GORGOM NO SHIWAZAKA

ゴルゴムのしわざか!

映画『犬王』感想(ネタバレ)

映画『犬王』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

室町時代
日本の伝統芸能である能楽が、猿楽(さるがく)と呼ばれていた時代。
近江猿楽日吉座の大夫であり、猿楽能の名手として当時最も人気のあった実在の人物、それが犬王(いぬおう)です。道阿弥という名でも知られているとか。猿楽師として後世に多大な影響を与えたとされるものの、その作品は一切現存していないという、謎多き人物でもあります。

2017年に、そんな犬王を題材とした、『平家物語 犬王の巻』という小説が発売されました。そしてそれを原作とした映画が、本作『犬王』となります。

 

本作も『バブル』と同様、日本のトップクリエイターが集結して製作された作品となります。

blacksun.hateblo.jp

監督は、映画『夜は短し歩けよ乙女』や、TVアニメ『映像研には手を出すな!』などで知られる、湯浅正明
脚本は、ドラマ『アンナチュラ』や『MIU404』などの野木亜紀子
音楽は、朝ドラ『あまちゃん』や映画『花束みたいな恋をした』などの大友良英
キャラクター原案は、『ピンポン』や『鉄コン筋クリート』などを描いている、漫画家の松本大洋

この布陣、僕が大好きな人ばかりなので、本作も絶対見ようと思っていました。

湯浅監督は、『四畳半神話体系』ですっかり心奪われ、TVアニメ『ピンポン THE ANIMATION』の完成度の高さに驚愕し、『夜明け告げるルーのうた』では当時弱り気味だった僕の心に人魚たちの優しさが沁みて大号泣させられるなど、毎度僕の感情を揺さぶってくるお方。『DEVILMAN crybaby』や『日本沈没2020』といったネトフリ配信アニメに関しては見れてないですが、どうなんだろうか…。特に後者は散々な言われようだし…。

脚本の野木さんは、『アンナチュラル』を見てみたらすっかりハマってしまい、それ以降、自分の中で要注目の脚本家になりました。映画『罪の声』では、クライマックスでまんまと号泣させられてしまうというね。『MIU404』も早く見ないとなぁ。

松本大洋氏は、かねてより大好きな漫画家さん。僕が学生時代に卓球部だったことから『ピンポン』を読むようになり、他の作品も全てではないですがちょこちょこ読んでいます。映画『鉄コン筋クリート』に関しては、「好きなアニメ映画って何?」と聞かれたら恐らく真っ先に挙げるというくらいに、大好きな作品です。

そんな方々が作り上げる本作。見ないわけにはいくまい。

 

声優陣には、俳優が多く起用されています。

主人公、犬王の声を務めるのは、ロックバンド女王蜂のボーカルとして活躍している、アヴちゃん(薔薇園アヴ)。
もうひとりの主人公、琵琶法師の友魚(ともな)を演じるのは、俳優やダンサー等で活躍している、森山未來
そのほか、室町幕府第3代将軍、足利義満役に柄本佑、友魚の父役に松重豊、犬王の父役に声優としても人気の高い津田健次郎、などなど。
みんな演技も上手ですし、全く違和感はありませんでした。

 

そんな人たちが携わっている本作は、時代劇でありながら、世界観を大きくアレンジした、なんとも湯浅作品らしい映画となっております。史実とかは豪快に無視しているので、時代劇を期待して見に来た人はもしかすると不満に感じるかもしれません。しかし、カラフルな色使いや、壮大で派手な音楽など、ミュージカル映画(と言っていいのかはわかりませんが)として大変見応えのある作品になっていると思いました。

 

↓予告編はこちら。

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そんなこんなで、感想を書いていきたいと思います。
今回は過去イチ短い感想になるかもしれない。

 

🪕🎵🪕🎵🪕🎵🪕🎵🪕🎵🪕🎵🪕🎵

 

舞台は、室町時代の京の都。
猿楽の一座、比叡座の当主(声:津田健次郎)の家に生まれた犬王(声:アヴちゃん)は、その異形の姿から周囲より疎まれ、瓢箪の面で顔を隠して生活していました。父から忌み嫌われていた犬王は、芸の修行はさせてもらえなかったものの、見様見真似で舞や唄を身に着けていきます。

一方、壇ノ浦の漁師の家に生まれた友魚(声:森山未來)は、三種の神器のひとつである天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)を海底より引き上げるよう依頼を受けた父(声:松重豊)に同行した際、剣から発せられた斬撃?で視力を失い、父は胴体から真っ二つになってしまいました。亡霊となった父と共に京へ向かう道中、琵琶法師の谷一(声:後藤幸浩)と出会い、彼の所属する覚一座へ弟子入りした友魚は、自身も琵琶法師となります。

とある夜に出会った犬王と友魚は、意気投合。
友魚が演奏し、犬王が歌い踊る、その独創的な舞台は民衆から高く支持され、彼らは猿楽師としてどんどん登り詰めていくのでした――。

というのがあらすじ。

 

本作は、時代劇という枠に囚われない、非常に斬新な作品となっています。
犬王や友魚を“ポップスター”としていますが、室町時代の日本にポップなんて言葉があるわけも無く。友魚の演奏は、映像こそ太鼓や和風チェロみたいな楽器でしたが、音はモロにドラムやエレキギターのそれで、曲調は完全にロックでした。犬王の舞もバレエやダンスの動きを取り入れていたりと、見ていて非常に楽しかったです。なので、舞台のシーンに堅苦しさとかは全く無く、さながらフェスを見ているようで、気分が高揚しました(フェスとか行ったことないですが)。『夜明け告げるルーのうた』でも演奏シーンにかなり力を入れていた印象があるし、湯浅さんは音楽とか好きなんでしょうね。

何より、犬王を演じたアヴちゃんの表現力が素晴らしかったです。声優としても非常に上手でしたし、歌唱力が抜群に高くて、最高のキャスティングでした。初日舞台挨拶で「(この作品を通して)自分の中に新しい人格が生まれた気がする」と言っていたそうですし、バンドでも『犬姫』という曲をリリースするなど、アヴちゃん自身も大きく影響を受けている事が窺えます。

natalie.mu

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僕は本作をとても素晴らしい作品だと思っているんですが、いざどこがどう良かったとかを言葉にしようにも、なかなか難しいんですよね…。雰囲気というか、インスピレーションというか、感覚的なもので楽しむタイプの作品なのではないかと。疾走感にステータス全振りした『マインド・ゲーム』をはじめ、湯浅作品って割とそういう作品が多い気がします。合う人には合うし、合わない人には合わない、的な。まぁそれっぽい事言ってますけど、単に僕の語彙力が足りないだけです。とにかくなんか良かったです(小並感)。
めっちゃMJのダンスやってんのウケるとか、呪いが完全に解けた時の犬王の顔がジョーカーみたいだったとか、しょーもない事は言えますが、それ言い出すと今度はキリが無くなるので割愛。

 

そんな感じです、ハイ。
室町時代にロックだのポップだのをスルー出来る方、予告編を見て面白そうだなと思った方は、ぜひ見てみてください。あまり深く考えず、美しい色彩や音楽に身を任せるようにして鑑賞すれば、きっと楽しむことが出来ると思います。

ということで、映画『犬王』の感想でした。

ではまた。