身の監督で、長編映画としては、2016年公開の『スイス・アーミー・マン』に続いて2作目。『スイス~』は、ハリー・ポッター役で一世を風靡したダニエル・ラドクリフが死体役で出演しているという非常にインパクトのある映画で、とても面白かったのを覚えています。

それから、アンソニー・ルッソジョー・ルッソが製作のひとりとして名を連ねています。
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』を監督し、MCUの地位を不動のものとした立役者の、あのルッソ兄弟です。本作の脚本に惚れ込み、製作に携わることを決めたのだとか。なんかこのお二方の名前があるだけで、とてつもない超大作に感じてしまうから恐ろしい…。

 

キャスト陣は、香港映画界の大スター、ミシェル・ヨーを主演として、ベトナム出身の中国系俳優キー・ホイ・クァン、母方が中国系のステファニー・スー、両親が香港からの移民であるジェームズ・ホンなど、アジア系の俳優が多数出演しています。

特にキー・ホイ・クァンは、子役時代に『インディー・ジョーンズ』や『グーニーズ』などに出演していましたが、長らく武術指導などの制作側に回っていたようで、本作で約20年ぶりに俳優としてカムバックを果たし、話題になりました。また、ステファニー・スーは、本来オークワフィナが演じる予定だったのがスケジュールの都合で難しくなり、代わりにキャスティングされたそうです。渡辺直美に見えるところが結構ありましたが、高い演技力でスターの片鱗を見せてくれました。

詳細はwikiなどを参照していただければ…ということで、さっさと感想に参ります。

 

予告編


www.youtube.com

 

あらすじ

アメリカでコインランドリーを経営しているエブリン・ワン(演:ミシェル・ヨー)は、日々の暮らしに疲れ切っていました。

店は常に自転車操業で、日々領収書の山とにらめっこする毎日。夫のウェイモンド・ワン(演:キー・ホイ・クァン)は優しい性格ではあるものの、イマイチ頼りがいがありません。また、娘のジョイ・ワン(演:ステファニー・スー)にはガールフレンドのベッキー・スリガー(演:タリー・メデル)がおり、頭の固い父、ゴンゴン(演:ジェームズ・ホン)にどう説明すればよいのか、頭を悩ませていました。

ある日、IRS(税務署のようなとこ)へ向かうエレベータの中で、突如ウェイモンドが豹変。「自分は“別宇宙のウェイモンド”だ」と言う彼は、全てのマルチバースを脅かす強大な悪、ジョブ・トゥパキという存在を倒せるのは君だけだと、エブリンに宇宙の命運を託してきます。突然そんなこと言われても無理無理…といった感じのエブリンですが、悪の刺客は次々と彼女に襲い掛かってきます。

しかもジョブ・トゥパキの正体はなんと、娘のジョイだったのでした――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

いやー、すごい映画でした。本当に見てよかった。

ハチャメチャが押し寄せてくるようなカオスな映像のオンパレードで、非常に楽しい鑑賞体験でした。マルチバースを舞台にしてるということは相当複雑な作りになっているのかと思いきや、特にそんなことも無く。恐らくそれは、マルチバースという壮大な風呂敷を広げてはいるものの、エブリンたちの「家族の物語」が大きな軸になっていて、そこからあまりブレることなく最後までストーリーが展開されるからなんだと思います。

日々の生活に忙殺され、やりたいことがあっても全て諦め、切り捨ててきたエブリン。「話がある」と言っても全く相手にせず、自分は必要とされていないんじゃないかと、離婚を切り出そうとするウェイモンド。自分のことを全く理解しようとしない両親に対し、反抗心を抑えられないジョイ。
そんな一家が再生していくまでの過程が描かれており、根っこにあるのがすごく普遍的なテーマなこともあって、わかりにくさはさほど感じず、映画に没入することが出来ました。

 

それともうひとつのテーマとして、「人には優しくしよう」みたいなのがあると思いました。

ジョブ・トゥパキの手引きで“真理”に触れたエブリンは、諦観の境地に至り、何もかもがどうでもよくなってしまいます。ある宇宙では凄腕料理人の秘密を公衆の面前で暴き、またある宇宙では店が差し押さえになり、元の宇宙でも離婚届にサインし…。

これで全て終わり…と思いきや、ウェイモンドの優しさが窮地を救ってくれます。そして、夫の優しさに触れたエブリンが再び娘を救うために奮起する展開は、とても感動的なものでした。そしてクライマックスでは、その優しさでもって敵として向かってくる人たちをどんどん救っていく、というのも本当に素晴らしいと思いました。

 

マルチバースへアクセスする際、別宇宙の自分自身と意識を繋げる“バース・ジャンプ”というものを駆使するのですが、ちょっと『ドクター・ストレンジ/MoM』のドリームウォークっぽいなと思ってしまいました。しかし、あっちが別次元の自分の意識を乗っ取るのに対し、本作では意識を乗っ取る場面もありましたが、どちらかというと「カンフーマスターとなった別宇宙の自分と繋がることで、こっちの宇宙の自分もカンフーを使えるようになる」といった、能力だけこっちに持ってくるようなものになっていたのが面白いなーと。各俳優の演じ分けも素晴らしかったですし、視覚的な演出もとても良くて、めちゃめちゃ引き込まれてしまいました。

バース・ジャンプをするためには、靴をわざと左右逆に履いたり、リップクリームを食べたりといった、「普段やらないような突飛な行動をする」必要がある、というのも、非常に斬新で面白かったです。そーいや、尻にトロフィー突っ込んで戦う人(ハゲじゃない方)を演じたのは、『シャン・チー テン・リングスの伝説』でデス・ディーラーを演じた人なんですよね。本作でもキレッキレのアクションを魅せてくれて最高でした。

 

で、ラスボスを倒すために別宇宙と繋がりまくってどんどん能力を持ってきた結果、ラスボスと同等の存在になってしまうという展開は、『仮面ライダー剣』のクライマックスを彷彿とさせて、なんかすごいグッときました。

『剣』をリアタイで見ていた当時は「これはこれでアリだな」くらいにしか思っていませんでしたが、「最強フォームが登場すると以降はそればっかりでしか戦わなくなる」という作劇上の都合みたいなのを、「アンデッド13体同時融合という無茶苦茶なことを繰り返すことで自身もジョーカーと同等の存在となり、敢えて決着を付けない事で人類滅亡を防ぐ」というラストに結び付けるの、今思うと本当によく出来てたなぁ。

 

そんなこんなで、これまで言葉を濁す事しか出来なかったエブリンは、ジョイにしっかりと向き合って自分の思いを告げます。ジョイもそれを受け止めて、家族の絆を取り戻すというラストには、思わず涙腺が緩んでしまいました。一番最初の家族でカラオケしてるカットは、もしかしてこの後だったのかな…と考えると、余計に感動してしまいました。

 

おわりに

感想は以上になります。

今年のアカデミー賞を総ナメにするほどの話題作ですので、気になった方はすぐに映画館へ行くことをおススメします。マルチバースに混乱せず、軸となる家族の物語に没入することが出来れば、きっと満足できると思いますよ。

ということで、映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の感想でした。

ではまた。