GORGOM NO SHIWAZAKA

ゴルゴムのしわざか!

映画『サマリタン』感想(ネタバレ)

映画『サマリタン』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

シルヴェスター・スタローン主演のスーパーヒーロー映画が08/26よりAmazon Prime Videoで独占配信された事を知り、なんとなく興味をそそられたので見てみました。

今年で御年76歳になるスタローン氏、未だ現役バリバリなのが本当にすごい。
いつまでもお元気でいて欲しいものです。

 

本作は、MythosComicsのグラフィック・ノベルがベースとなっているそうです。アメコミにはまだ手を出せずにいるのでよくわかりませんが、『ウォッチメン』みたいな感じかな。

特徴としては、ヒーローの誕生=オリジンや、全盛期を描いているのではなく、ヒーローを退いたその後(老後?)を描いている点が挙げられます。ウルヴァリンの最期を描いた、『LOGAN』に近い作りと言えるかもしれません。その辺にいるオジサンが実はめっちゃ強かった、という点では、『イコライザー』なんかも近いかもしれないですね。見る前はウィル・スミス主演の『ハンコック』なんかも連想してましたが、それとはちょっと違うような気がします。
こういった「ジジイが最強」的な作品は個人的にすごく好みなので、たぶんそれで興味をそそられたんだと思います。

 

↓予告編はこちら。


www.youtube.com

 

シルヴェスター・スタローンは大好きな俳優さんですが、出演作をちゃんと見ているかと言われると、正直あまり見ていない…。

ロッキー』シリーズはどのナンバリングかわかりませんが午後ローか何かでやってたのを流し見ただけですし、『ランボー』シリーズも全く見てないです。どちらも見ようと思いつつも、優先度が低めになってしまっている感じ。『エクスペンダブルズ』シリーズは大好きで、一応全部見てます。あとは『ジャッジ・ドレッド』とかも見たかな。他にもちょこちょこ見てる作品はあると思いますが、恥ずかしながら全く覚えてない…。とまぁ、そんな程度です。

そーいや、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に登場した、宇宙海賊ラヴェジャーズのスピンオフをやるとかやらないとか言ってましたが、あれどーなったんでしょうかね。ジェームズ・ガン監督は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』を最後にMCUから退いてDCの方に行くみたいだし、実現は難しい気が…(ジェームズ・ガン以外の人が撮る可能性もあるけど)。
あ、ちなみにスタローンはラヴェジャーズの中心メンバーであるスタカースターホーク役でカメオ出演しています。

 

どーでもいい話はこれくらいにして、簡単に感想を書いていきたいと思います。

 

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舞台は、ラニット・シティという街。
この街にはかつて、超人的な力を持った双子の兄弟がいました。その力は人々に忌み嫌われ、放火によって彼らの両親は亡くなります。双子の1人は正義に目覚め、サマリタンとして人々を助け、もう1人は悪に染まり、ネメシスとなって人々への復讐を開始します。
そこから2人は幾度となく対立。ネメシスはサマリタン達への恨みを込めたハンマーを鍛え上げ、戦いを有利に進めます。しかし最終決戦にて、舞台となった発電所が事故により大爆発を起こし、2人は生死不明に。

それから25年後の、現在。
街では格差社会が広がり、職を失った浮浪者も数多く、人々は不満を募らせていました。
そんな街で、13歳の少年、サム・クレアリー(演:ジャヴォン・“ワナ”・ウォルトン)は、シングルマザーであるティファニー・クレアリー(演:ダーシャ・ポランコ)と、裕福ではないものの仲良く暮らしていました。サムはサマリタンの大ファンで、今でもサマリタンは生きていると信じて疑いません。

ある日、サムはギャングのレザ(演:モイセス・アリアス)に誘われ、彼らの仕事の手伝いをすることに。仕事(と言っても強盗ですが)は成功するも、盗み出した箱の中にはお菓子しか入っていませんでした。レザはサムに濡れ衣を着せてリンチしようとします。しかし、ボスであるサイラス(演:ピルウ・アスペック)が現れ、サムを気に入ったことで、事なきを得るのでした。

サイラスに気に入られたことを妬んだレザは後日、再びサムを襲撃。自宅の近くまで逃げるも、追い詰められ、袋叩きに遭います。
そこへ、近所に住むジョー・スミス(演:シルヴェスター・スタローン)が通りかかり、ものすごいパワーでレザ達を吹き飛ばし、サムを助けてくれます。

サムはジョーこそがサマリタンであると推測しますが、ジョーはそれを否定。
一方その頃、ネメシス信者であるサイラスは、彼の遺志を継ごうと、計画を実行に移します。

果たして、ジョーは本当にスーパーヒーローなのか。
そして、サイラスを止めることは出来るのか――。

というのがあらすじ。

 

まず、スタローン演じるジョーの渋さ満点の出で立ちがとても良かったです。
歳を重ねてはいるものの、只者ではないと思わせる体格と凄みのある視線なんかが、役柄にピッタリだと思いました。

「これスタントっぽいなー」と感じる場面もありましたが、基本的にはスタローン自身がしっかりアクションをこなしているのが驚き。特に中盤の、チンピラをボコボコにしてからの、車を横に倒して爆風から少女を守る場面は、見応え抜群でした。あと地味に、ジョーが車に思いっきり轢かれる場面もめっちゃショッキングで良かったです。

 

もうひとりの主役というべきサムに関しては、サム役の子の演技が滅茶苦茶うまくて、ついつい感情移入してしまいました。お母ちゃんも、少ない稼ぎの中で懸命にサムを育てていて、深い愛情が感じられてすごく良かったです。「ウソはすぐにバレる」のとことか、ちゃんと子供の事わかってるんだなー、というのが伝わってきて、そんな大したシーンでもないのにちょっと感動しちゃいました。

あと、元気な老人を見つけるたびにジャーナリストの人に「あの人がサマリタンだ!」って言いに行ってる、ってのが可愛いと同時に、すっかりオオカミ少年になってしまっているというのが悲しい…。

 

サイラスは、まぁ…『JOKER ジョーカー』のラストに出てきたモブのジョーカー信者のひとり、って感じでした。要は小物ですな。
ネメシスは権力者どもから自分たち市民を救おうとしてくれてたから、自分はその遺志を継ぐ、みたいな目的は立派なんですが、やってることは一般人を苦しめたり殺したりと只のイチ小悪党といった感じで、彼の理想とするネメシスとはかけ離れてる、というのがまた何とも。

あ、でも、部下の女の子(名前忘れた)が最後の場面で爆破に巻き込まれて即死したとき、「アイツが…アイツがぁぁ…!」って取り乱してて、「あ、一応部下に対する愛情みたいなのはあるんだ…」と思って、好感度がちょっとだけ上がりました。個人的にあの女の子はなかなかいいキャラだと思ったので、あっけなく殺したのはちょっと不満。

てかネメシスのハンマー安っぽ過ぎない?アレ市販のヤツに紋章入れただけじゃん…というのは、触れない方がいいのかな…。ソーのムジョルニア、とまでは行かずとも、もう少し頑張ってほしかった…。

 

お話としては上述の通り、「舐めてたオッサンが実は最強でした」のパターンのヤツ。
敢えて善悪の境目を曖昧にしているところは、面白いなーと思いました。いっぱい匂わせがあったのですぐにわかってしまったものの、「ジョーはサマリタンなのか?それともネメシスなのか?」をラストまで明かさずに引っ張ったところとか、「ネメシスは不当な権力者しか狙わない」というサイラスの言葉からすると、ネメシスはただの純粋悪ではなく、悪を以て悪を征すダークヒーローだったのでは?と思わせるところとか、最後のジョーの「悪事を働くのは悪党だけではない。人の中には善と悪の両方があり、どちらを選ぶかはその人次第だ」という言葉とかに、強いメッセージ性を感じました。現代的というかなんというか、とにかくこの辺は見応えのある部分でした。
ビジュアル面でも、街の荒んでいる様子がうまく表現されていて良かったです。

 

ただ、僕の好みではない部分もチラホラありまして。

まずひとつが、クライマックスのジョーがあまりにも強すぎるところ。車に轢かれて骨がバキバキになってたり、顔や背中に古傷が残ってたりするので、「普通の人よりかはかなり頑丈で回復力も凄まじいけど、限度はある」って感じかと思ってたのに、最後の戦いでは無傷どころか銃弾すら跳ね返してて、いや強すぎるだろ!と思ってしまいました。実際にはケガしてたけど、気合で超回復してた、とか?…であればそういった描写を入れてほしかった。
強すぎること自体は別にいいんですが、これまで描かれてきたよりも明らかに強くなっているのがちょっとなぁ、と思った次第。

 

それから、中盤で爆風から助けてもらった少女が、TVの取材でベラベラ喋ってんのが、「なんだァ?てめェ…」となりました(大人げない)

記憶違いかもしれないですが、確か直前にジョーに内緒にするよう言われてなかったっけ。全然約束守ってねぇじゃん、この恩知らずめ…!と思ってしまいました(大人げない)。何でもかんでもTVやSNSなどで拡散されてしまう今の社会を描いているというのと、ラストでサムが「サマリタンが助けてくれたんだ。彼はきっとサマリタンに違いないよ」とジョーをかばうシーンとの対比になっている、というのはなんとなくわかりますが、ちょっとモヤっとしてしまいました。

あと、すぐ目の前で電子機器をダメにするEMP爆弾が爆発したのに、なんでスマホはダメになってないんだろ、という素朴な疑問。

 

あとあと、ラストでジョーがサイラスを穴へ突き落とすところは、個人的に一番の不満点。
かつての発電所の事故で、空いた穴に落ちた双子の兄弟を助け出すことが出来なかったシーンとの対比なのはわかりますが、であれば尚更、穴に落ちそうになったサイラスを助け出したりして、「あの時は救うことが出来なかったけれど、今度は悪人とはいえ救うことが出来た」みたいにしてほしかったなぁ、という個人的な願望。ジョーは確かに単純な“正義のヒーロー”ではないけれど、ここだけ「悪は死すべし!正義は勝つ!」みたいな感じで、本作のテーマから逸脱しているようにも見えましたし。

 

燃え盛る建物からサムを助け出した後、ジョーは姿を消した…と思ったら群衆に紛れて普通にいる!しかもめっちゃこっち見てる!なんか頷いてる!というラストシーンには、「いやいるんかい!」と一瞬笑いそうになりましたが、今後もサムとはご近所さんとして交流を深めていくだろうし、あくまでTVに映って正体を晒されないようにするのが目的だと思うので、まぁいいか…と考え直しました。

でもやっぱり、あの場面では姿を消して、エピローグ的な場面を作ってそこでサムと仲良くするシーンが流れる…みたいな方が僕は好みかなぁ。MCU作品にどっぷり浸かりすぎて、そっちっぽくならないと違和感を感じるような体になってしまったのかもしれない…。よくないなぁ…もっといろんな作品見なきゃ。

 

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てな感じで、感想は以上です。
レミニセンス』の時くらい短くする予定だったのに、意外と長くなってしまいました。
すごく良いところもあったし、良くないところもあったかなー、というのが僕の全体的な感想。
ともあれ、今後もアマプラにはネトフリに負けないように、どんどん独占配信作品を増やしていって欲しいものです。

ということで、映画『サマリタン』の感想でした。
ではまた。

ドラマ『ミズ・マーベル』感想(ネタバレ)

Disney+にて配信中のドラマ『ミズ・マーベル』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

2023/01/06:目次を付けました。

マーベルコミックを原作とした複数の実写映画を同一の世界観で描くクロスオーバー作品群、それが『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』。

本作は、MCU初登場となるティーンエイジャーのヒーロー、ミズ・マーベルを主役としたドラマとなります。
2020年に発売されたゲーム『Marvel's Avengers』にもメインキャラとして登場しており、話題になりましたね。
個人的には、『マーベル ライジン』のアニメを最近視聴したので、そこでの活躍が記憶に新しいです。1エピソード10分くらいと、気軽に見れるのでオススメ。

↑ゲーム版。オンラインに登録したりするのがめんどくてやってない…。

ライジングの原作コミック。アニメはDisney+で見れます。

 

もくじ

 

ミズ・マーベルとは

彼女の最大の特徴は、パキスタンアメリカ人であり、ムスリム(イスラム教徒)であること。なんでも、マーベルコミック内でムスリムのキャラを主役とした作品は、これが初なんだとか。マーベルに限らず、全世界のスーパーヒーロー作品の中でも、ムスリムのキャラというのは相当珍しいのではないでしょうか。

また、アベンジャーズの大ファンであり、特にキャプテン・マーベルを尊敬している、というのも大きな特徴のひとつ。ミズ・マーベルというヒーロー名も、キャプテン・マーベルがかつて名乗っていたことに由来しています。何気にコミックでは、ミズ・マーベルを名乗った人物はほかに2人、つまり計4人いるらしいですね。

 

原作における彼女の能力は、自身の身体の大きさを自在に変えられる、というもの。手足をロープのように伸ばして敵を拘束したり、拳を大きくして強力なパンチをお見舞いしたり、体を小さくして敵に見つからないようにしたりと、使い方は様々。ゴムゴムの実の能力者とか言ってはいけない
また、顔や髪形、服装などを変化させる変身能力も持っており、他人に成りすますことも出来ます。
更に、ウルヴァリンのような治癒能力(ヒーリングファクター)も持っているなど、正面突破から潜入まで、万能にこなすことの出来る優秀なヒーローと言えます。

 

概要

そんなミズ・マーベルこと、カマラ・カーンを本作で演じるのは、パキスタン生まれのカナダ人、イマン・ヴェラーニ
彼女自身も根っからのマーベルファンであり、パキスタン出身という点も共通しているなど、これほどまでにカマラ役にふさわしい俳優さんは他にいないですよね。記者にMCUに関するクイズを出されてそれに即答していく動画がSNSなんかによく上がっているので、それを見れば彼女がいかに“本物”かがわかります(笑)

その知識を活かし、監督たちに様々なアイデアを提案するなど、製作方面にも深く関わっているそうで、既にトップスターの片鱗を見せ始めています。ほんと、毎回よくこんな逸材を見つけ出せるもんだ…。

 

そのほか様々な俳優さんたちが出演していますが、出演作とかを調べてもパッと出てこなかったので、割愛。
さっさと感想に参りたいと思います。

 

予告編


www.youtube.com

 

あらすじ

場所はアメリカ、ジャージーシティ

16歳の高校生、カマラ・カーン(演:イマン・ヴェラーニ)は、ごく普通の女の子。
彼女は熱心なアベンジャーズファンであり、特にキャプテン・マーベルには強いあこがれを抱いています。ファン・フィクション(二次創作)を積極的に行っており、アベンジャーズの活躍をイラストにして動画サイトに投稿したり、コスプレをしたりと、俗にいうオタク女子です。

よく空想にふける癖があり、そのおかげで学校の成績はイマイチ。スポーツも決して得意な方ではありません。校内にはオタク仲間のブルーノ・カレッリ(演:マット・リンツ)や、同じムスリムで親友のナキア・バハディール(演:ヤスミーン・フレッチャ)はいるものの、割と典型的なギーク(オタク)=スクールカースト下層の生徒、という感じでした。

カマラは、もうすぐ開催されるアベンジャーズ・コン”を楽しみにしており、そこで行われるコスプレ大会のために、大好きなキャプテン・マーベルの衣装を制作していました。しかし、母のムニーバ・カーン(演:ゼノビア・シュロフ)は、イベントへ行くことを認めてくれません。いろいろと策を講じるも母が首を縦に振る事は無く、カマラは最終手段としてこっそり家を抜け出し、ブルーノと一緒にイベントに参加。コスプレ大会では、個性を出すために祖母のサナ(演:サミナ・アーメッド)から送られた腕輪をつけて出場することに。

その腕輪を装着した瞬間、不思議な光が彼女を包み込み、謎のビジョンを目撃します。更に、手から光の結晶のようなものが発射され、セットの一部を破壊してしまいます。幸い、演出の一環と思われて会場は大盛り上がりするのですが、コスプレ大会に参加していたクラスメイトのゾーイ・ジマー(演:ローレル・リーチマン)が、破壊されたセット(ムジョルニア…w)に吹き飛ばされてしまいます。カマラが彼女を助けようと手を伸ばした瞬間、光が長く伸びた腕のようになって、助けることに成功します。何とか事なきを得たものの、逃げるように会場を後にするカマラとブルーノ。

いったい、カマラに発現した能力は何なのか。
そこには、彼女の一族にルーツがあるのでした――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

みんな可愛くて最高!

最初にイマン扮するカマラの姿を見たとき、「ちょっと原作のイメージと違うなぁ」と思ったのですが、いざドラマを見るとその明るいキャラクターもあって、「いやむちゃくちゃ可愛いな!」と評価が一気に変わりました。自身との共通点が多いからなのか、イマンはすごく自然体でのびのびと演じているように見えて、それがまた大変素晴らしかったです。

能力も、手足の大きさが変わるのではなく、光(ヌール)の結晶を生み出して、それが伸びた手足のようになる、という感じになっていて、キラキラしていて綺麗でした。(ちょっとグリーン・ランタンみたいだな…と思ったのは内緒)
足元に光を発生させて足場にしたり、光弾のように飛ばしたりと、独自のアレンジも面白かったです。ただ、変身能力はなさそうだし、普通に膝擦りむいたりしてたので、ヒーリングファクターもなさそう。まぁ、あんまり万能すぎても扱いに困るだろうし、良い判断かと。今後の楽しみにもなりますしね。

 

カマラの良き理解者であるブルーノも、とにかくいいヤツで最高でした。
中盤、転校生のカムラン(演:リッシュ・シャー)にカマラがメロメロになってる時も、露骨に対抗心を燃やしてわざと話に割って入ったり邪魔したりして、「も~~可愛すぎかよ~~~」って感じでした。

雑貨屋で働きながら、自分でスマートスピーカーを手作りしたり、授業中にカマラに話しかけられた際にめっちゃ真面目に授業を聞いてる描写があったりと、学費免除で工科大に行けるくらいの秀才、というのに説得力を感じたのもナイスでした。
ただ、「腕輪がパワーを与えているのではなく、腕輪がカマラ自身に宿ったパワーを呼び覚ました」とか、「カマラのパワーは遺伝的なものかと思ったけどそうではなく、突然変異(ミューテーション)のようだ」とか、やたら分析能力が高いのは流石に「いや天才過ぎるだろ…」と思いましたが…。

 

カマラの親友、ナキアは、部屋に入るなりベッドにボフーンって倒れこんで愚痴りだしたりと、カマラとの信頼関係が伝わってきて「なかよし…かわよ…」ってなったし、モスク(礼拝所)の男女格差をなくすために理事に立候補するなど、聡明且つ逞しい女性で、とても良いキャラクターでした。あとめっちゃ美人。

モスクにトラブルを持ち込んだカマラに怒ってるのかと思いきや、スーパーパワーの事を自分に内緒にしてたことに怒っていた、というのも、「えぇい、可愛すぎか!」となりました。

 

あと、スクールカースト上位のいけ好かないヤツと思ってたゾーイも、謎のヒーローの正体を知ってたのに、カマラの意思を尊重して黙ってくれてたことがわかったり、最後は一緒に戦ってくれたりと、「えっ、めっちゃいい子やん…可愛い…」って感じで、心を鷲掴みされました。

ラストで自分の動画にナキアを出すくらい仲良くなってるのも、「あー可愛い、ほんとご馳走様です」って感じでした。

 

他のキャラも、母ちゃんがカマラに厳しくしてたのは「子離れ出来てないから」とか可愛らしい理由だったし、父ちゃんはずっと優しくて可愛かったし、兄ちゃんとその婚約者はアホで可愛かったし、おばあちゃんは元気で可愛かったし、曾祖母のアイシャ(演:メーウィッシュ・ハヤト)は顔の造形が良過ぎて可愛かったし、モスクの人達もみんないい人で可愛かったし、登場人物全員が可愛くてホッコリしました。

あと、アラビア語圏での両親の呼び方、アミ(母)、アブー(父)も、なんかすごい可愛くて良かったです。

 

自身のルーツを探る物語

お話としては、カマラに発現した能力の秘密を解明していくのを主軸として、家族との絆、学校での青春、現代社会における数々の問題、といった要素をブレンドしたストーリーになっていました。また、序盤はブルーノ、中盤はカムラン、後半はレッドダガーカリーム(演:アラミス・ナイト)と、いろんな男の子と出会って成長していく、“カマラの成長譚=ヒーローとしてのオリジン”としての側面も強いと思います。

全体を通して暗くなり過ぎず、若々しいエネルギーに満ちていて、未来への希望みたいなのが感じられて、見ていてなんだか元気を貰えるような、そんな気がしました。

 

第二次世界大戦後に起こった、インド・パキスタン分離の問題に深く切り込んでいたのも特徴的でした。僕はこんなことがあったなんて露知らず…。いやはやお恥ずかしい限り。こうした歴史上で実際に起こった出来事を上手く物語に絡めてくるのは、すごく勉強にもなるし、後世に残すという意味でも非常に良いと思います。

ただ、タイムパラドックス的な展開は、感動はしたけど、わかるようなわからんような…って感じでした。あまり必要性を感じなかったかな…。

 

コミックではイスラムが抱える問題に立ち向かっていく、といった要素も大きいらしいですが、本作ではその辺はマイルドになっていたように思います。モスク内の古臭い伝統や未だ残る男女格差をどうにかしようと、ナキアががんばる、カマラはそれを応援する、とかそのくらい。まぁ、この辺はいろいろと難しいと思うし、致し方なしかと。

 

イマドキなメッセージ

スマホでメッセージを送る時とかに、その内容がグラフィティ・アートのように壁や道路などに表示される演出は、視覚的にも面白い演出でした。なんというか、「若さ!」って感じがしてすごく良かったです(どゆこっちゃ)。カマラが黒板に書いたイラストで作戦の説明をするのも、非常に“らしく”て良かったですね。今後ほかのヒーローとクロスオーバーするときにもやって欲しい。

ラストでも、SNSで拡散して賛同者を集める、というイマドキな展開を見せてくれて、とても興味深かったです。あの場面を打開するほどのメリットがあったのかはイマイチわかりませんでしたが、「世論を味方につける」というのはなんとも今っぽいなーと。「普通とは何か」という問いに、「普通の人なんていない」という回答を用意するのも、現代的で良かったと思いました。

 

余談ですが、『スター・ウォーズ エピソード9 スカイウォーカーの夜明け』で、一度は主人公を“何者でもない人”としながらも、最終的に実は“シスの子供”だったと後付けすることで、血筋の物語に強引に立ち返らせたのが本当に不満でして。
EP8でせっかくスター・ウォーズを「スカイウォーカーの物語」から脱却して新たな可能性へ踏み込もうとしていたのに、というかEP9の副題もそういう意味だと思っていたのに、製作陣は自らそれを台無しにしてるじゃん、と。(何かと戦犯扱いされているEP8ですが、上述の理由もあって僕は結構好きです。)

でもその後リークされた当初予定されていた没案では、主人公は“何者でもない人”のままで、しかし最終的に「“何者でもない人”なんていない」という結論に辿り着く、というプロットがあったことを知り、「これや…これこそが見たかった展開なんや…」と非常に悔しい思いをしたことを、本作のラストを見て思い出しました。この没案の方が本来のEP9で、公開された方は幻だった…と自己暗示をかけることで、どうにか心の平穏を保っている感じです。

jp.ign.com

とまぁ何が言いたいかというと、本作ではしっかりと見たかったものを見せてくれたように思うので、個人的な満足度は高かった、ということです。

 

でもあえてマイナス面を言うとしたら、ちょっとフックが足りないというか、無難すぎるかなーという印象があります。インド・パキスタン分離の問題は非常に有意義なものでしたが、いかにもなキャラ、いかにもなストーリー、いかにもな問題提起、といった感じで、これといって突出したものが無かったように思います。うーんでもそんなこともないような気もするし…自分でもよくわからん。無理に捻り出そうとするのやめよう。

あとこれは気のせいかもしれないですが、最近のMCU作品としてはCGのクオリティが若干低いような、そんな気がしました。

 

追記:とか言うてたら、VFXスタッフの過酷な労働環境が問題になっているみたいですね。改善する気があるっぽい分、日本のアニメ制作現場とかよりかはマシな気もしますが…。とりあえず、もうちょっとペース落としてもいいのよ…?

theriver.jp

ヴィラン不在?

これといったヴィラン(敵役)がいないのも、本作の特徴のような気がします。

カムランの母であり、この世界と隣接する別次元、“ヌール・ディメンション”の人間であるナジマ(演:ニムラ・ブッチャ)と一応敵対することになりますが、その目的は多少強引な手段を使ってでも故郷に帰りたい、ってだけでした。ただまぁ、ナジマは殺人も厭わない人物だったし、自分がヌール・ディメンションに帰る際にこの次元が消滅する、と分かった上で行動してたっぽいから、ヴィランっちゃヴィランかも。
最後のカムランも、怒りで能力を制御出来なくなってた(もしくはヤケクソになってた)だけでしたし、決して根っからの悪人ではなかったと思います。

 

最後はダメージ・コントロールサディ・ディーバー捜査官(演:アリシア・ライナー)とひと悶着ありますが、彼女もカマラやカムランを捕まえるためには手段を選ばない、とかそんな程度でした。学校内にある色んな道具を駆使ししてやいのやいのするところは、なんというか『ホーム・アローン』っぽくて楽しかったです。しかし、彼らは能力者を生け捕りにして一体何がしたかったんでしょうね…?よくわからなかった…。

サディの上司であるクレイアリー連邦捜査官(演:アリアン・モーエイド)は、『スパイダーマン:ノーウェイ・ホーム』で、スパイダーマンをミステリオ殺害容疑で尋問した人だったらしく、後で知って驚きました。あと、ゾーイを尋問する時に、始めは「うっそ!あのゾーイ・ジマー!?いつも動画見てるよ!家族みんな大ファンなんだ!」みたいな語り口だったのが、急に真顔になって「…で、視聴数稼ぎにこんなことしたんだろ?どうなんだ?ん?」とか言い出して、その豹変ぶりにゾッとしました。大人って怖い…。

 

新たなヒーローの誕生

本作では、最後の最後までカマラのヒーロー名は決まってない感じでした(市民に言われていた“ナイトライト”はダサいからと拒否していた)。しかしラストで、父ちゃんに自身の名前の由来を聞き、「ウルドゥー語で“完璧(Perfect)”、”奇跡(Wonder)”、そして“感嘆(Marvel)”という意味があるんだ。つまり君は、産まれたときから私たちの“ミズ・マーベル”なんだよ!」と明かされたことで、遂にヒーロー名が決定。家族愛が伝わってくる、とても感動的なシーンでした。

 

最終話のミッドクレジットシーンは、家でくつろいでいたら突然腕輪が光りだし、クローゼットに吹き飛ばされるカマラ。出てきたその姿は、なんとキャロル・ダンヴァースキャプテン・マーベル(演:ブリー・ラーソン)、その人ではないですか!というもの。キャロルも何が何だかわからない様子で、慌ててその場を後にし、そして「ミズ・マーベルは映画『マーベルズ』で帰ってくる」というテロップが出て、ドラマは幕を閉じます。

カマラはどこへ行ってしまったのか…腕輪の力、というかカマラの力と、キャロルの力には何かしらの因果関係があるのだろうか…という、これまた先が気になり過ぎる終わり方で、「あぁもう、早よ続き見せてくれぃ!」となりました(大体いつもこうなる)。

 

おわりに

そんな感じで、感想は以上です。
なんというか、若い子に見てほしいなぁと、そんな風に思えるドラマでした。

これを見て、
カマラが好きなキャプテン・マーベルってどんな人だろ?
→映画『キャプテン・マーベル』を見る
→ニック・フューリーやコールソンがカッコ良かった!もっと活躍を見たい!
→映画『アベンジャーズ』を見る
→ほかのヒーローの活躍も見たい!
→ようこそMCU沼へ…
という連鎖が起きないかなぁ、とか期待しているオッサンなのでした。

ということで、ドラマ『ミズ・マーベル』の感想でした。

ではまた。

映画『ソー:ラブ&サンダー』感想(ネタバレ)

映画『ソー:ラブ&サンダー』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

2023/01/06:少々追記と、目次を付けました。

マーベルコミックを原作とした複数の実写映画を同一の世界観で描くクロスオーバー作品群、それが『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』。

本作は、アベンジャーズの初期メンバーであるソーを主役とした作品であり、単独主演作品としては4作目となります。これまでMCUの単独作は3作までしか作られてきませんでしたが、遂に記録更新となりました。
ちなみに、これまでの日本語版タイトルは『マイティ・ソー~』でしたが、今回は原題に倣う形で『ソー』だけの表記になっています。まぁこれは原題に合わせるというよりかは、今回のマイティ・ソーはジェーンであって、主役はあくまでも“ソー”の方ですよってことで、このタイトルになっているんだと思います。

 

もくじ

 

ソーというキャラクターについて

ソーは、北欧神話の“雷神”トールをモデルとするキャラクター。
フルネームはソー・オーディンソンで、年齢は1500歳以上。神の国アスガルドの国王オーディンとその妻フリッガを両親に持つ、アスガルドの第1王子です。

その戦闘力はアスガルド最強と謳われるほどで、身体能力は人間の比ではなく、並の攻撃では傷ひとつ付けることが出来ない強靭な肉体と、ハルクに匹敵するほどの腕力を持っています。更に、武器とする神秘のハンマー、ムジョルニアから凄まじい威力の雷撃を放つことが出来るなど、マーベルヒーローの中でも屈指の実力を持つキャラとなっています。

性格は、始めはその強さに胡坐をかいていて、自信過剰で傲慢な、考えるより先に手が出る脳筋タイプでした。しかし、地球人との交流や数々の戦いを経て、王に足る存在でいようと、性格もどんどん丸くなっていきました。現在は、自由に生きたいと王位から退き、自分探しをしている最中で、性格も豪快さ(アホさとも言う)を取り戻してきています。作品を重ねるごとに、悩んだり落ち込んだりといった繊細な部分も描かれるようになり、どんどんキャラクターとしての魅力が上がっていっているように思います。

 

これまでの活躍

簡単に、MCUにおけるこれまでのソーの遍歴を書いていきたいと思います。

  • マイティ・ソー』2011年
    オーディンにより地球に追放され、ムジョルニアを持ち上げることが出来なくなってしまったソー。しかし、出会った地球人と交流を深め、特に天文物理学者のジェーン・フォスターとは互いに惹かれ合うほどの仲に。なんやかんやあって反省したソーは再びムジョルニアに認められ、雷神としての威厳と精神を取り戻すのでした。

  • アベンジャーズ』2012年
    弟である“悪戯の神”ロキを捕えるため、再び地球へやってきたソー。そこで出会ったアイアンマンキャプテン・アメリカたちと、時折ケンカしながらも共にアベンジャーズの一員として戦い、ロキ率いるチタウリ軍をボッコボコにしました。

  • マイティ・ソー/ダーク・ワールド』2013年
    偶然にも体内にエーテル(=インフィニティ・ストーンのひとつであるリアリティ・ストーン)を吸収してしまったジェーン。エーテルを狙って、ダークエルフマレキスが攻めてきます。母フリッガが殺害されたりしつつも、投獄されていたロキと共にマレキスを撃退します。

  • アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』2015年
    トニー(アイアンマン)が開発していた人工知能ウルトロンが突如暴走、人類に反旗を翻します。ソーは、裸で水浴びをしていたら何かを閃き(非常に語弊のある文章)、雷撃で人口生命体ヴィジョンを起動させ、甚大な被害を出しながらもどうにかウルトロンを撃破するのでした。

  • マイティ・ソー バトルロイヤル』2017年
    オーディン亡き後、ソーの姉である“死の女神”ヘラによってムジョルニアは破壊され、右目も失います。雷の力も失われたかと思われましたが、自身の内にある雷神の力を呼び覚まし、ハンマーがなくとも自在に雷を操れるようになります。ラグナロクによってアスガルドは崩壊してしまうも、ソーは生き残った民を避難船に乗せ脱出。地球へと向かいます。

  • アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』2018年
    民と共に地球へと向かう道中、サノスの軍勢からの襲撃に遭います。ソー、ロキ、ハルクの3人をもってしても強敵サノスには及ばず、ロキはソーをかばって殺害され、生き残ったアスガルドの民も大多数が犠牲に。サノスに対抗するため、ソーはムジョルニアに代わる新たな武器、ストームブレイカを作り上げます。しかし、善戦虚しく、サノスは全てのインフィニティ・ストーンを手に入れ、指パッチンことデシメーションを発動。全生命体の半分が消滅し、完全敗北を喫します。

  • アベンジャーズ/エンドゲーム』2019年
    サノスに勝ち逃げされ、自身の無力を痛感したソーは絶望して引きこもり、すっかりメタボ体型に。しかし、“タイム泥棒作戦”にて2013年のアスガルドへ向かい、母と再会。全てを察していた母より叱咤激励され、再び戦うことを決意します。戦いが終わった後は、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと共に宇宙へと旅に出ました。

とまぁ、遍歴はこんな感じです。

 

当初のソーはなんというか、キャラとしては大人気だけど、作品としては不人気、という感じでした。個人的にも、MCU作品で順位をつけるとしたら一番下に来るのが『ダーク・ワールド』だったりするので、その評価も頷けてしまうといいますか。だってなんかお話的にも画的にもずっと暗くて、面白みに欠けるというか、厨二感がすごかったという印象しか無いんですもん。

しかし、『バトルロイヤル』では作風をガラリと変え、コメディ色を強くし、明るいテイストに。ソーの葛藤や悩みを描くなどしてキャラクターに深みを増したのもあって、これまでとは一転、高評価を獲得しました。あと『バトルロイヤル』は、大人の事情で単独作が作れないハルクの物語としても非常に重要な作品となっているので、その辺も高評価の一因になっているように思います。

あとはやはり、『エンドゲーム』でのソーの姿は衝撃でしたね。自分の無力に絶望し、引きこもって毎日酒飲んでゲームするだけ、体はすっかりなまって見る影もなく…という、非常に人間らしい姿が描かれました。この辺りでようやくソーのキャラクターが確立したような気がします。そして戦意を取り戻してからも、神様パワーで雷ドーンしたら元のマッチョボディに…とはならず、最後までメタボのままだったのもとても良かったです。

 

本作概要

そんなこんなで、物語は本作へと至ります。

前作『バトルロイヤル』に引き続き、本作の監督を務めるのは、タイカ・ワイティティ
監督業のほか、俳優としても数多くの作品で活躍しており、前作及び本作でも、コーグという岩男役で出演しています。2019年の『ジョジョ・ラビット』では監督・脚本・主演を務め、アカデミー賞6部門にノミネート、脚色賞を受賞するなど、才能の塊のような人物です。

ソーを演じるのは、おなじみクリス・ヘムズワース
ソー役で一躍スターダムへと躍り出たのち、その誰もが羨む端正なルックスとマッスルなボディを活かし、主にアクション映画などで活躍。リブート版『ゴーストバスターズ』ではコメディアンとしての一面を開花させ、それが今のソーのキャラクターにも活かされています。

新生マイティ・ソーこと、ソーの元カノ、ジェーン・フォスターを演じるのは、ナタリー・ポートマン
映画『レオン』にて鮮烈なデビューを果たし、『スター・ウォーズ』エピソード1~3、通称プリクエルトリロジーにて、パドメ・アミダラ王女を演じました。また、2010年の『ブラック・スワン』では、狂気に染まっていく主人公を見事に演じ、アカデミー主演女優賞を獲得するなど、世界でもトップクラスの実力を持つ俳優さんです。

頼れる仲間、ヴァルキリーを演じるのは、テッサ・トンプソン
全然見てないのでよくわかりませんが、アメリカのTVドラマへの出演が結構多いみたいです。
そーいや2019年の『メン・イン・ブラック インターナショナル』でも、クリヘムとバディを組んでましたね。

本作のヴィラン(敵役)、ゴアを演じるのは、クリスチャン・ベール
ダークナイト』3部作にてブルース・ウェインバットマンを演じた彼が、今度はヴィラン側を演じることになりました。2004年の映画『マシニスト』では、役作りのために30キロ減量して撮影に臨み、撮影終了後は『バットマン ビギンズ』のためにまた半年で30キロ増量するなど、とにかく役作りが半端ないと言われている俳優さんです。

そのほか、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのメンバーや、様々な俳優が出演しております。

 

てな感じで、そろそろ感想を書いていきたいと思います。

 

予告編


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あらすじ

かつては信心深かったものの、信仰していた神に裏切られ、娘を亡くしたゴア(演:クリスチャン・ベール)。
彼は、暗黒の剣ネクロソードを手に、“神殺し(ゴッド・ブッチャー)”となって、神々への復讐を開始します。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと共に宇宙を旅していた“雷神”ソー(演:クリス・ヘムズワース)は、ゴアの次の狙いがアスガルドである事を知り、ガーディアンズ達と別れ、地球にあるニュー・アスガルドへと向かいます。かつて共に戦ったヴァルキリー(演:テッサ・トンプソン)が統治するその地にも、ゴアが操る影のモンスターが迫っていました。そこへ、砕け散ったはずのムジョルニアを操る、謎の女性が現れます。その正体はなんと、ソーの元恋人、ジェーン・フォスター(演:ナタリー・ポートマン)だったのでした――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

本作も前作同様、笑いあり、涙ありの、非常に愉快な作品となっています。
今回も80年代辺りのロックナンバーを多数使用し、新しくも懐かしいような、それでいてハイテンションな作風となっており、とても楽しかったです。『トップガン マーヴェリック』の歴史的大ヒットといい、ハリウッドでの80年代ブームはまだまだ続きそうですね。

 

キャラの魅力マシマシのソー

ソーは本当にいいキャラクターになりましたね。
まず序盤の、ガーディアンズとのやり取りからして最高でした。本人としては「神様っぽくてカッコいい」と思ってやってることが、周りからしたらただただ空気読めなくてウザいヤツになっていて、ずっとドン引きされてるのがめちゃくちゃ面白かったです。別れの時も、元はと言えば強引に船に乗り込んだくせして「この船をお前らにやるよ。年代物だけど、悪くないだろ」とか言っちゃうとことか「ホントそういうとこだぞ」って感じだし、誰ひとりとして別れを惜しんでないとことかも、みんなにウザがられてたんだろうな…というのが伝わってきて、見てるこっちは楽しくて仕方なかったです。
ガーディアンズの各メンバーに関しては、本作ではあくまでゲストって感じで序盤だけの出演だったし、今後『ホリデースペシャル』や『Vol.3』が公開されたときのために取っときたいので、ここでは割愛。

本作のソーはメタボ体型から鍛えなおして過去最高レベルのボディになっており、中盤で衣服を全部消し飛ばされるとことか、こっちまで「フヮーオ♪」と言いたくなるような見事なマッスルを披露してくれます。大変眼福でございました。あと、ストームブレイカーとの掛け合い?というか、ムジョルニアに嫉妬してヘソを曲げるストームブレイカーに、「アイツとはもう終わってるって…今はお前一筋だからさ」みたいな、元カノに嫉妬する今カノをなだめるようなシーンがちょくちょく挟まれて、それがいちいち面白かったです。

 

ハイテンションキャラに変貌、ジェーン

久々の登場となるジェーンは、ステージ4の末期ガンを患っていることが明かされます。
原作に疎い僕にとっては結構な衝撃だったんですが、原作のジェーンもそういうキャラらしいですね。友人のダーシー・ルイス(演:カット・デニングス)が励ましてくれたり、エリック・セルヴィグ博士(演:ステラン・スカルスガルド)が懸命に治療法を探してくれてたり、過去に登場したキャラをちゃんと出してくれるところも好印象でした。

ムジョルニアに「健康な肉体に戻す力」があるというのも、破綻の無い設定で良かったと思います。てかこれも原作にあるらしいですしね。あくまでも「ムジョルニアを持っている間だけ健康な体になる」のであって、「戦うことで急激に体力を消耗し、病の進行が早くなる」というのも、現実味があって良かったです。原作では「ムジョルニアを持っている間は病の進行が止まる」という設定らしいので、真逆にアレンジされたという事ですね。ジェーンを今後も登場させるのもアレですし、クライマックスの展開にも繋がってくるので、良いアレンジではないかと思います。

マイティ・ソー状態のジェーンは、若干ハイテンションキャラになっており、本作の作風ともマッチしていてとても楽しかったです。知能指数も下がっているような気がしましたが、それもムジョルニアの効果なのか…?戦うときも、砕けたムジョルニアの破片を飛ばして攻撃するなど、個性的ですごくカッコよかったです。

 

最高にイカスぜ、ヴァルキリー

ヴァルキリーは、前作の時も超カッコよくて最高でしたが、本作では更にその魅力を増しており、ホント惚れ惚れするようなカッコよさでした。
彼女は元々バイセクシャルのキャラクターでしたが、以前はそれを匂わすようなシーンはカットされていたらしいです。しかし本作では、「彼女(ジェーン)の事狙ってるのか?」といったセリフがあったり、女性の恋人がいたことをほのめかしていたり、ゼウスの取り巻きの女性の手にキスをしたりと、そういった描写が増えていて、それが彼女の魅力を底上げしていたように思いました。もともと女性戦士で構成された“ヴァルキリー部隊”のメンバーだったわけですし、女性に惹かれるというのも何らおかしくはないですよね。

ちなみに、演じるテッサ・トンプソン自身も、バイセクシャルである事を公言しているらしいです。

 

『エンドゲーム』の時はさびれた漁港みたいだったニュー・アスガルドも、子供が増えていたり、空飛ぶ船が頻繁に行き来していたり、観光ツアーが組まれていたりと、発展している様子がしっかり描写されていました。ヴァルキリー自らシャンプー?香水?のCMに出演していたりするのも、がんばって町をPRしているのが伝わってきてすごく良かったです。

このアスガルドの子供たちが全編にわたって物語に絡んでくることになり、特にヘイムダルの息子のアクセル(演:キーロン・L・ダイヤ―)は、今後も活躍していってくれそう。父の跡を継いでくれたりしたらアツいですね。

余談ですが、序盤でアスガルドを題材にした演劇をやっている場面があり、前回に引き続きソーを演じる役者にクリヘムの兄ルーク・ヘムズワース、ロキを演じる役者にマット・デイモン、追加キャストとしてヘラを演じる役者にメリッサ・マッカーシー(来年公開予定の実写版『リトルマーメイド』でアースラを演じるらしい)がカメオ出演しています。なんという豪華キャストの無駄遣いwって感じで爆笑しました。

 

俳優力を痛感、ゴア

ヴィランであるゴアも、元から悪いヤツじゃないという、多面性のあるキャラになっていました。超絶陽キャのソーに対し、超絶陰キャのゴア、という対比になっていたのも面白いなーと。

チャンベー(って略してんの僕だけ?)の演技も、流石としか言いようのない見事な怪演っぷりでした。てか、ネクロソード持ってる時のゴアは言われなきゃチャンベーだと気付かないレベルの変貌ぶり。やはりスゴイ俳優さんだなぁ、と。

 

ゴッド・オブ・ゴッズ、ゼウス

中盤では、神々が集うオムニポテンスシティにて、ギリシア神話最高神であるゼウス(演:ラッセル・クロウ)が登場。それほど出番は多くありませんでしたが、ものすごい存在感を放っていました。まぁ、演じてるのがあのラッセル・クロウですしね…。

本作のゼウスは不遜な神様の典型みたいなキャラで、神としての強大な力を弱き人々を護るために使おうとするソーと、私利私欲の為だけに使おうとするゼウス、とここでも対比になっていて良かったです。

 

ここで改めて気づくのが、ソー自身は、「オレは王様なんてガラじゃないし、自由に生きたい」と思っているようですが、一切の迷いなく人々を助けるために行動したり、幽閉された子供たちを懸命に励ましたりと、実は誰よりも王様にふさわしい存在になってるんですよね。全く、ニクいヤツだぜ。(空気は読めないけどw)

成り行きでゼウスからサンダーボルトとかいう武器を奪い、ヴァルキリーが使ったり、ストームブレイカーを使えない状態のソーが使ったりします。あの武器はやっぱり、ムジョルニアやストームブレイカーよりも強力だったりするんですかね。取り回しよさそうっていうのと、2つに分かれて双剣みたいになるくらいしかメリットがなさそうでしたが、今後隠された能力とか明かされたりするのかな。

 

そのほか、雑多に

キャラ以外の部分で印象的だったところを少々。

後半の“色の無い星”での戦いは、フィルムノワールのような白黒映像が不気味さを演出していたほか、雷撃で照らされた箇所だけぼんやり色づいてるところとか、芸コマだなーと思いました。個人的に今イチオシの漫画『カラーレス』を彷彿とさせて、すごく好みな演出でした。

あとはやはり、ラストの展開。

遂に辿り着いた“永久の門(エタニティ)”は、ウユニ塩湖のような、ゲーム『MOTHER』のマジカント王国のような、幻想的で美しい空間でした(ここでマジカント王国を連想するのは僕くらいだろうな…)。このエタニティが場所そのものを指すのか、願いをひとつだけ叶えてくれる神龍的な存在の事を指すのかはよくわからん。

エタニティで叶えたいゴアの願い。それは、「全ての神々を消す」こと…ではなく、ソーに見透かされたその奥にある真の願いは、「ただひとりの娘を甦らせる」ことでした。冒頭で「娘をお救い下さい」と神に祈っていた、そこへ立ち返るという円環構造…。最期は甦った娘、ラブをソーに託し、息を引き取るゴア。泣ける、泣けるでぇ…。

てか、ゴアの娘、ラブ(演:インディア・ローズ・ヘムズワース)がめっちゃかわいい!…と思ったらこの子、クリヘムの娘さんだったのね。て事はラストシーンとか、ただのホームムービーやないか…。

そーいや、冒頭に出てきた幼少期のソーを演じたのも、クリヘムの息子であるサーシャ・ヘムズワーストリスタン・ヘムズワースらしいですね。クリヘム、なんかウィル・スミスみたいになってきたな…。

 

ジェーンは、結局病には勝てず、神様としてその生涯を終えます。
エタニティに「ジェーンの病を治してくれ」と願うような展開にならなくて、個人的には良かったと思っています。最初に辿り着いた者(=ゴア)のみに願いをかなえる権利があったわけで、そのゴアが娘よりもジェーンを選ぶとはちょっと考えづらいですしね。それに、「正義は必ず勝つ」じゃないですけど、スーパーヒーローだからって特別扱いするのは違うというか、時代にそぐわないような気がしますし。

ところで、実はMCUにおけるソーの物語は、一貫して“喪失”を描いているんですよね。
1作目は王の資格を失い、2作目では母を失い、3作目では右眼と父と祖国、そしてムジョルニアを失い、本作では最愛の女性を失う…といった感じで、何気にどんどんつらい境遇になっているという。しかし、ソーのキャラのおかげで、全く悲壮感が無いというのが本当にすごい。僕もソーくらい前向きに生きられたらどんなにいいことか…。

 

ミッドクレジットシーンは、ちゃっかり生きていたゼウスが、ソーへの報復のために息子のヘラクレス(演:ブレッド・ゴールドスタイン)を差し向ける、というもの。ヘラクレスは…まんま『300(スリーハンドレッド)』みたいでしたね…。正直あまり魅力を感じなかった…。次に出てくるときには衣装とか色々変わっててくれるとありがたいかも。

ポストクレジットでは、勇敢に戦った末に死を迎えた神のみが辿り着くと言われるヴァルハラにて目を覚ましたジェーンが、『インフィニティ・ウォー』にてサノスに殺害されたヘイムダル(演:イドリス・エルバ)に迎えられたのち、「ソーは帰ってくる」の文字が出てきて、映画は終了。おぉっ、まだ続いてくれるのか!と嬉しくなりました。

 

おわりに

はい、こんな感じです。

始めの方でも書いてますが、笑って泣けて楽しめる、非常に満足度の高い作品になっていると思いました。上映時間も120分弱くらいなので、最近のMCU作品の中では見やすい方かと(120分が普通の人にとって果たして“見やすい”のかどうか既にわからなくなっている節がある…)

魅力的なキャラ、ほどよく時流に乗ったストーリーなど、MCUの良いところが詰まった作品でもあると思うので、MCU作品を見たことがない人も気軽に見れるのではないかと!

という事で、映画『ソー:ラブ&サンダー』の感想でした。

ではまた。

映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』感想(ネタバレ)

映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

鋼の錬金術師』は、2001年~2010年にかけて月刊少年ガンガンにて連載されていた、ダーク・ファンタジー漫画。

錬金術が発達した世界を舞台に、等価交換、生と死、人としての定義、といったテーマを描いた作品となっています。非常に重厚なテーマながら、コミカルな描写も多いため重くなり過ぎず、魅力的なキャラクターが数多く登場することなどもあって、全世界累計発行部数8000万部以上を記録する、超人気漫画です。
しかし、もう連載終了して10年以上経つのか…時の流れの早さよ…。

 

目次

 

映像化について

2003年~2004年にかけてTVアニメも放送され、更に2005年にはTVシリーズのその後を描いた、『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』が公開されました。
監督が『機動戦士ガンダム00』や『楽園追放 -Expelled from Paradise-』などで知られる水島精二氏であることから、2003年のアニメシリーズは“水島版”と呼ばれることが多いです。

水島版が放送されていた頃はまだ漫画が連載途中だったので、後半はアニメオリジナルストーリーとなり、それ故に賛否両論あったらしいです。が、僕はこの水島版がめちゃくちゃ好きでして。連載に追いついちゃって途中からアニメオリジナルの展開になるパターンって上手くいかないことが多い印象なんですが、ハガレンに関しては数少ない成功例だと思っています。

どうやら、原作者の荒川弘氏から「こういう最終回にしようと思ってます」みたいな構想を聞いて、それを元にアニメ版のストーリーを組み立てていったらしいです。だからストーリーが違っても、作品の持つテーマとか本質的な部分はブレていなかったのかな、とか思ってみたり。

 

また、2009年~2010年には『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』のタイトルで、再度TVアニメ化されました。
水島版との混同を避けるために、こちらは“鋼FA”などと呼ばれたりしています。ほぼ原作準拠のストーリーとなっていながら、原作とほぼ同時期に完結するという、なかなか他に類を見ない作品となっています。

なんでも、本来であれば原作はもっと早めに完結する予定だったらしいのですが、色々あって延びてしまい、結果的にほぼ同時の完結になったようです。終盤は荒川氏がラフ状態の原稿をアニメのスタッフに見せ、それを参考に絵コンテを描いたりしていたんだとか。また、原作最終回のボリュームが予想以上に大きかったことから、アニメも急遽1話分追加されたらしいです。
よくそんな事が出来たなぁ…きっとお互い死ぬほど大変だったんだろうなぁ…。

僕は恥ずかしながら未だ原作を最後まで読めておらず、FAもまだ見れてないんですよね…。紙で完全版を途中まで買っていたものの引っ越しの際に売ってしまったので、結局電子で全巻買いなおして、また最初から読み直しているところ。
改めて読むと、多数の読者にトラウマを植え付けたタッカーの話が2巻の最初だったり、その直後からスカーが出てきたりと、展開の早さ、というか話の密度の濃さに驚くばかり。やっぱりすごい漫画だなぁ、と。

 

2011年には劇場版第2弾となる、『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』が公開。こちらは作中の合間に起こったオリジナルストーリーが展開されているらしいです。原作読み終わってからじゃないと、と思ってこちらもまだ見ていないんですが、オリジナルストーリーなら問題ないやん、と今頃になって知るというね…。

 

実写映画について

そして2017年には、実写映画第1作目が公開。
こちらは僕も鑑賞しておりまして、イタリアで撮影された街並みや、実写とCGを融合した迫力の映像、キャラクターのビジュアルに関しては、かなり頑張っていたと思いました。しかし、主に脚本面はあまり上手くいっているとは言えず、世間の評価も散々な結果に…。漫画原作の実写版でありがちな、失敗例のひとつになってしまったように思います。

僕個人の感想としては、原作から変えているところが悉くイマイチな気がしたのと、ウィンリィがひたすら邪魔だなと思いつつも、松雪ラストは最高だったし、そんなに嫌いではなかったり。

 

そんな実写版ハガレン連載開始20周年を記念したプロジェクトのひとつとして、なんと続編が公開されることとなりました。しかも前後編の2部作連続公開。
それがこれから感想を書く、『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』となります。
“完結編”と付いている通り、1作目の続きから、原作の最終話までが描かれています。

監督・脚本は、前作同様、曽利文彦氏が務めています。実写版『ピンポン』で監督デビューし、3DCGアニメ映画『APPLESEED』を手掛けた、VFX出身の監督さんです。

キャストも、主人公エド役の山田涼介やアル役の水石亜飛夢をはじめ、前作に出演した人たちが続投しているほか、新キャラも多数登場します。

時雨くんがアル役だと知った時には驚いたものです(『魔進戦隊キラメイジャー』より)

しかし、1作目がアレだったのによく続編作る気になったな…。しかも1作目はせいぜい原作8巻くらいまでの内容で、そこから20巻近く続きがあるのに、たった2本の映画で最後まで描き切れるのか…?と不安に思うのは僕だけでなく、ある程度知っている人であれば皆そう思う事でしょう。

まぁ、ダメならダメでそっちのベクトルで僕は楽しめるし、邦キチのネタにでもなればいっか、とハードルを地面につくぐらいまで下げたうえで、鑑賞に臨みました。

 

さて、そこまで書くことも無いので、前後編合わせた感想を書いていきたいと思います。

 

感想 『復讐者スカー』編

↓予告編はこちら。(『最後の錬成』の方の映像もちょっとあります)

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まずは軽~く第1作目のあらすじ。

史上最年少で国家錬金術師となった、鋼の錬金術師の二つ名を持つ少年、エドワード・エルリック(演:山田涼介)。そして、全身鎧を身に纏ったような容姿の弟、アルフォンス・エルリック(演:水石亜飛夢)。

彼らは幼少期に亡くした母を甦らせようと、錬金術における最大の禁忌である人体錬成を行い、その結果、エドは左脚と右腕を失い、アルは体すべてを失って鎧に魂だけが定着している状態に。エドは失った手足の代わりに機械鎧(オートメイル)と呼ばれる鋼の義肢を装着し、それが二つ名の由来となります。

二人は元の身体へ戻るために、賢者の石と呼ばれる、錬金術の効果を増幅させる特殊な石を探し求めていました。しかし、石の入手まであと一歩というところで、その材料が生きた人間である事が判明。誰かの犠牲の上で自分達だけが救われる事を拒んだ兄弟は、賢者の石以外の方法で、元の身体に戻る方法を探す事を決める――。

と、ここまでが前作のあらすじ。

 

その後、国家錬金術師の連続殺人事件が発生。

犯人は、素性不明で顔に大きな傷跡がある事から、“傷の男”スカー(演:新田真剣佑)と呼ばれる男。非常に高い戦闘力を持つ国家錬金術師たちを、あらゆるものを破壊する右腕を用いて次々と殺害していくスカー。もちろんエドもターゲットとなり、スカーから執拗に狙われる事に。

エドとアルはスカーから逃れることは出来るのか。
そして、復讐の連鎖を断ち切ることは出来のか――。

というのが今回のあらすじ。

 

率直な感想としては、意外と悪くなかったな、と。
原作におけるスカー登場から、ホムンクルスエンヴィー(演:本郷奏多)やグラトニー(演:内山信二)とのバトル辺りまでを、ところどころ省略しつつも割と原作に忠実に描いており、ハードルを思いっきり下げたうえでの鑑賞とはいえ、普通に面白かったです。ただ、やはりダイジェスト感は否めないので、原作を読んでいない人がどれくらい話を理解出来たのかはちょっとわからない…。

 

キャラに関しても、前作同様、なかなか良かったと思います。
特に、シン国の皇子リン・ヤオ(演:渡邉圭祐)と、その従者であるランファン(演:黒島結菜)は、アジア系のキャラという事もあって非常にビジュアルの完成度が高かったです。ただ、もうひとりの従者であるフー(演:筧利夫)は、ちょっと若すぎるかなーと思いました。リンとシン国の次期王位を競い合うメイ・チャン(演:ロン・モンロウ)は、逆にちょっと大人すぎるかなーという印象。

“焔の錬金術師”こと、ロイ・マスタング大佐(演:ディーン・フジオカ)は、ビジュアル面においては前作から全く不満は無かったので、特に言う事なし。リザ・ホークアイ中尉(演:蓮佛美沙子)は前作ではコスプレ感が強かったですが、今回は比較的自然な感じになっていました。

初登場のスカーも、存在感抜群で良かったです。演じる新田真剣佑も、褐色メイクに若干の違和感はあれど、安定感がありました。るろ剣の縁といい、強敵キャラを実写化する時は彼に任せとけば大丈夫ですね(笑)

前作で邪魔しかしていない印象のあったウィンリィ・ロックベル(演:本田翼)も、今回はいい塩梅だったかと思います。ちょっと唐突ではあったものの、スカーに両親を殺されていた事が判明してからの、復讐の連鎖を止めるシーンがちゃんとあったのも良かったですね。

あとはなんと言っても、キング・ブラッドレイ大総統(演:舘ひろし)がまーシブい。彼に関しては、これ以上ない最高のキャスティングではないかと。もうね、一挙手一投足すべてがカッコいい。カッコよすぎて泡吹いて倒れるかと思いました。大総統の息子であるセリム・ブラッドレイ(演:寺田心)も、「人生何回目なんだろ」という雰囲気が漫画そのままで良かったです。心くんは本当にホムンクルスなのではなかろうか…。

ただ、“豪腕の錬金術師”こと、アレックス・ルイ・アームストロング少佐(演:山本耕史)は…悪くはなかったけど、なんで山本耕史なんですかね…。もっと顔が似てて体のデカい役者さんがいると思うんだけどなぁ。「豪華キャスト勢揃い!(ただし日本人に限る)」にこだわり過ぎなの、ほんと邦画の悪いところな気がする。「私の好きな言葉です」とか言ってくれたらまだ面白かったかもしれない(無理)。

 

最後はエド、リン、エンヴィーがグラトニーに食べられてしまい、腹の中=擬似“真理の扉”でエンヴィーが真の姿になって TO BE CONTINUED... てな感じ。後編の予告が流れて、映画は終わってました。
何の前振りもなくエンヴィーが真の姿になるので、原作読んでない人は変身形態のひとつとしか思わないだろうな…。あと連続公開とはいえ、この映画単体でオチを付ける気が一切ない、というのはどうなんだろうか…。

とまぁ、前編はこんな感じでした。

 

感想 『最後の錬成』編

↓予告編はこちら。

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エド達一行は、「自分自身を人体錬成することで、本物の“真理の扉”を通る」という荒業で、見事グラトニーの腹の中からの脱出に成功。ホムンクルス達に“お父様”と呼ばれている男と顔を合わせることになります。その姿は、エドとアルの父親、ヴァン・ホーエンハイム(演:内野聖陽)に瓜二つでした。

ラスボスであるその男を止めようと錬金術を使おうとするも、何らかの力によって術が発動しません。しかし、スカーの“破壊の右手”とメイの術は使うことが出来たため、どうにかその場を脱することが出来ました。

スカーの兄が遺した研究書に隠されたメッセージにより、“約束の日”と称する敵の真の目的が、「アメストリス国全域を国土錬成陣で囲い、国民全てを生贄にして賢者の石を作り出すこと」だと判明。そんな事は絶対にさせまいと、エドは北部のブリッグズ要塞へ、アルは東部のリオールヘ、スカー達は残って兄が遺した更なるメッセージを探すことに。

軍の中央司令部へ赴いたマスタングは、上層部全員が敵の手の中にあることを知り、部下たちと共にクーデターを起こします。

果たしてエド達は、“約束の日”を阻止することは出来るのか――。

というのがあらすじ。

 

感想としては前編と大体同じ。ダイジェスト感は否めないものの、想像以上によくまとまっていると思いました。

最後の決着の場面では、しっかりと感動することが出来ました。まぁ、これは原作が素晴らしいんだと思います。映画見る前に漫画を全巻読もうと思ってたのに結局読み切れなかったので、原作との違いについては割愛。

 

キャラに関しても大体同じ感想で、コスプレ感はあれどなかなか頑張っていると思いました。

個人的に特に良かったのは、オリヴィエ・ミラ・アームストロング少将(演:栗山千明)ですかね。ビジュアルだけでなく、雰囲気とかの再限度が非常に高かったと思います。さすがはオタク文化に造詣の深い栗山氏、といったところでしょうか。

“紅蓮の錬金術師”の二つ名を持つゾルフ・J・キンブリー(演:山田裕貴)の出番が丸ごとカットされてたのと、“強欲”ホムンクルスグリードのリンを乗っ取る前の姿が出てこなかったのはちょっと残念ポイント。尺の都合を考えると英断だと思いますが、個人的に好きなキャラだっただけに、何とか出して欲しかったという気持ち。キンブリーに関しては、演じる俳優が忙しすぎるのも理由のひとつな気がする。

エルリック兄弟の師匠であるイズミ・カーティス(演:遼河はるひ)は、ビジュアルの再限度は高かったですが、キャラとしては厳しい面ばかりが強調されていたように見えたのが何とも。もっと優しい面も見せてほしかったなぁと。ただ、てっきり出てこないもんだと思ってたので、出てくれただけでちょっと嬉しかったです。

“怠惰”ホムンクルススロウスに関しては、コイツだけフルCGになっていて、しかも原作そのままの姿なので、実写との違和感がすごかったです。どうして実写向けにアレンジしないのか…。下手にアレンジして顰蹙買う、てのを恐れて保守的になる(そして余計に失敗する)のも、邦画の悪いところな気がする。

セリム・ブラッドレイこと“傲慢”ホムンクルスプライド(演:寺田心)は、あまりにもそのまんま心くんでした。やはり心くんはホムンクルスなのでは…。

最後のエドウィンリィのイチャイチャ(死語)シーンは、なんというか、ばっさー(本田翼)のあざとかわいさ全開でたまらんかったですね。あれはどんな男でもコロッと落ちるわ…。

 

とまぁ、こんな感じでした。
上映時間2時間強と割と長めとはいえ、わかっちゃいたけどそれでも原作を網羅することなんて出来るはずもなく。それ故に、全体的にテンポが良すぎて全然ピンチな感じがしなかったり、説明不足な点が多々あったり、手放しに褒められた出来ではないと思います。ですが、それなりにうまくまとめていたと思うし、総じてなかなか楽しめる作品になっていたのではないかと。

 

おわりに

1作目は、シリーズを続けていけるかわからないので、ひとつの映画で区切りがつくように原作を大胆に改変した結果、見事に失敗してしまった感がありました。それを受けてか、完結編はなるべく原作に沿うようにストーリーが構成されていて、そのおかげかそこそこ楽しめるようになっておりました。

ただ、敢えてここまで書かないようにしていたのですが、別の意味で魅力を放っていた1作目に対し、完結編はなんというか、当たり障りのない、凡庸な作品になってしまっているように思います。もともと原作のファンだった人が振り返りの為に見る分にはいいかもしれませんが、新規のファンを獲得出来るかと言われると、ちょっと難しいんじゃないかなー、と言わざるを得ない…。

僕の個人的な思いとしては、いっそアレな方向へ突き抜けてくれた方が好きになれたかも。原作に沿った作りにした結果、ある意味で伝説級の作品になった先駆者もいるわけですし。『デビルマン』って言うんですけど。

ともあれ、決して悪いものではないと思いますので、興味のある方(そしてクソ映画にある程度耐性のある方)は、鑑賞してみてはいかがでしょうか。

ということで、映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』の感想でした。

ではまた。

映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』感想(ネタバレ)

映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

2023/01/22:諸々書き直しました。

ドラゴンボール(DRAGON BALL)』は、1984年~1995年にかけて、週刊少年ジャンプにて連載されていた、バトルアクション漫画。

全世界での累計発行部数は2億6000万部を記録している、ジャンプ黄金期の作品の中でもぶっちぎりの人気を誇っていた漫画です。手から発射されるエネルギー波、縦横無尽な空中戦、とてつもないスケールのアクションなど、アラサーの男性で読んでないヤツは日本人じゃねぇ(個人の感覚です)というくらいに、エポックメイキングな作品といえます。

 

連載終了後もアニメやゲームなどが展開され続け、その人気は未だ衰え知らず。

現時点でのTVアニメ最新作が、魔人ブウとの戦いの直後からをオリジナルストーリーで描いた『ドラゴンボール超(スーパー)』。
多元宇宙にまで話が発展し、宇宙を一瞬で消滅させることの出来る全知全能の存在、全王様が登場したりと、マルチバースなんぞ目じゃないほどのスケールでストーリーが展開されました。

2018年には『超(スーパー)』名義での劇場版第1作目、『ドラゴンボール超 ブロリー』が公開。
そして劇場版第2弾となるのが本作、『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』です。
※『神と神』と『復活の「F」』は『超』名義ではないため、ここでは除外しています。

 

もくじ

 

概要

本作は、かつては敵として死闘を繰り広げたものの、現在は最も頼りになる仲間のひとり、ピッコロと、主人公孫悟空の息子である、孫悟飯にスポットを当てた作品になります。

壮大なお話が展開された『超』本編に対し、本作では地球のとある町を舞台とした、割とこじんまりとしたストーリーが展開されるのが特徴。また、従来のような手書きアニメではなく、全編に渡ってCGアニメで制作されているのも大きな特徴となっています。

 

監督は、プリキュアシリーズのEDアニメーションなどを手掛けるアニメーター、児玉徹郎

そして脚本とキャラクターデザインは、『復活の「F」』や『ブロリー』に引き続き、原作者鳥山明が自ら務めています。

キャスト陣は、ピッコロ役の古川登志夫、悟空及び悟飯役の野沢雅子などのおなじみの面々のほか、神谷浩史宮野真守などの若手人気声優が初参加しています。

 

余談:公開延期について

当初、本作は今年の4月に公開される予定でした。しかし、制作会社である東映アニメーションの社内ネットワークに何者かが不正アクセスをしたことが確認され、一部システムが停止された事で、公開が6月に延期される事に。同じく東映アニメーションにて制作されている、『ワンピース』『プリキュア』『ダイの大冒険』など、TVアニメの放送スケジュールにも影響を与えました。

僕は部外者ではありますが、ただでさえコロナ禍とかで制作現場は大変な思いをしてるはずなのに、さらに追い打ちをかけるようなことをするんじゃねぇよ…という思い。

犯人に対する僕の気持ちを代弁した画像がこちら。

さて、前置きはこのくらいにして、感想を書いていきたいと思います。

 

予告編

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あらすじ

かつて、たったひとりの少年によって壊滅させられた、レッドリボン軍
年月が経ち、レッド総帥の息子であるマゼンタ(声:ボルケーノ太田)は、密かに軍の再起を企てていました。

彼が目を付けたのは、軍の科学者だったDr.ゲロの孫である、Dr.ヘド(声:入野自由)。ゲロを超えるほどの天才的な頭脳を持つヘドを言葉巧みにスカウトし、新たな人造人間、ガンマ1号(声:神谷浩史)とガンマ2号(声:宮野真守)を作らせます。

マゼンタの野望に気付いたピッコロ(声:古川登志夫)は、孫悟空(声:野沢雅子)やベジータ(声:堀川りょう)に援軍を頼もうとするも、連絡がつかず。仕方が無いので、今は戦いから離れて久しい孫悟飯(声:野沢雅子)に協力してもらうことに。

果たしてピッコロと悟飯は、新生レッドリボン軍の野望を阻止することが出来るのか――。

というのがあらすじ。

 

本編感想

ジャパニメーションの新たな可能性

上述の通り、本作はプロローグ的なこれまでの戦いを振り返るシーン以外、全編に渡ってCGアニメで制作されています。

CGアニメって、動きに外連味がなかったり、無機質な感じになってしまうイメージがあって、これまであまりいい印象がありませんでした。しかし、本作のアニメーションはCGアニメ特有の滑らかな動きはもちろん、手書きアニメのようなダイナミックさや鳥山作品特有の温かさやポップさのようなものがちゃんとあって、すごく完成度の高いアニメーションになっていると思いました。『ブロリー』の時の超絶手書き作画も最高でしたが、本作のアニメも甲乙つけがたいほどに良かったです。

 

ディズニーなどの世界的企業が手掛けるCGアニメと比較すると、流石に細かな表情や書き込みの緻密さなど、資本力の差のようなものを感じてしまいますが、日本のアニメもまだまだ負けてないぞ、というのを見せてくれたような気がして、喜ばしい限り。アニメ産業は日本が世界に誇れる大事な財産だと思うので、若い才能が根こそぎ海外に持っていかれる前に、待遇を改善するなりしてその文化を守っていって欲しいですね。

 

原点回帰なストーリー

前作『ブロリー』では、ストーリーパートは前半に集約して後半はひたすらずっとバトル、という割り切った作りで、これはこれで最近のDBらしくて最高でした。対して本作では、最初から最後までストーリーが展開していくような作りになっており、なんというか初期のDB的な、まさしくRR軍編のような“摩訶不思議アドベンチャーな感じがしてとても良かったです。

 

ちなみに、本来の主人公である悟空やそのライバルであるベジータは、最初と最後にちょっと出てきますが、本筋には一切関わってきません。魅力的なキャラがたくさんいるので、主役不在でもちゃんと作品として成り立つのがDBのすごいところだよなぁと。なにより、こうした形で強さのインフレを防いでいるのが上手いなーと思いました。…まぁ、過去の劇場版でも度々用いられている手法ではありますが。

あと、ブロリー(声:島田敏)が力を制御するために悟空たちと一緒に修行してたり、レモ(声:杉田智和)やチライ(声:水樹奈々)も再び登場してくれたりと、前作『ブロリー』に登場したキャラが少しだけとはいえまた出てくれたのもありがたかったです。

 

久々の登場、レッドリボン軍

今回、敵として立ちはだかるのは、シリーズ序盤にて敵として暗躍していたレッドリボン(RR)軍。強さのインフレが凄まじいDBの世界ではもはやRR軍なんて敵じゃないような気もしますが、上述のように悟空やベジータといった最強戦力を出さない等、色々と理屈をこねくり回して、しっかりと敵として成立させています。

 

中でも、今回のメインヴィランというべきガンマ1号&2号は、すごくキャラが立っていて良かったです。ピッコロ大魔王、フリーザ、セル、バビディなど、DBに登場する敵キャラは割とちゃんとした悪人が多いなか(魔人ブウはちょっと違う)、ガンマ1号&2号は「自分達の事を正義のヒーローだと思っている(無自覚で悪事に加担している)」という、これまでになかったキャラになっていて、非常に新鮮でした。そして声優もバッチリハマってましたね。

冷静沈着な1号と、お調子者の2号、というキャラクターも、某バッタの改造人間を彷彿とさせて良かったです。そーいや衣装は同じ原作者の某サイボーグみたいでしたね。もしかして意識してる…?

 

優しい親戚、ピッコロさん

僕はDBに登場するキャラの中で最も好きなのがピッコロさんなので、本作で主役として扱われるのが非常に嬉しかったです。スマホの操作に悪戦苦闘しながら電話をかけたり、変装して潜入するなど、これまでにないピッコロさんの姿が見れたのもとても良かったですね。ビーデルさんにお願いされてパンちゃんの送り迎えをしてあげるなど、すっかり親戚のおじさんみたいになってるピッコロさんにホッコリしました。

強さに上限の無いサイヤ人と比べるとどうしても戦闘力で劣ってしまうピッコロさんですが、ナメック星の最長老のような潜在能力開放がドラゴンボールでも出来ることがわかり、秘められた強さを解放してもらいます。ドラゴンボールのアップグレードってそんな気軽に出来るのか…とちょっと思ってしまいましたが、理由付けしようという心意気は評価したい。神龍が「ちょっとオマケしときました」と言ってたのは、てっきり体の色がちょっと黄色っぽくなるという見た目の変化の事だと思って見てたら、終盤であんなことになるとは…。

 

設定ブレブレな悟飯くん

潜在能力は作中No.1だけど、優しい性格で戦いを好まない悟飯くんも、個人的に大好きなキャラクターです。でも、『超』での悟飯くんはすごく強さにブレがあって、良くわからんキャラになっている印象があります。

シリーズ序盤では、戦いから離れて修行も全くしていなかったため、復活したフリーザに手も足も出ないほどに衰えていました。その後、自分の非力を痛感した悟飯くんはピッコロさんに修行をつけてもらい、本来の力を取り戻します。確かこの時、「あんまり弱くならないように鍛錬を怠らないようにします」みたいなことを言っていた気がするのですが、本作ではまた修行そっちのけで学業に力を入れており、『超』序盤くらいの強さに戻ってしまっているように見えました。あの時の発言は一体…。

これに関しては、本作の脚本は鳥山さんが書いているので、鳥山さんがほとんど関わっていないアニメ版ではなく、割とガッツリと監修している漫画版『超』の方に準じているのではないか、とどなたかが言っていて、なるほどなーと思いました。確かに漫画版では悟飯くんの掘り下げはアニメほどしっかりしておらず、“力の大会”に向けてピッコロさんと修行をした際にも、「本来の強さを取り戻す」というよりかは「連携を強化する」方向で鍛えていたようですしね。

 

とまぁそんな感じで、また弱くなってしまった悟飯くん。
ピッコロさんのパンチをよけきれなかったり、パンちゃんが一瞬で見抜いたピッコロさんの変装に全く気付けなかったりと、しっかりと弱体化している姿が描かれていました。そしてそこから、ノーマル→超サイヤ人超サイヤ人2→アルティメットと、本来の強さを取り戻していく過程を上手いこと視覚化していたのも、非常に面白かったです。

ただ、アルティメットを変身形態のひとつとして扱っていたのにはちょっとモヤっとしました。あれは潜在能力を極限まで引き出されて「変身する必要が無い」状態な訳で、だからそもそも超サイヤ人になる必要もないはずなんだよなぁ、という…
…おっと、またメンドクサイオタクが出てきてしまった、イカイカン。

 

ずっと可愛いパンちゃん

悟飯くんの娘、パン(声:皆川純子)。『神と神』のときはまだビーデルさんのお腹の中でしたが、本作では3歳になり、幼稚園に通っています。

このパンちゃんが、もーとにかくずっと可愛いんですよ。修行中のピッコロさんに水を差し入れしてあげる場面では、「ピッコロさんが水しか必要としないのをちゃんとわかってるんだな…なんて聡明かついい子なんだ…」と思ったし、RR軍に誘拐されたフリをする作戦にもノリノリで協力してくれるとこでは、「なんて物分かりのいい素直な子なんだ…」ってなったし、終始可愛さが爆発しておりました。こんな可愛い子が娘だったら、そりゃ悟飯くんも命懸けで大切にするよなぁ。

 

最後は大怪獣バトル

最後の最後に出てくる、あのキャラ
巨大な体躯に凄まじいパワー、モロに『シン・ゴジラ』な全身から発射されるレーザーと、ラスボスらしい大暴れっぷりでしたね。喋る事は無くひたすら叫んでるだけでしたが、ちゃんと声優はあの人なのもありがたい。もう結構な御年だろうけど、喉大丈夫かな…。

巨大化したピッコロさんとのバトルは、ひたすらピッコロさんがボコボコにされるだけとはいえ、さながら大怪獣バトルのようで見応えがありました。これまで宇宙規模の壮大過ぎるバトルの数々を見せてくれましたが、こうした巨体 vs 巨体な戦いって意外とDBでは無かったと思うので、逆に新しくて良かったと思います。

 

クライマックスでは、ボコられて白目を剥くピッコロさんを見て“プッツン”きちまった悟飯くんが、セル編のような演出で覚醒、新たな姿へと進化します。悟空の「身勝手の極意」やベジータの「我儘の極意」とは違う、悟飯くん独自の進化、という点では好感が持てます。ただ、あの姿はなんというか、海外ファンの二次創作である『ドラゴンボールAF』みたいだな…と思ってしまいました。個人的には要らなかったかな…。

キメ技があの技なのとか、「こっそり練習してました」の言葉にニヤけが止まらないピッコロさんとかは…最高でしたよ、えぇ(満面の笑み)

 

おわりに

そんな感じで、非常に楽しい映画でした。
DBを読んだことが無い、という方でも気軽に見れる作品になっていると思いますし、これからも語り継がれていくであろう往年の名作、それに触れるきっかけとして、本作はふさわしいものになっていると思いました。
…つまりアレだ、日本男児は全員見ろ!!(暴論)

ということで、映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』の感想でした。

ではまた。

映画『トップガン マーヴェリック』感想(ネタバレ)

映画『トップガン マーヴェリック』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

前作『トップガン』が公開されたのは、1986年

アメリカ海軍の戦闘機パイロット達の活躍を描いたその映画は、年間興行成績第1位を獲得し、主演のトム・クルーズはこの映画で一躍トップスターの仲間入りを果たしました。

主題歌の『Danger Zone』も、聞いたことない人はいないんじゃないかというくらいに有名ですよね。

Danger Zone

Danger Zone

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そんな『トップガン』、実に36年ぶりに続編が公開される事となりました。
それが本作、『トップガン マーヴェリック』です。

現実と同じくらいの時間が経過したアメリカを舞台に、歴戦の勇士となった主人公が、かつて訓練を積んだトップガンの教官を務める、といったお話となっています。前作と同様、アメリカ海軍の協力のもと、本物の空母や戦闘機を使用して撮影が行われました。

本来は2019年に公開される予定でしたが、コロナ禍やその他諸々によって、度重なる公開延期がされる事に。それでも、主演でありプロデューサーも務めるトムが劇場公開にこだわったとかで、配信オンリーとはならずに、今年ようやく映画館にて公開となりました。「映画館の大きなスクリーンで見せるために作ったんだから、絶対に映画館で上映したい」との思いからだそうですが、それを貫けるのがすごい。大の映画好きでも知られるトムらしいというかなんというか。

 

↓予告編はこちら。

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僕は前作を見ておらず、本作も当初見る予定はありませんでした。

しかし、予告編とか見てると面白そうだなーと思ってきて、世間の評判も非常に良いみたいなのでどんどん気になってきて、直前に前作を見たうえで本作の鑑賞に臨みました。

 

前作を見た率直な感想としては、ノーヘルでバイク乗り回したり、飲み屋でバカ騒ぎしたりナンパしたり、唐突にビーチバレー始めたりして、なんか陽キャが学生ノリでウェーイしてる映画だなー、という印象。陰キャの僕には縁遠い世界だなーと。

とはいえ、選ばれた精鋭たち、その中で結果を出していく主人公、そこで出会った女性とのロマンス、親友を死なせてしまったことによる挫折、そこからの立ち直り、大ピンチの状況からの大逆転…
といった、今となっては王道ともいえるパターンを見事に描いていて、非常に面白い映画だったのは事実。あとアマプラで見たんですが、音質がやたらよくて、戦闘機の飛行音とかが大迫力だったのがすごい良かったです。おかげで、「こりゃ続編も映画館の音響で見た方が絶対いいな」という気持ちが芽生え、モチベが大幅アップしました。

といったところで、本作の感想を書いていきたいと思います。

 

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アメリカ海軍のピート・“マーヴェリック”・ミッチェル大佐(演:トム・クルーズ)は、かつて空中戦にて3機の敵機を撃破した、伝説のパイロット。これは過去40年間破られたことの無い記録なんだとか。
他にも数えきれないほどの勲章を受勲しているにもかかわらず、パイロットであることにこだわる彼は昇進を断り続け、今も大佐の地位にとどまっていました。

現在、極超音速テスト機“ダークスター”のテストパイロットを務めている彼は、前人未到のマッハ10での飛行を見事に成功させるも、欲を出して更に速度を出そうとした結果、限界を超えた機体は空中分解してしまいます。

どうにか生還したマーヴェリックでしたが、最新鋭機を鉄くずにしてしまった事から、永久に飛行禁止を言い渡されてもおかしくない状況に。しかし、かつてトップの座を争った、現在は太平洋艦隊司令官である、トム・“アイスマン”・カザンスキー大将(演:ヴァル・キルマー)の強い要望により、ノースアイランド海軍航空基地にてトップガンの教官を務めるよう命じられます。

彼が教官を任じられたのは、ある極秘任務を成功に導くためでした。
その内容は、どこかのならず者国家がとある場所で濃縮ウランプラントを建設しているらしく、それが稼働する前に破壊する、というもの。ミッション成功のためにトップガンを更に鍛え、任務を遂行する人員を選抜する、というのがマーヴェリックに与えられた役割でした。

アイスマンの頼みという事で、渋々ながらもその命に応じたマーヴェリック。
しかし、いかに精鋭揃いといっても最難関のミッションから生還出来るだけの練度にはなかなか至らず、更に参加するパイロットの中には、亡き相棒の息子であるブラッドリー・“ルースター”・ブラッドショウ大尉(マイルズ・テラー)がいたりと、一筋縄ではいかない様子。

果たしてマーヴェリックたちは、ミッションを成功させ、生きて帰ってくることが出来るのか――。

というのがあらすじ。

 

まず率直に、やはり映画館で見て大正解でした。
僕はIMAX上映にて鑑賞したんですが、体にビリビリ響くほどの飛行音の迫力は格別でした。これだけでも映画館で見る価値は大いにあると思います。

それと、前作を直前に見たのも大正解でした。
本作は前作へのリスペクトに溢れていて、オマージュしたようなシーンが至る所にあって、そのたびに「おぉっ!このシーンは!」みたいな反応が出来て楽しかったです。というか、オープニングでの『Danger Zone』が流れる中の戦闘機発進シーンをはじめ、映画全体を通して前作をそのまま現代に置き換えたような作りになっていて、めっちゃ心が震えました。当時熱狂した人は、オープニングだけでご飯何杯いけるんだってくらい(?)に感動するんじゃないでしょうか。

それでいて、前作では「なんでいきなりビーチバレー?」とか、「そもそもトップガンが訓練してんのって何のため?」みたいな、目的がいまいちよくわからなかった、映画として見せるためだけに存在するようなところも、
「成功不可能と思われる任務を成功させるために訓練する」
「チームの結束を深めるためにみんなでアメフトをやる、しかも実際の空中戦と同じように攻守入り乱れる変則ルールで」
といった感じでしっかりフォローがされていて、すごく映画として見やすくなっていると感じました。まぁ、なんでビーチで裸でやるのかは知らんけど。

トムが当時と変わらぬハンサムさに渋みを更に足したようなビジュアルなのも最高。ただ、見た目が若すぎてトムだけ時間が止まってんのか?と錯覚しそうになります。アイスマン等の前作に登場した人物も出てきますが、その人達がしっかりと年月を重ねているのに対し、トムだけがあまりにも若々しいのがもはや違和感すら感じます(笑)

あとは何といっても、こだわりぬいた戦闘機の飛行シーンは圧巻の素晴らしさ。
CGは一切使わず実際に戦闘機を飛ばして撮影されているほか、コクピットを映すシーンではちゃんと飛んでいる戦闘機に俳優が乗り込んで、そこでセリフを言っているんだとか。まずはGに耐える訓練をしなきゃならないとか、俳優さんたちは大変だったろうな…。しかもトムは自分のだけでなく各俳優のトレーニングメニューの調整とかも自身でやっていたそうで、並々ならぬ思いを感じます。でもそのおかげで、画面から伝わる臨場感や迫力は凄まじいものがありました。

最後もわざわざあの機体に乗る展開を用意するとか、本当にファンサービスの行き届いた映画だなぁ、と思いました。

 

そんな感じで、評価の高さも頷ける、非常に満足度の高い作品になっていました。
「これぞ“映画”だ!」と思えるエンターテインメント作品だと思いますので、なるべく大きい画面、なるべく良い音響で鑑賞することをオススメします。

という事で、映画『トップガン マーヴェリック』の感想でした。

ではまた。

ドラマ『マイファミリー』感想(ネタバレ)

TVドラマ『マイファミリー』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

毎週見るのが億劫なので普段あまりTVドラマは見ないのですが、主軸であるはずの誘拐事件が3話で早々に解決すると知り、その後の展開が気になって見始めたら面白くて止まらなくなってしまい、結局全話見てしまった『マイファミリー』。

最終話を見た勢いで、超簡潔に感想を残しておきます。

 

親子。
夫婦。
親戚。
ご近所さん。
イチから設立して育ててきた会社。
苦楽を共にした同僚。
提携関係を結んだ他社。
同じ組織の人間。
被害者と犯人という、運命共同体

いろんな角度から“ファミリー”を強調して描いているのが印象的でした。

 

真犯人の正体は、何というか突飛すぎて意外性だけを追い求めただけみたいに見えてしまったのがちょっと残念。(日本のドラマってそういうところがある気がする。)
ただ、「家族にバレるのが怖かった」という動機は、事件を通して家族との結束を深めた主人公サイドとの対比になっていて、そのしょーもない理由も含め面白いなぁと思いました。

最後の東堂の拘置所のシーン、元奥さんと再会して最初の質問が「娘と会えたか?」で、元奥さんもボロボロ泣きながら頷いてましたが、どう考えても嘘で、東堂もどう考えてもそれに気づいてるのに何も言わないの、切なすぎてこっちもボロ泣きですよ…。せめてその後の人生に少しでも幸せがあって欲しい。

 

↓Uruさんの歌う主題歌。MVがまた泣ける…。

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そんな感じでした。

ではまた。

早や1年

当ブログを始めて、1年が経過しました。

いやー…早い、早すぎる。
キングクリムゾンに時間を消し飛ばされているのかと錯覚しそうになります。

blacksun.hateblo.jp

これまでに投稿した記事は、合計38本

単純計算で、月に1本ないし2本はアップ出来ている事になります。毎日のように記事を上げている方々には遠く及びませんが、我ながらいいペースではないかと。今年1発目の記事でも書きましたが、「ブログを書くために映画を見る」なんて本末転倒ですし、今後もマイペースで記事を上げていければと思っております。

自分は本当に飽きっぽい性格なのですが、それでも映画に関しては、思い返せば学生時代から結構見てたりするんですよね。未だに「映画鑑賞が趣味です!」なんて声高らかに言うにはあまりにもおこがましいですけども、よく考えてみれば僕の中で特撮に次ぐくらいに息の長い趣味なんだなーと。ゲームみたいに操作をしたり、模型作りみたいに作業したりしない、基本ただ見てるだけ、という気軽さのおかげな気がします。

 

備忘録として始めた当ブログですが、目に留めていただいた方に少しでも面白いと思っていただけるよう、いろいろと試行錯誤しながら書いています。

最近は、

  1. 前置きを書く
  2. あらすじを書く
  3. 感想を書いていく
  4. 締める

みたいな書き方を意識しています。

何を当たり前のことを、とお思いかもしれませんが、ブログの書き方とか何も調べずやっていますので、どうぞご容赦ください…。だらだらと大して意味の無いことを無駄に長ったらしく書いてしまうのが悪い癖なので、もっと端的に文章をまとめる能力が欲しいものです。
あと語彙力ね。自分が面白いと感じたその思いががちゃんと伝わるように言語化する、というのがいかに難しい事かを痛感しています。

頻繁に自分の書いた記事を読み返しては、おかしなところを修正したり書き直したりしているので、以前お読みいただいた記事も再度チェックしてみると、少しはマシな文章になっているかもしれません。直近だと、『THE BATMAN』の記事がなんとなくすごく気に入らなかったので、ほぼ丸ごと書き直しました。初期の記事も全部書き直していきたい思いもありますが、めんどくさいが現状勝っている状態です。たぶん今後もしないかな…。

 

そーいやブログを始めてから、以前よりもより一層映画というものを楽しめるようになってきたような気がします。おかげで映画館へ行く頻度も増えました。ここが楽しかったとか、ここは微妙だったとか、そうした思いが文章に書くことによって頭の中でハッキリするからなのかなーと思うので、良い相乗効果が生まれているように思います。
…ってコレも新年の記事で同じような事言ってるし。ひねりが無いなぁ…。

個人的にブログ始めて良かったなと思う点が、作品のあらすじであったり、それを見たときの自分の感じた思いなんかが、文章に起こしてる中で頭の中で整理されて、そう簡単に忘れなくなったこと。むかーしに見たような覚えはあるんだけど、内容全然覚えてない映画とか山ほどありますしね…。備忘録として始めたブログなので、その役割を予想以上に果たしてくれています。

明けまして2022 - GORGOM NO SHIWAZAKA

 

ともあれ、自分が好きな事をちゃんと楽しむことが出来るって、実はすごく恵まれているんだよなーと。本当にありがたい。これからも、僕が僕らしくあるために、好きなものは好きと言える気持ちを抱きしめていたいですね。

どんなときも。

どんなときも。

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ということで、今後とも当ブログをよろしくお願いいたします。

ではまた。

映画『THE BATMAN -ザ・バットマン-』感想(ネタバレ)

映画『THE BATMAN -ザ・バットマン-』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

2022/06/07:全体的に気にくわなかったので、ごっそり書き直しました。

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DCコミックを原作とした実写映画のシネマティック・ユニバース、それが『DC・エクステンデッド・ユニバース(DCEU)』。

マーベルのMCUに対抗?便乗?するようにして始まったこのユニバースですが、当初は「暗すぎる」だのなんだのと、評価は芳しくありませんでした。
そこで配給元のワーナー・ブラザースは、製作途中の作品に対し「もっと明るい作風にしろ」とテコ入れを実施。具体的にどの作品が、といった詳細は不明ですが、『スーサイド・スクワッド』と『ジャスティス・リーグ』辺りはその影響をモロに受けている気がします。
しかし、作りかけの作品のテイストを無理矢理捻じ曲げたところで違和感しか出ない事は明らかで、結果的により一層評価を落としてしまいます。更なる方針転換を余儀なくされ、ここ最近は世界観を共有すること(クロスオーバー)にこだわらず、ひとつひとつの作品の完成度を重視する方針となり、それが功を奏してかだんだんと持ち直している印象。

そーいやDCEUって呼び方、公式が付けた訳ではなくてファンが愛称的に呼んでるだけだと思ってましたが、本作のパンフに普通にDCEUって書かれてたので、あれ、いつの間に公認の呼び方になったんだ…?と思いました。

ジャスティス・リーグ』は『ザック・スナイダーカット』の方の感想を書いておりますので、ご参考までに。

blacksun.hateblo.jp

そんなDCコミックに登場するヒーローの中でも特に人気の高いキャラクターである、バットマン
特別な能力を持たない普通の人間であるものの、コウモリを模したマスクやマントで闇に溶け込み、鍛え上げた肉体と様々なガジェットを用いて犯罪者に立ち向かう、クライムファイターです。また、その優れた頭脳や洞察力から、探偵としても超一流だったりします。

そんなバットマンを題材にした映画は、これまで数多く製作されています。
古くは1943年(なんと約80年前…)の短編連続活劇から始まり、ティム・バートン版、クリストファー・ノーラン監督のダークナイト3部作、そしてザック・スナイダー監督のDCEU版など、他に類を見ないほどリブートを繰り返している、大人気のヒーローです。

かくいう僕も、バットマンは全てのアメコミヒーローの中で最も好きなキャラクターで、特にダークナイト3部作はBlu-ray Boxを衝動買いするくらい大好き(ただ『ライジング』に関しては思うところもある)。ゲームでも、アーカムシリーズは寝る間を惜しむほどにハマっていました。「最高のキャラゲー」と言われるほどの超名作なので、興味があればぜひプレイしていただきたいです。適当に街をぶらついてチンピラをボコるだけでも滅茶苦茶楽しいです(笑)

本作もタイトルの通りバットマンを題材とした作品ですが、2019年公開の『JOKER ジョーカー』と同様、現在展開中のDCEUの本流とは切り離された、独立した作品となります。なので、アメコミ映画ってどれ見ていいのかわからない、という方でも気兼ねなく見れる作品になっているかと思います。
特徴としては、アメコミ大作映画史上一番といってもいいくらいに、陰鬱でダークな世界観。バットマンにはやっぱりこういう作風が最も似合う。ワーナーに「もっと明るくしろ」とか言われなくて本当に良かった。

↓予告編はこちら。

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本作の制作過程についてちょっと言及しますと、本来、DCEU版でバットマンを演じたベン・アフレックが主演・監督・脚本を務め、DCEUの各作品と連なる世界観で単体映画が製作される予定でした。しかし、2016年の『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』、2017年の『ジャスティス・リーグ』の相次ぐ不評を受け、気落ちしたベンアフは降板。代わりとして、マット・リーヴスが監督に、ロバート・パティンソンバットマン役に選ばれ、これまでの世界観とは一旦切り離してリブートさせることとなり、そうして製作されたのが本作、といった流れになります。ベンアフバッツはキャリア20年以上のベテランでしたが、本作のバッツは活動を始めてまだ2年目の、若かりし頃の姿が描かれています。

個人的には、ゴリゴリマッチョなベンアフバッツのビジュアルは非常に好みだったので、もう見れないのかと思うと残念。ただ、同じDCヒーローであるフラッシュの単体映画で、ティム・バートン版でバッツを演じたマイケル・キートンと共に出演予定らしいので、ものすごく期待しています。でも、フラッシュ役のエズラ・ミラーが暴行事件起こしたりしてて、今後どうなるかがわからないので不安…。まさか公開中止になんてならないよね…?(今のところちゃんと公開する予定らしいけども)

 

本作の監督を務めるマット・リーヴスは、『クローバーフィールド』シリーズや『猿の惑星(最近やってた方)』シリーズの監督を務めたお方。また、1995年公開のティーブン・セガール主演映画、『暴走特急』の脚本も書いていたと知って驚き。僕がこよなく愛するセガール映画に携わっていたとなれば、期待せずにはいられない。まぁ、セガール映画は脚本とかあって無いようなもんだけど…。

今回、主人公ブルース・ウェインバットマンを演じるのは、ロバート・パティンソン
ハリー・ポッターと炎のゴブレット』にて、魔法学校対抗試合でハリーと優勝争いをして例のあの人に殺されてしまう人、セドリック・ディゴリーを演じ、『トワイライト・サーガ』で一躍注目を集め、ノーラン監督作の『TENNET テネット』では、主人公をサポートする影の主人公というべきニールを演じた、スターダムを現在進行形で駆け上がっている俳優さんです。
見る前はあんなハンサムな好青年ではブルース役は合わないんじゃないかと思っていましたが、全くもって杞憂でした。いざ見てみると、いつ寝てるんだ…?と思うような疲れきった見た目と、心に闇を抱えたブルースの姿を見事に体現していましたね。普段は社交的なプレイボーイだけど、ひとたび仮面を被れば寡黙で謎めいた闇の騎士、というのがこれまでのブルース/バットマンのキャラクターだった気がしますが、本作では昼でも滅多に表舞台に現れない、半ば引きこもりのようなキャラクターになっています。

本作のメインヴィラン(敵役)である、リドラー
バットマンの原作コミックに登場するヴィランの中でも非常に有名なキャラのひとりで、1995年公開の『バットマン フォーエバ』でも、ジム・キャリー演じるリドラーが登場しています。全身緑タイツの変態ハイテンションリドラーは、未だに脳裏に焼き付いています(笑)
今回リドラーを演じるのは、『スイス・アーミー・マン』などに出演している、ポール・ダノ
オタクっぽい見た目に、狂気丸出しの目力。ゴッサム、ひいては現代社会の闇を体現したような、謎めいた猟奇殺人鬼といったキャラクターになっていました。1960-70年代に実際に起こった劇場型犯罪ゾディアック事件が、今回のリドラーのキャラクター作りのベースになっているんだとか。

バットマンのパートナーともヴィランともいえる、セリーナ・カイルキャットウーマン
1992年公開の『バットマン リターンズ』でも、ミシェル・ファイファー演じるキャットウーマンが登場しています。また、2004年にはハル・ベリー主演で単体映画も公開されました(結果は大爆死でしたが…)。2012年の『ダークナイト ライジン』ではアン・ハサウェイが演じていたりと、こちらも屈指の人気を誇るキャラクターです。
今回そんなセリーナを演じるのは、ゾーイ・クラヴィッツ
個人的に、今までで最も原作のイメージに近いビジュアルの俳優さんだと思いました。彼女は2017年公開の『レゴバットマン ザ・ムービー』でも、キャットウーマンの声を演じていたんだとか。早く見なければ…。
本作におけるセリーナは、生活のために渋々ナイトクラブで働いていたり、陰でよく泣いていたりと、まだ狡猾さというか世渡り上手な感じはあまり無かったですね。また、ルームメイトのアニカ・コスロフ(演:ハナ・ハルジック)と共に生活しており、劇中で明言はされていませんが、今回のセリーナは同性愛者(レズビアン)なんだそうです。
ちなみに、劇中で“キャットウーマン”という呼称は一切出てきません。全身黒づくめのスーツだったり、目出し帽をかぶった時に帽子の形状から猫耳っぽい感じになったり、家に猫がたくさんいたり、そういった要素からキャットウーマンであることがわかるようになっています。

原作コミックで非常に有名なヴィランからもうひとり、オズワルド・“オズ”・コブルポットペンギンも登場します。
バットマン リターンズ』ではダニー・デヴィートが演じており、非常に個性的で魅力的なキャラクターとなっておりました。僕も映画の内容はほとんど覚えてないのに、ペンギンのビジュアルはなんか覚えているくらい、インパクトのある見た目だったような気がします。
本作では、コリン・ファレルがペンギンを演じています。
…が、特殊メイクが凄すぎて誰だかわからない…(いい意味で)。コリン・ファレルが演じる意味あるのか?と思うくらいに別人でした。
キャラとしてはまだ“犯罪の王者”でもなんでもなく、裏社会のドンであるカーマイン・ファルコーネ(演:ジョン・タトゥーロ)の腰巾着、といった感じでした。このペンギンを主役としたスピンオフドラマも計画されているようで、そこで犯罪の王者に上り詰めていく過程が描かれるんでしょうね。どこで配信されるのかはわかりませんが楽しみ。

ウェイン家の執事であり、ブルース/バットマンを献身的にサポートする、ルフレッド・ペニーワース
リドラーが出した暗号を一緒に解いたりして、めっちゃ頼りになります。
これまで様々な俳優が彼を演じてきましたが、本作では『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでゴラムモーションキャプチャーを担当した、アンディ・サーキスがアルフレッドを演じています。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』や『ブラック・パンサー』でヴィランであるユリシーズ・クロウを演じていた事もあって、最初見たとき「なんか悪そうな顔したアルフレッドだな…」と思ってしまいました。まぁすぐにそんな思いは吹き飛びましたが。

バットマンの心強い味方である、ゴッサム市警のジェームス・ゴードン警部補。
本作ではまだバットマンの存在は警察内でもイカレたコスプレ野郎”としか認識されていない中、事件現場に入れたり捜査資料を見せたりと、既にだいぶ信頼している様子。
演じるのは、ダニエル・クレイグ版『007』シリーズでフェリックス・ライターを演じた、ジェフリー・ライト
決して悪事に手を染めない、正しい倫理観を失わないキャラクターを、渋さ満点に演じています。個人的にフェリックス・ライターがとても好きだったので、ジェフリー・ライトは今後も応援していきたい。

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さて、キャラ紹介はこの辺にして、本編の感想に参りたいと思います。

 

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始まりは、ハロウィーンの夜。
ゴッサム・シティの市長であるドン・ミッチェルJr.(演:ルパート・ペンリー=ジョーンズ)が、何者かに殺害されるところから始まります。

現場に駆けつけるゴッサム市警のジェームス・ゴードン警部補(演:ジェフリー・ライト)。その後ろにいるのは、全身漆黒のスーツに身を包んだ、謎の男。警官に「部外者は立ち入り禁止だ」と制止されるも、ゴードンの権限で現場を見て回るその姿を見て、警官たちは「イカれてる」と愚痴をこぼします。

死体の顔はガムテープでぐるぐる巻きにされ、上から血の様なもので「嘘はもうたくさんだ」とのメッセージが書かれています。更に、現場には「バットマンへ」と書かれた便箋が残されており、中を見ると犯人からと思われる“なぞなぞ”が。犯人は自身をリドラーと名乗り、SNSに犯行声明やヒントを投稿したりと、まるでゲームを楽しむかのように、犯罪を繰り返します。

なぞなぞの答えが犯人の手掛かりとなる事に気付いたブルース・ウェインバットマン(演:ロバート・パティンソン)は、謎を解きながら犯人を追っていく――。

というのがあらすじ。

 

率直な感想としては、ザ・最高!ただ長い…(約3時間)。
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』及び『エンドゲーム』(どちらも約3時間)を経験しているほか、『ザック・スナイダーカット』(4時間超)を一気見した僕は飽きることなく見ることが出来ましたが、訓練されたアメコミファン以外はこの上映時間は厳しいのでは…?『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(約2時間半)の時も、「トイレを我慢するのが大変だった」という声が続出してましたし。

 

とまぁそんな事はどうでもよくて、本作はブルース/バットマンの内面をしっかりと描いているのが特徴的だと思いました。

序盤のバッツは、倒れたチンピラにまで容赦なくパンチを浴びせる残忍さや、「俺は“復讐”だ」の言葉からもわかる通り、まだ“正義の味方”をやる気はさらさら無いんですよね。どこぞの小悪党に両親を殺害された恨みから、ただその矛先を悪党どもに向けているだけ。これまでのバッツとは一味も二味も違うぞと思わせてくれて、非常に好印象でした。

中盤では、“善良な市民”だと信じていた父、トーマス・ウェイン(演:ルーク・ロバーツ)が、市長選に当選するために邪魔になるものを排除しようとしていた事を聞かされ、ショックを受けます。更に、アルフレッドが自分の代わりにリドラーの爆弾によって重傷を負ってしまい、バットマンとしての行動原理が揺らいでしまいます。この辺りは、見ているこちらもつらい気持ちになる場面でした。

終盤のバッツは遂に、瓦礫に塞がれて身動きが取れず助けを求める人たちに対し、手を差し伸べます。これまではバッツもリドラーも、捕まえたリドラーのフォロワーがつぶやいた「俺は“復讐”だ」の言葉の通り、標的が異なるだけでやっていることは全く同じでした。バッツは犯罪者を捕まえることで、リドラーは不正を暴くことで「この街を良くしていきたい」という、根幹にある思いも共通していたように思います。しかし、ここでバットマンは人々を助ける道を選び、目論見が失敗に終わったリドラーは自分勝手に泣き叫ぶ、といった風に、二人の道は完全に分かれる事となります。“覚悟”の大きさがこの決定的な違いを生み出しているのかなーとか思ってみたり。このクライマックスにはカタルシスの様なものを感じて、気付いたら涙が…(泣)

こんな感じで、バットマンとなって日が浅い、まだメンタルが安定していない頃のブルースの心情の移り変わりを、上手く表現していたように思います。

 

そうしたヒーローとしてのバットマンの誕生を描いているだけでなく、原作コミックで描かれているような、探偵としてのバットマンの側面を描いているのも、本作の特徴かと。

犯行現場をくまなく見て回り、手掛かりを探し、暗号を解き、犯人=リドラーに迫っていく行程を丁寧に描いており、意外とこれまでのバットマン映画ではあまり無かった描写だったので、なんだか新鮮でした。ただ、暗号の解き方とかさっぱりわかんなかったし、僕らはただ彼らが謎を解いているところを見ているだけだったので、推理ものとして満足いくかと言われると、そこまでではないかな…。コナンの劇場版を見ているような感覚、とでも言いますか。

 

続いて、舞台となるゴッサム・シティについて。
本作のゴッサムは、これまでのバットマン映画の中でも特に腐敗しきっている様が描かれているのが印象的でした。殺人のターゲットになるのは決まって汚職やドラッグなどにまみれた人物で、更にそれが市長だったり警察署長だったり地方検事だったりと、そうした腐敗がいかに街の根深いところまで蔓延しているのかがわかります。

リドラーが出題したなぞなぞを解くと、その人らの裏の顔が世間に暴露される仕組みとなっているのがまた面白かったです。その暴露の仕方も、USBにウイルス仕込んで、ファイルを開くと勝手に中身をいろんなところにメールで送信するようにしていたりと(しかもゴードンのアカウントで)、ネットを有効活用しているところも、非常に現代的で良かったなぁと。

 

メインヴィランであるリドラーについて、少しだけ。
後半、リドラーは意外なほどあっけなく捕まります。もちろん、全て計算ずくなわけですが。
彼は元々孤児だったことがわかり、貧富の格差という現代社会における問題にも切り込んでいるのも良かったですね。
ものすごく頭は切れるものの、性格は非常に身勝手で、自信過剰。街の権力者たちの不正を暴くことで街を良くしたいという考えはあれど、それも自己顕示欲を満たすための方便に過ぎないように思えました。なんというか、匿名である事をいい事にイキリ散らかすネット住民みたいだな、と。

ちなみにリドラーの正体、エドワード・ナッシュトンは、原作では本名はエドワード・ニグマじゃなかったっけ?と思ったんですが、元々ナッシュトンだったのをニグマに改名した、という設定に最近なったんだとか。捕まった時に身分証が2つあって、「どっちが本物だ!?」「さぁ、どっちだろうね?教えてくれよ」というやり取りがあって、一瞬でよく見えませんでしたが、もしかしてナッシュトンとニグマの身分証だったのかも。

 

アクションシーンに関しても、最高なシーンの連続でした。
特に、新バットモービルお披露目からの、ペンギンの乗る車とのカーチェイスシーンは、鳥肌立ちっぱなしの大迫力。アメリカンマッスルカーをベースにしたかのようなバットモービルのデザインも、個人的にツボでした。これまでの映画に出てきた、普通の車とはかけ離れたデザインのモービルもいいですが、一見普通の車っぽいけど後ろのエンジンを始め中身はえげつない今回のモービルもまた最高。

それから、ファルコーネのアジトに乗り込むときの、暗闇の中マズルフラッシュの光でチカチカしながら戦うシーンとか、あまりのカッコよさに失神寸前でした。断片的にしか見えないのに、バッツが銃弾を弾きながらズンズン進んでいくのがちゃんとわかるのがスゴイ。ここでもブルースの“覚悟”の大きさが伝わってくるような気がしました。

 

最後、リドラーの謀略を見事に打ち砕き、自分がこの街を変えていくと決意を新たにしたバットマンと、自由に広い世界へ飛び出していくことを決めたセリーナが、バイクで別々の方角へ走り去っていくシーンで、映画は幕を閉じます。進む道は違えど、思いは同じである事を想起させる、希望に溢れたラストだったと思います。

 

ミッドクレジットでは、相変わらず泣きわめいているリドラーに、近くの独房から何者かが声をかけてくるシーンが流れます。ジョークを交えた口調、そして狂気を帯びた高笑い。正体は謎のままでしたが、バットマンの宿敵であるあの男であることは明らか。

ちなみにこの謎の男、『エターナルズ』のドルイグ役で出演したバリー・コーガンが演じてるんですね。ほぼ口元しか映んなかったし、全然気付かなかった…。今後本格的に登場したりするのかしら。うーん、楽しみですなぁ。

 

てな感じで、感想は以上になります。
非常に見ごたえのある、満足度の高い作品になっていると思います。

このバットマンも3部作の予定らしいので、続編も非常に楽しみ。今後も『ザ・フラッシュ』や『アクアマン』続編、『ブラックアダム』、『シャザム!』続編と、DCEU作品が続々公開予定との事で、この調子でDCも盛り返していってくれると嬉しいですね。

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ということで、映画『THE BATMAN -ザ・バットマン-』の感想でした。

ではまた。

映画『犬王』感想(ネタバレ)

映画『犬王』の感想になります。
ネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意ください。

室町時代
日本の伝統芸能である能楽が、猿楽(さるがく)と呼ばれていた時代。
近江猿楽日吉座の大夫であり、猿楽能の名手として当時最も人気のあった実在の人物、それが犬王(いぬおう)です。道阿弥という名でも知られているとか。猿楽師として後世に多大な影響を与えたとされるものの、その作品は一切現存していないという、謎多き人物でもあります。

2017年に、そんな犬王を題材とした、『平家物語 犬王の巻』という小説が発売されました。そしてそれを原作とした映画が、本作『犬王』となります。

 

本作も『バブル』と同様、日本のトップクリエイターが集結して製作された作品となります。

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監督は、映画『夜は短し歩けよ乙女』や、TVアニメ『映像研には手を出すな!』などで知られる、湯浅正明
脚本は、ドラマ『アンナチュラ』や『MIU404』などの野木亜紀子
音楽は、朝ドラ『あまちゃん』や映画『花束みたいな恋をした』などの大友良英
キャラクター原案は、『ピンポン』や『鉄コン筋クリート』などを描いている、漫画家の松本大洋

この布陣、僕が大好きな人ばかりなので、本作も絶対見ようと思っていました。

湯浅監督は、『四畳半神話体系』ですっかり心奪われ、TVアニメ『ピンポン THE ANIMATION』の完成度の高さに驚愕し、『夜明け告げるルーのうた』では当時弱り気味だった僕の心に人魚たちの優しさが沁みて大号泣させられるなど、毎度僕の感情を揺さぶってくるお方。『DEVILMAN crybaby』や『日本沈没2020』といったネトフリ配信アニメに関しては見れてないですが、どうなんだろうか…。特に後者は散々な言われようだし…。

脚本の野木さんは、『アンナチュラル』を見てみたらすっかりハマってしまい、それ以降、自分の中で要注目の脚本家になりました。映画『罪の声』では、クライマックスでまんまと号泣させられてしまうというね。『MIU404』も早く見ないとなぁ。

松本大洋氏は、かねてより大好きな漫画家さん。僕が学生時代に卓球部だったことから『ピンポン』を読むようになり、他の作品も全てではないですがちょこちょこ読んでいます。映画『鉄コン筋クリート』に関しては、「好きなアニメ映画って何?」と聞かれたら恐らく真っ先に挙げるというくらいに、大好きな作品です。

そんな方々が作り上げる本作。見ないわけにはいくまい。

 

声優陣には、俳優が多く起用されています。

主人公、犬王の声を務めるのは、ロックバンド女王蜂のボーカルとして活躍している、アヴちゃん(薔薇園アヴ)。
もうひとりの主人公、琵琶法師の友魚(ともな)を演じるのは、俳優やダンサー等で活躍している、森山未來
そのほか、室町幕府第3代将軍、足利義満役に柄本佑、友魚の父役に松重豊、犬王の父役に声優としても人気の高い津田健次郎、などなど。
みんな演技も上手ですし、全く違和感はありませんでした。

 

そんな人たちが携わっている本作は、時代劇でありながら、世界観を大きくアレンジした、なんとも湯浅作品らしい映画となっております。史実とかは豪快に無視しているので、時代劇を期待して見に来た人はもしかすると不満に感じるかもしれません。しかし、カラフルな色使いや、壮大で派手な音楽など、ミュージカル映画(と言っていいのかはわかりませんが)として大変見応えのある作品になっていると思いました。

 

↓予告編はこちら。

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そんなこんなで、感想を書いていきたいと思います。
今回は過去イチ短い感想になるかもしれない。

 

🪕🎵🪕🎵🪕🎵🪕🎵🪕🎵🪕🎵🪕🎵

 

舞台は、室町時代の京の都。
猿楽の一座、比叡座の当主(声:津田健次郎)の家に生まれた犬王(声:アヴちゃん)は、その異形の姿から周囲より疎まれ、瓢箪の面で顔を隠して生活していました。父から忌み嫌われていた犬王は、芸の修行はさせてもらえなかったものの、見様見真似で舞や唄を身に着けていきます。

一方、壇ノ浦の漁師の家に生まれた友魚(声:森山未來)は、三種の神器のひとつである天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)を海底より引き上げるよう依頼を受けた父(声:松重豊)に同行した際、剣から発せられた斬撃?で視力を失い、父は胴体から真っ二つになってしまいました。亡霊となった父と共に京へ向かう道中、琵琶法師の谷一(声:後藤幸浩)と出会い、彼の所属する覚一座へ弟子入りした友魚は、自身も琵琶法師となります。

とある夜に出会った犬王と友魚は、意気投合。
友魚が演奏し、犬王が歌い踊る、その独創的な舞台は民衆から高く支持され、彼らは猿楽師としてどんどん登り詰めていくのでした――。

というのがあらすじ。

 

本作は、時代劇という枠に囚われない、非常に斬新な作品となっています。
犬王や友魚を“ポップスター”としていますが、室町時代の日本にポップなんて言葉があるわけも無く。友魚の演奏は、映像こそ太鼓や和風チェロみたいな楽器でしたが、音はモロにドラムやエレキギターのそれで、曲調は完全にロックでした。犬王の舞もバレエやダンスの動きを取り入れていたりと、見ていて非常に楽しかったです。なので、舞台のシーンに堅苦しさとかは全く無く、さながらフェスを見ているようで、気分が高揚しました(フェスとか行ったことないですが)。『夜明け告げるルーのうた』でも演奏シーンにかなり力を入れていた印象があるし、湯浅さんは音楽とか好きなんでしょうね。

何より、犬王を演じたアヴちゃんの表現力が素晴らしかったです。声優としても非常に上手でしたし、歌唱力が抜群に高くて、最高のキャスティングでした。初日舞台挨拶で「(この作品を通して)自分の中に新しい人格が生まれた気がする」と言っていたそうですし、バンドでも『犬姫』という曲をリリースするなど、アヴちゃん自身も大きく影響を受けている事が窺えます。

natalie.mu

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僕は本作をとても素晴らしい作品だと思っているんですが、いざどこがどう良かったとかを言葉にしようにも、なかなか難しいんですよね…。雰囲気というか、インスピレーションというか、感覚的なもので楽しむタイプの作品なのではないかと。疾走感にステータス全振りした『マインド・ゲーム』をはじめ、湯浅作品って割とそういう作品が多い気がします。合う人には合うし、合わない人には合わない、的な。まぁそれっぽい事言ってますけど、単に僕の語彙力が足りないだけです。とにかくなんか良かったです(小並感)。
めっちゃMJのダンスやってんのウケるとか、呪いが完全に解けた時の犬王の顔がジョーカーみたいだったとか、しょーもない事は言えますが、それ言い出すと今度はキリが無くなるので割愛。

 

そんな感じです、ハイ。
室町時代にロックだのポップだのをスルー出来る方、予告編を見て面白そうだなと思った方は、ぜひ見てみてください。あまり深く考えず、美しい色彩や音楽に身を任せるようにして鑑賞すれば、きっと楽しむことが出来ると思います。

ということで、映画『犬王』の感想でした。

ではまた。