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映画『クレイヴン・ザ・ハンター』感想(ネタバレ)

映画『クレイヴン・ザ・ハンター』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

ソニー・ピクチャーズがお贈りする、マーベルコミックのスパイダーマンに登場する様々なキャラクターを実写映画化したシェアード・ユニバース、それが『ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)』。

 

スパイダーマンのコミックにてヴィラン(敵役)としてたびたび登場する、クレイヴン・ザ・ハンターを主人公として映画化されたのが、本作クレイヴン・ザ・ハンターです。

SSU初のR指定(R15+)作品であり、百獣の王の力を宿した主人公が敵を容赦なく血祭りに上げる、バイオレンス・アクション作品となっています。

 

SSU作品としては、『ヴェノム:ザ・ラストダンス』に続く2ヶ月連続での公開。こんな短いスパンで作品を公開できるなんてスゴイ!…というわけではなく、本作は当初2023年初め頃に公開予定のはずが、ストライキやら何やらで延期に次ぐ延期。どんどん後回しにされ、2024年末にようやく公開、といった経緯があります。

 

もくじ

 

クレイヴン・ザ・ハンターとは

初登場は、1964年刊行のコミックから。

特別な能力はないものの、薬で強化された身体能力と天才的な狩りの腕で何度もスパイダーマンを追い詰めた、強力なヴィランです。また、スパイダーマンを倒すために結成された、悪のアベンジャーズというべきシニスター・シックスの初代メンバーでもあります。

本作では、パワーを得たきっかけがライオンの血液が体内に入ったこと+秘薬の効果?という違いはあれど、さほどコミックと変わらない設定となっています。この辺も、割とアレンジ強めだったこれまでのSSUとは異なる点かもしれません。家系についても、コミックではロシアの貴族出身、本作では父がロシアを中心とした裏社会の大物という感じで、うまいこと現代風にアレンジされています。スパイダーマンが出せないので戦う相手は犯罪者たちになっていますが、コミックでも一時期犯罪者を獲物にしていたようですし、ある意味原作準拠かなと。

 

概要

本作の特徴は、冒頭でも書いたとおり、R指定作品であることを活かしたバイオレンス描写。全年齢対象だったこれまでのSSUでは不自然なほどに血が出てきませんでしたが、本作ではこれまでの鬱憤を晴らすかの如く、血が飛び散りまくりまくっております。

 

監督を務めるのは、J.C.チャンダー
どこかで聞いたことあるけど全然知らない映画『Mr.&Mrs.フォックス(原題は全然違うので、邦題をつけた人が悪い)の製作総指揮や、ベンアフ主演の『トリプル・フロンティア』という映画の監督・脚本などを務めているようです。

脚本は、実写版『アンチャーテッド』の製作総指揮・脚本を務めたアート・マーカムマット・ホロウェイ、『イコライザー』シリーズの脚本などで知られるリチャード・ウェンクが共同で執筆。

 

主人公、クレイヴンを演じるのは、アーロン・テイラー=ジョンソン
アメコミ好きには、『キック・アス』シリーズの主演や、MCU作品『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のクイックシルバー役などでおなじみ。

本作のヴィラン(敵役)、ライノを演じるのは、アレッサンドロ・ニヴォラ
フェイス/オフ』や『ジュラシック・パーク』など、数々の映画に出演しています。

そのほか、ディズニー映画『ウィッシュ』にて英語版の主人公の声を演じたアリアナ・デボーズ、『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』などに出演しているフレッド・ヘッキンジャー、そして言わずと知れた名優、ラッセル・クロウといった俳優陣が出演しております。

 

予告編


www.youtube.com

 

あらすじ

とあるロシアの収容所。

ここを牛耳っていた、武器の密売などをしているギャングのボスが殺害されました。犯人は“ザ・ハンター”と呼ばれる、犯罪界の大物ばかりをターゲットにしている謎の男。

その正体、セルゲイ・クラヴィノフ(演:アーロン・テイラー=ジョンソン)は、名家クラヴィノフ家の出身。父のニコライ(演:ラッセル・クロウ)に後継者として育てられていましたが、父がドラックの密売などをしていることを理解している彼はそれを拒絶し、家を出た過去がありました。それ以来、自身を“クレイヴン”と名乗り、犯罪者たちを獲物として狩りを行う日々を送っていました。

裏社会で頭角を表しているアレクセイ・シツェビッチライノ(演:アレッサンドロ・ニヴォラ)は、邪魔な“ザ・ハンター”を始末するため、ザ・フォーリナー(演:クリストファー・アボット)と名乗る暗殺者を送り込みます。さらにアレクセイは、ニコライを失墜させるべく、セルゲイが唯一心を許す弟、ディミトリ(演:フレッド・ヘッキンジャー)を誘拐し――。

というのがあらすじ。

 

感想

SSUで一番好きかも。しかし、それ故に悲しい…。

 

まず、クレイヴンを演じるアーロンの体の仕上がりっぷりがヤバい。

キック・アス』の頃はヒョロガリで、『ウルトロン』で随分鍛えてきたなと思いましたが、本作ではそれを遥かに超える見事なバルク。なんかもう歩き方からして以前とは全然違いましたもんね。 「そこまで絞るには眠れない夜もあっただろ!」と思わず叫びそうになりましたよ(大嘘)

その惚れ惚れする肉体は劇中の圧倒的な強さに説得力を出しており、非常に良かったです。とはいえ、ビルの高層階に行く際、基本的にエレベーターは使わず壁をよじ登って窓から侵入するのは、野生児キャラに合ってるとはいえちょっと笑ってしまいました。何もないときくらいエレベーター使えばいいのに。そのくせ拠点にしてるグランピング施設跡はやたらシステマチックにしてたり、しっかりスマホは使ってたりするとこも笑えるポイント。

 

そーいや『モービウス』のジャレッド・レトも撮影のために素晴らしい体づくりをしてくれてたし、『ヴェノム』シリーズのトム・ハーディは製作や脚本にも参加するなど作品のために尽力してくれてたしで、俳優さんたちの頑張りは本当にすごいんですよねSSU。結果に結びつかないのがなんともですけど…。

 

バイオレンス描写も、非常に見応えがありました。ダーク(風)な世界観にそぐわない、不自然なほど全く血が出ないこれまでのSSUには不満しかなかったので、ようやく見たいものが見れた、という思い。

ただ、血しぶきと効果音はいっちょ前だけど、首や手脚が飛んだり断面が映ったりといった直接的な描写はあまりなかったので、若干の物足りなさはありました。『モータルコンバット』までとは言わずとも、『LOGAN/ローガン』や『デップー』くらいはやって欲しかった。切り落とされた指が出てきたときはヒェッとなりましたけどね。

※僕はグロは全然得意じゃない、むしろ苦手な方です。でも説得力や迫力を出すためなら大歓迎というスタンス。

 

本作でヴィランとなるライノも、ちゃんとヴィランしてて良かったです。

アメイジングスパイダーマン』でもラストにチラッと出てきましたが、あちらはメカメカしいパワードスーツだったのに対し、本作では遺伝子操作によって皮膚組織がサイのように硬質化するようになっていて、デザイン的にもそうそう、コレコレ!って感じで良かったです。薬を打つことで体が変容するのはよくありますが、今回は逆に常に投与してる薬をやめることで変身するというのが、捻りを効かせていて非常にイカしてました。もうちょい強ければなお良かったんですが、そこも含めキャラに合っていたように思うので結果オーライ。

 

あとは、弟ディミトリのキャラがとても良かった。

「兄への強い憧れ」が、自身の無力感や父に認めてもらえない憤りと合わさって、「全てを持ち合わせている兄への嫉み」へと変わっていく。そして最終的に、死んだ父の代わりに力を手にしたディミトリは、自分の方が兄より優れているとばかりに、スーパーヴィランカメレオンへと変貌する…。

ライノに捕まってる間、どんどん感化されていくディミトリが丁寧に描写されていて、つい僕も彼に感情移入しそうになりました。本作はクレイヴンのオリジンを描く作品ですが、カメレオンのオリジンの意味合いも強いのではないかと思います。

ちなみに、カメレオンはコミックで史上初めてスパイダーマンと対決する、最古のスーパーヴィランなんだそうです。コミックではただの変装の達人らしいですが、本作ではライノと同じ医者に体をいじってもらった結果、どんな人間にも自在に顔を変えられる能力を獲得したようで、なんともタチの悪そうなヴィランになっていました。単純なパワーだけじゃ絶対に勝てない相手でしょうし、クレイヴンとの本格的な対決が無いまま映画が終わってしまったのが惜しいところ。

 

たぶん本作のヒロイン枠、カリプソ(演:アリアナ・デボーズ)も、 謎めいた雰囲気を出していて良かったです。友人の墓前で悪徳政治家?に堂々と宣戦布告してたり、やたら弓の腕が良かったりと、以前から色んなものと戦ってきたことを窺わせる、なかなか魅力的なキャラでした。シリーズが続いていれば、彼女の別の顔も明かされてたりしたのでしょうか。

秘薬は仙豆みたいでちょっと便利すぎる気がしましたけどね。

 

あとは、ラッセル・クロウ演じるニコライ。

「男は強さこそ全て!決して誰にも弱みを見せるな!」という、前時代的で古臭いキャラでしたが、それがバッチリハマっていて最高でした。恰幅の良いラッセル・クロウからしか摂れない栄養素がありますよね。『ヴァチカンのエクソシスト』とか。

 

あ、そーいや、CMとか予告編とかでやってる洞窟みたいなとこで松明に火をつけてなんかやってるシーン、本編にはありませんでしたね。ソニーお得意の予告編詐欺…。

 

さらば、SSU…

元々、アメスパシリーズのスピンオフとして企画されたものの、アメスパ2の興収が振るわなかったために計画が頓挫し、そのリブート的な立ち位置で始まったSSU。

先日、本作をもってシリーズは一旦終了、と発表されました。

www.cinematoday.jp

 

個人的な思いとしては、非常に残念な気持ち。

前に書いた『ラストダンス』の感想で「これからどうなるんだろう」みたいなことを言いましたが、そっかぁ…こうなっちゃったかぁ…。いや、先の展開が全く決まってない状況だったので、なんとなく予想はついてましたけどね。「ヴィラン側を描く」というコンセプトは面白かったし、なんだかんだ楽しませてもらっていたクチなので、もう少しひとつひとつの作品のクオリティが、せめて本作くらい高ければ…と感じざるを得ない。

 

今後はスパイダーマン関連の作品、MCUのトムホスパイディや『スパイダーバース』シリーズ、さらにスパイダーバースのスピンオフ『スパイダー・ノワール』などに注力していく、とのこと。

…まぁそれはいいんですが、一度広げた風呂敷はどんな形であれちゃんと畳んで欲しかったですよね。何度も言うけど『モービウス』に出てきたヴァルチャーはどうするの?『マダム・ウェブ』の3人娘は何の活躍もしないまま終わり?『ラストダンス』で復活の兆しが出ていたヌルは?本作でも、カメレオンとの確執はこのままうやむやになっちゃうの?全部ぶん投げっぱなしで終わるのはもったいないというか、無責任というか。

何より、僕が見たかったSSUのひとつの形を本作でようやく見せてくれたので、本作の続編が作られないであろうことが非常に残念。SSUとか関係なく、クレイヴンとカメレオンの決着を描いた続編とかやってくれても…いいのよ?

 

おわりに

そんな感じで、以上になります。

本作も例に漏れず興行収入は大苦戦しているそうですが、「なんかつまんないシリーズのヤツでしょ?」と簡単に切り捨てないで、本作だけでもぜひ見て欲しい。そして評価が上向きになってくれれば、もしかするとSSU復活もあり得るかも?いやないか…。

ということで、映画『クレイヴン・ザ・ハンター』の感想でした。

ではまた。