GORGOM NO SHIWAZAKA

ゴルゴムのしわざか!

ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』感想(ネタバレ)

Amazon Prime Videoにて配信中のドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

仮面ライダーBLACK』は、1987年よりTBS系列で放送されていた、仮面ライダーシリーズの一作。TVシリーズとしては、『仮面ライダースーパー1』以来、6年ぶりの新作だったんだとか。

“原点回帰”をコンセプトとし、バッタの改造人間、敵組織によって改造され逃げ出した経緯など、初代『仮面ライダー』を踏襲した設定が特徴となっています。また、過酷な運命を背負った主人公の悲哀を描いたストーリーは高く評価され、翌年には実質的な続編『仮面ライダーBLACK RX』が放送されるなど、人気を博しました。

それから、BLACKと敵対するもうひとりの創世王候補、シャドームーンの存在も外せません。厳密にはシャドームーンは“仮面ライダー”を冠してはいませんが、ライダーと同格の見た目、能力を持っており、今となっては当たり前となっている、仮面ライダーvs仮面ライダーの先駆けとなった存在といえるかと思います。あ、ショッカーライダーは怪人枠ということでどうかひとつ。

 

一番最初の自己紹介の記事でも書いている通り、僕のハンドルネームやブログ名は、『仮面ライダーBLACK』から来ています。恐らく生まれて初めて触れた特撮作品であり、今でもトップクラスに大好きな作品でもあります。幼過ぎて当時の記憶はほとんどないんですけど、棒状のものを見つけては「りぼーけん!(※注:リボルケインのこと)」と言って振り回していたらしく、未だに両親にイジられます…(笑)

学生時代には、DVDレンタルしてほぼ一夜漬けで全話見たこともあったっけ。RXの勧善懲悪な感じも好きですが、やっぱりBLACKのちょっとダークな作風がすごく好きなんですよね。

 

目次

 

概要

そんな『仮面ライダーBLACK』が、仮面ライダー生誕50周年記念作品”としてリブートされることになりました。それが本作、『仮面ライダーBLACK SUN』となります。
仮面ライダーアマゾンズ』以来のAmazon Prime Video独占配信という形態で、1話40分程度、全10話からなる作品となっています。

 

監督は、『凶悪』、『日本で一番悪い奴ら』、『孤狼の血』などで知られる、白石和彌
日本社会に潜む闇の部分を描いてきた監督が、本作では“人種差別”を大きなテーマとし、全く新しいBLACKの世界を作り出しています。

脚本は、『凶悪』、『ひとよ』、『サニー/32』など、白石監督作を多く手掛ける高橋泉
音楽は、BiSHなどの楽曲を手掛けてきた松隈ケンタ
コンセプトビジュアルに、『シン・ゴジラ』等の監督を務めた樋口真嗣
特撮監督には、多くのウルトラマンシリーズで監督を務める田口清隆など、スタッフ陣は非常に豪華。

 

主演は、日本を代表する俳優、西島秀俊
最近では、主演を務めた『ドライブ・マイ・カー』がアカデミー賞4部門にノミネート、国際長編映画賞を受賞したことで、話題になりましたね。個人的には、2011年公開の『CUT』という映画が印象に残っています。あとTVドラマ『MOZU』とかも毎回楽しく見ていました。

もう一人の主人公を演じるのが、こちらも日本を代表する俳優である、中村倫也
TV、映画、舞台と幅広く活躍しており、見ない日は無いってくらいなので、代表作と言ったら何になるんだろう…?あ、代表作かはわかりませんが、実写版『アラジン』で主人公の吹き替えやってましたね。イケメンで歌もうまいとかズルすぎ!

そのほか、吉田羊中村梅雀三浦貴大濱田岳音尾琢真ルー大柴など、俳優陣も非常に豪華になっております。
制作が発表された当時は、まさかこんな豪華な顔ぶれになるとは夢にも思わなんだ…。

 

あと本作は対象年齢18歳以上で、ゴア描写に気合が入っているのも特徴的。第1話からいきなり腸を引きずり出したり、首を引きちぎったりしてましたからね。『アマゾンズ』といい、アマプラ作品はこういう路線なんでしょうか。明らかに“僕ら”をターゲットにしている…(ありがとうございます)。
なので、そういうのが苦手な人は閲覧注意です。

 

とまぁそんな感じで、感想に参りたいと思います。

 

予告編


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あらすじ

2022年、日本。
“怪人”と呼ばれる、人間と動物の特徴を併せ持つ種族がいる世界。日本政府が人間と怪人との共存をスローガンとして掲げ、50年が経過していました。彼らは変身さえしなければ人間と変わらない容姿、知能を持っているものの、怪人の中には高い殺傷能力を持った危険な個体もおり、なかなか人間たちには受け入れられず、怪人たちは強い迫害を受けてきました。

そんな中、和泉葵(演:平澤宏々路)は、怪人への差別をなくすべく、国際フォーラムにてスピーチをします。

「命の重さは地球以上。人間も怪人も、その重さに1gの違いもない。」

しかしそんな彼女の訴えもむなしく、街では怪人根絶を訴えるデモ行進の声が響き渡っており、怪人たちはそれに反発、争いを繰り返す日々が続いていました。

ある日、葵は友人の小松俊介(演:木村航)と帰路に就いていると、蜘蛛怪人(演:沖原一生)が襲い掛かってきます。連れ去られそうになる彼女を救ったのは、南光太郎(演:西島秀俊)という男。彼は黒殿様飛蝗怪人へと変身し、圧倒的な力で蜘蛛怪人を斃してしまいます。

現政権与党であるゴルゴム幹部たちは、光太郎の出現に驚きを隠せない様子。

「生きていたのか、ブラックサン――」

時を同じくして、地下に幽閉されていた秋月信彦(演:中村倫也)も光太郎の存在を感じ取り、行動を開始する――。

というのがあらすじ。

 

良かった点

新たな世界観

僕はTVシリーズも好きですが漫画の方も大好きでして、もしかして漫画準拠のドラマが見れるのかとちょっと期待しましたが、全然違いましたね。漫画版は衝撃的な結末も含め、今読んでもめちゃくちゃ面白いのでオススメ。単行本全5巻くらい(文庫だと確か全3巻)なので読みやすいですよ(ダイマ)

…と、どうしても思い入れが深くて脱線しがちになってしまいますが、本作ではTV版とも漫画版とも違う、差別の蔓延する混沌とした世界が描かれており、白石作品らしい社会の暗部を描き出したような作風になっています。全体に漂う陰鬱とした雰囲気も相まって、非常に面白いと思いました。

 

各種デザイン

生物感を強めたライダーデザイン、スチームパンク感のあるバトルホッパー、サイバー感のあるロードセクター、TV版を踏襲したような怪人デザインなど、今の僕の好みにマッチするデザインばかりで、とても良かったです。ロードセクターを信彦=SHADOWMOONのバイクとするのも、良いアレンジだと思いました。

 

過去と現在を絡めた展開

2022年の現代と、50年前の1972年が交錯しながら展開するストーリーも、なかなか見応えがありました。なんで50年前かって、本作が“仮面ライダー生誕50周年記念作品”だから、というメタ的な理由でしょうね。
ゴルゴム党設立までの経緯、どうして三神官は人間に隷属しているのか、信彦が地下に幽閉されていた理由、光太郎が左脚を引きずっているわけ等々が、過去のストーリーで明らかになっていきます。

ちなみに、50年前の光太郎は中村蒼が演じていますが、どことなくTV版で光太郎を演じた倉田てつを氏に似た面影があって、ナイス配役だと思いました。

 

新たな“変身”

本作では、第5話あたりまで“仮面ライダー”は登場しません。光太郎も信彦も、それぞれ黒殿様飛蝗怪人銀殿様飛蝗怪人に変身しますが、あくまで怪人です。変身ポーズも無く、ふんっ!と力を込めるだけの変身なので、カタルシスに欠ける部分がありました。

しかし第5話で、葵が改造されてしまったことで光太郎の怒りが爆発。ググッと拳を握り締めてからの、あの変身ポーズ!そしてTV版のような演出で、飛蝗怪人を経てからの、仮面ライダーBLACK SUNへの2段階変身!!グワーッ、テンションが上がる!!

そして第8話では、決意を新たにした信彦が、光太郎と鏡写しの変身ポーズを決め、仮面ライダーSHADOWMOONへと変身!!中村倫也のキレッキレの動きがカッコ良過ぎる!!

この2つの変身シーンに関しては、興奮も最高潮でしたね。

 

光太郎vs信彦

第7話で、信彦は自分たち怪人が人間に作り出された生物兵器であったこと、ゆかりは自分達の味方ではなく、総理のスパイであったことを知り、打ちひしがれます。更に、仲間だった俊介が人間たちにリンチされた挙句殺害され、見せしめのように商店街に磔にされていた姿を目撃。ついに“プッツン”きちまった信彦は、人間への怒りと憎悪で完全覚醒。人間への宣戦布告とばかりに、デモ隊のリーダー(演:今野浩喜)の頭を衆目の面前で握りつぶし、殺害してしまいます。

この時点までは光太郎と信彦の目的は大体同じで、特に対立する理由が無かったのですが、人間と怪人との間に優劣はないと考えている光太郎と、人間を下に見ようとする信彦は、ここから決定的に対立することとなります。

 

この一連のシーンを見て、理由はうまく言えないですが、僕は本作が好きであると確信しました。この場面の信彦にすごく感情移入できた、というのが大きいですが、やたらとクズっぷりを強調して描かれている人間側の、特にドクズ揃いのデモ隊の奴らの目の前で、リーダーをぶっ殺して黙らせてくれたから溜飲が下がった、というのもあるかもしれません。磔にされた俊介を発見した時の信彦は、特に言葉も発さず表情もほとんど変えないのですが、なぜかビシビシに感情が伝わってくる中村倫也の絶妙な演技がまた良いのなんの。

 

その他

白長須鯨怪人(演:濱田岳)が、TV版と同様、終盤に光太郎を蘇らせる展開は、ファンとしては嬉しかったです。

ビルゲニア(演:三浦貴大)が、色々あって最後は葵を守り抜いて立ったまま息絶えるというのもグッときました。細かいですが、突き刺したサタンサーベルが抜けないから、自ら叩き折って戦闘を続けるとこ、なんかすごい良かったです。

あとは、新城ゆかり(演:芋生悠)、ボートレースのCMの子じゃん!とか、オリバー・ジョンソン(演:モクタール)、コヨーテのモッくんじゃん!とか、50年前の堂波真一(演:前田旺志郎)、まえだまえだの子じゃん!デッカくなったな…。とかまだまだありますが、この辺にしときます。

 

良くないと思った点

盛り上がるまでが長い

上で書いた通り、全10話の中で、仮面ライダーBLACK SUNが登場するのが、第5話。仮面ライダーSHADOWMOONが登場するのが、第7話のラスト。そして、物語がいよいよ動き出すのが、第8話~9話あたり。
…ちょっと遅くない?と思ってしまいました。

ライダーの登場に関しては、もったいつけられたぶん興奮したのも確かなんですが、見終わってから改めて考えてみると、最初の方マジで何やってたんだっけ?という感覚になるというか、内容が無い様に見えるというか。その分、後半のストーリーをじっくりと展開することが出来たのでは?という気持ちが否めナス。

 

過去の話の必要性

で、多分なんですが、前半の薄味っぷりの原因って、過去の話をやってたせいだと思うんですよね。
上記の通り過去編で明かされることもあって、そこそこ見応えがあったのも確かなんですが、もっとコンパクトにまとめられたと思うし、そこまで時間を割いてやるほどのものではなかったんじゃないかなーと。恐らく、“仮面ライダー生誕50周年記念作品”というのを意識して50年前の話を織り込んだのかと思いますが、ちょっと意識し過ぎてしまったのかなーと思いました。

あとベテランのライダーファンとしては、過去と現在がかわるがわる展開していく構成ってそれ『仮面ライダーキバ』の二番煎じでは…という気がしなくもない。個人的にキバはかなり好きな作品だけに尚更。

 

微妙にストーリーがわかりにくい

ちょっと具体例がパッと出てこないですが、整合性が取れないところが結構あったように思います。また、見せ方も上手くないなーと思うところがちょこちょこあって、わかりにくさを感じてしまいました。そういうとこまで“今の仮面ライダー”っぽくしなくてもいいのに…。

そうしたわかりにくさの要因のひとつとして、やっぱり過去編があるような気がしました。ちゃんと画面内に年代が表示されることもあれば、何も表示されず唐突に時代が変わることもあって、今やってるのが現代の話なのか過去の話なのか、混乱する場面が結構ありました。登場人物の格好とか見ればわかるっちゃわかるんですが、この辺ももうちょっと上手く出来なかったのかなー、と惜しさを感じるところ。

 

最終回の演出

最終回が始まった瞬間、TV版のオープニングをそっくりそのままBLACK SUNへ置き換えた映像が流れます。倉田てつを氏のちょっと下手味のある歌、字幕や各アングルに至るまで忠実に再現されており、「スゲェ!そのまんまじゃん!いやマジでスゲェ!!」とめちゃくちゃ興奮しました。…ですが、同時に「いやこれ完全にギャグやんけ!!!」となってしまう自分がいたのも事実。

完全にTV版を見てきた人に向けた演出で、見た瞬間は「最高!感謝!」という気分にもなったけれど、少しして冷静になると、これまでずっとダークな作風でやってきたのにいきなりパロディ入れるんかい!という思いが強くなってきたというか。
いや、嬉しいのは確かなんです。嬉しいんだけど、ちょっと違うんだよなぁ…という気分にもなる、なんとも複雑な感情を抱いてしまいました。

 

決着

最後の死闘は、非常に見応えがありました。肩に伸びた脚?を両方とも引きちぎり、更にBLACK SUNは赤、SHADOWMOONは緑に眼が発光することで、2人ともTV版のデザインに近くなるのも非常に良い演出だったと思います。

腹にサーベルを突き刺す→壁に叩きつけて固定→頭を横からぶん殴る→サーベルを支点にグルンと回転する、というシーンが個人的イチオシポイント。どーでもいいですが、『闘将(たたかえ)!ラーメンマン』にこういうシーンがあった気がする。

最後は、BLACK SUNが渾身の力を込めて放つ、ライダーキックライダーパンチ
恐らくバトルシーンの構成を考えてるのは特撮監督の田口清隆氏だと思いますが、さすがこちらの見たいものをよくわかってらっしゃる…。激アツな演出ばかりで最高でした。

ここで終わってくれていれば良かったと思うんだけどなぁ…。

 

そう、問題はここから。

最終的に光太郎は、創世王の心臓へ取り込まれ?(詳細は描写されず)、怪人を生み出すエキスを生成するだけの意思の無い存在、次期創世王となってしまいます。そして、駆けつけた葵が光太郎に教わったやり方でサタンサーベルを突き刺しとどめを刺す…という決着を迎えました。

僕は正直、この流れ、要る?と思ってしまいました。そんなに光太郎を死なせたかったのかな…。
多分、「葵に光太郎の意志を受け継がせる」という結末にしたかったんだと思いますが、逆に何でもかんでも葵に押し付け過ぎでは…?と思いました。ただでさえ、育ての親、実の両親、親友、そして自身の人間としての尊厳まで奪われるという、つらすぎる境遇に置かれた葵に、ただひとつ心の拠り所となっていた光太郎まで亡くし、更に彼らの思いまで背負わせるって、余りにも酷でしょう。

 

現総理大臣、堂波真一(演:ルー大柴)に全ての罪を被せて殺害し、虎視眈々とその座を狙っていた官房長官仁村勲(演:尾美としのり)が次期総理になるとか、生き残ったビシュム(演:吉田羊)は結局人間に隷属し続ける道を選ぶとか、仁村の策略で社会問題を海外からの移民にすり替えることで、その後の市民は怪人にすっかり興味を失くしてるとか、この辺りの結末は白石監督らしくて良かったと思うんですけど…。

 

その他

クジラが光太郎を蘇らせる際に海に潜ってったので、てっきり海底神殿みたいな場所なんだと思ってたら、その後ほかの人達は普通に陸路で来てたので、いや普通に来れるんかい!海潜った意味ないやんけ!とツッコまざるを得ませんでした。

創世王さんも、デカいのはとても良いですが、糸で吊って動かしているのがバレバレの腕の動きとか、もうちょいどうにかならなかったですかね…。

そーいやビルゲニアって何の怪人なんだろ、と思ったら古代甲冑魚怪人ってなんそれ…と思って調べたら、ガチャガチャでフィギュア出てたりする空想の生物なのね…。うーんちょっと無理矢理感。

あとやたら出てきてた警官(演:川並淳一)、デモ止める時も俊介が殺された時も怪人を庇うような立ち振る舞いをしていて、警察の中にこういう人もいるのかと感心してたんですが、最後はスピーチをしている葵を全力で殺そうとしていたのがマジで意味不明でした。行動原理が謎過ぎて、見てて腹立ってきちゃいましたね。

そーいや書き忘れてましたが、差別をなくしたいならまず“怪人”って名称を何とかするべきでは…?“あやしいひと”やで…?という、元も子もない疑問。

 

と、タラタラと文句を書き連ねてしまいましたが、こんなもんにしときます。他にも、つつけばキリが無いほどに、ツッコミどころには事欠かないドラマだったかと思います。

 

おわりに

本作はやはり評価が分かれているようですね。上で書いた通り良くない部分も少なくないですし、否定的な意見が出るのも非常によくわかります。

僕もこの記事を書きながらいろいろ考えて、最終的に至った結論は、やっぱり僕は本作が好きだな、と。粗はあるものの、何を描きたいのかは伝わってきましたし、信彦がブチ切れるところとか好きなシーンも多かったですし。何より、「これまでとは一味違うものを作ってやろう」という気概を感じました。

気軽にオススメ!とは言い難い作品ですが、興味がある方は見てみてはいかがでしょうか。ネットに溢れかえってる感想を読んでわかった気にならず、実際に自分で見て判断して欲しいです。

ということで、ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』の感想でした。

ではまた。