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映画『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』感想(ネタバレ)

映画『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠(ひねずみ)』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

2007年にフジテレビのノイタミナ枠にて放送されたホラーアニメ作品、『モノノ怪』。

日本の古典的怪談をモチーフに、色彩豊かな映像美と、濃密な人間模様が描かれたこのアニメは、今でもカルト的な人気を誇る作品となっています。

 

そんなアニメの劇場版第2弾となるのが、本作劇場版モノノ怪 第二章 火鼠(ひねずみ)

前作『劇場版モノノ怪 唐傘』より地続きに繋がる物語となっており、全三部作の第二章となります。

 

『唐傘』も感想書いておりますので、併せてお読みいただけますと幸いです。

blacksun.hateblo.jp

 

もくじ

 

概要

前作に引き続き、舞台は大奥。華やかで美しい印象のある大奥と、ビジュアルに特徴のある本シリーズとの相性は抜群です。

あ、お分かりかと思いますが、このシリーズにおける大奥は、実在のものとは全く違いますからね。僕は歴史に詳しくないですが、「こんな大奥あってたまるか」って感じなのはなんとなくわかります。なので、歴史ものとしての見方は出来ないと思いますので悪しからず。あくまで架空の舞台としてお楽しみいただければと。

 

上で書いた通り、本作は三部作の2作目となりますが、ひとつひとつのエピソードは独立しているので、ここから見ても十二分に楽しめる作りになっています。上映時間も1時間ちょっとですし、何より本作はTVシリーズ含めた歴代の話の中でもかなりわかりやすいと思いますので、『モノノ怪』入門編としても最適かと。つまりみんな見ろ(暴論)

 

TVシリーズや前作で監督・脚本を務めた中村健治は総監督に回り、本作のメイン監督は鈴木清崇が務めています。
鈴木さんは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の総演出や、タツノコヒーロー版アベンジャーズというべき『Infini-T Force』の監督などを務めたお方。中村さんが監督を務めた『ガッチャマン クラウズ インサイト』では助監督などもやっているようで、そうしたご縁が今回の起用に繋がったと思われます。

脚本を務めるのは、ライトノベル作家新八角(あたらし やすみ)。
アニメ脚本としては、スター・ウォーズのアンソロジーアニメ『スター・ウォーズ:ビジョンズ』の一編、『タトゥイーン・ラプソディ』や、YouTubeで配信されているポケモンのWebアニメ、『POKÉTOON』シリーズの脚本などを執筆しています。

 

キャストは、主演の神谷浩史をはじめ、日笠陽子戸松遥梶裕貴細見大輔堀内賢雄堀川りょうらが出演。豪華声優陣にござりまする。

 

予告編


www.youtube.com

 

あらすじ

モノノ怪・唐傘の事件から、ひと月。

“退魔の剣”を携えし薬売り(声:神谷浩史)が、再び大奥に姿を現します。

未だ混乱の渦中にある大奥では、老中・大友の娘、ボタン(声:戸松遥)が御年寄の後継に就任。ボタンは厳格な態度で采配を行い、町人出身の御中臈・フキ(声:日笠陽子)はそれに反発。ふたりの溝は深まるばかりでした。

そんな中、フキの妊娠が発覚。世継ぎを巡り、陰謀が加速する事態に。さらに時を同じくして、女中のひとりが消し炭と化す、人体発火事件が発生。フキとお腹の子を狙う人物が、次々と炎に包まれていきます。

全てを焼き尽くす、その情念の正体。
そこには、大奥に蠢く、負の歴史が関係しており――。

というのがあらすじ。

 

感想

最高。最高というほかない。
今年の個人的見て良かったリストに名を連ねるのは間違いないです。

 

最高峰のアニメーション

前作からそうですが、まーとにかくアニメーションのクオリティがヤバい。作画の綺麗さは、現代アニメの中でもトップクラスかと。薬売りさんのお美しく妖艶なお顔が崩れる瞬間など、一瞬たりともありはしません。それでいて、アクションシーンはヌルヌルと、ダイナミックに、そしてド派手に動き回るので、見応えが半端ない。今回は特に素早いモノノ怪が相手ということで、スピード感溢れるアクションシークエンスがいっぱい見られて、大変眼福でございました。

 

絢爛豪華な大奥の背景美術の美しさは、もはや言わずもがな。画面の隅から隅まで書き込まれた凄まじい情報量が、見る者を圧倒してきます。色彩も相変わらず素晴らしく、「極彩色」や「色鮮やか」という言葉では足りないくらい。なんというか、さながらオラオララッシュのように色彩を叩きつけられるような、そんな感覚。これはもう、「色彩の暴力」ですよ。色に滅多打ちにされて、あたしゃもう完全にノックアウトですわ。

…うん、自分でも何言ってるかよくわかんないので、ぜひご自身の目で確かめていただきたい。好き嫌いは分かれるかもしれませんが、好きな人はめちゃくちゃハマるヤツです。

 

さらに深化した世界観

新人女中であるアサとカメの目線で描かれた前作に対し、本作は御年寄のボタンと御中臈のフキがメインで描かれています。そのため、大奥のかなり内部、跡目争いやお家騒動などに踏み込んでおり、世界観が深掘りされていて非常に面白かったです。まぁ、どの人が名家出身で、誰が誰の子供なのかとか、少々ごっちゃになりがちでしたけど。

公式Xにて相関図を出してくれてるので、コレを見れば関係性が整理出来るかと思います。ちなみに、これにさらにネタバレを含んだものがパンフレットにも載っています。

個人的には、前作でも登場した坂下にも結構スポットが当たっていたのが嬉しかった。「行けぇー!薬売りぃぃー!!」のシーンは、本作イチのテンション爆上がりポイント。

 

そーいや僕だけだと思いますが、ボタンのことを最初アサと勘違いしていて、「もう御年寄かぁー、出世早いなぁ」なんて思ってたのは内緒。

 

合成の誤謬」というテーマ

劇場版三部作の共通のテーマとして掲げられているのが、合成の誤謬(ごびゅう)」というもの。誤謬とはなんぞや、って感じですが、要は「良かれと思ってしてきたことが、ほかの誰かにとって苦痛となることもある」という意味合いっぽい。合ってるかは知らん。

この誤謬というキーワードが、本作ではボタンとフキとの確執という形で表れています。大奥全体のことを第一に考えるボタンと、ひとりの人間としての幸せを第一に考えるフキ。どちらかが間違いということではなく、人の考えというものは千差万別なので、こういった意見の食い違いというものはどうしても発生してしまう。

 

そして、そうしたすれ違いが歪みを生み情念となり、膨れ上がった情念がモノノ怪を形作る。

大奥で働く覚悟を決めさせるため、自身の最も大事にしているものを井戸に投げ込ませた結果、「本当はこんなことしたくなかった」という思いが積もり積もって生まれた、モノノ怪・唐傘。

世継ぎは名家出身の者から選出するという古くからの習わしを守るため、名家ではない者から候補者が出そうになれば生まれる前に排除してきた結果、子を奪われた怒りが燃え上がり生まれた、モノノ怪・火鼠。

 

単純な恨みつらみではなかった唐傘に比べ、火鼠はきっかけが比較的わかりやすいものだったので、物語がスムーズに入ってきました。なので、登場人物の心理状態などもすぐに理解でき、感情移入することが出来ました。特に、クライマックスで明かされる「何が許せないのか」の正体には、ボロボロ泣いてしまいました。なんというか、元々は本当に優しい人だったんだなぁ、と。だからこそ余計に悲しくなりましたね。

 

最後、出世のためではなくひとりの母として、生まれてくる命を守ることを決めたフキと、利権や保身のために守られてきた習わしから脱却し、柔軟さを身に着けたボタン。そんなふたりの、お互いを尊重し合うような「ごきげんよう」の言葉はなんとも優しく、これまた涙を誘ってくる締めくくりでした。

 

次回作について

さて、次はいよいよ三部作の最終章、『蛇神(へびがみ)』。

未だ明かされていない“御水様”とは何なのか、そしてそれを守る“溝呂木家”とは何者なのか。この辺の核心に迫ってきそうな予感。来年まで待ちきれないぜ…!

 

おわりに

以上になります。

ジャンルは一応ホラーですが、苦手な人でも全然大丈夫だと思います。僕も苦手なクチですが、人間ドラマが主体ですし、画面が美しすぎて恐怖の意識が薄れるのではないかと。気になっている人は、今すぐに映画館へ行くことを強くオススメします。前作『唐傘』もネトフリで配信中なので、どちらが先でもいいのでぜひ見てください。

ということで、映画『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠(ひねずみ)』の感想でした。

ではまた。