GORGOM NO SHIWAZAKA

ゴルゴムのしわざか!

映画『竜とそばかすの姫』感想(ネタバレ)

映画『竜とそばかすの姫』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

2022/11/29:諸々書き直しました。

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日本を代表するアニメ映画監督、細田守の最新作である本作。

細田監督の得意とする電脳世界を舞台とし、さながらSF版『美女と野獣』のような、ミュージカル(風)アドベンチャー大作となっております。

 

もくじ

 

細田作品について

細田作品はなんとなく全部見た気になっていましたが、よく考えたらまともに見たのは『サマーウォーズ』くらいで、あとは『おおかみこどもの雨と雪』をながら見したくらいでした(なので天然水のCMの曲が流れるとこしか覚えてない)。『時をかける少女』『バケモノの子』『未来のミライ』は、金ローでやってたのを録画しててあとで見ようと思ってたらHDDの容量がなくなって消してしまったという…。いずれ全部ちゃんと見よう。

あ、『時かけ』はオリジナルの実写映画は見ましたが、最後とかヘンテコすぎてちょっと笑っちゃいましたね…。

 

金ロー夏の風物詩ともいえる『サマーウォーズ』ですが、劇場に見に行った友人から、(同じ細田監督作である)「『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム』みたいで面白かった」という感想を聞いて、「なんじゃそりゃ」と思ってしばらく見ずにいたのですが、重すぎる腰を上げていざ見てみたらめっちゃ面白かったというね。
…あれ、なんか前にも同じこと言ってた気が…。

逆シャアは学生時代に異常に勧めてくる友人がいて、「そこまで言われると逆に見たくなくなってくるな」と思って長いこと未見だったのですが、重い腰を上げて見てみたらめっちゃ面白かったというね。スマン友人よ…。

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生涯であんなに熱い“こいこい”は見たことないし、おそらく今後もアレを超えるモノは見ることが出来ないんじゃないかと。
その後『ぼくらのウォーゲーム』も見て、これもめっちゃ面白かったというね。スマン友人よ…。
※ちなみに『逆シャア』の時とは違う人です(という至極どうでもいい情報)。

 

とまぁ、そんな感じで細田作品にそれほど関心がなかった僕ですが、『サマーウォーズ』と同じくインターネット世界を舞台にした作品ということもあってか、本作に関してはなぜだかすごく興味を惹かれまして。たまたま休みだったのもあり、公開初日にIMAXで見てきました。結果、やはり映画館で見て大正解でした。

この映画は大きな画面と良い音響で鑑賞することで面白さが格段に上がる映画だと思いますので、気になっている方はIMAXなどで見ることをおススメします。

 

はい、どうでもいい前置きはこのくらいにして、感想を書いていきたいと思います。

 

予告編


www.youtube.com

 

あらすじ

高知県の田舎町で暮らす女子高生、すず(声:中村佳穂)。
彼女は幼少期に水難事故で母を亡くしており、それ以来、大好きだった歌を歌えなくなっていました。

すずは親友のヒロちゃん(声:幾田りら)に誘われ、全世界で50億人以上が参加するインターネット仮想空間、<U>に登録。ベルという<As>(アバター)で<U>の世界へ飛び込んだすずは、ここでなら歌を歌える事に気付きます。その歌声はたちまち話題を呼び、瞬く間に謎の歌姫として世界中から注目を浴びることに。

その人気を受け、ベルのコンサートが開かれることになりますが、その最中、(声:佐藤健)と呼ばれる謎のアバターが乱入し、コンサートは中止となってしまいます。激しいバッシングを浴びる竜でしたが、すずは彼の中に何かを感じ、対話をしていく事で、互いに心を開いていくのでした。

一方、現実世界では竜の正体探しで賑わっており、竜をヒーロー視する人まで出てくるなか、<U>の世界でも自警団のリーダー、ジャスティ(声:森川智之)が、竜にアンベイル(アバターの姿を解除し現実での姿に戻すこと)をしようと躍起になっていました。

竜の正体とは。そして、ベル=すずは彼を救うことが出来るのか――。

というのがあらすじ。

 

良かったところ

<U>の世界

とにかく映像がきれいでした。現実世界の自然あふれる風景もさることながら、やはりインターネット世界<U>のビジュアルは、壮大で圧巻の美しさでした。『サマーウォーズ』のOZ(オズ)も大変素晴らしかったですが、本作では基盤のようなデザインの街並みだったり、スピーカーを山ほど付けたクジラだったり、三日月だったり、挙げればキリがないほど良さに溢れていて、『サマーウォーズ』から更に進化しているなと感じました。

あとベルのキャラデザはもちろん、歌うときとかにリング状に他言語の字幕が表示されるとことか、至る所のデザインが本当に素晴らしかったです。流石いろんなところから超一流の人を呼んできただけのことはありますね。細田監督の思い描くインターネット世界のビジュアルはやはり最高だな、と改めて思いました。

あと、リアルは手書きアニメ、<U>の世界はCGアニメという描き分けをしているのも、いい感じに世界観が区別されていて良かったです。

歌の持つ力

主人公すずを演じた中村佳穂さんの歌声が素晴らしすぎました。歌にはこんなにも人の心を動かす力があるのだと思い知らされましたね。

予告とかCMとかで流れまくっているメインテーマの『U』に関しては、正直見る前から若干食傷気味だったのですが、本編を見てみるとサビ以外の部分もすごくいいし、壮大な映像との相乗効果もあってテンション上がりました。サビ直前の「ほうへっさぁ!」のところが個人的お気に入り(伝われ)

U

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  • provided courtesy of iTunes

そのほかの曲も名曲揃いで、中でもクライマックスで歌う『はなればなれの君へ』にはまんまと涙腺を崩壊させられました。サントラ出たら買おうかな…。

 

各キャラクター

僕の個人的MVPは、ヒロちゃん。
ヒロちゃんを演じた幾田りらさんの声と演技がめちゃくちゃ良かったです。ご存じYOASOBIのボーカルikuraとしても大活躍中の彼女ですが、作品内で最もよく喋るキャラクターを頑張って演じていました。よく聞くとそんな演技上手ってわけでもないけど、とにかく声が可愛らしくて最高でした。本職が忙しすぎてなかなか難しいとは思いますが、今後声優の仕事増えるのでは?

あと好きなキャラクターで言えば、ジャスティン。
キメたタイミングで後ろにスポンサーのマークがバーン!と並ぶのが面白かったです。最後は横暴な態度の彼に愛想をつかしたのか、ズラッと並んでいたスポンサーのマークがどんどん散り散りになっていくのが、コントのオチみたいというか、こち亀のエピソードで両さんが欲を出しすぎて最後に全てを失うような感じで楽しかったなぁ、と。

インターネットの描き方

これは良かった点というか印象的だった程度のものなんですが、今作ではインターネットで一番前面に出てくるものとして"誹謗中傷"を描いていまして。<U>の世界でも、何をやってもまず出てくるのは批判的な声。すずも最初、ベルについて批判意見があることに対して過敏に反応していましたね。「こんなん当り前よ」と一蹴するヒロちゃんがまた良き。

ただ、国境や言語を越えてベルが評価されていたり、最後はすずの歌でみんながひとつになったり、ネガティブな要素だけではないんだと、なるべく肯定的にインターネットを描こうとしている印象を受けました。

 

良くないと思ったところ

竜のデレの早さ

本当にたった一言でデレるので、さすがにちょっと早すぎやしないかと。
中身が少年だから…とか理由を探してみるも、いやそれにしたって心変わり早すぎでしょ、と思わざるを得ませんでした。

余談ですが、佐藤健の声は竜としては良かったけど、恵としてはちょっと大人っぽ過ぎるというか、ちょっと合ってないかな、と思いました。

 

最後の展開

既にいろんなところで言われていますが、僕もやはり最後の展開には思うところがありました。というか最後の方にこの映画の悪いところが凝縮されていたような気がします。


※以下、ちょっと不満が長くなりますので、ご注意ください。

まず、竜の正体が(けい)という少年であることがわかり、彼は弟の(とも)(声:HANA)と共に父親(声:石黒賢)から虐待を受けていることがわかります。すずは恵とコンタクトを取り、自分がベルであることを打ち明けて助けようとしますが、彼は他人への不信感から全く信用してくれません。

そこで、<U>で自らアンベイルし、すず本人の姿で歌うことで、恵に自分がベルであること、助けようとしていることを信じさせます。ここで歌うのが『はなればなれの君へ』という曲であり、その圧倒的な表現力に感動してボロボロ泣いてしまいました。

はなればなれの君へ

はなればなれの君へ

  • provided courtesy of iTunes

ただこの行動、よくよく考えてみると、結局何の意味も無いんですよね…。

心を開いた恵が住所を伝えようとするも父親に阻まれるし、結局周りの人が窓の外の景色や流れていた環境音で居所を特定しちゃうしで、すずのあの覚悟は一体何だったのか…。

アンベイルはまさにTwitter等のSNSとか、最近でいえばVTuberなんかが実名と顔を晒すような行為なので、それほどのリスクを冒しても何の意味もなかったというのはどうなんだと。まぁ、中身がむさくるしいオッサンとかだったらもう完全に終了ですが、すずはちょっと田舎っぽいけど若くてかわいい女の子だし、顔を公開したところでさほど影響は無いかもしれませんが…。

 

で、これはまだ序の口でして。
恵が東京にいることを特定し、その町の児童相談所に連絡するも、48時間ルールとかいうものがあるらしく、48時間以内に行くなんて、その間に取り返しのつかないことになったらどうすると、すずがひとりで恵のもとへ行く決心をします。周りの友人や大人たちは止めるそぶりはみせるものの、最終的に「すずが決めたことなら…」と、駅まで車を出すなどして送り出します。

ってこれ、いろいろと破綻してますよね…。
すずがいる高知から恵のいる東京まではかなり距離があり、すぐに向かうにしてもそれ相応の時間がかかるのは明らか。「もう飛行機も出てない」みたいなセリフもあったけど、だったら尚更時間かかるじゃないすか。それこそその間に取り返しのつかないことになるとは思わないのだろうか…。48時間ルールとやらも別に「48時間後に行きます」っていう意味じゃないし。まぁこれはこのルールを守りきれず手遅れになるケースがある、といった実際にある問題を扱っているということなのはわかるんですけど。

 

ていうか、周りに大人がたくさんいるのに、なぜ誰も付き添わないのか…。合唱団のおばちゃんのひとりが駅まで送ってあげてましたが、車出してあげるならそのまま東京まで一緒に行ってやれよ、と。ひとりで行くことに意味があるのかもしれないですが、チャリで行けるような距離ならまだしも、高知→東京間って結構な長旅ですよ。それを女の子ひとりで(しかも狭く密閉された夜行バスで)行かせるって、監督不行き届きなのでは…?

東京へ向かうバスの中でLINE的なヤツで父親とやりとりしていて、「面と向かっては言えない事もデジタルツールを使うことで言えたりする」的な事を言いたいのはわかるのですが、いや、だから付き添えよ親父…という思いが先行してしまう。なんか、すずの父親(声:役所広司)は、まるで感情の無い人みたいな描き方されてましたね。

 

更に極めつけは東京についた後。
近くまで来たものの詳細な場所がわからないすずは周りをウロウロ。するとなぜか外に出てきていた恵と弟に遭遇。そこへ探しに来た父親も来て二人を連れ戻そうとしますが、すずがそれを遮ります。邪魔をするなとすずに殴りかかろうとする父親でしたが、彼女の強い眼差しに圧倒され腰を抜かし、逃げ去ります。

…えーと、すみません。ここに関しては全く意味が分からないです…。
偶然と眼力で万事解決って…。そりゃないよ……。

恵もそんなすずの姿に「俺も戦うよ」的なことを言うけど、お前さんそれでええんか…?と思っちゃう。嫌なことは嫌だと言える、毅然と立ち向かえる勇気を与えたということなんでしょうが、戦う前に児相にも頼ろうよ…。子供がひとりで決断して成長することの尊さを描きたいのはわかるのですが、それによって大人は信用出来ないということを逆説的に描いてしまっている気がするというか。

伝えたいことはなんとなくわかるのだけど、脚本がうまくなさすぎる、という結論。
まぁ同じようなことをいろんな人がもっとわかりやすい文章で書いてくれているのでね。僕はこの辺にしときます。

 

おわりに

総じて、映画館の大きな画面と良い音響で見ればすごい感動出来ますが、最後で冷静になってしまうといいますか。TVで見たら良さが最大限発揮されずに悪いところとプラマイゼロになって微妙な評価になっちゃいそうな気がします。始めの方で「映画館で見た方がいい」的なことを書いたのは、そういう意味合いもあったりします。

とはいえ、ものすごく感動したのは本当です。最後が意味不明だった以外は、全体的にとても出来の良い作品だと思いました。

夏休みの思い出のひとつとして、鑑賞してみてはいかがでしょうか。

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細田作品の代名詞、入道雲。登場人物の成長を表しているのだとか。

ということで、映画『竜とそばかすの姫』の感想でした。

ではまた。