Vシネクスト『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。
『仮面ライダーオーズ/OOO』は、2010年~2011年にかけて放送された、仮面ライダーシリーズの1作。
“欲望”をテーマとし、キーアイテムであるオーメダルを巡る、人間、怪人入り乱れての争奪戦が描かれました。このオーメダルの玩具が当時ものすごい人気で、リアルでも争奪戦が繰り広げられたのを覚えています。確か「最も売れた玩具」としてギネスにも載ったんじゃなかったっけ。
そんなオーズ、今でもカルト的な人気を誇る作品だったりします。かくいう僕もオーズは平成ライダーで1,2を争うほど大好きな作品で、最後の方は毎週涙を流しながら見ていました。平成1期ならクウガ、2期ならオーズをベストに挙げるかなー。
TVシリーズ最終回、誰よりも“命”を欲したアンクは、最後は文字通り“自分の身を犠牲にする”という、自身の欲望とは相反する行動をとり、消滅。一方、“どこにでも届く手”という、一人の人間としてはあまりにも大き過ぎる欲を持っていた映司は、隣の人と手を繋ぎ、それを繰り返していけば、どこにだって手は届くのだと再確認します。割れたタカメダルを握りしめ、アンクとまた会える日を願いながら、映司は再び旅に出る――というラストは、数多くのメンドクサイオタク(僕もその一人)を生み出すほどに素晴らしいものでした。
その後、『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGAMAX』や、『仮面ライダー 平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』(タイトル長すぎ!)などで客演した際に、映司とアンクが再会したりしていますが、あくまで一時的なもので、アンク復活はこれまでずっとぼかされたままでした。
そして、TVシリーズ終了から10年の節目で、東映のVシネマブランドであるVシネクストの枠にて、完全新作が公開されることが発表されました。それが本作、『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』になります。
現実の時間経過と同様、TVシリーズ終了から10年後の世界を舞台に、アンクの復活と、オーズの物語の完結が描かれています。
諦めかけていた真のハッピーエンドが描かれることを喜ぶ声、“いつかの明日”はあえて描かないからこそ素晴らしいのではないかという声、それぞれの想いから、メンドクサイオタクの間では公開前から賛否両論が巻き起こっていました。ちなみに僕は後者だったので、製作が発表されたときも、嬉しさ7割、不安3割、という心持ちでした。
しかし、公式が「やる」と言った以上、それがどのようなものであれ、我々はそれを見届けねばなるまい。
そんな覚悟を持って、僕も本作の鑑賞に臨みました。
鑑賞直後の僕の感想は以下。
ハッピーエンドとはいかなかったものの、僕の中では非常に納得度の高いものでした。
こんなブログなんかよりもずっと詳細でわかりやすく的確に言語化した感想が至る所にあるのでね、僕は軽めに感想を書いていきたいと思います。
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2021年。
アンク(演:三浦涼介)は、自分を呼ぶ誰かの声を聞き、荒廃した街で目を覚まします。
確かに“死んだ”はずの自分が、なぜ再び目を覚ましたのか?
考えるのもつかの間、近くで爆発が。
後藤慎太郎/仮面ライダーバース(演:君嶋麻耶)、伊達明(演:岩永洋昭)、泉信吾(演:三浦涼介)、泉比奈(演:高田里穂)、白石知世子(甲斐まり恵)らレジスタンスが、何者かと戦っています。その相手は、ウヴァ(演:ヤマダユウスケ)、カザリ(演:橋本汰斗)、メズール(演:矢作穂香)、ガメル(演:松本博之)ら、こちらも死んだはずのグリード達。
どうして奴らまで生き返っているのか?
グリードの攻撃によって車の下敷きになりそうになった信吾を、取り憑いて間一髪助け出すアンク。
一体世界はどうなってしまったのか…?疑問は尽きません。
そこへ、「これが今の世界だよ」と、聞きなれた声が。
振り返ると、そこには火野映司/仮面ライダーオーズ(演:渡部秀)がいました。
「おかえり、アンク」
そう言うと、再会を喜ぶ間もなく、映司は姿を消します。
アンクは比奈たちが生活しているアジトへ行き、800年前に封印されたはずの古代オーズが甦ったこと、グリード達を復活させて破壊の限りを尽くしている事を聞きます。そして、映司が戦いの中で重傷を負い、そのまま行方不明となっている事も…。
先程映司と会ったことを話し、その時に聞いた隠れ家へと向かう一行。傷を治していたと語る映司ですが、その言動や行動にはどこか違和感が。
実は映司は、鴻上ファウンデーションによって造られた人造グリードであるゴーダ(声:日野聡)に体を乗っ取られており、先の戦いで映司の体は非常に危険な状態であることが明かされます。ゴーダは映司の欲望から生まれたらしく、映司の欲望を叶えることが自分の目的だと言います。
かつて信吾がそうだったように、ゴーダが映司から離れてしまうと死の危険がある事から、アンク達レジスタンスは渋々ながらゴーダと協力する事に。
果たして、古代オーズを止めることは出来るのか。
そして、映司の運命は――。
というのがあらすじ。
まず本作は、恐らく尺や予算の都合から、プロローグやエピローグをバッサリと割り切っています。なので、なぜ古代オーズが甦ったのかとか、その後どうなったのかとか、そういったことは一切描かれていません。これも賛否両論あるかと思いますが、僕は英断だと思いました。
ただ、TTFCで前日譚が配信されているようですが、僕は登録してないので見れないし、出来れば本編に捩じ込んでほしかったという思いはある…。
思うところはまぁそれなりにあります。
本作での映司くんはずっとゴーダに乗っ取られているので、映司くんとしての出番はラスト以外無い、というのはまだいい…というか何ならTVシリーズ序盤の“信用ならない協力関係”が再現されてて良かったとすら思ってるんですが、それにしてもアンク丸くなりすぎでは?とか、知世子さんは前線に出ないでアジトで料理作る担当とかの方が合ってたのでは?とか、比奈ちゃんは兄貴の事ないがしろにし過ぎでは?とか、グリードの皆さんもせっかくフルメンバーで出演してくれたのに扱い雑過ぎでは?とか、古代オーズの最期あっけなさ過ぎでは?とか、バースX活躍しなかったなぁとか、オーズドライバー増殖問題とか、とかとか。
それと、ゼロワンVシネの感想で「人気キャラを無闇に死なせないで欲しい」みたいな事を書いたし、セイバーVシネの感想では「整合性が取れないところが目立つ」みたいな事を書いたんですが、ぶっちゃけ本作はこれらの両方とも当てはまっちゃってるように思います。しかも後者に関しては、人気キャラどころか主役ですもんね。
しかしそれでも上述の通り、本作は非常に納得度が高かった。
それはひとえに、“オーズの物語を完結させる”という部分に関しては、しっかり妥協無く作っていたように思えたからです。
“オーズの完結”とはつまり“映司くんの旅の終わり”を意味していて、アンクの復活は確かに旅の大きな目的のひとつではあるんだろうけど、きっと映司くんの事だから、アンクが復活した後も困っている人を助けるために旅を続けると思うんですよね。なので、旅を終わらせるためにはあの結末しかなかったのではないかと思います。
本作のラストは賛否がものの見事に真っ二つに分かれていて、否定派の意見で多いのが、「TVシリーズラストで命の尊さを理解した映司くんが、自分の命を軽視するのはおかしい」というものな気がします。ですが、僕が感じた印象はむしろ逆で、命の尊さを理解しているからこそ、あの場面で少女の命を諦めたくなかったのでは、と思っています。
ああいったギリギリの場面においても、迷いなく誰かを助けるために手を伸ばす、それが映司くんという人間なのではないかと。だから、「いずれはこうなる時が来るよな…」と納得出来たし、「そりゃそうなるよな…映司くんらしいや…(泣)」と僕は思いました。
「自分の命を犠牲にしてアンクをよみがえらせた」というのもちょっとニュアンスが違うと思っていて、「命が尽きる間際でも誰かを助けたい気持ちがあって、最期に頭に浮かんだのがアンクだった」、という事じゃないのかな。決して自分の命を軽視していたわけではなく、もうすぐ自身の命が尽きることを悟ったから、最期にアンクによみがえってほしいと強く願った。その“欲望”にタカメダルが反応して、復元したのかな、と。だから“自己犠牲”とは違うと思ってます。
それともうひとつ、最後にアンクを追い出した事について。
「自分の都合でアンクを生き返らせて、満足したから自分の都合で死んだ」という解釈はちょっと悲しすぎませんかね…。アンクにはこの世界を自由に羽ばたいていって欲しい。自分の中に繋ぎとめる事によって、その枷になりたくない。だから自分の事は顧みずに、アンクを追い出したんじゃないかと。
いつだって誰かの事を思いやれる、とても映司くんらしい選択だなぁと思いながら、アンクと一緒に僕も号泣していました。
そのほか、精神世界?で本物の映司くんに会ってからのアンクはずっと号泣してたな…全く人間らしくなりやがって…(涙)とか、メズール様、おうつくしや…とか、なんだかんだゴーダは魅力的なキャラだったなとか、鴻上社長は相変わらずだなとか、まだまだ言いたい事はありますが、この辺にしときます。
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『オーズ』という作品を深く愛している人ほど、本作の結末は受け入れられないかもしれません。そういう意味では、非常に人を選ぶ作品になっているかと思います。僕は本作を肯定的に受け取る事が出来ましたが、否定的な意見が出るのも非常によくわかります。
でも、そういう否定的な声が上がるのも覚悟の上で、しっかりとオーズの物語を完結させようと、物語に真摯に向き合ってくれた製作陣には感謝しかないです。
『仮面ライダーオーズ/OOO』、本当に素晴らしい作品でした。
どうもありがとう。そして、さようなら。
ということで、Vシネクスト『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』の感想でした。
ではまた。