GORGOM NO SHIWAZAKA

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映画『劇場版モノノ怪 唐傘』感想(ネタバレ)

映画『劇場版モノノ怪 唐傘』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

モノノ怪』は、2007年にフジテレビのノイタミナ枠にて放送された、ホラーアニメ作品。

前年の2006年に、同じくノイタミナにて『怪 ~ayakashi』という、日本の古典的怪談をモチーフにしたオムニバスアニメが放送されました。そしてその一編、『化猫』が深夜アニメとしては異例の高視聴率を記録し、続編として製作されたのが『モノノ怪』です。

ayakashi』は全3編からなり、ほかのエピソードは『四谷怪談』や『天守物語』といった古くからある怪談をベースとしているのに対し、『化猫』だけは完全にオリジナルストーリーとなっているのが特徴。また、和紙のテクスチャや浮世絵など、和風の美術をふんだんに取り入れながらも、非常に色彩豊かで独創的な映像美も魅力のひとつとなっており、『モノノ怪』にもその世界観は引き継がれています。『化猫』および『モノノ怪』は歴代ノイタミナ作品の中でも上位に来るほど人気が高いらしく、2020年に行われた人気投票では、2005-2009年部門で第1位になったんだそうです。

 

もくじ

 

概要

そして、TVアニメ放送から17年の時を経た今年、遂に新作劇場版アニメが公開されることとなりました。

それが本作、『劇場版モノノ怪 唐傘』です。

舞台を大奥へと移し、薬売りの新たな物語が紡がれる、ホラー作品となっています。本来は去年公開予定でしたが、主演声優のアレコレなどが災いしてか公開が延期され、今年ようやく公開となりました。いやぁ、一時はどうなることかと…。

 

監督はTVシリーズから引き続き、中村健治
『化猫』で初めて監督を務め、『モノノ怪』でも続投。そのほか、タツノコプロに長年所属していたこともあってか、往年のタツノコヒーローのリブート作、『ガッチャマン クラウズ』シリーズの監督なども務めています。

脚本は中村監督と、元フジテレビ社員でノイタミナの数多くの作品でチーフプロデューサーを長年務めた山本幸治が担当。
山本さんは、本作においては企画プロデュースとしての立ち位置の方が大きいようです。

アニメーション制作は、TVシリーズでは東映アニメーションでしたが、本作からは山本さんが設立し代表取締役を務める株式会社ツインエンジンのアニメ制作部門として設立された、EOTAが制作しています。山本さんは現在、ツインエンジン、スタジオコロリド、ジェノスタジオの代表取締役を務めているという、なんだかとってもすごい人のようです(小並感)

余談ですが、ツインエンジンは本来アニメプロデュース会社だそうで、WIT STUDIOMAPPAが制作したアニメのプロデュースなどを主にやっているそうです。制作やらプロデュースやらこの辺の構造がややこしくて、ちょっと混乱しかかったのは内緒。そもそも、「制作」と「製作」で若干意味が異なるのが悪い。日本語って難しいね。

 

キャストはTVシリーズから一新。

主人公の声を演じるのは、神谷浩史
ONE PIECE』のトラファルガー・ロー、『夏目友人帳』の夏目貴志、『進撃の巨人』のリヴァイ兵長、『化物語』をはじめとした<物語>シリーズの阿良々木暦など、アニメファンで知らない人はいないほどの有名声優ですね。

そのほか詳細は割愛しますが、黒沢ともよ悠木碧小山茉美花澤香菜梶裕貴福山潤などなど、非常に豪華な声優陣が出演しております。

 

予告編


www.youtube.com

 

あらすじ

舞台は、大奥。

新人女中として、アサ(演:黒沢ともよ)とカメ(演:悠木碧)がこの地に足を踏み入れました。独自の掟に戸惑いつつも、懸命にお勤めに励む2人。

大奥に関わる人物は、一癖も二癖もある者ばかり。
大奥の繁栄と永続を第一に考える、御年寄の歌山(演:小山茉美)。
歌山に見いだされ頭角を現していくアサを妬む、表使の淡島(演:甲斐田裕子)。
執拗にカメを叱責する先輩女中の御次、麦谷(演:ゆかな)。
お目付け役として幕府より派遣された、三郎丸(演:梶裕貴)と平基(演:福山潤)。
そして、次期御年寄と目されていたものの突如姿を消した御祐筆、北川(演:花澤香菜)。

様々な人間の“情念”が渦巻き、やがてそれは“モノノ怪”へと姿を変えていく。
そこへ、“退魔の剣”を携えし、ひとりの薬売り(演:神谷浩史)が現れ――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

確か学生の頃、夜眠れなくて何の気なしにテレビをつけたところ、ちょうどやっていたのが『化猫』でした。おそらく『モノノ怪』の放送を記念してド深夜~明け方にかけて一挙再放送されたものだと思うのですが、よくは知りません。あーなんかやってんなー、とりあえず眠くなるまでつけとくかー、くらいの気持ちで見始めたのですが、もうすっかり心奪われてしまって、最後まで目を離せなくなるほどに夢中になってしまいました。その後、当然『モノノ怪』も全話欠かさず視聴しましたし、普段買うことのないBlu-ray Boxも買ってしまうほどにドハマり。今では「好きなTVアニメ作品は何?」と聞かれたら真っ先に『モノノ怪』を挙げるくらい、大好きな作品です。

そーいや、精神科を舞台にした『空中ブランコ』というアニメも大好きなのですが、これも中村さんが監督をしている作品なんだということを、コレを書くために調べものしてる中で初めて知りました。そりゃ好きなわけだ。あと『四畳半神話大系』とか、そういう独特な世界観や映像センスが特徴の作品が好きなのも、『モノノ怪』の影響が大きい気がします。湯浅作品が好きなのは、また別の理由もある気がしますけどね。その辺は以前書いた『犬王』の感想をお読みいただければってことで、ここでは割愛。

blacksun.hateblo.jp

なので、劇場版の製作が発表された時も、大歓喜でした。クラウドファンディングもやっていたのは知っていたんですが、当時絶望的に金欠だったので参加できず…。そういや『BRAVE STORM』の時もそうだったっけ…。今なら絶対参加するのに…。
まぁ、過ぎたことはもう仕方あるまい。

 

とにもかくにも、そんな大大大好きな作品の最新作。
率直な感想としては、マジで最高でした。

 

どうしても懸念していたのが、主演声優の交代。

これまで薬売り役を務めていた櫻井孝宏氏の女性問題が発覚し、公開間際のタイミングでキャスト変更と公開延期が発表されました。本作が大奥を舞台とし、女性たちの情念とその救済を描いた作品であることからだそうで、それは正しい判断だと思います。でも、あのミステリアスで、妖艶で、神秘的な薬売りのキャラクターを、あの人以外の誰が表現できようか、と。神谷さんも大好きな声優ですが、櫻井さんと比べてちょっと声質が爽やかすぎやしないかと。薬売りのキャラクターが、作品としての良さが、スポイルされてしまわないかと。

そんなふうに考えていた時期が、僕にもありました。

杞憂でした。

作品の良さは、全く損なわれてはいませんでした。

 

スローテンポで、どこかじっとりとした空気感は健在。コレ、櫻井さんの声と演技力の為せる技だと思ってたんですが、神谷さんもなかなかどうして、良い。本当に正直なところ、個人的好みとしてはやっぱり櫻井さんの薬売りに軍配が上がりますが、神谷さんも全く悪く無い、むしろ良い。今回の薬売りはTVシリーズとは別キャラと位置付け、キャラクター造形を少し変えているそうですが、それが功を奏しているのかもしれません。違和感は全く感じず、スッと物語に入り込むことが出来ました。退魔の剣は様々な時代に何十本も存在していて、ひとつひとつに異なる持ち主=薬売りがいるという裏設定があるそうですが、元からそういう風に考えていたのか、声優交代に伴ってそういうことにしたのかは謎。

また、色彩豊かで華やかな世界観は、絢爛豪華な大奥と相性抜群。TVシリーズから変わらない、いや更に進化していると感じました。

 

シリーズ最大の特徴というべき、退魔の剣を抜くのに必要不可欠な、“形(かたち)”“真(まこと)”“理(ことわり)”の三要素。

形はモノノ怪の姿、すなわち正体。真は事のありよう、すなわち何が起きたのか。理は心のありよう、すなわちどのような情念がモノノ怪を生み出すに至ったのか。

 

今回のモノノ怪の“形”は、タイトルにもなっている、唐傘。人間の水分を奪い取り、雨のように降らせる能力を持っています。

“真”と“理”はぜひ映画館で確かめてください、ってことで言及は避けますが、単純な誰かへの恨みつらみではない、というのが素晴らしいなと。まぁ、おかげで少々わかりにくいとも感じてしまいましたが…。こうした、あまり説明しないというか、雰囲気で感じさせるような作りもまた、この作品らしいなと思いました。

とまぁ、この3つの要素が物語を動かす原動力となるほか、全ての要素が揃って剣を抜いたあとのアクションシークエンスが、その凄まじいクオリティも相まって、爆発的なカタルシスを生んでるわけです。それが本作でもしっかりと描かれているので、最高と言うほかない。アクションはこれまでにないくらいたっぷり見せてくれるので、痺れ過ぎて感電死するところでした。

 

で。

全然知らなかった、というか僕が見た日はまだ発表されていなかったのですが、劇場版モノノ怪、なんと3部作らしいですね。最後の最後、「火鼠へつづく」の文字が出たとき、ビックリして目と口をガン開きしてしまいました。いやー、なんとありがたい。あの世界をあと2回堪能できるかと思うと、オラワクワクが止めらんねぇぞ!

劇場版第2弾、『劇場版モノノ怪 火鼠』は来年3月公開予定。意外と早い!
それまでは、僕もどうにか生き延びなければなるまい。

 

おわりに

ホント、好きな作品ほど上手いこと感想が書けなくてもどかしいのですが、どうにもならないので終わりにします。

多少人を選ぶ作品だとは思いますが、映像美や雰囲気を重視する人には刺さる作品だと思います。TV版との直接的な繋がりは無いので、TV版見てない人も気になったらぜひ映画館へ足を運んでみてください。

ということで、映画『劇場版モノノ怪 唐傘』の感想でした。

ではまた。