映画『ノック 終末の訪問者』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。
1999年の『シックス・センス』にて、世界に衝撃を与えたM・ナイト・シャマラン監督。
その最新作が本作、『ノック 終末の訪問者』です。
とある一家が、突然現れた訪問者によって究極の選択を迫られる、サスペンス・スリラー作品となっています。
僕はシャマラン監督作を全て見ているわけではないですが、かなり好きな監督のひとりです。
『シックス・センス』は記憶消した状態でもう1回見たいほどですし、シャマラン流スーパーヒーロー映画、『アンブレイカブル』『スプリット』『ミスター・ガラス』の三部作とかも大好きな作品です。前作『オールド』は、タイミングが合わずにまだ見れてない…。ウィル・スミス一家のホームムービー(※個人の感想です)『アフター・アース』とかも、シャマランが監督やってたんですね…知らずに見てましたわ。
もくじ
概要
本作は、ポール・G・トレンブレイの『The Cabin at the End of the World』という小説が原作なんだそうです。どうやら原作がある事をギリギリまで伏せていたらしいですが、別に隠す必要性を感じないような気が…。
監督は上記の通り、M・ナイト・シャマラン。
脚本もシャマランのほか、『モンスターズ』のスティーヴ・デズモンドと、『白いトリュフの宿る森』などのマイケル・シャーマンが執筆しています。
キャストは、巻き込まれるゲイカップルを、『アナと雪の女王』でクリストフという山男の声を務めたジョナサン・グロフと、TVドラマ『PENNYWORTH/ペニーワース』で、ブルース・ウェイン/バットマンの父親となる男、トーマス・ウェイン役で出演したベン・オルドリッジが演じています。
2人は実生活でもゲイであることを公表しているんだとか。
2人の養子役を、中国系アメリカ人の新人子役、クリステン・クイが演じています。弱冠9歳、そして新人とは思えない高い演技力を見せてくれました。
彼らのもとを訪れる4人組を、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のドラックス役でおなじみのデイヴ・バウティスタ、『オールド』にも出演しているニキ・アムカ=バード、シンガーソングライターとしても活動しているアビー・クイン、そして『ハリーポッター』シリーズのロン・ウィーズリー役で知られるルパート・グリントが演じています。
そーいや、通販番組の実演販売士っぽい役で、シャマラン監督が自ら出演していて笑いました。自分の作品によくカメオ出演しているので、マーベル映画のスタン・リーのように毎回どこに出てるか気にしながら見てしまいます。
あ、本作では、大地震とそれに伴う津波の描写があります(英語でも「Tsunami」って言うんですね…)。シアター入り口にも注意書きがありました。
鑑賞を予定されている方はご留意いただければと。
予告編
あらすじ
美しい自然に囲まれた山小屋。
ウェン(演:クリステン・クイ)は、近くの草むらでバッタ獲りをしていました。
そこへ、レナード(演:デイヴ・バウティスタ)と名乗る大柄の男がやってきます。更に、奥の林から彼の仲間だという3人の男女が近づいてきて、ただならぬものを感じたウェンは小屋へ戻り、父親であるアンドリュー(演:ジョナサン・グロフ)とエリック(演:ベン・オルドリッジ)に助けを求めます。
レナードたちは強引に小屋へと押し入ってきて、2人を縛り上げます。そして一家に、あまりにも荒唐無稽で残酷な選択を迫ってくるのでした。
「世界の終末を回避出来るかどうかは、君たちの選択にかかっている。3人のうち1人を生贄として殺害してくれ。それで世界は救われる――。」
というのがあらすじ。
本編感想
なんというか、不思議な感覚を覚える映画でした。
少なくとも、『シックス・センス』のようなラストでのどんでん返しを期待していると、肩透かしを食らうかなと思います。
まず前フリとして、同性愛者やアジア系人種という、マイノリティな人たちをメインに据えるというのは、非常に時流に乗っているなーと思いました。原作小説からこういう設定らしいので、シャマランがすごいというよりかは原作者がすごいんですけど。
それと、定期的に話題になる陰謀論や終末論をテーマに持ってくるのも、なかなかタイムリーだなーと思いました。
本作では“アポカリプス”、つまり新約聖書の『ヨハネの黙示録』をモチーフにしていますが、ほかにも有名どころだと「ノストラダムスの大予言」とか、最近では「コロナワクチンは毒」だの、「AIに仕事を奪われる」だの、「食糧難に陥るからコオロギを食べよう」だのなんだの、色々言われてますよね。『MMR マガジンミステリー調査班』が好きな身としては、半分ギャグとして楽しんでいる部分があります。
で、本作の内容に関してなんですが、シャマラン監督の作品って、たったひとつのフックで本編全部乗り切っちゃうような、悪く言うと「予告編が全て」みたいな作品が結構あると思うんですが、本作もそのパターンだったかなーと。
「世界を救うために家族の誰かを殺してくれ」と言われ、「そんな話信じられるか」と拒絶すると、なぜか4人のうち1人が目の前で殺され、そのたびに世界に災いが降り注ぐ…。この繰り返し。
ここからどう話が転ぶのかと思っていたら、割と最後までこの調子だった、というね。
レナードたちの話を信じようとしないリアリストのエリックと、だんだん信じていってしまうアンドリューという2人の存在が、「世界は本当に滅亡するのか?それともただの妄言なのか?」を最後まで曖昧にしていたのは、不穏な空気が持続していてとても良かったと思います。また、レナードたちが完全に狂った人物ではなく、なるべく理性的に説得しようとしていたり、人の死を目の当たりにして嘔吐したりと、意外と常識的な人物だというのもまた、彼らの言っていることが本当なのか嘘なのかわからなくさせていて好印象でした。
すごくどうでもいいですが、レナードみたいな「知的なマッチョ」って、なんかすごい不気味ですよね…。個人的に一番怖い人種かもしれない。
結末に関しては、原作とは異なるものになっています。
僕は辛抱ならなくて原作のネタバレを見てしまったんですが、不穏な空気を残したまま幕を閉じる原作に対し、本作はもう少し希望のある終わり方になっていると思いました。
これ以上は言わないでおくので、気になった方はぜひ映画館へ足を運んでみてください。
あ、そうそう。
インスタにも書いたんですが、僕はもしかすると、本作の“真の姿”を見ていないんじゃないかと思っていて。
どういうことかというと、レドモンド(演:ルパート・グリント)が過去にエリックを暴行して捕まった人物であったように、他の人にも実は過去に接点があったんじゃないかと。そしてそれを紐解くことによって、一家が選ばれた“本当の理由”が明らかになるんじゃないかなーと。「君たちはたまたま選ばれた。ここにいるのが君たちだということも、(相対して)初めて知った」と言ってましたが、それじゃ面白味無くない?なくなくない?
意味深に2人の過去の映像がところどころ差し込まれてたのも、その中に実はヒントがあって、僕がそれを見逃しているんじゃないかと。というかそうでないと過去の映像入れる意味無くない?なくなくなくない?
まぁ、過去の映像を入れたのはアンドリューとエリックが誠実な人物であるというのを観客に見せ、彼らにしっかりと感情移入させる意図があるんだとは思いますが、それにしてもレナードたちが見たという“ヴィジョン”になぜ彼らは出てこなかったの?というのは疑問が残ります。
僕が深読みし過ぎな気もするんですが、もし僕の読みが当たっていたとしたら、僕の中の本作の評価は相当上がります。外れてたら、評価が下がりはしないと思うけど、まぁガッカリはしますよね…。うーんやっぱりそれを確かめるためにも、もう1回見たい。
もしかするとサブスクで配信されるまで待つかもしれないですが、答え合わせが出来たときには追記したいと思います。
おわりに
短いですが、感想は以上になります。
なんかウダウダ言ってますが、裏を返せばすごく楽しんで鑑賞できた、ということかと。
何が嘘で何が本当なのかわからない、ヒリヒリとした不穏な空気感の作品が好きな方、終末論とかがお好きな方、何よりシャマラン監督作の独特の雰囲気が好きな方は、きっと気に入る作品だと思います。
ということで、映画『ノック 終末の訪問者』の感想でした。
ではまた。