映画『JUNK WORLD』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

監督・脚本・音楽・撮影・編集など、すべてをほぼひとりで担当し、約7年もの歳月をかけて完成されたストップモーション・アニメーション作品、『JUNK HEAD』。
インディーズ作品ながら世界の様々な映画祭で高く評価され、『シェイプ・オブ・ウォーター』などで知られるギレルモ・デル・トロ監督も絶賛したとかしないとか。
デル・トロさん日本好き過ぎるのか、割と何でもかんでも絶賛してて信憑性怪しくなってるのおもろいですよね(笑)
僕も大大大好きな映画で、布教のために感想を書いた現時点で唯一の作品です。
そして、その待望の続編が、本作『JUNK WORLD』。
全三部作構想の2作目となり、前作から1000年以上前の世界を描いた、前日譚となっています。
もくじ
概要
ストップモーション、中でもパペット・アニメーションに分類される本シリーズ。ミニチュアで制作されたセットの中で、発泡ゴムなどで作られた人形を動かしては撮影、またちょっと動かしては撮影、といった風に、大変労力のかかる手法で作られています。それをほぼひとりで、しかもほかの劇場公開作品と遜色ないクオリティで作ってるんですよ?ヤバくないですか?
※ストップモーションについてよくご存じないという方は、以下リンクをご参照ください。
ストップモーション・アニメーション - Wikipedia
撮影で使われたセットや人形は、前作では全てハンドメイドで作られているそうですが、本作では3Dプリンターによる造形や、3DCGなども使用されているのが特徴。そのおかげで、前作を遥かに超える緻密で壮大な世界観を堪能することが出来ます。
また、主人公以外の人間キャラが一切登場しなかった前作に対し、本作ではモブを含め人間が多数登場するのも特徴。前日譚なので前作と物語的な繋がりは薄いですが、“生命の樹”など前作に繋がる要素も散りばめられており、ファンを喜ばせてくれます。
本作でも監督・脚本・絵コンテ・編集・撮影・音楽・人形制作など、ほぼ全てに携わっているお方が、堀貴秀。
控えめに言ってバケモンですよね。
そのほか、主要なスタッフが5,6名、全て合わせても10数人ほどのごくごく少人数で、本作は制作されています。キャラクターの声を当てているのも、プロの声優さんではなく堀さんはじめスタッフさんたちが全てやっています。
前作がヒットして、さぞ予算やスタッフも増えてるんだろうなぁ…と思っていたのですが、どうやら予算・スタッフ共にほんの少し増えた程度だそうで。これほどの傑作がどうして…。とか言ってる僕も、クラファンの存在は知ってたのにすっかり忘れてて、何の貢献も出来なかった人間ですけど。次こそ、次こそは必ず。
予告編
あらすじ
核戦争により地上が汚染され、荒廃した世界。
人類は生活圏を地下に求め始めました。
そして、地下開発のための労働力として、人工生命体マリガンを開発。しかし、人類と同等の高度な知能を持つマリガンは自我に目覚め、人類に反旗を翻し、戦争に。結果、人類は地上を、マリガンは地下を支配することとなりました。
それから、約280年後。
地下にて、謎のエネルギーを感知。新兵器の開発を疑う人類と、それを否定したいマリガンとで、合同調査が行われることに。人類からは女隊長トリスと、彼女の世話係のロボットロビンが、マリガンからは彼らのオリジナル(始祖)であるダンテが、調査に向かうこととなります。
エネルギーを感知した場所は、かつてマリガンたちの中心都市だった、カープバール。過去に発生した大事故により、現在はゴーストタウンと化しているはずのその場所で、一体何が起こっているのか――。
というのがあらすじ。
感想
全人類義務教育にすべき。
…いやスミマセン、それはさすがに言い過ぎか。割と下ネタはキツイし気持ち悪いクリーチャーがわんさか出てくるしで、人を選ぶ作品だとは思います。でも少なくとも、もっともっと評価されるべき作品であることは間違いないです。だからもっと公開劇場増やして!!
パワーアップした世界観
まず特筆すべきは、唯一無二の世界観。
退廃的で薄暗く、スチームパンクやディストピアな雰囲気の漂う美術類は、もう本当に素晴らしいとしか言いようがない。そんな世界で生きているキャラクターたちは、エイリアンやデル・トロ作品を思わせるような異形でグロテスクな見た目をしているヤツらばかりなのですが、どこかユーモラスで可愛らしく、魅力に溢れています。実写ともアニメとも異なる、独特な温かみを感じさせるストップモーションで作られているがゆえに、気持ち悪さがマイルドになっている部分は大いにあるかと。
そんなJUNKなワールドが、本作ではさらに進化・深化していました。
概要でも書いてますが、本作から3Dプリンターなども導入しているだけあって、特にメカや建物の造形が緻密でカッチリしたものになっていて、説得力がさらに増しています。キャラクター数も増えているので、画面がにぎやかで見ていて楽しい。
狭い通路の閉鎖的なシチュエーションが中心ながら、様々なクリーチャーやギミックを用意することで差別化を図っていた前作。それに対し、本作ではいかにもSFチックな建造物や、岩場、宗教施設、有機物のような何かに汚染された町、さらには異世界と、たくさんの舞台が用意されており、ロケーションにおいても大作映画と遜色ないクオリティに仕上がっています。この壮大な世界を堪能するだけでも、見応え抜群です。
余談ですが、肉肉しい何かに侵食されたカープバールの街並み、あれ発泡ウレタンで表現されているんですね。家を建てる際に隙間を埋めて気密性を高めるためによく使われている素材で、最近大工さんが家を建てる動画にハマっていてよく見ていたので、なんとなくシンパシーを感じてしまいました。まぁ、本編見ている間は全然気付かず、エンドロールのメイキング映像見てようやく気付いたんですけど。
字幕版(ゴニョゴニョ版)と吹替版
今回、シリーズおなじみの謎の言語で話しているのを字幕で日本語に翻訳した「ゴニョゴニョ版」と、みんな日本語で会話する「吹替版」が用意されています。僕はどちらも鑑賞しました。日本の作品なのに字幕版と吹替版があるのがなんともシュール。てか二度手間…。でもそれを敢えてやっちゃうのがまた面白い。しかも、わざわざ違う人が声当ててたりするのが芸コマ。
ゴニョゴニョ版はその名の通り、基本適当にゴニョゴニョ言ってるだけなのですが、ところどころ聞き馴染みのあるワードが出てくるのが、なんとも笑いを誘ってきます。この謎の言語が本シリーズの良さのひとつだと思っているので、絶対ゴニョゴニョ版の方が良いだろうな、と考えていたのですが、両方見てみるとなかなかどうして、吹替版も非常に良かったです。
プロの声優さんではないので、やはりどうしても演技力では劣るところがあり、吹替版だとそれがさらに顕著になっていました。ただこれ、最初こそ「ん?」と思ったものの、不思議とすぐに違和感を感じなくなりました。むしろそれが独特の味になっていて、作品とマッチしていてすごく良かったんですよね。ドラマや映画でも、棒読み気味なのにどこか味があって存在感のある役者さんっているじゃないですか。たぶんそんな感じなんだと思います。
とはいえ、やはり個人的には面白さがもうひとつプラスされるゴニョゴニョ版の方がオススメ。
ゴリゴリのハードSF
本作は、全4章構成となっています。
第1幕は割とシンプルなロードムービーで、トリス、ロビン、ダンテ、それとモース大使とそのお供テリアがカープバールに向かうまでの道中が描かれます。それとなく会話の中で用語や世界観の説明をしてくれるのがなんともうまい。ギュラ教の面々も、オネエ口調やSM風の衣装など、変態っぽい感じがキャラが立っていてすごく好き。ですが、なんだか御都合主義のような展開も多く、正直そこまで面白味を感じられずにいました。
しかし第2幕からは、マルチバース、タイムリープ、タイムパラドックスが織り交じる、ゴリゴリのSF作品へと変貌します。御都合主義的だった理由も明かされ、一気に目が離せなくなるほど夢中になりました。一度下げてからぶち上げてくるとは、ニクいことしてくれるぜまったく。
ここで出てくるバステトちゃんがまたかわいくてね…。おてんば且つどこか抜けているところがあるお姫様ながら、ロビンを慕う気持ちから一生懸命がんばる彼女の健気な姿に、すっかり感情移入してしまいました。それ故に、彼女の最期には目頭が熱くなってしまったり。
第3幕は完全に悪ふざけパート。
タイムパラドックスにより元の次元が消滅し、主役はモース大使と腰巾着のテリアに。金根瘤のくだりはお下劣過ぎて爆笑でした。モザイクの位置わざわざずらすな(笑)
この2人がまぁークズ過ぎて清々しい。最後は簡単に騙されて、最悪のオチに。「お上は何も考えていない無能(に見える)」という、現代日本への皮肉とも取れる、のかもしれない、ような気もする。
そして、全てが集約する最終幕へ。
全てを思い出した子ロビンにより一切の無駄が省かれ、ギュラ教は襲撃前に撃墜、スムーズにゲートまで辿り着きます。バステトちゃんたちを死なせないために「一切関わらない」ルートを選んだ子ロビンの判断は、傑作『バタフライ・エフェクト』を思わせてグッときました。そーいや続編はクソらしいので見てないや。あと『ドニー・ダーコ』も同じパターンで続編見てない。あ、『スキャナーズ』も同じパターンだった。…ってどうでもいいですね。
最後にひとつ。
不満というほどのものでもないですが、前作の『人類繁盛』のような、キャッチーで中毒性抜群なエンディング曲があれば尚良かったかなと。まぁ、気合の入ったピロピロも拝めましたし、高望みしすぎかもしれないですね。
物語は完結編へ
ラストにて、三部作の完結編、『JUNK END』の製作開始が発表されました。
『JUNK HEAD』が公開されたときは、「興行収入によっては続編作れるかも…」みたいな感じだったので、それと比べたらものすごい進歩ですよね。公開が何年先になるのかわかりませんが、それまでは僕も絶対に死ねないな。生きる理由がまたひとつ増えました。
しっかし、本作がこんなにも複雑なSF作品だとは思わなかったので、完結編がどうなるのか、ますます予想がつかなくなりました。1作目のようなドッタンバッタン珍道中になるのか、本作のようなハードSFになるのか、そのどちらとも異なるものになるのか、はたまた。
“生命の樹”となり、マリガンにクローン以外の繁殖能力を生み出したダンテ。ギュラ教残党に撃ち落され、生ける屍となったトリス。機能停止に陥り、朽ち果てたボディはパートンへ受け継がれることとなるロビン。これらのキャラが、パートンやニコちゃんとどのように邂逅し、どんな結末を迎えるのか。今から楽しみでなりません。
おわりに
以上になります。
このシリーズを映画館で見れる時代に生まれて本当に良かった。僕にとっては、そう思わせてくれるだけの作品でした。次のクラファンには絶対参加しようと思うし、グッズもいっぱい買って、今後も応援していきたいと思います。
これをお読みいただいた方も、1作目はアマプラやネトフリでも見れますので、もしまだ鑑賞していないようでしたら、騙されたと思って是非一度見てみて欲しいです。そしてあわよくば、一緒に沼民(=本シリーズのファン)になりましょう。

ということで、映画『JUNK WORLD』の感想でした。
ではまた。