GORGOM NO SHIWAZAKA

ゴルゴムのしわざか!

映画『かがみの孤城』感想(ネタバレ)

映画『かがみの孤城』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

もくじ

 

概要

本作『かがみの孤城』は、辻村深月のベストセラー小説をアニメ映画化したものになります。

小説はハードカバー版や文庫版などを含め、累計発行部数170万部以上を記録している、大人気作品。辻村作品の最高傑作と呼ばれているとかいないとか。

他にも数多くのヒット作を発表しており、過去に『ツナグ』や『ハケンアニメ!』なども映画化されていますね。『ツナグ』は昔見た記憶がありますが、お涙頂戴な演出が露骨過ぎる気がして、正直あまり面白いとは思えなかったような。(あくまで映画版の話です)

 

確かしばらく前に王様のブランチかなんかで小説を紹介していて、面白そうだなーと思ってはいたものの、小説を読むのが苦手な僕はこれまで読めずにおりました。どれくらい苦手かというと、かなり読みやすい部類であろう『ハリーポッター』シリーズも、『炎のゴブレット』で挫折したほどです。なんというか、活字の羅列を見てると眠くなってくるんですよね…。数千字程度のブログであればまだ大丈夫なんですが、何万字もある小説となるとまた話が変わってくると言いますか。

なので、映画化するのであれば見ない手は無いと思っていて。
ただ、タイミングが合わなかったというのと、一時期日テレがやたらゴリ押ししててちょっと引いてしまったというのもあってなかなか見に行けず(『金の国水の国』も同じパターン)、2月初めに『バイオレント・ナイト』とあわせて見てきました。

ちょこちょこと感想を書き進めてはいたのですが、他の映画の感想を優先させていたというのと、僕如きの感想なんぞ記事にするまでもないなーという思いがあって、これまで投稿は控えていました。でもま、せっかくなんで上げとくかーという気分になってきたので、今更ながら投稿させていただいた次第でございます。

 

本作の監督を務めるのは、原恵一
クレヨンしんちゃん』シリーズの劇場版の監督を多く手掛けたことでも知られています。特に『嵐を呼ぶ モーレツ!大人帝国の逆襲』と『嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』は各方面で絶賛され、数多くの賞を受賞しました。その後はフリーランスとして、『カラフル』『百日紅』『バースデー・ワンダーランド』などのアニメ映画を手掛けています。『はじまりのみち』という実写映画の監督も務めたんだとか。これは知らなんだ。

脚本は、原監督の作品の多くで脚本を務めている、丸尾みほ

キャラクターデザイン及び総作画監督には、『劇場版 青の祓魔師』や『劇場版 七つの大罪』などでも作画監督を務めた、佐々木啓悟

音楽は、NHK連続テレビ小説舞い上がれ!』などの、富貴晴美

アニメ制作は、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などで知られるA-1 Pinturesが手掛けているなど、豪華なスタッフが軒を連ねています。

 

声優には、俳優陣が多く参加しています。
めんどくさいので詳細は割愛しますが、最近アニメの声優を俳優がやるパターン、すごい増えてる気がしますね。まぁ、某女優さんの吹替みたいに全然キャラに合ってないのに話題性だけで起用されるアレではなく、ちゃんとキャラに合った人を選んでくれているので、全く不満は無いです。

メインキャストの中には高山みなみ梶裕貴といった有名声優も起用されており、「真実はいつもひとつ!」といったメタ的なネタも放り込まれるなど、なかなか楽しかったです。

 

公開開始は去年の12月で、もう劇場での公開が終わってしまっているところがほとんどだと思うので、簡単に感想を書いていきたいと思います。

 

予告編


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あらすじ

中学1年生のこころ(声:當真あみ)は、クラスの女子からいじめを受けたことが原因で、学校に通えなくなっていました。ある日、突然部屋の鏡が光り出し、こころはその中へ引きずり込まれてしまいます。

気が付くと、目の前には大きな孤城が。
城の中では、6人の男女が待っていました。どうやらこころと同年代で、ここへ来た境遇も同じようです。

案内人のオオカミさま(声:芦田愛菜)曰く、この城のどこかに“願いの鍵”があり、それを見つけた者は“願いの部屋”へと入り、願いをひとつだけ叶える権利が与えられる、とのこと。期限は来年3月末まで、それまでに見つけられなくてもペナルティがあるわけでもなく、城には日本時間で午前9時から午後5時までの間であればいつでも出入り自由、とのこと。

突然の出来事に戸惑う7人ですが、同じ空間で過ごす中で、交流を深めていきます。

そして、彼女らの胸の内に秘められた思い、そして隠された共通点が明らかになっていく――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

とても良いお話でした。

本作の登場人物は、いじめなどが理由で学校に通えなくなってしまった子供たちが主軸となっていて、見ていてすごくつらい気持ちになりました。自分の身になって考えてみると、本当に心が痛くなります。“孤城”というのは“敵に囲まれて身動きが取れなくなっている城”を指すそうで、彼らの心情はまさしくそういう状態なんでしょうね。

 

7人の男女には千差万別の思いがあって、いじめに遭ったり、ピアノが上達せずに挫折したり、姉と死別したり、親戚から○されそうになったりと、抱えている心の闇もそれぞれ違います。そして、そうした問題を打開しようとしてみたり、折り合いを付けたり、殻に閉じこもってみたり、向き合い方も人それぞれなのが、すごくリアリティがあって良いと思いました。

それと、オオカミさまは彼らに明確な答えをあげるわけでもなく、というかほぼ放置プレイ状態で、7人が交流を深めていく中で、自分たちで考え、自分たちが進みたい道を選んでいく、というのがまた良かったですね。

映画では尺の都合からこころにスポットを当てていましたが、恐らく小説ではひとりひとりをもっと深掘りしているんだろうなぁ。で、各々のドラマをもっと深く知ることで、この作品の感じ方もまた違ったものになるんだろうなぁ、と思いました。つい帰り道に本屋に寄って、小説買おうか小一時間悩んでしまいました。結局買いませんでしたが、気が向いたら電子版で買うかも。

 

個人的には、こころの母(声:麻生久美子)が、いじめのことを打ち明けた後に全力でこころの味方になってくれたのが、すごく胸に沁みました。
「お前にも非があるんじゃないのか」とか言いそうなもんですが、そうしたことは一切言わず、何ならこころがたじろぐほどに先生に食って掛かったりして、ああいうのが何よりの救いになるんじゃないかなぁ、と思いました。現実はなかなかこう上手くは運ばないとも思いますが、作者の願いというか、こうあって欲しいみたいな願望が込められているんじゃないかなーと。そして僕も、そういう大人でありたいと強く思いました。

担任の先生(声:藤森慎吾)の無能っぷりもまた絶妙でしたね。悪い人ではないんだろうけど、こころのような境遇の人の気持ちが1mmもわかんないんだろうなー、という、絶妙な塩梅。

 

ストーリー的な部分で言うと、「みんな学校行ってないんだろうけど、気まずくなるから言えない」とか、「自分達のことを話さないから知らなかったけど、話してみたら実は意外な共通点があった」とか、そういうのが物語上重要な伏線になっていたりするんですが、たぶん日本以外の国の人だったら最初からみんな普通に話しそうだなーと思いました。どっちが良い悪いという話ではないんですが、なんというか日本でしか成立しないというか、非常に日本らしいストーリーだなーと。

あと、鍵探しのルールを聞いた時点で、「あぁ、これは鍵を探させることが本来の目的ではなく、何か別の意図があるんだな」とすぐに予想がつきました。また、喜多嶋先生(声:宮崎あおい)の正体についても、割と早い段階で察しがつきました。でも、それらが完全に明らかになるのはかなり最後の方でしたし、それまであーでもないこーでもないと考えながら見るのがとても楽しかったです。オオカミさまの正体については、明かされなくてもいいと思っていたのであまり考えていなかったですが、ちゃんとラストで明らかになるのでちょっと驚きました。

ただ、最後まで「こころとその他大勢」みたいなキャラ付けだったのに、クライマックスで急にリオン(声:北村匠海)が準主役級に躍り出たので、若干の戸惑いがありました。恐らく、この辺も小説は上手いことやってるんだろうなぁ。やっぱ読むか…。

 

クライマックスの鍵の在処への道を出現させるプロセスは、本来ならみんなで×印のある場所に立ってうんぬん、とかだったんですかね。映画版特有なのか小説でもそうなのかはわかりませんが、泣かせようという製作側の思惑が先行し過ぎたのか、勢い重視でちゃんとした説明が無く、よくわからんことになっていたような…。叶える願いに関しては、すごく純粋で真っ直ぐな、子供ならではの願いですごく良かったと思うんですけども。僕ならどんな状況でも「一生遊んで暮らせるだけのお金をください」とか願っちゃいそうですし…。

ラストシーン、リオンだけは城での一連の出来事を覚えたままなのか、どうなのか。
僕はリオンも記憶を失っているけど、それでもこころを見て何かを感じ、声をかけた説を推したい。とにかく、敢えて含みを持たせた締め方で、とても良いと思いました。

 

おわりに

こんなもんにしときます。思ったよりもいっぱい書けました。

周りに言えない悩みを抱えてる学生さんとかに、ぜひ見て欲しい作品だと思いました。映画でも小説でも良いですが、この作品に触れることで、少しでも背中を押してもらえたような気分になってくれたら嬉しく思います。(何の関係も無い只の一視聴者のくせに)


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ということで、映画『かがみの孤城』の感想でした。

ではまた。