映画『沈黙のパレード』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。
フジテレビの大人気ドラマ、『ガリレオ』。
原作は、東野圭吾の“ガリレオシリーズ”と称される推理小説。刑事事件のさなかで起こる超常現象とも思われる現象を、大学准教授である主人公が物理学の知識を駆使して解明していくことで、事件解決の糸口となっていく、といったミステリー作品になっています。
連続ドラマはフジテレビの“月9”枠にて2007年と2013年に2度放送され、1話完結のテレビスペシャルも何度か放送されました。また、2008年には劇場版第1作目『容疑者Xの献身』が、2013年には第2作目『真夏の方程式』が公開されています。劇場版の方は、トリックの解明というよりかは、事件に関わる人たちの人間ドラマを重点的に描いているのが特徴な気がします。
そんな“沈黙シリーズ”…じゃなかった“ガリレオシリーズ”の最新作であり、劇場版第3作目が本作、『沈黙のパレード』になります。
↓予告編はこちら。
…ってこっちは“沈黙シリーズ”の方だった!(白々しく)
↓こちらが本作の予告編。
主人公、湯川学を演じるのはもちろん、歌手であり俳優の福山雅治。本作では准教授から教授に昇格していました。
また今回、久々に内海刑事役として柴咲コウが出演しています。劇場版への出演は、なんと14年ぶりなんだとか。
それから、北村一輝演じる草薙刑事も引き続き登場し、本作では重要な役どころとなっています。
御三方ともですが、特に福山雅治と柴咲コウのコンビはシリーズ当初から変わらないどころか、更に美しさを増してるの凄すぎィ!
監督の西谷弘、脚本の福田靖、音楽の菅野祐悟など、スタッフ陣もドラマシリーズから続投しています。
僕はガリレオシリーズは割と好きで、映像作品は全て見ている…はず。テレビスペシャルとか見逃してるのもあるかもしれない。『容疑者Xの献身』はボロッボロに泣いた記憶があります。
月9はあまり見ないのですが、ガリレオ以外だと2012年に放送されていた『鍵のかかった部屋』とか、あとだいぶ古いけど2001年の『アンティーク~西洋骨董洋菓子店~』とかが好きです。
とまぁ、そんなガリレオの久々の新作ということで本作も気にはなっていたんですが、優先順位はさほど高くなく、「テレビで放送されたときに見ればいいかなー」くらいに思っていました。ですが、用事で西新井に行った際に「そーいやここにも映画館あったな」と思って、TOHOシネマズ西新井の上映スケジュールを確認してみたら、ちょうど都合のいい時間に上映する回があったので、せっかくだからと思って見てきました。結果、やっぱ見といてよかったなー、と思いました。
↓見た直後の率直な感想がこちら。
爆発的な感動、とまではいきませんが、ギュッと胸を締め付けられるような場面がずっと続くような、苦しくも感動的な作品になっていると思いました。
「はいココ!ココで泣いてくださーい!(壮大なBGMバーン!)」みたいな作品は、うまくいけば確かに大きな感動を呼び込むことが出来るけど、本作のようなジワジワ感動が押し寄せるタイプの作品の方が最近は好きかもしれない。
そんなこんなで、ぼちぼち本編の感想に参りたいと思います。
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舞台は東京、菊野市(架空の町です)。
2017年、歌手を夢見る高校生、並木佐織(演:川床明日香)が突然姿を消し、数年後に遠く離れた静岡にて遺体で発見されました。
容疑者として挙がった蓮沼寛一(演:村上淳)は、23年前にも少女誘拐殺人事件で逮捕されるも、完全黙秘を貫き、証拠不十分で無罪となっていました。蓮沼は今回も完全黙秘し、証拠不十分で釈放。その後、彼は何を思ってか菊野市へ戻ってきていました。
事件を調べている警視庁の内海薫刑事(演:柴咲コウ)は、アメリカより帰国した、帝都大学理工学部理学科教授、湯川学(演:福山雅治)に協力を依頼。湯川の大学の同期である草薙俊平刑事(演:北村一輝)も捜査に加わりますが、彼と蓮沼との間には浅からぬ因縁があるようでした。
そして今年。町では久々に開催される一大イベント、“キクノ・ストーリー・パレード”で大いに盛り上がっていました。そのさなか、蓮沼は居候中の居室にて、死体で発見されます。死体からは睡眠薬が検出されましたが、死因は窒息死としか判明しませんでした。
容疑者として挙がるのは皆、並木佐織と関係の深い人物。
佐織の両親、並木祐太郎(演:飯尾和樹)と並木真智子(演:戸田菜穂)。
佐織の妹、並木夏美(演:出口夏希)。
かつて佐織の恋人だった、高垣智也(演:岡山天音)。
佐織の才能を見出した音楽プロデューサー、新倉直紀(演:椎名桔平)とその妻、新倉留美(演:檀れい)。
戸島修作(演:田口浩正)、宮沢麻耶(演:吉田羊)ら、家族ぐるみで付き合いのあったご近所さん。
それぞれに動機はあるものの、全員にアリバイがありました。
更に警察の取り調べに対し、彼らもまた“沈黙”を貫きます。
蓮沼の死、並木佐織の死、23年前の事件、これらの点と点が線で繋がるとき、悲しい真実が明らかになる――。
というのがあらすじ。
上でも書いている通り、劇場版ガリレオはトリックの解明などのミステリー要素よりも、人間ドラマに重きを置いている印象がありますが、本作は特にそれが顕著な気がしました。殺害方法は序盤で早々に解明されますし、それをどうやって可能にしたかについても、中盤くらいで明らかになってしまいます。その分、ドラマパートは濃密で、二転三転する展開に心を動かされっぱななしでした。
まずアバンにて、佐織とそれを取り巻く人物たちとの日常、そしてそんな未来への希望に溢れた彼女の人生が一瞬で奪われる様を丁寧に描くことで、彼ら彼女らにたっぷりと感情移入させる作りになっているのが、なんともニクいなーと。みんながどれほど佐織を大切に思っていたのかが端々から伝わってきて、僕も親戚になったような思いを抱きながら見ていました。
特に佐織の父、祐太郎を演じたずんの飯尾さんの演技は、本当に素晴らしかったと思います。普段は気丈に、落ち着いた風に振舞ってはいるけど、やはりどうしても滲み出てしまうやり場のない怒りや悲しみ、そういった感情がセリフ以外の部分からも伝わってきて、本当にいたたまれない気持ちでした。店閉めてひとりで酒飲んでる(全く酔えない)シーンとか、ほんとヤバかったです…。
それとインスタにも書きましたが、北村さん演じる草薙刑事がまたずーっと苦しそうで、見ているこっちまで苦しくなりました。
23年前、蓮沼の罪を暴くことが出来ず、再び同様の事件を起こすきっかけを自分達が作ってしまったと、ずっと自分を責めてるんですよね。蓮沼の写真を見た瞬間に嘔吐してしまうほど、彼の中でトラウマになっていることがわかります。取り調べの場面などで、敢えてBGMを入れずに息遣いを強調させるようにしていたのも、ヒリヒリとした空気感や感情が伝わってくるようでした。心身ともにボロボロになりながら捜査を続ける草薙刑事の姿は、見ていられないほどでしたよ…。
ただ、それくらい気持ちが入っちゃう人を捜査に加えるのはいかがなものか、とちょっと思ってしまいました。確か被害者が家族や近親者だった時は捜査から外される、って別の刑事ドラマか何かで見た気がしますが、もうそのレベルなんじゃないかと。「蓮沼が犯人であって欲しいんじゃないのか」みたいに湯川に指摘されてましたし、どう考えても被害者側に肩入れし過ぎじゃ…と思いました。最後とか、草薙刑事が犯人に情報リークしてるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしましたよ。全然そんなことなくて良かったですけど。
そして結局、関係者の誰一人として救われてはいない、というのがまた悲しい…。
町の人達は大した罪には問われなかったものの、それで喜ぶわけでも無し、ましてや佐織が帰ってくるわけでも無し。悲しみと罪の意識を抱いたまま、これからも生きていくしかないんですよね。しかも万が一今後の捜査で蓮沼が佐織殺害の犯人ではないことがわかったら…これ以上は考えたくもない。
新倉夫妻も、本当に悲しい結末を迎えてしまったな、と。自分が全てを話せば、妻の容疑は晴れる。しかし、全て話すということは、明確な殺意を持って犯行に及んだことを認めることになり、自身の罪が重くなる。そうした場面で、迷いなく自供する=妻を救うという決断をする直紀の姿には、どうにも涙を堪えられませんでした。きっと妻の留美も、自身の罪、そして夫の罪をこれからも一緒に背負っていくんだろうな、と思うとまた泣けてきます。
あとやっぱり草薙刑事も、全く救われてないんですよね。
蓮沼の罪を暴くことは、結局最後まで叶わず。罪を立証出来たとしても、自供させることも出来なければ、償わせることも出来ない。恐らく、この件でこれからもずっと苦しみ続けるんだと思います。本当につらい…。
でもきっと、そうした思いを糧に、彼はこれからも多くの事件を解決し、たくさんの人を救っていくんだろうなぁと。そしていつかきっと、佐織殺害事件と23年前の少女殺害事件にもケリをつけてくれる。そう思わせてくれるのが唯一の救い、なのかな。
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とまぁ、そんな感じでした。
第1作『容疑者Xの献身』は、湯川に匹敵する天才が罪を隠蔽するお話でした(ざっくりし過ぎてる感)。
第2作『真夏の方程式』は、家族ぐるみで罪を隠蔽するお話でした(これまたざっくりし過ぎてる感)。
本作『沈黙のパレード』は、今度は町内会ぐるみで犯行に及ぶ、という感じで、ここだけ見ると順当に進化しているような作りになっているように思います。しかもそこからもう一歩踏み込んでいて、始めは「懲らしめてやろう」という魂胆だったのが、それを利用した新倉によって殺害に至った、という感じでした。
3作とも共通しているのは、「誰かが誰かを思う気持ちが、悲劇的な事件を起こしてしまう」という点でしょうか。殺害される側が比較的クソ野郎で、犯人側がすごくいい人達、というのも共通している気がします。このテンプレ、人間ドラマの深みが増すので今後も多用されていくと思いますが、マンネリにならない程度にやってくれれば、個人的には大歓迎です。
ということで、映画『沈黙のパレード』の感想でした。
ではまた。