GORGOM NO SHIWAZAKA

ゴルゴムのしわざか!

映画『逃走中 THE MOVIE』感想(ネタバレ)

映画『逃走中 THE MOVIE』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

※JO1やFANTASTICSのファンの人は読まない方がいいかもしれません。

run for money 逃走中』は、2004年よりフジテレビ系列にて放送されている、ゲームバラエティ番組。

街中やテーマパークなどを舞台に、大規模な鬼ごっこをするというのが基本的なスタイル。そこに、「逃げた時間だけ賞金が加算される」、「特定のポイントで自首をすることで、ゲームから降りる代わりにそれまで獲得した賞金を受け取ることが出来る」、「ゲーム中に様々なミッションが出され、クリアすれば有利に、クリア出来なければ不利になる」といった独自のルールが追加されることで、ゲーム性を高めています。初めはシンプルに鬼ごっこをするだけだったのが、いつからか「近未来の会社がショーとしてゲームを開催している」という設定が追加され、各回で独自のストーリーが展開されるようになりました。

battle for money 戦闘中』などの派生作品も製作されていたり、TVアニメ『逃走中 グレートミッション』も放送されていたりと、子供を中心に大人気の番組となっています。

 

もくじ

 

概要

そんな『逃走中』が、“逃走中20th記念プロジェクト”のひとつとして、ついに実写映画化されることとなりました。

それが本作、『逃走中 THE MOVIE』です。

今回の舞台は、東京23区全て。バラエティでは実現不可能な壮大な規模で鬼ごっこを繰り広げる、サバイバル・エンターテインメント作品となっています。TV版が芸能人たちが実際に逃げ回るのに対し(どこまでガチなのかは知らんけど)、本作は完全なフィクション作品です。実際に東京23区全体を封鎖するなんて出来るわけないですからね。

 

監督を務めるのは、フジテレビのTVドラマの演出などを多く手掛ける、西浦正記
コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズや、現在放送中の『ブラック・ペアン シーズン2』第1話、2話の演出などで知られています。

脚本は、数多くのTVドラマで脚本を書いている、青塚美穂
この恋あたためますか』や『やんごとなき一族』などでも脚本を担当しているそうです。

 

キャスト陣は、今をときめくダンス&ボーカルグループ、JO1FANTASTICSのメンバーがメインを務めています。JO1からは川西拓実木全翔也金城碧海FANTASTICSからは中島颯太瀬口黎弥佐藤大樹が出演。

そのほか、Seventeen専属モデルの田鍋梨々花、アリエールのCMに出ている川原瑛都、特オタには仮面ライダースラッシュでおなじみの岡宏明、といった方々が出演しています。

 

予告編


www.youtube.com

 

あらすじ

2024年。

「参加人数1000人以上」「舞台は東京23区全体」「賞金総額1億円以上」という、史上最大規模の『逃走中』が開催されることが発表されました。

かつて高校の陸上部で青春時代を送っていた6人、橘大和(演:川西拓実)、大澤瑛次郎(演:中島颯太)、伊香賢(演:木全翔也)、北村勇吾(演:金城碧海)、西園寺陸(演:瀬口黎弥)、寺島譲司(演:佐藤大樹)らも、招待を受けゲームに参加することに。

開始直後はいつも通りに進んでいたゲームでしたが、突如主催者のクロノス社が何者かに乗っ取られ、ハンターたちは参加者の存在自体を抹消するワイルドハンターへと変化。いつしかゲームは、生き残りをかけたサバイバルゲームへと変貌していくのでした――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

『逃走中』は結構好きな番組ではあるのですが、公開ギリギリまで僕はこの映画の存在を全く知りませんでした。確か27時間テレビを見ていたときに初めて知って、「こいつはなんとも香ばしいスメルのする映画だな…」などと思ってたんです。そうしたら、「本年度ぶっちぎりワースト!」みたいな評価も目にし、なんだか逆に気になってきてしまい、鑑賞することにした次第です。

で、見てきた結果、ビックリするほど心が動かされない作品でした。

 

俳優陣の演技はしっかりしていたので、見るに堪えないという感じではなく、一応最後まで見れるクオリティにはなっていました。ヒカキンら有名タレントの参加も、まぁ正直アホくささしかないですが、逆に本家っぽくて良かったと思います。

 

ですが、とにかく話運びが酷い。

「ツッコミどころ満載」というより「ツッコミどころしかない」という感じで、キャラクターの一挙手一投足に違和感しか感じませんでした。なので、「ここ感動させたいところなんだろうなー」というところでも、「いやいいからさっさと逃げろよ」とかそういう感情が先行して、全然泣くまでに至らず。なんか気付いたらずっとニヤけてました。これをまさしく“失笑”というのでしょう。

例を挙げると、まずハンターが弱すぎる。
ちょっと隠れるだけですぐ見失うし、足も遅すぎるので全然捕まえられない。主人公たちのスペックが高いということなのかもしれませんが、走り方とか「本当に元陸上部?」という感じでしたし、一般人と比較する描写も無いので、単にハンターの足が遅いようにしか見えず。複数人が袋小路に追いつめられるシーンでは、もうあと捕まえるだけという状況なのにワイルドハンターさんは「がおー!」と威嚇するだけで、何してんコイツ?としか思えず。結果として、生き残りをかけたゲームだというのに一切緊迫感を感じませんでした。

各キャラの行動原理も意味不明。
主役勢はごちゃごちゃ喋ってるヒマがあるならさっさと逃げろよって感じでしたし、中盤で鈴木(演:長井短)とかいう狡猾そうなキャラが出てきてゲームを引っ掻き回していく…のかと思いきや速攻出し抜かれて脱落するので「頭いいのか悪いのか…何のために出てきたキャラなんや…」となったし、ミサンガを落としたからって何故かハンターに特攻仕掛ける人がいたり(撒いてから取りに行けばええやん)、やることなすこと「いやいや、そうはならんやろ」としか思えなかったんですよね。
超絶余談ですが、長井短ってめちゃくちゃ良い名前。

謎めいた立ち位置の寺島も、みんなの前から姿を消した理由が「えっしょーもな」としか思えないものだったり、終盤の謎の単独行動からの梯子の持ち手?が壊れて転落…と思いきやその直後何事もなかったように出てきて「は?さっきのは一体…?」となったり、最後の自分語りは「なぜ今このタイミングで…?(そしてこういう時に限って全然ハンターが来ない)」というものだったりで、主役勢では一番ストレスの溜まるキャラでした。

そんな感じで、基本的に全てのキャラが何やってんだか理解不能でしたが、その最たるものが、女子高生の本郷マリ(演:田鍋梨々花)でして。
スカート姿でめっちゃ動き回るゲームに参加すんなよ、というのは序の口。弟思いキャラっぽいくせしてすぐに弟を見失うので、管理不行届きも甚だしい。ちゃんと見とけや、としか思えない。謎に最後まで生き残ってるのに、他のキャラのようなゲームにかける思いとかもなく、キャラの掘り下げも無し。そのくせ、あまりにも意味不明にすぐ画面から姿を消すので、「まさかコイツ、黒幕と繋がってたりするのか?」と邪推していたら、全くそんなことは無く最後はあっけなく脱落するという。いやマジで、なんだったんだコイツ…。鈴木よりもずっとゲーム、というか映画自体、というか観客の精神を引っ掻き回す存在でした。

 

とまぁ、本当に見どころも何もない作品ではあったのですが、最後の展開ですごく腑に落ちたと、言いますか、なんか妙な納得感がありました。

クライマックスで、あれだけ主人公的な立ち回りをしていた大和までもが脱落し、最後は最年少のプレイヤーであり、これまでずっと心を閉ざしていた本郷カイ(演:川原瑛都)が、みんなのために奮起することになります。要は「少年に世界の命運が託される」展開なわけですが、
すごーくコロコロコミック的だなぁと思いまして。
ミニ四駆やヨーヨーで世界征服しようとする組織に少年たちが立ち向かうヤーツに近しいものを感じて、なんだか懐かしい気分になったというか。「あぁそうか、そもそもこの映画は大人に見せるために作ってないんだな、あくまでターゲットは小学生以下の子供たちだったんだな」と、最後の最後でようやく納得することが出来ました。「子供を中心に大人気の番組」って上で自分で書いてるのにね。気付くの遅すぎました。

当時熱中していた作品も、いま改めて読むとすごく“ちゃっちく”感じるじゃないですか。で、なんだかそれが逆にとても魅力的に感じるじゃないですか。僕は最近『爆球連発!!スーパービーダマン』を読み返して、ビー玉で岩壁を破壊したり水面を切り裂いたり出来るわけねぇだろとわかってはいつつも、改めてめちゃくちゃ面白いと思いました。本作もそれと同じなんだな、と。そう考えると、実にくだらない本作も、なんだかすごく魅力的に思えてきます。
…よね?そうだよね?そうに違いないよね??ね?

 

おわりに

強引に自分を納得させようともがいてみましたが、最後にはっきり言っておきましょう。
クソです。疑いようもなくクソです。
でも楽しめる方のクソだと思います。

とはいえこれは僕がオッサンだからこう感じるだけであって、純粋な心を持った子供たちはきっと楽しく見れると思います。こんなクソジジイのたわごとなど気にせず、夏休みの思い出に、ご家族で鑑賞してみてはいかがでしょうか。

ということで、映画『逃走中 THE MOVIE』の感想でした。

ではまた。