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映画『屋根裏のラジャー』感想(ネタバレ)

映画『屋根裏のラジャー』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

2023/12/25 追記:指摘をいただいたところを修正しました。

スタジオジブリでプロデューサーをしていた西村義明氏が、ジブリの制作部門解散に伴って新たに設立したアニメ制作会社、スタジオポノック

そのスタジオポノックの長編アニメーション最新作が、本作『屋根裏のラジャー』です。

イギリスの児童文学『僕が消えないうちに(原題:The Imaginary)』を原作とし、少女の想像によって生み出されたイマジナリーフレンドが、現実と想像の世界を守るために冒険を繰り広げる、ファンタジー作品となっています。ポノックの長編作品としては、第1作目『メアリと魔女の花』以来、6年ぶりなんだとか。

 

もくじ

 

概要

監督は、数多くのジブリ作品で原画を務めていた、百瀬義行
ポノック作品『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』や、人気ゲームを映画化した『二ノ国』の監督としても知られています。

企画・脚本・プロデュースは、ポノック代表取締役の西村氏が務めています。

 

キャストは、豪華俳優陣。

主人公であるイマジナリの少年の声優を務めるのは、いつの間にかすっかり大きくなって声変わりした寺田心くん。

主人公を想像し創造した少女の声を、こちらも子役時代からすっかり大人になった鈴木梨央

主人公の母親の声を、『怪物』など数々の作品に出演している実力派俳優、安藤サクラ

イマジナリの町で主人公の助けになってくれる少女の声を、今や若者にも絶大な支持を得ている俳優、仲里依紗

そのほか、山田孝之杉咲花イッセー尾形高畑淳子寺尾聰といった、豪華な俳優陣が声優を務めています。

 

予告編


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あらすじ

とある小さな町で暮らすアマンダ(声:鈴木梨央)は、親友のラジャー(声:寺田心)といつも一緒。しかし、ラジャーの姿は他の人には見えていません。彼はアマンダが想像上で生み出した、“イマジナリ”なのでした。2人は“屋根裏の誓い”を掲げ、今日も想像の世界へと大冒険へ繰り出します。

「消えないこと。守ること。ぜったいに泣かないこと。」

ある日、アマンダのもとへ、ミスター・バンディング(声:イッセー尾形)と名乗る男が現れます。不穏な気配を感じ逃げ出したアマンダは事故に遭い、意識不明に。ひとりぼっちになってしまったラジャーは、“イマジナリの町”と呼ばれる場所へ辿り着きます。

他のイマジナリたちと暮らすうち、ラジャーは“屋根裏の誓い”の真実を知ります。そして、大切な人たちを守るため、ラジャーは最期の冒険へと旅立つのでした――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

正直に言いますと、僕はあまり本作に期待していませんでした。
予告編を見た感じ、やはり脱ジブリは出来ていなさそうだなと思いましたし、イマジナリーフレンドはある意味心の病(※に繋がりかねないもの)であり、そうした重いテーマを綺麗事にするのはどうなんだ、という思いがありまして。でもまぁ、がんばってたくさん宣伝してるし、色んな意味で気になってはいたので、鑑賞した次第。

※追記:イマジナリーフレンドそれ自体は心の病とは違うとのご指摘をいただきました。理解が足りぬまま好き勝手書いて申し訳ありません…。

結果としては、思いのほか感動してしまいました。いい意味で予想を裏切られた感。

 

率直に言うと、ジブリ、というか宮崎駿作品のような作家性の強さはなく、「大衆向けのジブリのよう何か」といった感じの作品でした。…ってこの言い方じゃどう考えても良くない捉え方しか出来ない気がしますが、決して悪く言っているわけではないです。全体を通してそこまで強いパンチを感じなかったのは事実ですが、後述する本作最大の感動シーンは本当に良かったと思いますし、老若男女が楽しめる娯楽作に仕上がっていると感じました。

 

まず本作では、フランスの制作会社が開発した最新のデジタル技術を用いて、アニメーションに実写さながらのライティングを施し、リアリティのある映像表現にチャレンジしているそうです。それがどれほど功を奏しているかは僕にはわかりませんでしたが、陰影の雰囲気が独特で、手間暇をかけたイラストがそのまま動いているような印象を受けました。この辺の表現はジブリには無かったやり方かと思います。

やはりというかなんというか、アニメーションの質は世界最高峰だと思います。ジブリ譲りの手書きにこだわったキャラクターは、作画の崩れが一切ないのはもちろん、どこか温かみがあって活き活きとしていて大好きです。

あとなんといっても、想像の世界の大冒険は大変見応えがありました。段ボールの箱がウニョーンとソリに変わったり、屋根裏部屋からシームレスに雪山に移動したり、アニメでしかできない映像表現は、鳥肌が立つ程に良かったです。

 

ストーリーに関しては、僕の足りない頭ではなんとも言葉にしにくいですが、思っていたよりもずっと良かったと思います。特に、ラジャーが生まれたきっかけとなる、“屋根裏の誓い”の真実が明らかになる場面はヤバかった。色んな気持ちをグッと堪えて気丈にふるまっていたリジーが、屋根裏部屋のクローゼットにしまわれていた傘から、アマンダが心に負った深い傷と決意を知るあのシーン。リジーと同じように僕も「あぁっ…」となったし、彼女と同じように僕の涙腺も決壊しました。あの場面を追体験できる、その一点だけで本作を見る価値は十分にあります。

欲を言えば、アマンダをはじめとした、イマジナリーフレンドを生み出すに至った人たちの苦悩とか、そうした人たちへの心のケアとかを描いてくれてたらより僕好みだった気もしますが、重くなりすぎちゃいそうですしね。なるべく否定的にならず、明るい雰囲気を保ち続けてくれたのは英断だと思います。イマジナリはトラウマの象徴ではなく、その人に寄り添い、心を強くしてくれる存在。そして、前に進むために背中を押してくれる存在。この描き方はとても素晴らしいと思いました。

 

最後は、なんとなくお別れ的な空気出してましたが、ラジャーはイマジナリの町へ帰ったんですかね?冷蔵庫くんもあれっきりでリジーとお別れしちゃうんですかね?いつもそばにはいなくとも、何かあれば助けになってくれる、ということなのかな。まぁ、どう捉えてもよい、ということなのでしょう。「不可能なことなんてない」のですから。


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おわりに

短いですが、以上になります。

今後もポノックを応援していこう、と思えるほどには良い作品だったと思います。年末年始の過ごし方の選択肢のひとつに、本作の鑑賞を入れてみては。

ということで、映画『屋根裏のラジャー』の感想でした。

ではまた。