映画『ヴェノム:ザ・ラストダンス』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。
コロンビア・ピクチャーズ製作、ソニー・ピクチャーズ配給でお送りしている、マーベルコミックに登場するスパイダーマンに関わるキャラクターを実写映画化したシェアード・ユニバース、それが『ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)』。
今年2月公開の『マダム・ウェブ』に続くSSU最新作が、本作『ヴェノム:ザ・ラストダンス』です。2018年公開の『ヴェノム』、および2021年公開の『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の続編であり、SSUヴェノムシリーズの完結編となります。
SSUは1作目の『ヴェノム』以外は感想書いておりますので、併せてお読みいただけるととても幸せな気持ちになります。僕が。
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もくじ
概要
監督・脚本は、ケリー・マーセル。
1作目では共同脚本のひとり、2作目でも脚本を担当。そして本作では、脚本のほか製作・原案も務め、監督デビューも果たしました。トム・ハーディとは古くからの友人のようで、それが今回の抜擢に繋がったっぽいです。
主演はもちろん、トム・ハーディ。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の主演や『ダークナイト ライジング』のベイン役などで知られ、『レヴェナント:蘇えりし者』ではアカデミー助演男優賞にもノミネートされています。また、SSUヴェノムシリーズでは製作や脚本にも携わっているなど、このシリーズへの思い入れは深い様子。
そのほか、MCU作品『ドクター・ストレンジ』シリーズでストレンジの兄弟子を演じるキウェテル・イジョフォー、ディズニー映画『マレフィセント』シリーズで3人の妖精のひとりを演じたジュノー・テンプル、前作から続投しているペギー・ルーやスティーヴン・グレアムといった俳優陣が出演しています。
予告編
あらすじ
ジャーナリストのエディ・ブロック(演:トム・ハーディ)と、彼に寄生した宇宙生命体シンビオートのヴェノム。
メキシコ滞在中にマルチバースへ迷い込み、どうにか元の次元へと戻ってくると、クレタス・キャサディ/カーネイジの一件でエディは指名手配されていることを知ります。
急いでアメリカへ戻ろうとする道中、シンビオートハンター、ゼノファージの襲撃に遭います。ヴェノム達シンビオートを生み出した邪神ヌルが、ヴェノムの体内にある“コーデックス”という物質を手に入れようと、不死身の怪物ゼノファージを送り込んだのでした。さらにアメリカ政府機関も、危険なシンビオートを研究・管理するため、ヴェノムの捕獲に動き出します。
ゼノファージはどこまでもエディたちを付け狙い、周りの被害も拡大するばかり。
コーデックスを消し去ろうにも、そのためにはエディかヴェノム、どちらかが犠牲になる必要があり――。
というのがあらすじ。
感想
今回もそこそこ楽しめました。
前置き
スパイダーマンの名を冠しているのに、諸般の事情でスパイダーマンを出せないことでおなじみのSSU。
ほかの感想でも書いていますが、僕はこのシリーズ、結構好きでして。人種だの多様性だの、小難しいテーマを意識しすぎて作品自体の面白さがおざなりになりがちなMCUなどと違い、肩肘張らずに気軽に見れるのがSSUの良いところだと思っています。もちろん、時代に即したテーマをしっかりと盛り込みつつ最高に面白いMCU作品はたくさんありますし、そういうのあまり気にしてない(わけではないと思いますがあまり感じられない)SSU作品がめちゃくちゃ面白いかと言われると、ちょっと首をかしげてしまうんですけども…。
ともあれ、「そこそこの面白さ」というのもまた、SSUの良さなのではないかと思っているわけです。これ誉め言葉ですからね一応。
そんなSSU作品の中で、僕が唯一拒否反応を示してしまったのが、シリーズ第1作『ヴェノム』。僕にはどうにも“カワイイヴェノム”が受け入れがたく、「そんなギャップ萌えいらねぇ!」という感情が最後まで拭えませんでした。
まぁでもこれは、まだSSUという名称すら定まってなかった時期で(今も定まってるのかは疑問だけど)、僕自身どういう作風なのかわからず、予告編とかで強調していた「ホラー色の強いヴェノム」を過度に期待してしまったせいで、反発も大きかったのかなとは思います。雰囲気はダーク寄りなくせにスパイディとの合流を考慮して流血表現は一切なく、子供向けにしたいのか大人向けにしたいのかどっちつかずになってる、というのもあります。あとは、どこかで見たことあるシーンのつるべ打ちで面白みがないとか、ライオットとかいう敵が存在感なさすぎとか、叩けばいくらでも埃が出てくるような作品だったような気がします。
「ツッコミどころは多々あれど、シンプルで楽しい作品」ってだけであればむしろ大好物なんですが、1作目に関しては「カワイイヴェノムが気に食わない」という1点のみで評価を落としてしまった、個人的に残念な作品となってしまいました。まぁ、原作でもシンビオートは「宿主によって善にも悪にもなる」みたいな設定があるみたいですし、そこまで気にするようなものでもないんですけどね本来は。事前情報からこの路線ですよってのをちゃんと教えてほしかった。それに尽きます。
そんな僕の評価とは裏腹に、この作品は世界的に大ヒット。めでたくこの路線でシリーズ化されることとなりましたとさ。
で、次の『カーネイジ』。
こちらはもうどんな作風なのか分かったうえで見たので、割とすんなり受け入れられました。細かくはここでは書かないので、以下の感想をお読みいただけますとありがたいです。
ひとつ言えるのは、カーネイジほどのスーパーヴィランがあまり強く見えない、そしてこの1作だけで出番終わらすのは非常にもったいない。この2作目ではカーネイジに完全敗北して、3作目=つまり本作で決着をつけるみたいな流れでも良かった気がします。…ってそれじゃ『インフィニティ・ウォー』からの『エンドゲーム』と同じか。…うん、聞かなかったことにしてください(笑)
改めて感想
すっかり前置きが長くなっちゃいましたが、本作について。
上で書いたとおり、そこそこ楽しめた、という感じです。つまり、いつものSSU作品、って感じです。これ誉め言葉ですからね一応。
まず、前作で撒かれた今後の展開への伏線について。
- トムホスパイディと遂に合流か!?
- MCUとのクロスオーバーの可能性は!?
- マリガン刑事はどうなる!?
僕が期待していたのはこの辺。
結果としては、全部雑に処理されちゃいましたね。
スパイディとの合流、およびMCUとのクロスオーバーに関しては、『ノー・ウェイ・ホーム』のポストクレジットにチラッと登場しただけ。そして本作はその直後から始まる。それだけ。ホントはトムホスパイディとガッツリ共演させるつもりだったけど、いろいろあってトムホのMCU続投が決まったので出来なくなった、ということかしら。なんにせよ残念。
パトリック・マリガン刑事(演:スティーヴン・グレアム)の件も、全然膨らみませんでしたね。コミックでも彼はシンビオートに寄生され、トキシンというヒーローとして活躍したそうで、本作でもそれを期待していました。…が、なんか終始目がうつろでどういう精神状態なのかよくわからなかったし、ガラス張りの部屋からほぼ出ることはなかったし、出たと思ったら速攻ミンチにされるしで、まったく見せ場無し。せめて、体色はコミック準拠の赤にして欲しかった気がします。なんで真逆の青緑やねん。誰やねんお前さん。
なんだかなぁ…処理できない伏線を張るなよ、としか言えないですね。この分だと、『モービウス』ラストで出てきたヴァルチャーも、このまま無かったことにされそうだなぁ。ホムカミのヴァルチャーは、家族のため、生活のためにヴィランになったという、とてもいいキャラだっただけに、もったいないことすんなよという思いが強い。何のために出したんだか。
と、早速愚痴から入ってしまいましたが、本作単体としては普通に面白かったです。
“カワイイヴェノム”については、やっぱり心のどこかで引っかかってしまうところはありますが、3作目ともなればもう楽しむだけです。漫才みたいな掛け合いも、1作目と比べれば素直に楽しめたように思います。
また、予告編などでも出ていた馬ヴェノムをはじめ、魚ヴェノムやカエルヴェノムなど、いろんな生き物に寄生した姿を見ることが出来て面白かったです。あそこすごい良かったので、もっと前からやればよかったのにと思いました。確か前2作は人間にしか寄生してないよね?僕が覚えてないだけ?
ストーリーは、「めちゃくちゃヤバいヤツが俺たちのこと狙ってるから逃げろ!」ってだけで、正直ほとんど内容がなかったような気がしますが…まぁいいんじゃないでしょうか。急に出てきたコーデックスやら創造主ヌルやらには戸惑いを隠せませんでしたが……まぁいいんじゃないでしょうか(笑)
前作から続く要素をほぼ丸ごとぶん投げたおかげで、初見でわからないところなどもなく、これまでのシリーズを見てない人も十分に楽しめる作りになっているところは、本作の魅力のひとつなのかな、と思います。普通の人はそんなにたくさん映画見ないでしょうし、ひとつの作品でしっかり起承転結がある方がいいに決まってますもんね。やっぱり上で書いたカーネイジとの決着を3作目まで引っ張る案は全然ダメダメですね。
…まさかヌルとの決着までぶん投げるとは思いませんでしたけどね。
クライマックスのゼノファージvsシンビオート軍団のバトルは、いきなり宇宙(人)戦争が始まってビックリしましたが、とても見応えがあって楽しかったです。クリスマスさんに寄生するシンビオートが緑と赤というまさにクリスマスカラーなの良かったし、やたら能力を使いこなしてて大活躍だったのも良かった。1作目ラスボスのライオットが実は生きててここで出てきたりしたら面白かった気がしますが、特にそんなことはなく。
ラスト、エディとヴェノムの別れの場面は、確かにバラバラにしても死なないゼノファージを倒すためにはああするしかないというのはわかりますが、どうにも泣くまでには至らず。やっぱり最後まで“カワイイヴェノム”を受け入れきれなかったのが理由だと思います。そのせいで、感情移入しきれなかったんでしょうねきっと。あぁ、そうだよねそうなるよね、という感じで見てました。
最終的に、能力がまんまフラッシュな紫色のシンビオートだけ生き残ってましたが、今後出てくることはあるのだろうか。期待はしないでおこう。
総じて、このSSUヴェノムシリーズは、「シンビオートは寄生した人がクレタスみたいな極悪人だと危険だけど、基本的には“いい子”なんですよ」と言いたかったのかな、と思いました。で、僕はそこがずっとしこりのように残ったままで、最後まで最大限楽しむことができませんでした。1作目でもう少し納得のいく説明をしてくれたら違ったような気がしますが、初っ端からヴェノムはエディにデレッデレで、それがそのまま最後まで続いてしまったのが残念でならない。もっと「制御できない」部分も描いてくれたら、もう少し受け入れやすかったかもしれないです。
さて、次のSSUは公開が延びに延びた『クレイヴン・ザ・ハンター』が、ようやく来月公開。予告ではバイオレンス描写たっぷりでダークな雰囲気ですが、どうなることやら。どうせそこまで暗くもないし、それほど悪いヤツでもないんだろうなぁ。
てか、その後のSSUはほぼ何も決まってなさそうなので、いよいよ本格的に存続が危うくなってきたような気がします。『エル・ムエルト』とかいう全然知らない人の映画も無期限延期になったみたいですし、どうするんだこれから。なんとなく、本作で出てきたヌルをサノス的なスーパーヴィランにして、これまで主演してきたキャラが一堂に会してシニスター・シックスを結成して悪を以て悪を征す的なことをやりたいのかと思いましたが、そんな先のこと考える前にひとつひとつの作品をもう少し面白くしてくれよ、とどうしても思ってしまう。まぁ、現状もそこそこ楽しんでいる自分がいるし、実現してくれたら絶対見に行きますけどねそりゃ。
おわりに
以上になります。
僕は手放しで楽しむことは出来ませんでしたが、すごく気に入る人も必ずいるだろうと、そう思える作品ではありました。楽しめなかったのは僕が頭固いだけですし、普段アメコミ映画とか見ない人ほどスッと受け入れられると思います。「アメコミ映画ってどれ見たらいいかわからない」という方は、ぜひこのシリーズを選択肢に入れていただければと。
ということで、映画『ヴェノム:ザ・ラストダンス』の感想でした。
ではまた。