GORGOM NO SHIWAZAKA

ゴルゴムのしわざか!

映画『JUNK HEAD』感想(ネタバレ)

映画『JUNK HEAD』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

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JUNK HEAD』は、2021年に公開されたストップモーション・アニメーション映画。

基本的に新作映画の感想を書いている当ブログですが、本作は新作ではありません。僕自身も去年(ブログ始める前)に見た映画ではあるものの、今月からアマプラ見放題に追加されたし、個人的に去年見た映画で一番「見て良かった!」と思った映画なので、ちょっと布教させてください。

gaga.ne.jp

そもそもストップモーションとは、少しずつ動かして撮影した静止画を連続して見せることで、あたかも動いているかのように見せる映像技法の事を指します。その技法を用いて作られた映像作品がストップモーション・アニメーションで、人形を用いたパペットアニメや、粘土を用いたクレイアニメなど、種類も豊富。古くは『ピングー』や、ディズニーの『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』、近年ですとスタジオライカの『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』辺りが有名かと思います。あとは去年バズりまくった『PUI PUI モルカー』もそうですね。『ロボコップ』や『仮面ライダーZO』など、まだCG技術が発展していない頃の特撮系の作品でも用いられていたりします。
ちなみに僕は、ライカの『パラノーマン ブライス・ホローの謎』が大のお気に入り。

ストップモーション作品を作る際には、ちょっと動かしては撮影、またちょっと動かしては撮影、という作業が必要となり、相当な手間がかかる事は想像に難くありません。ライカ作品では確か表情パーツだけで何千何万通りも用意していた、はず。そんな面倒なことしなくても、今はCG技術も発展してるし、CGで作ればいいじゃん、と考える人もいるかと思いますが、ストップモーション作品にはなんというか独特の温かみみたいなのがあって、それが今でもこの技法が使われる理由なのかな、とか思ったりします。

 

そんな大変手間暇のかかる作業を、堀貴秀というお方は、7年もの歳月をかけてほぼ1人でやってのけました。

今や『君の名は。』でおなじみの新海誠が、かつて『ほしのこえ』をたった1人で製作したことに感銘を受け、自分にも出来るかも、と思って映画製作を始めたんだとか。本職は内装業だそうで、映画に関しては専門的な知識など一切無く、完全に独学。独学で映画製作にチャレンジしようと思うことがすごいし、ストップモーションという気の遠くなるような作業をほぼ1人でやり遂げたということが本当にすごすぎる…。

まずは約4年かけて『JUNK HEAD 1』という30分の短編を1人で製作。それが世界中で絶賛された事を受け、そこから3~4人のスタッフで約3年かけて修正や追加撮影を行い、長編として完成させたのが本作、となります。監督、脚本、人形や背景などの作製、撮影、編集、声の出演、全部堀さんがやっているので、スタッフロールがすごいことになっています。さながらヤッタ―マシンの声を全部やってた山寺宏一のよう…。
※もちろん他のスタッフさんの名前もあるし、一部キャラの声は別の方が演じてます。

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って1人50役なんてのもあったのね…(彼岸島X)

あと、本作のパンフには製作に使用した機材とかも載っているのですが、特別な機材とかは一切使っておらず、一般的な一眼レフのカメラで撮影し、一般的なノートPCで編集などをしているようで、マジでどうなってんだよ…オーパーツか?と疑いたくなります。堀さんの愛と努力のなせる業、としか言いようがない。逆に言えば、愛と努力があればこれだけのものが作れるという事…かな?いや流石にこのクオリティはそれだけでは難しい気がする。
パンフは少々お高くて(確か1500円くらい)、見る前は買わなくていいかなと思っていたのですが、見た後は「ヤバイ!コレはパンフ買わねば!」となりました。同じ事思った人が多かったのか、上映後のレジ前には長蛇の列が出来ていたのを覚えています。上記の機材の事とか、設定とか、かなり事細かに書かれていたので、心の底から買ってよかったです。

 

余談ですが、僕は去年、閉館間近のアップリンク渋谷にて本作を鑑賞しました。僕はその頃、アップリンクに関するゴタゴタとか、そもそも閉館間近だった事も全く知らなかったので、普通にいい映画館だなーと思いました。いや色々知った今でも、実際に撮影に使われた人形とかが展示されていたりして、映画館自体はとても良かったと思ってますけどね。

bunshun.jp

なんか今も某俳優某監督のあれやこれやが問題になっていますが、かなり根が深そうですし、なかなか根絶は難しそうですよね…。詳しい事情や真偽のほどはわかりませんが、イチ映画ファンとしては、こういうニュースを見るたびに残念な気持ちになります…。

 

本作に話を戻しまして。
ほぼ1人で作っているからといってチープさは全く無く、退廃的な世界観に、ギレルモ・デル・トロ作品を思わせるようなグロテスクなクリーチャーデザインと、どこかポップで可愛らしいキャラクター、ヌルヌル動くアニメーションなど、魅力を挙げればキリが無いほどにハイクオリティな作品になっております。デル・トロ監督も本作を絶賛していたとかしないとか。

てな感じで、あらすじと感想をざっくりと書いていきたいと思います。

 

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遠い未来。
環境破壊によって、地上は人が住めないほどに汚染されてしまいました。人類は地下へとその生活範囲を広げ、労働力の為に人口生命体マリガンを開発。しかし、自我を持ったマリガンは人類に対し反乱を起こし、地下を乗っ取ってしまいます。

それから、1600年後
人類は生殖機能を失う代わりに、不老不死の体を手に入れました。しかし、新種のウィルスによって、人類は絶滅の危機に陥ってしまいます。生殖機能を持つマリガンに可能性を見出した人類は、独自に進化したマリガンの調査を開始することに。

調査員として志願したパートン(声:堀貴秀)は、地下へ潜って探索を始めるが――。

というのがあらすじ。

 

本作のストーリーは至ってシンプル。主人公が地下世界を探索する、というだけのお話です。
しかし、ミニチュアとは思えないほどに壮大な世界観、ストップモーションとは思えないほどの滑らかな動き、ダイナミックなカメラワークなどで、グイグイ物語に引き込まれます。

キャラクターもとても良いです。ちょいちょいグロかったり下品だったりするので人を選ぶかもですが、上でも書いた通りどこかポップで可愛らしくて、応援したくなるような魅力があります。
アレクサンドルフランシスジュリアンの3人、通称3バカ兄弟が特に可愛い。もうホント最高。あとニコちゃんも、見た目だけだとそうでもないのに、見てるとどんどん可愛く見えてきます。

それと、本作では日本語は一切出てきません。みんなよくわからない謎の言語で話をします。なので、字幕が無ければ何言ってるかわからないんですが、ところどころ聞きなじみのある単語が出てきてクスっとなるし、「コイツ今こんな感じのこと言ってるんだな」と絶妙に文脈が読み取れるようになっています。これがなんだか不思議な世界観を作り出していると同時に、この辺が世界的に評価されている理由のひとつなのかな、とか思ったりします。

話が進むごとに、主人公の姿がどんどん変わっていくのも面白いです。
地下へ出発して速攻でロケラン撃たれてボディが木っ端微塵になり、頭だけの状態に。3バカに拾われ、博士によって急造されたボディは子供のよう。記憶も失っています。
その後、また大破したボディは、バルブ村にてありあわせの材料で作り直され、ポン太の名で呼ばれる事になります。頭は四角い箱で覆われ、体は錆だらけでなんとも頼りない。声を出せないので、ジェスチャーで意思疎通をするしかない状態に。
後半、3バカと再会した主人公は、“人間=創造主=神”と信じ込まれ、高級な素材でしっかりとしたボディを作ってもらいます。頭身は少年くらいになり、記憶も統合され、発声機能も回復してコミュニケーションも取れるようになります。こんな感じで、だんだん成長していくのが視覚的にも表現されていて、非常にわかりやすい。
あとマリガン達の、「はるか昔に先祖が反乱を起こした事なんてすっかり風化していて、人間が自分達を作ったというざっくりした認識しか残ってない」みたいなのも、却ってリアリティを感じてすごく良かったです。僕らも約1600年前=古墳時代の事なんかほとんどわかんないですもんね。

終盤の、めっちゃ強い異形生物トリムテとのバトルは、もうほんと最高の極み。
“地獄の三鬼神”の存在は割と早い段階から語られていましたが、その正体があの3バカだったというね。あの可愛らしいマスコット的な体型が、よくわからん薬剤を注射することでムキムキマッチョマンへとビルドアップし、一時的に驚異的な戦闘力を発揮するという。
ここのバトルシーンのアニメーションがとにかくすごくて、見応えの塊の如しでした。ここだけでも一見の価値ありです。

最後はブツ切りっぽい感じで終わります。「えっ?これで終わり??」と思っちゃいました。ここだけはちょっと不満点かな。

 

↓エンドロールで流れる「人類繁盛」。一時期ヘビロテしてました。

www.youtube.com

本作は3部作の構想があって、予算の都合がつけば続編も製作する、との事。
絶対に続編作って欲しいので、この記事を読んでくださったアマプラ登録しているお方は、是非とも本作を鑑賞して頂いて、いろんな人に広めていただけると嬉しいです。

 

ということで、映画『JUNK HEAD』の感想でした。

ではまた。