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ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』感想(ネタバレ)

Disney+にて配信中のドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

マーベルコミックを原作とした複数の実写映画を同一の世界観で描くクロスオーバー作品群、それが『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』。

本作は、MCUとしては新規のヒーローである、シー・ハルクを主人公にしたドラマになります。

原作では、1980年刊行のコミックにて初登場。
ブルース・バナーハルクの従兄妹であり、彼と同様に、緑色の肌、超人的なパワー、強靭な体を持つキャラクターとなっています。本職は弁護士というのも面白いところですが、同時にスーパーヒーローでもあり、アベンジャーズファンタスティック・フォーのメンバーとして戦ったこともあるんだとか。また、デッドプールのように我々視聴者に話しかけてくる(第四の壁を越えてくる)のも、彼女の大きな特徴といえます。

 

もくじ

 

概要

本作は、上記のような原作のキャラクターをしっかりと反映させたドラマになっています。

主演は、カナダ出身の俳優、タチアナ・マスラニ
フィルモグラフィーとか見たけど、知ってる作品は無かった…ゴメンナサイ。

過去作品からのゲスト出演も豪華で、ブルース役のマーク・ラファロ、ウォン役のベネディクト・ウォン、エミル役のティム・ロス、そしてマット役のチャーリー・コックスらが出演しています。

本作を見るにあたり、2008年公開のMCU1作目『インクレディブル・ハルク(日本では『アイアンマン』の方が先)と、2021年公開の『シャン・チー テン・リングスの伝説 』を見ると、「あ、アレこういうことだったのか」となる部分もあります。ただ、見ていなければ何が何だかわからない、ということはなく、本作だけ見ても十分に楽しめますよ、というのは強調しておきたいところ。

 

はい、てな感じで、さっさと感想に参りたいと思います。

 

予告編


www.youtube.com

 

あらすじ

アメリカ、ロサンゼルス。
ジェニファー・ウォルターズ(演:タチアナ・マスラニ)は、弁護士として日々ストレスと戦いながらも、個人事務所を構えるまであと少しというところまで来ていました。

ある日、従兄妹のブルース・バナースマート・ハルク(演:マーク・ラファロ)とドライブしていると、突如目の前に宇宙船が飛来。驚いたジェニファーはハンドル操作を誤り、車は崖下へ転落してしまいます。2人はケガを負うも、何とか無事でした。ひっくり返った車中で動けなくなったブルースを引っ張り出す際、傷口からブルースの血がジェニファーの体内へと入ったことで、彼女の体に異変が。巨大な体躯に緑色の肌を持つ、シー・ハルクへと変身してしまったのです。

ジェニファーはブルースとは違い、変身しても自我を失うことはありませんでした。更に、常にストレスにさらされながら仕事をしていたおかげか、ある程度自分で変身をコントロール出来ました。トレーニングを積み、力も使いこなせるようになっていきます。

しかし、彼女は今後も弁護士としてやっていくつもりで、スーパーヒーローとして活動する気はない模様。そんな彼女の想いとは裏腹に、公判中にメアリー・マクファーレンタイタニア(演:ジャミーラ・ジャミル)が乱入してきた際、公衆の面前で変身して撃退したことで、世界中にジェニファーがスーパーパワーを持っていることが知られてしまい、トラブルを恐れた事務所は彼女を解雇してしまいます。他に雇ってくれる事務所も見つからず、途方に暮れる中、GLK&Hという事務所が雇ってくれることに。歓喜するジェニファーでしたが、雇用には条件が。それは、常にシー・ハルクの状態で勤務すること、そしてスーパーパワーを持つ者を専門に請け負うことでした――。

というのがあらすじ。

 

意外なほどにしっかりとした法廷ドラマ

今回はどんなドラマになるんだろうとウキウキして見始めたら、思った以上にちゃんとした法廷ドラマだったので驚きました。いや、たぶん僕が嘗めてただけなんですけど。
第1話でブルースと一緒にトレーニングして早々にオリジンを済ませ、その後はクセがすごい依頼人の依頼をあの手この手でこなしていく、といった作りになっていました。

その依頼は、かつてブルースを殺そうとしていたエミル・ブロンスキーアボミネーション(演:ティム・ロス)の仮釈放請求や、現ソーサラー・スプリームウォン(演:ベネディクト・ウォン)の元弟子に対し、マジックショーで本物の魔術を使うのを禁止させるための訴訟、変身能力を持つエルフに騙された元同僚の離婚調停、不死身の男の女性問題、あとはジェニファーが依頼人となって、勝手に“シー・ハルク”の名称を商標登録したタイタニアを訴えたりしてましたね。

依頼を受けて、証言を聞いて、証拠を集めて、裁判で勝つ、みたいな流れは、さながら『HERO』とか『リーガル・ハイ』を見ているようで、ドラマ自体の面白さもあって非常に楽しめました。

 

女性の活躍を描いたドラマ

本作には、魅力的な女性がたくさん出てきます。

ジェニファーの同僚であり、親友でもあるニッキ・ラモス(演:ジンジャー・ゴンザーガ)。
常にジェニファーの味方でいてくれて、仕事でもプライベートでもずっと支えてくれてましたね。財産分配を型破りながら見事な采配で取りまとめるなど、意外な才能が垣間見えて良かったです。ジェニファーにおしゃれを楽しんでもらいたいと、ヒーローのコスチューム専門の服飾デザイナー、ルーク・ジェイコブソン(演:グリフィン・マシューズ)とがんばってコンタクトを取ろうとする話も素晴らしかったです。

ジェニファーと切磋琢磨する優秀な弁護士、マロリー・ブック(演:レネイ・エリーズ・ゴールズベリイ)。
“シー・ハルク”の商標権をめぐる訴訟の話が印象的でした。裁判の後、ジェニファーに「あなたにふさわしい男がきっと現れる。ありのままを受け入れてくれる男がね」と言ってくれるの、めっちゃ良かったです。その後飲み屋で「友達になれて嬉しい!」と言うジェニファーに、「は?友達?」みたいなリアクションするとこも最高でした。あと、演じた俳優さんはあの美貌で50歳越えてるのにもビックリ。

シー・ハルクに匹敵するスーパーパワーを持つインフルエンサータイタニアもそうですね。
某お騒がせセレブみたいでしたが、すごく人間味のあるキャラだと思いました。あと、ファンに「写真撮って!」って言われたら絶対に応じてくれたりちゃんとポーズとったりするところも、自分の役割を分かってるんだなーと感じました。原作ではファンタスティック・フォーの宿敵であるドクター・ドゥームに力を与えられたらしいですが、MCU世界ではどのような経緯でパワーを手に入れたんですかね。

それと、マジシャンに異次元に飛ばされた女性、マディスン・キング(演:パティ・グッケンハイム)もなかなか魅力的でした。最初見たとき、一瞬ワンダことエリザベス・オルセンかと思ったのは内緒。
頭はアレな感じですが、常に前向きで何でも楽しもうという姿勢は、ちょっと見習いたいと思いました。ウォンにドラマのネタバレしたり、最終的にウォンと仲良くなってるのも最高に面白かったです。何やっとんねんウォン…。

 

あとはなんといっても、ジェニファー。
ちょっと不器用なところはあるけど、恋も仕事も一生懸命。ニッキの助けもあってどんどんおしゃれになっていくところとか、見てないけど『プラダを着た悪魔』とかを意識している気がしました。戦闘コスチュームも、スポーティな感じですごくカッコよかったです。

どんどん知名度を上げていく中、シー・ハルクの自分と本来の自分との差に思い悩むところも、すごくリアリティがありました。シー・ハルクとしての自分は、きれいな顔立ちにきれいな髪、高身長でスタイル抜群、気に入らないヤツは腕っぷしでどうにでもできる。まさに女性としての憧れを体現したような姿。それに比べて、変身を解くと小柄なもじゃもじゃヘアー、力も全然強くない。シー・ハルクとしての自分自身にコンプレックスを感じてしまう、という展開は、全く境遇は違うのに「わかりみが深い…(泣)」と思ってしまいました。

ハルクもですが、シー・ハルクも全てCGで描かれているのがまたすごい。意識すればCGだとわかるけど、意識しなければ何の違和感もなく物語に入り込めるほど、CGのクオリティは高かったと思います。
まぁ、本作では特にVFXチームの労働問題が顕著になってしまったそうですが…。最近本当に供給過多気味なので、個人的には配信ペースを落としてくれて全然良いと思います。来年以降は少しペース落ちるっぽいので、どうにか改善されてくれるといいですね。

 

他作品との関連性について

何気に本作は『シャン・チー テン・リングスの伝説』との関連が深いと思いました。

まず、エミルの仮釈放請求の際、『シャン・チー』でウォンとアボミネーションの姿で戦っていた映像が流れ、問題になります。あの時はあくまでカメオ出演だったので、なんで戦ってるのとかはわからずじまいでしたが、本作でウォンが組手の相手として半ば強引に連れてきてたことがわかります。何やっとんねんウォン…。

余談ですが、劇中でエミルが「始めは俺がハルクを危険人物として追っていたのに、今やハルクはヒーローで、俺はこんなとこで不自由な生活をしてる。変な話じゃないか」みたいなことを言いますが、「確かにそうだな…」と思ってしまいました。あと、『シャン・チー』でティム・ロスカメオ出演(クレジット無し)した際にはえらく驚いたものですが、本作ではガッツリと出演してたので、なんかもう逆に驚かなくなりました。

 

それから、『シャン・チー』のミッドクレジットで、ブルースの姿に戻っていたのを疑問に思っていましたが、『アベンジャーズ/エンドゲーム』でナノ・ガントレットを使用した際に腕を負傷したのが原因でハルクの制御が不安定になったので、抑制装置を開発してブルースの姿に戻っていた、ということが本作でわかりました。シー・ハルクの力を得るために、ジェニファーの体内にブルースの血を入れる必要がある。けどハルクの状態だと注射針も刺さらないくらいに強靭な肌で、ちょっとやそっとじゃ血は出ないから、どうにか理屈をこねくり回してブルースの状態に戻す必要がある。というのを『シャン・チー』のときから考えていた、ということなんでしょうかね。

でもシー・ハルクのオリジンを手っ取り早く済ませるにはやっぱりハルクの状態に戻す必要がある。だから、ジェニファーの血液を解析することでいろいろわかったということにして、腕を全快させました。ハルクの制御も出来るようになり、スマート・ハルクに戻らせました。というのは、きちんと理由付けしようとする姿勢には好感が持てるものの、若干の適当感を感じました。

 

あとは何といっても、Netflixのドラマ『デアデビル』から、マット・マードックデアデビル(演:チャーリー・コックス)がゲスト出演するのには驚きました(今はネトフリでは配信終了して、Disney+独占配信になってます)。いや、確かに弁護士繋がりだけども、まさかこんなにガッツリ出てくれるとは。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』ではちょっとだけの出演だったので、すごく嬉しかったです。裁判では速攻でジェニファーを論破するその手腕も、最高にカッコよかった。

ドラマ版をまだ見れていないんですが、そっちと比べて身体能力がかなり上がっているみたいですね。この辺は特にドラマのファンから賛否両論あったとか。まぁ他のヒーローとクロスオーバーさせる時のことを考えたら、強くしとかないと釣り合い取れない、というのはわかります。チンピラをひとりずつ頑張って倒してたら、シー・ハルクが残りの数人を一瞬で倒しちゃう、というシーンがあったし、まだまだスーパーパワーを持ったヒーローには純粋な戦闘力は及ばないみたいですしね。あと戦闘後、シー・ハルクに肩コツンてやるとこ、スゲー可愛かったです。そしてそのあと即ベッドインするのには笑いました。

 

やりたい放題の最終回

冒頭でも書きましたが、シー・ハルクは第四の壁を突破できるのが大きな特徴で、最終回ではそれが大爆発(大暴走?)していました。

暗躍していた男尊女卑のグループ、そのリーダー、ハルクキングの正体は、ジェニファーの事務所の顧客のひとりである、トッド・フェルプス(演:ジョン・バス)でした。彼は女性であるジェニファーにスーパーパワーはふさわしくないと考え、彼女の血液を手に入れて血清を作成し、力を手にしようとする、時流に逆らうようなキャラでした。

グループの集会にはエミルもおり、しかも禁止されていたアボミネーションの姿になっているではありませんか。血清を自身に投与してハルク化するトッド、さらに宇宙へ行っていたはずのスマート・ハルクも駆け付けてきて、もうしっちゃかめっちゃか。あまりに無茶苦茶なストーリーに不満を爆発させたジェニファーは第四の壁を越え、制作側に文句を付けに行く、という驚きの展開を見せます。

急にDisney+のメニュー画面に戻ったと思いきや、シー・ハルクのアイコンを突き破ってジェニファーが出てきて、『マーベル・スタジオ アッセンブル』(制作の裏側を伝えるドキュメンタリーシリーズ)の世界に入り込んでスタッフに抗議するなど、もはややりたい放題。全ては“ケヴィン”が決めたことだと言われ、まさかマーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギが出てくるのかと思いきや、乗り込んだその先にいたのはAIロボットのK.E.V.I.N.だった、というのにはもうね、声出して笑ってしまいました。アホすぎ。

色々修正して、ブルースは来なかったことにされ、トッドはハルク化せずに逮捕、エミルも再び収監されることに。マットも駆け付け、最後は家族で食事してました。宇宙から帰ってきたブルースもやってきて、なんと息子がいることを明かします。母親は誰…!?
ジェニファーも無事に職場に復帰し、法で裁ける悪は裁判で、法が通用しない悪は力づくで、今後も両面で戦っていく決意を新たにして、ドラマは終了。めでたしめでたし…?

 

ミッドクレジットでは、収監されたエミルのもとへ再びウォンがやってきて、一緒にどこかに去る、というシーンが流れます。結局カマー・タージに亡命するのね…。もう暴走しないのであれば、それが一番いいんじゃないですかね。ウォンと仲良いみたいだし。

 

おわりに

なんというか、これまでのMCU作品とは毛色が違って、すごく面白いドラマでしたなんかこの文言最近よく使ってる気がしますが、それだけMCUがいろんな方向性で作品作りをしている、ということなのかなと。ただ僕の語彙力が無いってだけな気もする。

出来れば同じ感じでシーズン2、3とやってほしい。んで、もっと色んなヒーローの訴訟問題とかやってくれないかなぁ。そう思えるくらいに楽しめました。ウィンター・ソルジャーとかすぐトラブル起こしそうだし、他にもネタはいくらでも出来そうな気がするんですが、どうでしょうか。2024年にはデアデビルの新作ドラマもやるみたいですし、そこでシー・ハルクも再登場することを期待しています。

ということで、ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』の感想でした。

ではまた。